みりお

ジョーカーのみりおのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.6
『ジョーカー』に沸き立つタイムラインを横目に、ダークナイト・トリロジー制覇しようと決めてたのですが、たまたま時間ができたから、とりあえず先に『ジョーカー』鑑賞してきちゃいました🤡🌟
トリロジー3作目はジョーカー出ないもんね⁉️
許されるよね⁉️笑

そして…本当に素晴らしかったです。
ただ素直に名作だと言えない気持ちも、本当によくわかりました。
この作品を賞賛することは、悪や狂気の蔓延を助長することになるのではないか…
そんな気持ちが頭をよぎりました💦
それでも、一言「決してアーサーの行動を擁護するものではない」という前置きだけして、それでも敢えて"素晴らしい作品"だったと言いたいです。

ダークナイト・トリロジーの2作目まで鑑賞してみりおが感じたジョーカーとは、「迷いのない悪」でした。
自らが取る行動にむしろ自信すら持っていて、誰かを傷つけることや恐怖を感じさせることに、なんの疑問も抱かない人物…

だからこそ、本作の冒頭でのアーサーは極めて印象的でした。
常に笑っていたい、人を笑わせたいと必死な姿勢。
子供の前で不器用に踊り、子供を笑わせられることに生きがいを見出し、「この仕事が好きなんです!」と語る様子。
誰かを笑わせたいあまり、笑い続けなければいけないという強迫観念すら抱いて病を患うほどに、真面目な人間性。

そんな彼が、どうして狂気へと落ちていったのか…
一重に彼は真面目すぎたんだと思います。
母や友人を笑わせなきゃ。
僕はハッピーを振りまく人でいなきゃ。
そんな素朴な心優しい青年だったのに…
そんな真面目な彼に、ただただ社会は厳しかった。
腐った街の、一人一人の些細な敵意や嘲笑が、社会的弱者である彼の上に積み重なっていってしまった。
彼の上に積み重なったものを背負いきれなくなった時、彼の中のタカが外れた音が聞こえた気がしました。

そしてみりおが最も怖かったのは、ここから。
タカが外れた人間は、それがどういう理由であれ罰せられなければなりません。
だって社会のルールに背いたのだから。
けれど、社会的強者と弱者、富と貧の二極化が進んだゴッサムシティでは、ジョーカーは一気にヒーローへと祀り上げられていきます。
冒頭の少年たちの行動から分かるように、ピエロは普段なら嘲笑の対象でしかありませんでした。
しかしジョーカーのルール違反を讃え、皆が無個性なピエロになり、集団の中に入り混じった"個の喪失"状態の中で、さらなる悪事を推奨し、受容する社会が、あっという間に広がっていったのです。

皆がピエロのお面をつけながら、街を練り歩き、警官を暴行し、暴動をおこし、その中心でジョーカーが佇む映像は、ナチス・ヒトラーの台頭を思い起こさせました。
人が人を大量に殺戮していい理由なんて絶対にないはずなのに、一人のカリスマへの憧れから、社会の中で個性が失われ、皆が狂気へと走った時代に、本当に似ていたように思います。

ジョーカーの暴走は恐ろしい…
これが犯罪を助長しないか…
そんな意見が多いのは百も承知ですが、みりおは敢えて、反論を承知で言いたい。
あの光景は、世界の歴史の中で何度も何度も繰り返されてきた光景だと思います。
貧富の差が広がり、溜まった鬱憤を吐き出すために、ある対象に怒りや暴力をぶつける社会…
でもそれが歴史の一部になると、人の感覚は麻痺してまた同じことを繰り返すのです。
だからこそ思います。
この作品が世に送り出されることは、犯罪を助長するためではなく、繰り返されてきた悲劇を思い起こさせるためなのだと。
ナチスによるユダヤ人虐殺。
アフガンによるテロ行為。
大東亜戦争の元の虐殺行為。
全ては、社会の鬱憤が、ジョーカーのようなカリスマにより発散させられたために起きたことでもあるんです。
それを繰り返してはいけない、繰り返さないために敢えて世に送り出したい…
そんな強い思いを感じさせてくれる名作でした。


【ストーリー】

孤独で心の優しいアーサー(ホアキン・フェニックス)は、母の「どんなときも笑顔で人々を楽しませなさい」という言葉を心に刻みコメディアンを目指す。
ピエロのメイクをして大道芸を披露しながら、貧しさの中にも喜びを見つけ、同じアパートの住人ソフィー(ザジー・ビーツ)にひそかに思いを寄せたり、母の介護をしたり、当たり前の日常を送っていた。
だが、あることをきっかけに彼の人生の歯車は狂っていく…


【キャスト・スタッフ】

*監督:トッド・フィリップス

米・ニューヨーク州出身🇺🇸
ニューヨーク大学で映画を学び、在学中からいくつかのドキュメンタリー作品を制作。
その後劇画へと転身し、有名作としては『ハング・オーバー』シリーズや『デュー・デート』シリーズなどがあります✨
それにしても作風が違いすぎて…😂💦
トッドさんこそ、究極の二面性を持った人ではないでしょうか🙈💦??笑


*アーサー・フレック=ジョーカー:ホアキン・フェニックス

いや〜本当に素晴らしかった✨✨
あの整った顔立ちが見る影もなく強張っていて、骨が不自然に浮き出るほど痩せこけていて、本当に痛々しく弱々しい弱者になりきっていたホアキン…
人間臭く、弱く、ひたすらに受容を求めるヴィランがとても印象的で、レジェンドともいえるヒースの後にジョーカーを演じることに、彼がどれほどプレッシャーを感じていたか、そしてそれをどれほど見事に飛び越えたかが伝わってきました✨

ホアキンは、プエルトリコ出身🇵🇷
役者一家で、早世のリバーを含め兄弟4人が全員俳優なことで有名です☺️👍
1982年、8歳の時に兄・リバーの背中を見て自らも俳優の道に進む決意を固め、兄が出演していたTVシリーズでデビュー🌟
映画デビューは1986年の『スペースキャンプ』。
翌年には『ラスキーズ』で初主演を務めたそうです🌈
その後も子役としてキャリアを積んだホアキンだったが、19歳の時に兄を目の前で亡くし、その際の過熱報道に嫌気がさして芸能界から距離を置いたホアキンですが、翌年には復帰し、その後は名だたる作品に名を連ねていきます✨
そして2000年の『グラディエーター』では主演のラッセル・クロウに一歩も引かない演技を見せ、アカデミー賞やゴールデングローブ賞など名立たる映画賞の助演男優賞にノミネートされ、個性派俳優としての知名度を確立したと言われているそうです☺️✨
その他の出演作は『ホテル・ルワンダ』『ヴィレッジ』『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』『her/世界でひとつの彼女』『ビューティフル・デイ』『ゴールデン・リバー』など。



*マレー・フランクリン:ロバート・デ・ニーロ

いや〜流石の演技力✨✨
出番も多くないし、なによりほぼ"TVの中の人"としてしか映っていないのに、ここまでマレーという人の内面を出し切る演技をできるのは、本当に凄いと思います✨
彼は米・ニューヨーク州出身🇺🇸
1972年の『ゴッドファーザー』で多数の役のオーディションを受けたそうですが落選😥
しかし、監督のフランシス・フォード・コッポラが彼の演技力を高く評価し、続編のでは役を得たそうです👏
彼はこの役を演じきるためにシチリアまで赴き、シチリア訛りのイタリア語をマスターし、さらにしゃがれた声を真似るために必死の練習をしたとのこと😳
デ・ニーロ・アプローチの礎となったのはこれかもしれませんね🍀✨
その努力が認められてアカデミー助演男優賞を受賞しました🌟
またボクサーを演じるため体重を20キロ増やした『レイジング・ブル』ではアカデミー賞主演男優賞も受賞しています🌈
その他の出演作は『タクシードライバー』『キング・オブ・コメディ』『俺たちは天使じゃない』『バックドラフト』『ミート・ザ・ペアレンツ』『マイ・インターン』など。


*ソフィー:ザジー・ビーツ

アーサーの隣人。
彼女はドイツ出身🇩🇪
2016年の📺ドラマ『アトランタ』で有名になりましたが、以外にはあまりヒット作のないような印象だったザジー。
しかし近年は『デップー2』のドミノが印象的でしたね💕
そのほかには『ジオストーム』などにも出演しています。
みりお

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