狐と狸の作品情報・感想・評価

「狐と狸」に投稿された感想・評価

自分の仕事とは?
疑問を持ちながら、辞める決断をする者、それでも続ける者。
このテーマは不変のものだろうな。
もちろん詐欺なので堅気より遥かに思い悩むだろうが。

加東大介の仲間との接し方がカッコイイ!
山茶花究は堅気じゃなさ過ぎてウケる。

粘り強さ、逞しさを見習いたい!
chima

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3.6
2019/2/3 @ラピュタ阿佐ヶ谷 
演技者・小林桂樹 役を全うする
たくましく生きる人々のオールスター群像劇なんだけど…仕事自体は詐欺まがい。それに向いていない小林桂樹はやめていく。
最後は団結力の美学のようだけど、せっかく足を洗おうとしていた甥っ子を引き留める結果に。叔父さんはいつだって甥っ子にろくな影響を与えない。
shibamike

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3.5

このレビューはネタバレを含みます

茨城県の田舎にてまがいもんの服を、ボッタクリ価格で売りさばく行商人達のお話。

化繊の服を「これは純毛の服なんですよ」などと言ってはお百姓さんを騙して売りさばく。文字にして書くとバカみたいに簡単に見えるが、この行商人達のべしゃりのルキス(スキル)というのがゴイス(凄い)。

"化繊の服を純毛"と言い張るのは初歩の初歩で、お百姓さん達もそんなのは当然疑ってかかってくる。凄いと思ったのが、お百姓さんは売り物の服から毛糸をおもむろに一本引っこ抜き(良いの?)、マッチで燃やし匂いを確認して純毛と確かめる。
化繊の服なのに何で純毛の匂いがするかと言うと、服の縦糸が化繊、横糸が純毛という化繊と純毛の合の子の服なためであった!流石手の込んだボッタクリ!
自分もユニクロでやってみたい。毛糸一本引き抜いて燃やして、"これ純毛じゃないよね"とか言いたい。

序盤はこの行商人達のあの手この手のべしゃりの商売風景を観ることができて、めちゃくちゃ面白かったし朗らかに笑った。
行商人達はその時の状況に合わせて機転を利かして、トークのテーマや演技の設定を決める。このトークや演技の設定を"タク"(御託)と言っていて、「良いタクを思い付いた!」などと言っているのがカッコ良かった(ちなみに地図のことは"ズチ"と呼ぶらしい)。自分もユニクロで「良いタクを思い付いた!」と言いたい(←これは容易に実現可能だ)。

どんだけ気の利いたタクを思い付けるかどうかが行商人達の腕の見せ所で、本作でどういうタクがあったかザッと書くと、
・会社が潰れて給料の代わりに現物支給で手に入れた品なので安く売りますという設定
・アメリカのオートメーション工場で作った服だから、人件費が大幅に抑えられているから安く売りますという設定
・息子が戦死した母親(飯田蝶子)に対して「息子さんの友人の○○ですよ!ご無沙汰してます!いやぁ懐かしいなぁ!」と言っておもむろに軍歌を歌い出し涙を流して、相手の懐に飛び込む。
・着流しからちんこ丸出しにしてアホの演技をしてお百姓さんを油断させる。

と言った感じで今思い返すと無茶苦茶である。
ボッタクリ価格には行商人達の騙しアイディア料が入っているのであらう。

行商人チームのリーダーである京太(加東大介)が言う
「商売ってのは"こんにちは"と"さようなら"だけが本当で、あとはでっち上げだ。」
には痺れた。
世の中の若い営業職なんかの人がこの映画を見たら、さぞ勇気を貰えるだろうなと思ったけれど、商売人みんながそういう風でも困るので、大声では言ってはいけないであらう。我々おっさんとじいさんの秘密にしておこう。

行商人達の仕事ぶりを観ていてちょっと羨ましく見えたのが、仕事を終えた夜にみんなで顔を合わせて「いやぁ、今日のバイ(商売)は凄かった!」と言ってこんなことあったぜ、としゃべり合うのは絶対楽しいだろなと思った。

今年の正月に観た「女が階段を上る時」以来、加東大介先生はモテない男組合を破門したつもりであったが、そもそも自分は勘違いしていた。加東先生は大モテだったのである。本作では頼もしい感じと可愛いらしい愛嬌を存分に発散していて魅力全開であった。

序盤から有名俳優多数登場で華やかであったが、中盤からは森繁まで登場し、れっきとしたオールスター映画だった。

タイトルの「狐と狸」。
狐と狸ってどちらも騙す動物の象徴だと思うが、行商人もお百姓さんもどっちもどっちということなのだろうか。
映画の中で、土地の実力者である黒坪正兵衛(上田吉二郎)と京太が商売の取引をするシーンがあり、京太の仲間達が「黒坪は喰わせものって評判だからなぁ…でもあっちが狐ならこっちは狸だ。」みたいなことを言う。自分には上田吉二郎も加東大介も狸にしか見えなかった。

ポップで朗らかな映画かと思っていたが、終盤に様子が変わる。不注意で売上金をごっそりスラレたり、スラレた損失を取り返すために計画した大仕事でも森繁に裏切られたり、2度連続して大痛手を喰らう京太達。
自分だったら絶対に立ち直れないような逆境に立たされる京太。仲間達も流石に愛想を尽かして離れていくのであるが、大卒ほやほやの甥っ子三郎だけが気概を見せる。
三郎「おじさん、俺はおじさんと一緒に行くぜ!…本当は東京に帰ろうと考えてたんだけど、ここで生きていけない奴が東京で生きていけるかよ!俺はおじさんの生きていくためのガムシャラさを見習いたいんだ!」
かなり熱い台詞で自分の胸をボーボー燃やした。
三郎もカッコ良かったのであるが、それより何より京太のへこたれ無さに感激した。
京太「何、こんなこたぁ名のある行商人なら2度3度経験してらぁ。くよくよするこたねえ!」
と言って前を向いて次に向かうのである。
小学校しか卒業していない京太であったが、学校では学べない大切なことをたくさん知っていた。

行商人ってよく知らなかったが、最近で言うところの訪問販売員のことであらう。ネットショッピングが猛威を奮う昨今、人間の販売員は何かと大変だろうけれど、本作に登場するような人達なら自分家にも来て欲しい。NHKの人は来なくて良い。

柴三毛 心の一句
「騙された 思ったあの娘は もういない」
(季語:あの娘→あばずれ→濡れる→梅雨)
yuka

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3.6
加東大介、小林桂樹、三井弘治、山茶花究、森繁久彌と、おじさん俳優勢揃い

口八丁手八丁の行商の世界で生きる人たちの話

尺が長い分かなり丁寧にやってた気がする

見て損はないけど見ないと損するということもない
笑福亭仁鶴、上沼恵美子、オール阪神・巨人の三拍子揃った『バラエティー生活笑百科』と同じくらい俺得画面。
詐欺まがいの行商人を描いた作品で、短いエピソードを積み重ねたコメディと思って見ていたら(東宝喜劇に対する勝手なイメージのため)、途中のエピソードはクライマックスへの布石になっていたので、驚いた。しかもラストはジーンとさせるなんてすごいよ。
脇がすごく豪華で、何年か後に見返して今回分からなかった人も分かるようになっているといいなと思う。

「演技者・小林桂樹」@ラピュタ阿佐ヶ谷
映画3.6
オールスター加点0.1
三好栄子のゲス笑い、いつか体得したい
原作の熊王徳平『甲府商人』シリーズ探してみようかな
一

一の感想・評価

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田舎のどん百姓だまくらかして回る行商人一行。貧乏人が貧乏人から金騙し取って結局使い道は女・酒・競輪、あげくにスリにかっぱらわれたり仲間に上がり持ち逃げされたり、そして当然みなさん性道徳に欠けている。今の時代にこんな話をあっけらかんと和やかに語れるだろうか。大卒シティボーイ夏木陽介と田舎の駐在の嫁若山セツ子との会話で集権的官僚システムに軽~く石投げて庶民のやるせない連帯がほのかに浮き立つのが、貧乏人が出し抜き合う話の中でポジティブなことのように思えた。配役がやたらと豪華で、あの人この人がワンシーンだけ出ていたりしているのも楽しい。清川虹子の中絶手術してた医者の多々良純もひどかったな~。
「商売で嘘じゃない言葉は「こんにちは」と「さようなら」だけ」とうそぶく詐欺まがい行商人ポッセの物語。

貧乏百姓の出で食う為に行商人になった加東大介は、貧乏百姓からも躊躇なく金をふんだくるものの、逃亡の最中に知らぬ農家の米倉庫が火事になっているのを見つけると「オレは百姓のせがれ、これは見捨てることが出来ねえ」と我が状況を忘れ助けに行く。
このように詐欺行為同様の行商と人助けが別のモノとして一人の人物の中に両立した上で、観客にも納得がいくキャラになっていたのが素晴らしかった。

劇中に連呼される「欲の皮を張るからダマされる方も悪い」って言葉、最近言わなくなりましたね。良いか悪いかは別にして。

森繁が預かった金を半分持ってドロンして、残りの半分の金に添えてあった手紙を読むシーンには楽しい呆れ笑い。酷い仕打ちな上に女と遊ぶ金欲しさというしょうもない理由なのに、森繁に対して悪印象を持たせないのは演出の巧さか。
半分残すなんていずれにせよ返しようがないのに無駄な誠実さを見せるのも可愛い。とはいえ旧友の信頼を裏切る鬼畜行為。それでも極悪人に思えない。

欲の皮が突っ張った人間たちをありのままに受け入れることによって紡ぐ人間賛歌。ちょっとテンポがもたつくところもあったけど、こんな大らかな時代があったのかと羨ましくなる大好きな作品。
tonkara

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4.5
シネマヴェーラ渋谷にて。一方、これは傑作! 出るわ出るわ東宝オールスターキャスト、『沈丁花』より凄いのでは。宴会~おてもやんのシーンの完璧さには惚れ惚れした。ただ、最後追いかけっこしなくていいのに、とか残念がるのは、作家的映画に慣れてるせいだなと思う。今になって「普通の映画」を観ていろいろ考えるというのは変だが仕方ないし中々楽しい。なお、地獄の行商旅をした経験があるので口八丁手八丁で物を売りつける快感(自分の場合は高額本)や夏木陽介の初売れ乾杯の気持ちはよく分かった。
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