獣人の作品情報・感想・評価

「獣人」に投稿された感想・評価

大酒飲みの遺伝子が彼の血を毒に変え
自分で制御できぬ凶悪な行動に駆り立てた──

そんな字幕がオープニングで流れる。主人公を苦しめる遺伝的な発作の説明だ。「獣人」というタイトルから、抑えられない殺人衝動によって次々と女性を殺害するホラーだと思ったが違った。

鉄道機関士のジャックは発作により女性の首を絞めようとするが直ぐに我に返り、その狂暴性は終盤まで顔を出さない。

嫉妬に狂った男が、妻の養父を殺害するというサスペンスになり、ジャックはその人妻に恋をし、ラブストーリーになる。

汚れた過去を持つ人妻と心に獣を宿した男、二人が雨上がりの空を見上げる場面が印象的だった。人妻を演じたシモーヌ・シモンはキラキラとした瞳で、アップショットの彼女が綺麗だった。

人を殺したくなる発作でジャックは獣と化す。鏡を睨む彼の顔はまるで別人で、その鋭い目つきにゾッとした。

石炭と油にまみれながら機関車を操縦する顔、恋する顔、獣の顔、そしてラストの穏やかな顔、様々な表情を見せたジャン・ギャバンの演技は素晴らしかった。
ENDO

ENDOの感想・評価

4.5
線路を茫然自失で歩むジャック。この空っぽな場面だけで傑作だ。機関車が出てくるシーンは否応なしに上がる!登場人物たちの理由なき衝動に喝采を!
時間も人生も機関車も前(未来)へと進むけど決して過去を置き去りには出来ない。先天的殺人衝動、情動、罪悪感。因果のレールから外れる為には自ら飛び降り遺物として自分が過去へと押し流されるしかない。邪魔者として殺す者と殺される者、愛する者を殺し、愛される者に殺される運命。開かれた目をそっと閉じてやる友の憐憫。椅子に戯れてる猫が可愛かった。
先天的殺人衝動。スプラッターかと。冒頭の素晴らしい列車シーンの荒々しさはさながら獣で、後にそれが性衝動と殺人衝動の化身であることが分かる。純朴で善良な主人公が俗と金にまみれた女を殺す、あああ。劇的な殺人が幕の、壁の向こうで行われている陰湿さが黒光りする、不気味で荒々しい
出てくる登場人物全員が獣人という恐ろしい映画。ジャンギャバンもヒロイン・シモーヌシモンもその愛人数人も全部強烈で悪人。絶対に好きになれない内容を妥協せず撮るジャンルノアールの冷酷なまでの視点。全く救いが無いし、問題も何も解決してない。
変質者と犯罪者はもって生まれたものであるというある意味真実をこの時代に描き切ってしまってる。カメラワークが凄い!
iceblue

iceblueの感想・評価

3.7
獣人というワードが強烈すぎて期待するも、殺人衝動を抑えられない男というくらいの意味合いなのがちょっぴり物足りない。
面白いのはエミール・ゾラの引用文。
大酒飲みの遺伝子が血を毒に変え、制御できない凶悪な行動に駆り立てる。何代も続く呪われた因果…。
何という奇抜な病。え!お酒が原因?
   
三角関係。列車内の殺人。操車場の逢引。
愛する人を殺してしまうかもしれないと苦悩する渋い機関士ジャン・ギャバン。
そして男たちを虜にするシモーヌ・シモン。
実はしたたか、でも可愛いみたいなこういう女性に男性は皆振り回されてゆく。
思った以上にメロドラマ。
何より素晴らしいのは機関車の疾走。
獣人の抑えられない衝動を思わせる加速。
yoeco

yoecoの感想・評価

2.8
最初の鉄道がとても魅力的。
機関車はギャバンが大切にしていた女性だから。それがほんとの女性になり、歯車が狂い始める。

悪い種子的な、間違った遺伝子観が入ってるけど、時代かね。
車軸の故障はギャバンをルアーヴルに足止めさせ駅員の女房と不倫させるため、クレーマーは駅員に対応させてトラブルを起こさせ女房に義父への口利きへと赴かせて二人の浮気を撮るため、食事は作るため(食べるところまで撮らない)、叔母を訪れるのは起源の説明、また帰りの列車でギャバンを殺人事件に巻き込むため、川は足を洗うため(官能)、ナンパは川に突き落とすため、従妹はギャバンに襲わせるため、帽子は飛ばされるため、食事はしないため(夫婦喧嘩の場になる)、指輪は浮気がばれるため、ベッドは人が隠れるため、停車駅はルノワールが登場するためそして濡れ衣を着せられるため(爆笑でしかない)、窓は女の不安を映すため、コンパートメントが殺人現場に、死体は人をまたがせるため、事情聴取はギャバンに黙秘させ秘密を共有させるため(台詞のやり取りはなく、仕事中口笛で合図するやり取りや、目を見ればわかるという台詞が伏線になっている(うますぎる))、床は遺留品を隠すため、操車場が逢い引き現場に(三回)、雨は晴れ上がった時にぬかるみを映して官能を指示するため(うますぎる)、人は抱き合うため(しがみつくように)、レインコートはしわくちゃになり光を反射する、遺留品の金はギャンブルに使い込ませ駅員を堕落させるため、駅員の殺しはできないためそして女に逃げられるため、ワルツは二人きりにするため(ひたすら回り続ける)、部屋の明かりを消すのはギャバンを獣人にするため(カメラが回り込み変身を告げる)、拳銃は使われない、ナイフは逆手で握られ光を反射する、懐中時計はひたすら揺れ光を反射する、線路は人が歩くため、列車は人が飛び降りるため、目を開けたまま死ぬのは親友に閉じさせるため、貨物列車が死体を運ぶ
DON

DONの感想・評価

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愛する女のために愛人を殺した男がいて、愛する女のために当の女を殺した男がいる。「私たちはもうこれ以上先へは進めない」というシモーヌ・シモンの台詞が予言するとおり、猛進する機関車から飛び降りるジャン・ギャバン。機関車もまた彼が愛した「女性」だった。

走り続ける欲望、安息としての死。愛欲映画の極北。
ホンダ

ホンダの感想・評価

3.5
鉄道
愛着の対象、景色、誇らしい仕事場、狂気の沙汰、殺人現場、逢瀬の場、自殺現場

ナイフ、ワイン
趣味の良い商品、ナイフは凶器
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