ガザを飛ぶブタの作品情報・感想・評価

ガザを飛ぶブタ2010年製作の映画)

Le Cochon de Gaza/When Pigs Have Wings

製作国:

上映時間:99分

4.2

「ガザを飛ぶブタ」に投稿された感想・評価

kaomatsu

kaomatsuの感想・評価

4.5
2011年11月、第24回東京国際映画祭で鑑賞。

イスラエルとパレスチナの厳しい現実を笑い飛ばす、バチあたりでシュールなブラック・コメディーの傑作。元ジャーナリストとしてのクールな視点を活かしつつ、映画への愛情と独自のユートピア観が冴えわたる、シルヴァン・エスティバル監督渾身のデビュー作だ。イスラム教では絶対に不浄とされるブタさんが着ぐるみを着て大活躍するという、とんでもない前情報に惹かれ、映画祭の会場である六本木ヒルズに向かった。

パレスチナ・ガザ地区。パレスチナ人の漁師ジャファールは、ある日漁をしていたところ、網の中に魚と一緒になぜかブタが引っかかっているのを発見し、仰天する。イスラム社会では不浄な生き物とされるブタを手放すべく、売ってしまおうと小賢しく画策するが、買い手が現れない。仕方なく、このブタに毛皮のような着ぐるみを着せて、なんとかカムフラージュ。一方、ジャファールの家では、奥さんが家事をしているが、家の中にはイスラエル兵が監視している。このイスラエル兵、監視中にテレビの昼ドラを見ながら、ついつい奥さんと同時に涙している。程なく、ジャファールが毛皮を身にまとったブタを連れて帰ると、奥さんは卒倒。そしてある日、ブタを飼っていることがバレたジャファールは、なぜか仲間から自爆テロの役割を任され、ブタと共に爆弾を装着させられるのだが、果たして、その七転八倒の末は…。

このガザという地区で、ホントにそれやったらヤバいでしょ的な、下ネタも含んだブラックな要素が満載ながら、パレスチナ人とユダヤ人、どちらも抑圧・被抑圧の関係になり得ることをフラットに描いていて秀逸。そして、いたずらな風刺コメディとして茶化すことなく、すべての人々が国境や宗教を超えて、共生することができたら…という、シルヴァン・エスティバル監督の痛切な願いがこめられていて、とても感動的だ。こうしたエスプリの利いた海外の風刺劇は、日本の市場にはフィットしないのか、配給会社が現れず、一般公開とならなかったのは残念だったけれど、その後イスラーム映画祭で上映されたと聞き、とても喜ばしく思った。ちなみにこの映画が上映された第24回東京国際映画祭では、東京サクラグランプリ受賞の『最強のふたり』が話題をかっさらい、本作はその陰に隠れてしまった形となったが、観客賞を受賞し、どちらも見ごたえのある作品となった。

上映終了後の質疑応答に、シルヴァン・エスティバル監督と準主役のミリアム・テカイアさんご夫婦が登場。会場出口で二人と握手を交わし、六本木駅へ帰途を急ぐ途中、後ろから突然肩をポンと叩かれ、びっくりして振り返ると、なんとなんと、シルヴァン+ミリアム夫妻がそこに! そのまま一緒に日比谷線に乗り込み、満員電車の中で、身振り手振りでお互いの伝えたいポイントを探りつつ会話。そのとき、ミリアムさんからfacebookの友達申請を受け、この出会いをきっかけにfbを始めることに。さっきまでスクリーンの中で活躍していた人と、その映画の監督さんが、現実に目の前に、しかも共に地下鉄に乗っている……一期一会、人の縁とは不思議なものだ。余談ながら、昨年のメキシコ大地震で、メキシコシティ在住のテカイアさんの安否が心配だったけれど、どうやら無事だと分かり、ホッと胸を撫で下ろしたのだった。
(大幅に加筆して再掲載)
chinechan

chinechanの感想・評価

4.8
素晴らしき名作。
現実とはあまりにかけ離れてはいるが、パレスチナとイスラエルの究極に理想的な着地点。私はといえば、あまりにラストシーンが素晴らしいために、途中まで爆笑していたけど、最後には泣きながら笑っていた。
これまた名作中の名作である、underground
っぽさも。

世界中どこにいたって、人間の本質はみんな同じで、悲しい時には泣き、うれしい時には笑う。軽口だって叩く。何ら変わらないのです。映画でもそうだけど、世界に旅すると、どんどんそういうことを肌で感じてくる。

ちなみに、イスラム映画祭で鑑賞したけど、古居みずえさん曰く、ガザではもちろんのこと撮影不可のため、マルタで撮影されているが、ガザの雰囲気はよく出ており、ガザの漁師さんの気質もよく表しているとのこと。
発想のユニークさが光る。イスラム教でもユダヤ教でも忌み嫌われるブタを通した、両者のコミュニケーション。イスラエルとパレスチナ問題をこんなに笑える映画にできるのはすごい。現実を踏まえてみると、この笑いには涙も混ざる。
また、世界のユダヤ人が集まるイスラエルという国の異質性も知った。
パレスチナ問題の上に起こるコメディだが、腹が痛くなるぐらいに笑った。風刺的なギャグの切れ味もすごい。何故この映画が日本で普及されないのか疑問しかない
Kaoruuun

Kaoruuunの感想・評価

3.8
第1回イスラム映画祭にて
イスラエルとパレスチナの対立問題を、ユーモラスかつファンタジー仕立てに描いた作品。
そもそも、ガザに生きる方々の生活の様子、対立の実情、人々の感情や宗教に対する信仰の厚さなどは、ニュースを見ても伝わらないもの。この映画を見て、これまでよりもはっきりとリアルに感じられるようになった。
とはいえ日本人の私にはなかなか理解しがたいものでもあるし、解決の糸口が見えたわけでもない。
感じたのは、私がもしあの場所に生まれて、フェンスの向こうには分かり合えない人がいると教えられたとしたら、同じように対立の気持ちを持ったかもしれないという怖さ。
対立の怖さは、そのスタートを知らなくても、脈々と受け継がれていってしまい、人の認識の奥底にまるで常識のように刷り込まれてしまうことだと思う。
外の世界にいるわたしたちだけでなく、願わくば当事者の中にも、この物語の最後のような分け隔てない和平を求めて、行動する人がいてほしい。
Mikako1212

Mikako1212の感想・評価

5.0
知人が主催したイスラーム映画祭にて鑑賞。ガザ地区におけるパレスチナとイスラエルの対立を、双方にとっての禁忌動物である豚をモチーフに、争いの愚かさをユーモアとウィットに富んだ物語で描き出した力作。かの地の日常にひそむ皮肉と笑いの奥底には、この馬鹿げた紛争に対する冷めた嘆きと決して失わない平和と和解への希望がしっかりと横たわっていることがわかる。
日ごろ目にする報道が、違って見えてくるようだ。
報道で上部だけをすくい取るイスラム情報が、すべてではない。改めてそう思った。
いち麦

いち麦の感想・評価

4.0
イスラーム映画祭にて鑑賞。パレスチナとイスラエル…双方の聖地に双方が忌み嫌う豚を配す妙。悪戦苦闘する漁師は哀しい道化師の様で笑いを誘う。思いがけぬ方向へ転がり続ける物語に和平への願いが込められた巧みなファンタジー。
ただ、イスラエル兵の長閑さやインティファーダの生ぬるいシンボル化など、余りに現実離れしたこの時代のガザ地区の描写は一寸の知識が邪魔をして正直割り切れなさが最後まで付き纏った。
一方で、パンニングをフルに生かしたエフェクトの劇伴は耳にとても心地良く、音響設備のいい劇場で音場の良い中央付近の座席で鑑賞するといい作品だと思った。ユーロスペースもなかなか捨てたもんじゃない。
ユーロスペースのイスラム映画祭2015で鑑賞。

パレスチナとイスラエルの争い。世界中で数多くの戦争、紛争、領土争い、宗教、民族問題が起こっているが、やはりパレスチナとイスラエルの両国の争いはその中でもトップクラス。一生解決しないとも言われているが、世界中の人がこの問題の解決と和平を望んでいるのだ。

本作もそんなパレスチナとイスラエルの問題に深く切り込み、両国の和平を訴えかける社会派映画である。しかし本作の凄いところは、真面目に主張を叫ぶシリアスな側面よりも、ユーモア溢れる、喜劇仕立てになっているところが素晴らしい。

下ネタが多く、精力絶倫なブタちゃんがビンビンになって暴れまくる!

主人公ジャファールは漁師なのだが、ある日海で豚ちゃんを引き上げてしまう。海で豚だと?そう、この時点でシュールなのだが、けっこうファンタジックです。

イスラム教にとって豚は不浄で不潔な存在。イスラム教徒は豚を食べることは禁じられているので、主人公ジャファールは海で豚を引き上げた時も、最初に神への謝罪を口にする。

ジャファールはこの不浄な豚を殺そうと考えるがやはり、できません。そこで思いついたのが、この豚ちゃんを使って金儲けしよう!ここからユダヤ人入植地でのユダヤ人女性との交流が始まったり、豚がバイアグラ食ってビンビンになったり、自爆テロ問題が絡んできたり、いろいろ激しく展開します。

本作はフランス=ベルギー映画で、監督さんもベルギー人。さすがにパレスチナ、イスラエル両国の当事者がこんな映画は作れません。映画の舞台はパレスチナ自治区のガザですが、実際のガザでは撮影なんて無理なので、どうやら本作はマルタ島で撮影されているらしい。

製作者達と同様に我々もこの両国の和平を望んでいる。本作にも多くのパレスチナ人とイスラエル人の交流が描かれているが、しかし実際の両国はやはり憎しみ合っている人たちの方が多い。なので本作を当事者ではない外国人が描く理想主義的な絵空事と批判する人も多いと思う。

うん、実際に私自身も本作のラストのあまりに強引な夢のような謎のハッピーエンドには少し違和感を持ったのも事実である。映画が終わった瞬間、あ~やっぱりこんな平和はない。この映画自体が夢なのだ。幻、ファンタジーだとも感じた。

でも、やっぱり民族、宗教、領土問題を超えてみんなで笑い合いながら、平和を望みたい。私のようなちっぽけな人間は世界の紛争問題に対してまったく無力だが、それでもやっぱり映画を観て、いろいろなことを知り、考え、平和について叫んでいかなきゃとも真面目に思ってしまった。
NarumiSato

NarumiSatoの感想・評価

3.8
イスラーム映画祭にて。

問題の多く残るイスラエル・パレスチナ間についてユーモラスに描いてるのが本作品の面白いところだけど、ユーモラスに超理想的に描かれているからこそ切なくなった。
特に最後のシーンは眩しく非現実的すぎて「これは現実じゃない」と呟かないと観ていられなくて、何度も呟きながら涙してしまった。
これは現実じゃない。けれど、この映画を作ることのできる現実がある事に一喜してもいいと思う。

イスラエル人の俳優がパレスチナ人として演じる中で「やっぱり演じれない、しかし俳優として演じなければいけない」と葛藤していて、制作に携わる皆で何度も議論したとユーロスペースの方が言っていたのが印象的だった。
みく

みくの感想・評価

4.0
イスラーム映画祭にて鑑賞しました。

ユダヤ教イスラム教ともに禁忌とされる豚をめぐって繰り広げられるパレスチナとイスラエルを舞台にした物語。

腫れ物のように感じてしまう宗教の問題をブラックユーモアを交えて見せるこの映画。
敵対し合っているようだけどどこか助け合っていて、もしかしたら未来には…と思わせられるようでした。
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