アントニアの食卓/アントニアの作品情報・感想・評価

アントニアの食卓/アントニア1995年製作の映画)

ANTONIA

製作国:

上映時間:103分

3.6

「アントニアの食卓/アントニア」に投稿された感想・評価

yuien

yuienの感想・評価

4.2
「種をまく 食卓を囲む 愛し合う
いのちは踊り 季節はめぐる」

なんて的確で素晴らしいキャッチフレーズなんだろう…

これは、ひとりの女性・アントニアを軸にすえた“ファミリー”・サーガであり、
その型にとらわれず、多角的な視点を併せ持ちながら、のびのびとした語り口はガルシア・マルケスの『百年の孤独』を彷彿せずにはいられなかった。(きっと、監督も多少は意識したに違いない)


アントニア親娘の食卓は対外的に開放されており、困った人を快く受け入れ、朗らかな人柄や分け隔てのない親切さで傷ついた人々を癒す。

はじめは、友人を招待して 催される午餐会からはじまり、やがて一大家族の大団欒の如く、老若男女問わず、多くの人々が彼女たちの食卓に集う。
そこは語らい、憩う場所。
ともに、美味しい食事に舌鼓をうち、笑い声を融け合わせる。

それぞれに必ずしも血のつながりはないけれど、彼らを結び合うのは友だちの絆というよりか、“ファミリー”のそれであり、
人々は互いを支え合いながら 生きていく
まさに、理想的な共同体のかたち

ダニエラが娘を出産した場面で
部屋の壁に、ボッティチェリのヴィーナスやモディリアーニによるジャンヌの肖像画が掛けられていて、小さく、自らの存在感を主張していたけれど、(こういうのも一種のアトリビュートなのかも知れないね?)
それって、つくり手のささやき声に似てはいないだろうか

これは、女性の矜持や柔靭さ、その独立した自我を讃美した頌歌なんだということ


閉ざされた田舎のコミュニティの中でも、アントニアは、誰の色にも染まらず、且つ孤立しているわけでもなく、肯定的な意味で我を貫き通す。毅然たる態度や堂々とした物腰、そしてその愛情深さで周囲の人々を惹きつけてやまない。

マルレーン・ゴリスは女流監督ならではの観点で、独特な、自立した強い女性像をつくりあげ、
ヴィレケ・ファン・アメーロイは頼もしい 肉厚な体型によって、人物によりマターナルなあたたかみを与えていた。

後半では、人生のままならない現実や醜い一面も、悲喜こもごもと描かれているが、それらのエピソードは決して悲観する要素としてではなく、向き合い、乗り越えていく要素として捉えられている。
生きていく という営みに対する、淡泊で、どこか達観した態度はいまの自分自身にしっくりとよく馴染んだ。


淡い色彩はフェミニンなもの柔らかさ、
長閑な田園風景はリリカルな静けさを湛え、

四季や生死が巡り、ひとつの生がたくさんの生を手繰り寄せてゆく。ゆるやかな起伏でありながらも、豊饒な生の息吹が沁みわたっている作品だった。

「愛は至る所で瞬間的に爆発している」
という台詞、とても好き
崇敬するIホール初代総支配人様③

『シベリアーダ』絶賛の私ですが、本作品は確か女性がメインの4世代叙事詩だったと思います。
シベリア―ダや1900年と違って所々にさりげないユーモアが盛り込まれています。
~家族とは?人生とは?~といった一つ間違えると退屈で重くなり兼ねないテーマを、女性ならではの凛とした視点からたった100分ちょっとの時間で見事に味わい深い世界観を創り出しています。
邦題に食卓とありますが、料理映画ではなくまんま食卓がキーワードになっています。
かなりの秀作だったと記憶しています。