土曜は貴方にの作品情報・感想・評価

「土曜は貴方に」に投稿された感想・評価

1920年代に活躍した、手品好きの作詞家バート・カルマー(アステア)と
野球狂の作曲家ハリー・ルビー(レッド・スケルトン)のコンビ物語。
それぞれの相手役が、ヴェラ=エレンとアーレン・ダールで
タイトル曲の「Three Little Words」「Thinking of You」
「I Wanna be Loved by You」等、お馴染みの歌と踊りが存分に楽しめる。
ただ、野球のギャグがあまり面白くなく、
リズムを崩してしまっているのが惜しい。
☆☆☆☆★

我が生涯のベスト1

“映画は最高の総合芸術である”

画家や小説家。写真家や音楽家。その他諸々。
人を感動させる可能性の有る人達には、異論も有るでしょうが。それら全ての要素が映画を創造する上には欠かせない。
少なくとも映画ファンとしてはそう思いたい。

そんな映画の中でもミュージカルは最も難しいジャンルに属する。
何しろ主人公を含む登場人物達が、突然歌い踊るのだから。
何故彼らは同じ振りで踊り、何故音楽が鳴り響くのか?

実は元々、ミュージカルはバックステージ物として発展して来た。
舞台の裏側の話だっただけに、出演者達が踊るのは必然的だし。勿論歌うのも当たり前。
何ら不思議は無かった。

それが崩れ始めるのは、タップダンスの様に個人の技術を見せる作品から。『ウエスト・サイド物語』の様に、全員で群舞を踊る作品に人気が集まってからだと思う。

その中でも『土曜は貴方に』は、バックステージ物に属するので。何故歌い何故踊るのか?に対しての違和感は全く与えない。
僅かにフレッド・アステア扮する主人公が、(怪我をしている設定なので)踊れなくなった悔しさを表す場面で、音楽が鳴る(彼の頭の中で鳴っているとゆう設定)だけと言って良い。
それ以外は音楽が鳴る必然も、出演者が踊る理由も違和感が無い。

よほどのミュージカルファンでも、『土曜を貴方に』を好きなミュージカル作品に挙げる人は先ず居ない。
完全に忘れられた作品だし。ストーリー的に、それほどの捻りが在る訳でも無い。
単なるプログラムピクチャーの一品として軽く軽視されているのが実情。
でもよく観ると本当に良く練られている。

オープニングの♬Where Did You Get That Girl♬に始まり。
♬My Sunny Tennessee♬
♬So Long, Oo-Long♬
♬Thinking of You♬
♬Nevertheless♬
と言った佳曲の数々。
これが映画デビューのデビー・レイノルズが(口パクだけれども)
♬I Wanna Be Loved by You♬で笑わせれば。
グロリア・デ・ヘブンが
♬Who's Sorry Now?♬をしっとりと聞かせる。

監督リチャード・ソープの演出は、実にわきまえた職人振りを発揮しており。特にアステアとヴェラ=エレンが再会を果たし、そのまま列車に乗り込むまでの流れる様な演出・編集は素晴らしいの一言。

実際にバート・カルマーはマジックを趣味としていたのを生かした数々のギャグ。
もう1人のパートナー。ハリー・ルビーを演じるレッド・スケルトンの“グース”っぷりも、目障りになりそうな一歩手前で、逆にアクセントに変わっている。

フレッド・アステアとヴェラ=エレンのコンビは、かってアステアの不動のパートナーだったジンジャー・ロジャースと比べても遜色を感じない。
エレガントさでは『踊る結婚式』『晴れて今宵は』でのリタ・ヘイワースとのコンビに軍配が上がるが。ヘイワースと組んだ2作品は、モノクロだっただけに。カラー作品でアステアと2作品以上コンビを組んだパートナーでは、ヴェラ=エレンと組んだ2作品が最も最高のパートナーで。ミュージカルコメディとしても愛すべき作品だったと思っている。
(もう1つの作品は『ベル・オブ・ニューヨーク』で、これはもっと可愛らしい小品だった)

※ ジュデイ・ガーラント・エレノア・パウエル・アン・ミラーと言った最高のミュージカル女優とは残念ながら1度だけの共演だった。
他にシド・チャリシー(本人は自らチャリースと発音していた)とも2度共演しているが、彼女はタップよりもダンスに特筆した女優さんだったので…。

実はこの作品。今まで10回以上は観ているが、まだ字幕版を観た事が無い。
それでも内容自体は全て解る。
しっかりとした演出に役者の素晴らしいパフォーマンスがあれば理解出来てしまうもんだ。
(内容自体が他愛もないってのもあるかもしれないが…)

ところでオープニングに歌い踊られる♬Where Did You Get That Girl♬の場面の、素晴らしいパフォーマンスには眼も眩むばかりだ。
シンプルなアングルに、シンプルな演出。それでいて現在のハリウッド映画が忘れてしまった素晴らしいセット美術と色彩感覚。
これにアステアとエレンの素晴らしいパフォーマンスが加わるのだから。

この映画のサントラ版では、この場面の音楽と映像に30秒間の違いが生じている。サントラ版の音源の方が30秒間長い。
つまり30秒間に及ぶカットシーンが存在していると思える。
1人の映画ファンとして是非とも完全映像が観たい。

またこの場面で、踊り終わった2人が楽屋に帰る時にアステアが一言呟く「LOVE THE JAZZ」の一言に痺れる。

原題は♬Three Little Words♬
勿論、バート・カルマー&ハリー・ルビーのヒット曲で、直訳すれば《三つの(可愛い)小さな言葉》

男がいて、女がいる。

必要な言葉は3っあれば充分だ!

¨ I ” ¨ LOVE ” ¨ YOU ”