情欲の悪魔の作品情報・感想・評価

「情欲の悪魔」に投稿された感想・評価

Filmomo

Filmomoの感想・評価

4.9

このレビューはネタバレを含みます

①ミュージカルではない。ドリス・デイは歌手で、場面によってトーチソングを歌う。しかしこの映画はその一曲を途切れさせたり編集したりしない。この「歌」の力と、ドラマの「力」が完全に融合した画期的な構成。②ジェームズ・キャグニーはその体躯と早口の台詞まわしと眼力の強さで圧巻の演技を見せる。この人はもっと再評価されるべき。キャグニーがどこまでもドリス・デイに執心なのは、支配できないからであり、支配できないということは、不確実な存在であるということである。この不確実な存在が、ショウビジネス界において絶対確実な存在として君臨してゆくことの対比の面白さ。その映画という虚構と、芸能界という現実を、60年代の大スター、ドリス・デイののびやかで美しく、聞き取りやすい歌声が結びつけて感動を呼ぶ。(実際のドリス・デイはシャイな人物で、ハリウッドのパーティの席でも隅っこにいて目立つのを嫌っていた)③原題の「Love Me Or Leave Me」はニーナ・シモンの熱唱で知られるスタンダード・ナンバーで、ドリス・デイは最後に歌う。いや、歌っている舞台をキャグニーが舞台そでから眺める。情欲の悪魔とはキャグニーのことを指している。悪魔のように支配欲があり、顔役だが、文字通りの情欲=ドリス・デイの肉体に対する欲望が描かれるわけではなく、この邦題は間違っている。熱情の悪魔か、激情の悪魔の方が言い表しているが、これも邦題に相応しくない。原題の曲は美空ひばりが「愛さないなら棄てて」という邦題で歌っている。これでいい。