ここに泉ありの作品情報・感想・評価

「ここに泉あり」に投稿された感想・評価

過去においても現代においても、音楽で食うにはいつの時代も大変である。それが食糧難の終戦直後、地方都市において本格的な交響楽団を立ち上げて、さらに維持していくことは並大抵の苦労ではない。
 
日本初の地方楽団・群馬交響楽団の黎明期における苦心談をドラマ化した『ここに泉あり』は、 60 年の歳月は流れていようとも、今も観る者の心を打つ名作である。
 
雨の日も風の日も雪の日も、重い楽器を自ら担ぎながら、群馬各地を無蓋車、トラックの荷台、徒歩で駆け回る楽団員の姿だけでも来るものがあるが、ことさら感動的なのが、彼らが来ることを今か今かと楽しみに待っている人々の存在である。
 
ハンセン病療養所での演奏会― 感動した患者たちの音なき音の拍手の嵐。
 
山奥の学校での演奏会― 楽団の演奏にあわせ、子供たちの『赤とんぼ』の大合唱。
 
現代のように CD や音楽配信で音楽をいつも聴ける時代の話ではない。ひょっとしたら彼らが本格的な音楽に触れる機会がこれっきりかもしれない。彼らの音楽への渇望は今の我々とは比べようがなく、彼らのあの心から音楽を楽しんでいるような表情が万感胸に迫る。
 
ラスト、山田耕筰(本人!)の指揮による晴れの舞台で楽団員がベートーベン『第九』を演奏する。観客席にはかつての楽団員の姿もある。様々な理由で脱落せざるをえなかった彼らの脳裏に浮かぶもの、それは、あの苦楽を共にし演奏にあけくれた日々である。
 
この映画を 10 年位前に新・文芸坐で観たとき拍手が起こった。自分にとって劇場で拍手が起こったのはこの時が最初…いまだに忘れることができない My 映画人生の 1 場面である。
この作品は絶対に高崎電気館で。たまに無料上映やってます。
yuka

yukaの感想・評価

4.7
音楽が生まれる瞬間の喜びが、一度ならず何度も写し取られていた
そのどれもが素晴らしいという
古池

古池の感想・評価

4.6
すばらしかったです。 文字通り、野を越え山越え、演奏活動を続ける群馬の地方楽団。
集団で音楽をすることの難しさ、戦後の経済状況、出産による女性のキャリア中断問題もさらっととはいえ描かれ、そして何より音楽の力をこんなにダイレクトに届けられるなんて。
旦那にするには、たしかに厳しいけれど、にくめないキャラのマネージャーも良かったです。
途中「とっとと東京に行けば良いのでは?」と、ちょっと岸惠子に思って、ごめんなさい。というくらいラスト良かったです。 ちょっとできすぎかもですが、希望が描かれて、やはり良かった。 中盤の病院?での演奏シーンも、心に残りました。
高校の頃、川崎市民ミュージアムで観た。好きな映画。岸恵子が美しい。イギリス映画「ブラス!」に先駆けた映画だと思う(ブラスも好きな映画…)。そして、山田耕筰本人が出ている!