死んだってへっちゃらさの作品情報・感想・評価

「死んだってへっちゃらさ」に投稿された感想・評価

No.812["この映画では動物に危害を加えていません"は流石に嘘] 80点

"1001の映画"に掲載されている中でもSSS級鑑賞困難作に指定された(私が勝手に指定した)一本。海外にも廃版のVHSしか存在しないという文字通り"幻の映画"。そんな作品を掲載すんなって。昨年末新文芸坐シネマテークで日本公開されたらしいが、レポート地獄真っただ中だった私がそんなこと知る由もなく、マラソン完走の最大の障壁となっていた。ちなみに、"この映画では動物に危害を加えていません"と最後に出てきたが流石に嘘だろう。スタッフが美味しく頂いたに違いない。

西インド諸島出身のジョスリンとベニン出身のダーは闘鶏で生計を立てているコンビである。ふたりはジョスリンの母親の友人ピエールが保有するディスコの地下で違法闘鶏を開始する。ジョスリンは"死んだってへっちゃらさ"と名付けた雄鶏にダーはピエールの若妻トニに執着するようになる。

ドゥニは三本目だが彼女の映画が醸し出す雰囲気は感じ取れるようになってしまった。雑多だが同時に統制されている空気感やイカした音楽は「美しき仕事」にそっくりだった。個人的には同作の方が好みだが、本作品にもしっかりと魅せられてしまった。特に"死んだってへっちゃらさ"とジョスリンが共に血を流すシーンは印象的だった。

誰が"死ぬ"ことに対して誰が"へっちゃら"だったのだろうか。強がり以外の何ものでもない命名によって稀代の名コンビだったジョスリンとダーの仲は引き裂かれ、後には空虚しか残らない。鶏は"鶏"でいいのである。
ミツヒ

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4.0
コックファイターをノワールにした印象で夜の場面が多くを占めるのだけどその中で早朝の場面が際立ってて良い、鶏をトイレのハンドドライヤーに当てる
イワシ

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4.3
鶏に触れるアレックス・デスカスの手の動きはボクサーにマッサージを施すトレーナーのようであり、その慈しみに満ちた手の動きに『ボディ・アンド・ソウル』のカナダ・リーが体現していた悲壮を予感する。そしてその手の動きはイザック・ド・バンコレに受け継がれるだろう。

鶏の世話をする様子をどれも丁寧に描写しているのが素晴らしいのだか、まるで空を飛行する鳥のように鶏の羽を広げるアレックス・デスカスに涙ぐんでしまう。あと、鶏のための食事もそれを作るところから細かく描写されるが、その場所がレストランの地下室というのもたまらない。
闘鶏になぞらえられた二人の主人公を通して見る奴隷としての黒人たちの被抑圧の過去。示唆的なボクシングのショット。ファノン『黒い皮膚、白い仮面』から引かれる「二重の抑圧」により現れる二人の違い。
hardeight

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4.3
しょっばなから不穏な空気を漂わせ、何重にも亀裂の線を走らせながら、静かなカタストロフィに向かっていくイザック・ド・バンコレとアレックス・デスカスの二人に引き込まれた。あと、鶏のトレーニングシーンが最高によかった。
mingo

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4.0
ドニディスクないのなんでなんですか、ジャームッシュしかりヴェンダース、リヴェットそれぞれの作家の意図や構想をオリジナルに昇華してる稀有な作家だと思うんだけど。。。
「コックファイター」「チャイニーズブッキー〜」の暴力が描く世界観をもとに、能動性のない去勢された世界が見える映画。「死んだってへっちゃらさ」という鶏はジョスランの分身であり、呆気なさ、映画全体の悲劇性を運命のように抱えている。レイシズムが精神的に蝕むのを人種間で描くドニのパワーは観てるこちらもエネルギーが必要だ。黒人社会で自由に生きるメッセージ性の強いボブマリーのバッファローソルジャーがたまんなく哀しい。
habtex

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4.6
ただただ最高にカッコいい映画。

最後のコックファイトの前、騒ぐ群衆の中で、座り込み、静かに鶏を撫でるジョスランを、微妙に引いて捉える手持ちカメラの緊張感が素晴らしい。

ダーとジョスラン。
二人の違いは社会に対して己を発することが出来るかどうかだと思って観ていたけど、大寺さんの講義で、そんなに深い理由があるとは、と知って勉強になりました。
CHEBUNBUN

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4.1
【これがホンモノのポケモンバトルだ!】
新文芸坐でクレール・ドゥニ特集が組まれてました。今回なんと『死んだってへっちゃらさ』が公開された。これは私の聖書『死ぬまでに観たい映画1001本』に収録されているものの、日本では未DVDか、アマゾンで輸入DVDを買おうにも取り扱ってない幻の映画だ。

内容も、クレール・ドゥニ監督がモンテ・ヘルマンの『コックファイター』に影響されて作ったという闘鶏映画。これは面白くないわけがない。

ってことで、自主プレミアムフライデーを発動して観てきました。

冒頭から面白い。「人は国籍、宗教、信条、イデオロギー関係なく誰でも可能性を持っている」というテロップから始まると、一人の黒人が全く同じことを語る。独特な反復におっ!と引き込まれる。そしてタイトルの『死んだってへっちゃらさ(S'en fout la mort)』の意味に驚いた。ゾン・フ・ラ・モーかっこいい!

そして、西インド諸島マルティニーク出身の黒人とアフリカベナン出身の黒人がフランスで裕福になる夢を抱き闘鶏ギャンブルに明け暮れる様子が描かれる。

映画評論家大寺さんの講義によると、日本人からは同じ黒人に見えても、黒人同士お互いを比べあっている。フランスの植民地ということに誇りをもっているマルティニークの黒人像が象徴的だということ。それを踏まえるとNetflixにあがっているナイジェリア映画『オクラを買いに行かせたら』に近い洞察力がそこにある。

一見シンプルな闘鶏映画。それこそ、バトルに夢中になり鶏に愛情を抱く様子は、ポケモンにおけるサトシとピカチュウの関係に近い。

しかし、よくよく見てみると、フランスに暮らすと誰しもが抱く目線が鋭く怖い黒人が何を考えているかを徹底して掘り下げた作品と言えるだろう。

神話的で深い深い闇に足を突っ込んだような作品でした。

P.S.えっ動物に危害を加えていない?うそだー
buccimane

buccimaneの感想・評価

4.0
確かにカニエみたいなやつがPE?聞かせてトレーニングつけるのも背伸び感あるしダディーGみたいなやつがカーステでバッファローソルジャー流すのとは説得力が違うな。
トレーニングつけるシーンも痺れるけどダーさんが旅支度するシーンも同じくらい美しくてウットリした。
ヤマ場の闘鶏シーンはキマッたカットを撮るの難しいよな。
ムチコ

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3.8
かっこいい幕開け。
黒い肌の男、白い鶏、白いモヘアニットの白い肌の女、そこに血!
無口な闘鶏マンと忘れられない女、って「コックファイター」なんだけど、どんどんどエモになっていくので神代辰巳ぽいなとも思った。
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