なかしゅんさんの映画レビュー・感想・評価

なかしゅん

なかしゅん

アフター・アワーズ(1985年製作の映画)

4.0

会社員に起こる奇妙で不条理な一夜。妙な緊張感とシニカルな笑いで一杯。「この僕が何をしたと言うんですか」と天を仰ぐ場面に爆笑。苛烈な女性が沢山出てくるが、引き寄せているのは主人公ポールなのだ。

グッドフェローズ(1990年製作の映画)

4.2

皮肉なタイトル。実話に基づくギャングの話。暴力、金、銃、薬物。カメラワークと音楽が秀逸で、血生臭くなる中盤から魅入った。友情と裏切りの果て。マリナーラソースはただのケチャップで、行列に並ぶのが人生。

炎上(1958年製作の映画)

3.7

吃音の劣等感。寺や大人への幻滅。対人関係での敗北。国宝を燃やすに至った、1人の青年の崩壊が描かれる。抑えられた中にある衝動。映像は美しかったが、三島由紀夫の原作と比べるとやや物足りなさも感じた。

コンパニオン(2025年製作の映画)

3.9

ロマンスと不穏さの同居する導入。そこからのセットアップに見事に惹き込まれた。スリラー部分は強引な展開も目立ったが、冒頭のモノローグがラストを引き締める。SFスリラーだが、DV的な精神的支配と自立の話。

カモン カモン(2021年製作の映画)

3.8

ラジオディレクターのジョニーは多感な9歳の甥のジェシーを預かり、子供の孤独や感情の発露と向き合う。所々挟まるインタビューが印象的。不安を経たジェシーが出した言葉が「先へ進むしかない」。勇気づけられる。

切腹(1962年製作の映画)

4.0

「切腹するので玄関先を貸して頂きたい」という浪人の申し出。徐々に話が繋がるミステリー且つ社会派時代劇。安定の為、抑圧に走る組織と貧困の悲劇が「切腹」で結びつく。「武士の面目」とは。仲代達矢の怒りと貫禄>>続きを読む

ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。(2026年製作の映画)

3.7

インディーズという言葉の無かった時代に、東京で自分たちの音楽を模索する人々の話。次々登場するバンドと当時の写真にワクワクした。「自分の踊りを探せ」という主題に共感しつつ、物語としては駆け足だった印象。

2人のローマ教皇(2019年製作の映画)

4.5

保守VS改革の組織のうねりを教皇選出という壮大さで描くかと思えば、思想の違う二人の対話は個人と世界の「罪と赦し」へ展開する。信仰の意義。緩急ある演出と凄まじい芝居。二人の優しいやり取りに最後まで泣いて>>続きを読む

シンシン/SING SING(2023年製作の映画)

3.8

「俺たちは人間に戻るため集まってる」シンシン刑務所の演劇更生プログラムRTAに参加する収監者達の実話。なかなかの説得力と思えば、殆どのキャストが実在の元収監者たち。終盤に実際のRTAの映像が挟まれるの>>続きを読む

プロジェクト・ヘイル・メアリー(2026年製作の映画)

3.8

人類存亡の危機。記憶喪失の理系主人公。未知との交流。ワクワクする設定の笑いあり涙ありの娯楽作。展開の意外性に驚きつつ主人公の背景と状況の緊迫感をもう少し分かりたかった。ロッキーオマージュ良い。

浮雲(1955年製作の映画)

4.1

戦後の行き場の無さと男女の愛欲。自らの空白を女性で埋める富岡と、彼に惹かれるゆき子。視線の芝居が凄い。想像以上のメロドラマ。どうしようもないのに最後はやるせない。花の命はみじかくて苦しきことのみ多かり>>続きを読む

木挽町のあだ討ち(2026年製作の映画)

3.9

仇討ちの真相に迫る時代劇。舞台の芝居小屋が効いている。創作の喜びと困難、ミステリーとしての構造転換、人情劇が調和した良いプロット。若者的には撮影や編集にもう少し緩急が欲しかった所。でも、ちゃんと時代劇>>続きを読む

マーティ・シュプリーム 世界をつかめ(2025年製作の映画)

4.3

自己中心的で尊大な卓球選手マーティ。泥棒し不倫し嘘つきの最低野郎だが「ここから這い上がりたい」という切実な野心は理解出来てしまう。エネルギッシュで馬鹿馬鹿しくて高揚感。男の矜持とその先。シャラメ、見事>>続きを読む

私がビーバーになる時(2026年製作の映画)

3.9

期待値を上回るエンタメ作品。自然との共存、意識転送、祖母との思い出、市長との対立…ありふれたプロットと思いきや、終盤の構造反転に唸る。流石ピクサー。「大切なものに繋がることで怒りは消える」なるほど…!

ウィキッド 永遠の約束(2025年製作の映画)

4.0

国家の陰謀と迫害が男女の愛憎と絡むファンタジー。アリアナグランデのお陰で明るい作劇。原作「オズの魔法使い」を生かしたギミックに唸る。受け継がれる意志と覚悟。終盤「あなたと出会えて良かった」のフレーズに>>続きを読む

ブルームーン(2025年製作の映画)

4.1

栄光から失墜した中年男性が酒場で喋り続ける。20歳の女の子に恋に落ち、他人の成功に嫉妬する。みっともない男の話なのに、「Blue Moon」が何故良曲か分かってしまう。お洒落でしょうもない。哀しいけど>>続きを読む

まぼろし(2001年製作の映画)

3.8

夫の失踪を受け入れられない未亡人。真相は分からないまま、喪失がある。シャーロットランプリングのアンニュイで美しい表情がとにかく印象的。ラストカットも綺麗で哀しかった。「あなたには重みがないのよ」の説得>>続きを読む

蜘蛛巣城(1957年製作の映画)

3.9

野心に取り憑かれ、主君や友を裏切った男が破滅へ向かう。三船敏郎の迫力あるリアクションと緩急ある演出でずっと観ていられる。矢が飛び交う凄絶なラストシーンは人間の業の果てを感じる。欲望と破滅。

しあわせな選択(2025年製作の映画)

4.2

ライバルを消して仕事を手に入れる、倫理を越えた就職活動サバイバル。時代の変化と人員削減。苛烈な競争の比喩とも言えるスリラーは滑稽で哀しい。「そんなに精一杯生きなくていいのに」家族ドラマも見応えがあった>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

4.0

容疑者に惹かれる真面目な刑事。愛とミステリー。想像以上に品があってロマンティックだった。後半の転調が良い。疑念と愛は両立するが、愛と倫理は両立しない。終わり頃になり、タイトルの意味が分かった。切ない。

π〈パイ〉 デジタルリマスター(1998年製作の映画)

3.7

「世界は全て数字に置き換え理解できる」と信じる数学者が脅迫観念にかられ追い詰められる。まるで過覚醒中の脳内世界。「分かろうとする」限界と「あるがままに感じる」尊さ。難解だが変わらぬアロノフスキーの作家>>続きを読む

ボイリング・ポイント/沸騰(2021年製作の映画)

3.9

トラブル続きのシェフと予約過剰の人気店。ワンショット90分。余裕の無さの連鎖、良いと言い難い労働環境。客の無茶な要求。厨房とフロアの対立。つくづく熱くならず、冷静なことは大切だ。沸点を越えて壊れないた>>続きを読む

卒業(1967年製作の映画)

4.1

主人公がどうしようもない。親の友人、ロビンソン夫人と不倫し、その娘エレインに惹かれ、執着する。でも20代の時の空虚感とか衝動とかこうだった。青春はどうしようもない。終盤の疾走感とラストの沈黙、音楽が良>>続きを読む

イレイザーヘッド(1977年製作の映画)

3.7

奇怪な赤ん坊の育児。モノトーンな映像、工業地帯の無機質な音が耳に響く。「不安」を丸ごと可視化させた世界。責任からの逃避か?当時からリンチの作家性全開。個人的にはもう少し意図を解釈出来る設計が欲しかった>>続きを読む

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア(2017年製作の映画)

4.1

富裕な家族に起こる寓話的スリラー。開幕から不穏だが、後半にかけて人間の嫌な部分を突き付けられる。非を認めない心臓外科医。媚びる家族。選択しない父親。無機質で美しいショットの数々。醜悪で滑稽で生々しい。

トレイン・ドリームズ(2025年製作の映画)

4.1

寡黙な労働者の半生。山と森。愛と喪失。近代化の波。詩的で綺麗なショットの連続で素敵だった。やや観念的な内容だったが、余白的でもある。己の人生も俯瞰的に考えさせられる。寂しくも美しかった。

ボーダーライン(2015年製作の映画)

4.1

国境地帯の現実と「統制された悪」について。優秀なFBI捜査官が参加した麻薬カルテル殲滅任務。中盤まで危険で怪しい任務に主人公と共に困惑したが、後半の構造の変化で一気に惹き込まれた。ベニチオデルトロの静>>続きを読む

ロシュフォールの恋人たち(1966年製作の映画)

4.3

「情熱とエスプリ。恋と歓喜。生きる幸せを抱きしめよう」浮かれっぱなしの2時間ミュージカル。会えそうで会えない運命のすれ違いロマンス。ジャックドゥミ、色彩と音楽の設計が凄い。導入とラストカットが完璧。

シェルブールの雨傘(1963年製作の映画)

4.4

恋愛の美しさと傷みを丸ごと可視化させたような映画。彩り溢れる画面構成。全編ミュージカル調の台詞が退屈させない。音楽も素敵。あまりにも完璧過ぎるファーストカットとラストシーン。思わず、目に涙。

レンタル・ファミリー(2025年製作の映画)

3.8

白人役者が家族代行の仕事に生きがいを見出す。外国人労働者目線での東京砂漠の寂しさと美しさが描かれ、細かさに驚く。ベランダからの裏窓的な展望ショットとブレンダンフレイザーの優しい眼差しが好き。

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.9

閉塞の時代、人生に疲れた孤独な男女が酒場で出会い、惹かれ合う。無表情の奥に秘める感情。二人にしか共有出来ない空気。合ったり合わなかったりする目線。肩の力の抜けた独特なテンポ感や間合いが、心地良かった。

私がやりました(2023年製作の映画)

4.0

「犯人の座」を巡るクライムコメディ。善悪の反転や社会風刺の文脈が、軽快な会話劇に落とし込まれる。主演二人のシスターフッド連帯も、大女優の乱入展開も楽しめた。ラストは「まあ、いいか」と笑える痛快さ。

Summer of 85(2020年製作の映画)

4.1

綺麗な話だった。ある夏の出会いと別れ。どうしようも無い刹那的衝動。「残された方は墓の上で踊るんだ」詩的な誓いと、残された言葉に縋ってしまう切なさ。6週間の記憶と向き合うアレックスの姿が良かった。

アイデア・オブ・ユー ~大人の愛が叶うまで~(2024年製作の映画)

3.7

たまには恋愛映画をと。24歳のスターと40歳のシングルマザーのロマンス。アンハサウェイのビジュアルが圧倒的で衣装とキスシーンに都度照れた。互い知る前半はワクワクしたが後半の障壁と解決の繰り返しはやや単>>続きを読む

ナイロビの蜂(2005年製作の映画)

4.2

「人の罪は善行で償われるか」妻の不審な死をきっかけに外交官が権力の不正に直面する。陰謀との攻防始まる中盤以降が加速的に面白い。弱き者が利用され、選別される現実。妻とアフリカへの無知が重なる苦悶と切なさ>>続きを読む

JSA(2000年製作の映画)

4.3

「ここに中立などない。選択があるのみ」北と南の狭間、共同警備区域で起きた事件に迫る重厚なサスペンス。境界線の向こうに人間を見てしまった故の交錯と悲劇。冒頭から緊張感。明かされていく真実にやるせない。