春の調べの作品情報・感想・評価

『春の調べ』に投稿された感想・評価

恒喜

恒喜の感想・評価

3.0
かねてからお噂は耳にしておりまして…

後にハリウッドへ渡ってヘディ・ラマーと改名した美人女優、ヘディ・キースラー主演の問題作。

…しかし、男性にとってはチョット嬉しい「問題」で、すなわち彼女のヌードが映るという点でございます。

歳の離れた夫との結婚生活に不満しかない彼女は、家を飛び出して全裸で大自然の中を走りまわり、馬にまたがり、川にダイブ!

しかし、そんな一人露出狂遊びを若い男に見られてしまい、結局彼と愛し合うように…

何ともメチャクチャなお話ですが、その雰囲気と恥美的映像が不思議と心地良い。
エクスタシー!!!

日本語字幕無しver.がサイト上に出回っているため、そちらを観たほうがいいでしょう。
国内盤は一応あるのですが、画質が悪いしカット版なのでねぇ…

このレビューはネタバレを含みます

 想像以上に芸術性が高く、叙情あふれる映像美が堪能できた。

 ヘディ・キースラー演じるエヴァは新婚ホヤホヤで、結婚式の後、夫と部屋へ戻ってくる。二人には歳の差があり、靴を脱ぐのに手間取るような冴えない夫だが、エヴァは健気にもベッドの上で夫が入ってくるのを待つ。ここで手元のクローズアップショットが挿入されている。結婚指輪を片手ではめ直すショットの含意がいやらしい。結婚指輪からその発想はなかなか出ない。結局夫は洗面台の椅子で寝てしまい、エヴァの元にはやってこない。エヴァは失望する。
 場面が転換し浜辺でくつろぐ夫婦のシーン。夫は顔にかかったハエを払い落とし、折り畳み椅子の脚でさりげなく潰す。それを見たエヴァは夫に嫌気がさし、とうとう実家へ戻る。
 夫がエヴァを探し回るシーンはアバンギャルド精神に溢れており、足元、暗い部屋に空いたドアから光が刺すショット、合わせ鏡で探し回る夫を重層的に映し出すショットなど、どれも見応えがある。
 朝、豊かな自然が映し出される。風に揺れる木々や空を見上げたショットが美しい。黒澤明の『羅生門』でも見られるような、太陽を直接映したショットは特に素晴らしい。光線をしっかりと捉えており、黒澤明はこの映画を観て『羅生門』のシーンを撮ったのではないかと思わせる。エヴァの寝顔に陽が刺すショットも、ライティングが神がかり的である。
 起き上がったエヴァは馬に跨り、森の中を駆けていく。木々の間から川と草を食べる馬が見える。馬の背にはエヴァが着ていた服が掛けられている。エヴァは裸になって川で泳いでいるのだ。煌めく水面が美しい。水飛沫や木々、絶妙なアングルによってエヴァの肢体が隠されている。
 馬が川辺から離れていくことに気づいたエヴァは裸のまま馬を追いかけていく。このシークエンスでエヴァの上半身が露わになるショットが1カットだけ挿入されている。この1カットが公開後、世界中で物議を醸すことになる。
 馬は近くで建設作業に従事していたスボニミール・ロゴス演じるエミールに捕らえられる。エミールは馬の飼い主を探すなかで裸で森に隠れていたエヴァを見つける。生唾ゴックンといったわざとらしい演技を見せる。服を返してもらったエヴァはすぐさま立ち去ろうとするが、足を怪我してしまい、エミールに介抱される。夫とは違い、ハエを指の腹に乗せ、花びらの上に返してやる優しいエミールを見たエヴァは、エミールに好感を持つ。ここでまた美しい自然の描写が見られる。流れる雲、風に揺れる木々や花々、麦。
 夜、エミールが忘れられず部屋にいても落ち着かないエヴァは、外へ飛び出す。この部屋でのシーンも印象的なアバンギャルドぶりを見せる。馬の彫像、ホラ吹きの像、母の肖像画など、含意たっぷりにモチーフを展開させている。
 納屋から、わずかに漏れる光に導かれエヴァが中に入るとそこにはエミールがいた。高鳴る胸、少し空いた口元のエロティックなクローズアップの後、二人は抱擁、情熱的なキスをする。このショットに猛々しい馬の彫刻がオーバーラップ!含意はもはや明確。エヴァの恍惚とした表情が映し出される。ジャン・ヴィゴの『アタラント号』よりもエロティックだった。
 おそらく事後、タバコを手にしたエヴァの顔のクローズアップ、タバコの煙が流れていく動きが詩的な情感を煽る。
 再び朝、野原を歩く二人は完全に愛し合っていた。エヴァが家へと戻るとそこには夫がいた。エヴァは冷たく夫を突き放す。
 場面変わって、夫の車中、エミールがその車に乗り合わせる。エヴァのネックレスをエミールが手にしていることに気づいた夫は嫉妬に駆られる。車は猛スピードで走る。このサスペンスフルなシークエンスも素晴らしい。夫は踏切り間際でギリギリ停車した。煙を吐くエンジンと、弱々しい夫の顔のクロスカッティング。このエンジンは夫の精力枯渇を暗示していると考えるのは深読みしすぎだろうか。
 ダイナーにて、エヴァとエミールが再会する。ワインを飲み交わす二人。そこからダンスシーンに移り、二人の幸せそうな顔と、同調するバイオリニストの顔のクローズアップ。二人を見ていた夫の顔は暗い。この対比も良くできている。
 とうとう夫は拳銃自殺し、ダイナーは騒然とする。粘着性のハエ取り器にかかったハエも映し出される。
 ダイナーを出て、駅のベンチに腰掛ける二人。寝入ったエミールを置いて、列車へ乗ったエヴァ。エヴァがエミールの元を離れる印象的な列車のショットで幕が閉じる。

 全編通して台詞はかなり抑制されており、サイレント映画を思わせる、映像で物語を紡いでいく展開も良い。
 
A

Aの感想・評価

3.0
手と足へのフェティッシュが凄まじい。女性のオーガズムを描いた映画としてはこれがかなり初期らしいけど。クロースアップで撮る意味は一つしかないと思った。
あ

あの感想・評価

3.8
時代を考慮すると取り扱うテーマが進んでいるなぁとビックリしたけど、面白いかどうかはまた別の話
途中まではとても好き
non

nonの感想・評価

4.0
戦前に公開された映画。夫婦間の性の問題を扱ったこんな作品があったとは。D・H・ロレンスの小説のよう。ヘディ・キースラーがとてもきれい。話題となった全裸シーンも現在では大したことないかもしれないが、暗示に満ちた映像は十分に官能的。

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