勝手にしやがれ!! 英雄計画の作品情報・感想・評価

勝手にしやがれ!! 英雄計画1996年製作の映画)

製作国:

上映時間:81分

ジャンル:

4.0

「勝手にしやがれ!! 英雄計画」に投稿された感想・評価


「フレームイン/アウト」の教科書みたいに見えました。後、ある種の黒沢清集大成。
ユウさんがいなくなってからの不穏はデビルマンであり入江「ビジランテ」すらも感じる。
画面奥から黒沢友香、哀川翔、前田耕陽を一直線に結んだり構図の格好良さは勿論だけども、それ以上に人物からとことん離れたカメラが匿名性というか特別な人物がいないニュアンスを際立てる。
常に緩くても大丈夫だった二人を初めて心配させるように撮られてると思う。
だからこそラストのワイルドバンチ的な黒沢空間には呑まれるしかなかった。いつも通りな会話に、明らかに「彼方側」を感じさせる霊的空間。姿が靄と同化する二人と、洞口女史を「来訪」する風!
異様なモノを観たけど人物の出し入れやアクション、省略で進む純映像作品というか。
まさかのジガヴェルトフ、そしてワイルドバンチ。
やはり黒沢は、カーテン(今回はのれん)と風である。
はたまたアカルイミライも想起させる。
netfilms

netfilmsの感想・評価

4.1
 番傘で作られた日除けの下、理容室の椅子に座った雄次(哀川翔)の元に聞こえて来る耕作(前田耕陽)の威勢の良い声。耕作が部屋の中に水鉄砲を取りに行く時、スキをついた雄次はチャリンコで勢い良く飛び出す。耕作は雄次の乗ったチャリンコを捕まえ切らないまま海岸沿いを走って追跡し、雄次の背中に飛び乗る。「何のために君はそれをなすのか?」という耕作の問い。今日も取り立ての悪影響でヤクザに追いかけられる雄次と耕作は通りがかった正義感の強い男・青柳(寺島進)に助けられ、間一髪で逃れる。「何のためにこの仕事してるの?」という由美子(洞口依子)の言葉に黙る2人。青柳は雨宮(清水宏)というヤクザを追放するための市民運動に参加しており、彼の妹・玲子(黒谷友香)にも頼まれて、雄次はこの追放運動を手伝うことになった。しかし雨宮は町の評判とは対照的に、とても追放すべき悪徳ヤクザとは思えない。雨宮に気に入られてしまった雄次は、実は彼がただの畳屋だと知るが、ヤクザを気取る雨宮に絶対に言わないように口止めされる。追放運動も下火になった頃、青柳が脚を撃たれる事件が起きて運動が再燃。雄次は仕方なく雨宮に町を出るよう説得し、そのままヤクザを追い出した町の英雄となってしまった。

 哀川翔と前田耕陽の凸凹コンビの珍道中を描いたVシネマ『勝手にしやがれ!!』シリーズの記念すべきフィナーレ。雨宮追い出し運動が徐々に沈静化する中、青柳は自作自演で凶弾に倒れたフリをする。こうして雨宮の追い出しは成功し、青柳と雄次の2人は救世主とされ、盲目的な町の人々から歓待を受ける。彼らがカラフルな風船を飛ばす場面に『大いなる幻影』の萌芽が見て取れる。だがこの追い出しを経て、青柳と雄次の姿勢は180度反転し、2人の間にはどうしようもない隔たりが生まれてしまう。その後青柳が政治家となり、雄次は殺人未遂の犯人の濡れ衣を着せられることになる。前作『勝手にしやがれ!!成金計画』のラストの無人ショットのライト・コメディとは思えない不穏な空気と今作は地続きであり、パート1からパート4までに見られたユーモアは微塵もない。青柳は自分の真の目的を達成し、彼の自作自演に気付いた雄次たちをも街から追い出すことに成功する。1年後、そこに広がる世界は明らかにかつての雰囲気とは姿を変えている。まるで『回路』に見られた世界の崩壊のように、『カリスマ』に垣間見えた終末論のように、たった1年で世界は隔たっている。

 諏訪太朗は街の支配者となってしまった政治家の青柳のポスターにスプレーで落書きをし、彼への怒りを表明する。相変わらず雄次は行方不明の中、新潟のガソリンスタンド行きのため、街を出ようと決意した耕作が青柳の妹に最後の別れを言う場面の怒涛の8分間の長回しは、Vシネマ史上に残る名場面であろう。草むらの中に据えられたカメラが、黒沢お得意のシュプレヒコールの隊列を冷静に据える。人物の動線は用意周到に計算され、横移動と縦移動が合体した真にスペクタクルな運動へと帰結する。ラスト・シーンはまるでジョージ・ロイ・ヒルの『明日に向って撃て!』のブッチ・キャシディとサンダンス・キッドのように、周囲を警察に包囲される中、雄次と耕作は屋外へと出て行く。その瞬間、うたた寝する洞口依子は我に返り、入口の暖簾が風にたなびく。黒沢はこのシリーズを6本作ったことで登場人物に情が移ってしまい、雄次と耕作の死を描くことがもはや出来なかったという。Vシネによる黒沢流のプログラム・ピクチュアの終焉は、アメリカン・ニューシネマへの郷愁のような匂いに満ちている。
剛

剛の感想・評価

3.8
勝手にしやがれシリーズついにラストを迎えた訳だが、この作品から黒沢清の作家性がどんどんと出てくるようになったのかもしれない。それほど前作までとは作品全体に漂う空気が違っている気がする。
寺島進は時代的にオウムを見ているような気分になった。己の正義をかざし戦う集団は現在も数多くいるが、この当時の雰囲気はまた少し違っている。
どこか破滅的な匂いがする。
そんな当時の日本の空気が伝わってくる作品。
ほし

ほしの感想・評価

4.0
9.11をまだ知らぬフィクションだから出来たこと。それが酷いとかポテンシャルだとかはさておき、こちら側から仮定を現実に変えてしまうような世界に生きているのだ。

最晩年の出演でカンペを読んでるのがモロバレであり、主演で『ダーティハリー』を撮りたいと黒沢に言わしめたのは他ならぬ藤田敏八であった。
tk33220

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3.7
その後の黒沢映画に通底する物語。ラストの洞口依子のショットに漂う『叫』のような終末感。前田耕陽が町を出ていく時にデモとぶつかる所から始まる長回しには否が応でもノセられる。
maya

mayaの感想・評価

4.0
哀川翔が去った後の超長回しだけで感動してしまうし、このシリーズを見ていると画面の中で人が動き回るのがいかに楽しいかが分かる。終盤、籠城から走り出す2人の向きも良い気がする。暖簾が揺れて洞口依子のクローズアップ、お決まりの「森のくまさん」が流れて、自然と涙が出そうになります。
t

tの感想・評価

4.1
哀川翔と前田耕陽のお馴染みコンビがアホな会話を繰り広げて事件に巻き込まれていくまでは、安定して最高なのだが、哀川翔が失踪してから一気に不穏で終末的なテイストになるのが怖い。
洞口依子の不可解なラストショットに至ってはめちゃくちゃ怖い。いつもの「森のクマさん」が何かヤバいメタファーを込めた曲にさえ聞こえてくる。
何人かの方が指摘している通り次の傑作「蜘蛛の瞳」への導入としても観れる(寺島進が拘束されるし)。
後半始め長大な空き地シーンに象徴されるように、長回しが非常に多いが、どれも構図が的確な上必ず次の運動が連なっていくので、Vシネなのにとても高級な映画を観ているような気分にもなる。
このシリーズは「成金計画」「黄金計画」を観たがどれもエンタメかつ実験してて良い。あと3本観よう
seriFil

seriFilの感想・評価

3.1
その「気分」はとてもいいのにファッションがひどい。時代のせいではけしてない。あえてだとしてもそのあえてに興味を持てない。どうしても。
mingo

mingoの感想・評価

3.8
シネマヴェーラにて鑑賞。
哀川翔と前田耕陽の相棒シリーズ。
「蜘蛛の瞳」「蛇の道」のもとになったであろう作品。

シリーズ通して、「ドレミファ娘」の洞口依子と大杉漣のBARのコンビいとおしい。寺島進と黒谷友香の兄妹コンビもまた突き進むキチガイにいさんと兄思いの優しい妹の対比がうまく活きてた演出がグッド。寺島進は自分の中の「正義」を振りかざす相手の気持ちはなんのそのサイコパス野郎なんだけど、「信念」の強さに揺らぐ哀川翔の心情変化が楽しめるエンタメハードボイルドになっている。

それぞれ生きているひとにはそれぞれの「信念」があるが、それは人によってもちろん違うのだが、何が正しいのか何が悪いのか、時代がズレてきてるのか人が変わってきてるのかわからないが、本作は90年代後半日本社会の変化を描いていて、伊達に社会派の一面も持ち合わせていないなと感じた。

じぶんの譲れないモノはなんだろうかと考えさせられるハードボイルド活劇。