彼女が消えた浜辺の作品情報・感想・評価

「彼女が消えた浜辺」に投稿された感想・評価

観ている私たちは、(彼女が消えた浜辺)という絶え間なく打ち続ける乾いた波に巻き込まれた時、他ならぬ私たち自身の人生でこれまで抱え込んできた(痛み)から逃げる術もなく、全身で受け止める事しか出来ない事実にただ愕然とするのみ、です。
アスガル・ファルハーディー 「彼女が消えた浜辺」

誰しもが一度や二度、味わった事がありながら、願わくば常に回避し続けたい(逃れたい)(隠したい)(時を戻したい)(救われたい)感情が我身の事のように脈打ちます。
音楽が流れない劇中で、ただただ絶え間なく打つ乾いた波音と呼応するように。

そこに用意された舞台設定は果てしなく広がるような世界最大の湖のほとりであるはずなのに、どこに身を置こうと、幾重にも重ねられたような小さな部屋から脱け出せないまま。

互いに心理的隔たりを何も抱かなかった複数の男女が、生き生きと浜辺の朽ち果てた宿に乗り込んだり、夜の連想ゲーム、ビーチバレーなどバカンスを楽しんでいた光景が二日前まで存在していた事自体まるで嘘のように、どんな些細な身振りも言葉も互いに共有しえない集団に変貌していくさまはいかにも恐ろしい限りです。

彼らがそれまで他人事のようにしか考えてなかった予想外の事案に巻き込まれ、それをどう収束させるか、出口の光源が射しこむ余地のない空間で案じながら狼狽していけば、それそれの心の影が互いに縺れ合い、(痛み)というものが長い眠りから目覚めたように観ている私たち自身の個人的体験まで巻き込んで容赦なく増幅していきます。
前半の(歓び)が紛れもなく生きていたように、(悲しみ)や(痛み)もまた生き物なのです。

このカスピ海のほとりで描かれる出来事は映画的有事としては驚くほど単純な海難事故であるにもかかわらず、呆気なさとは異質の、図式に収まる事を拒んだ抽象的な事案にすら思えてくる瞬間です。

いくら皆が頭を抱えて口裏を合わせようと、全てがカスピ海ほとりに流れる自然の時間経過に従属される残酷さ。
彼らも私たちも出来る事はその経過を痛みと共に全身で受け止めるのみ。

次から次へ謎が浮かび上がり、新事実がゴルシフテ・ファラハニらの告白によって露呈されていきますが(真実は何だ?)と謳いあげる映画とは無縁の所に位置しております。

それはファルハーディーの視点が絶えず、物語や主題よりも先を歩んでいるからに他なりません。
本作は海難事故と言う物語や登場人物たちの葛藤をイメージに焼き直す装置などではなく、
長い人生の中で誰しもが常に回避しようと試みるも、逃れようがない痛みを自覚した瞬間を共有しうる数少ない(体験)なのです。

その(体験)はテヘランの地から無制限の方向で世界中の観客や映画人たちを触発したに違いありません。。ジャン・ヴィゴやジョン・カサヴェテスが天国からイランの天才ファルハーディーのこの傑作を発見したなら(オレらの苦労も満更無駄でなかったな)と思っている気さえするのです。
[ファルハディ、結婚に恨みでもあんのかな] 95点↗

「別離」にノックアウトされた私は「ある過去の行方」「セールスマン」を完全放棄してまで探し回った本作品。忘れた頃に発見し鑑賞。

流石ファルハディ、痛いとこ突いてくる。誰でもやってしまう、その場しのぎのつまらない嘘や軽いノリ、登場人物全員がエリを若干不快にさせている。そんなことをいちいち気にしていたら生活できないのだが、エリが失踪することで全員が”やべ、俺のせいかも”と思うのは笑える。と同時に、私の身にも起こり得ると思うと、心底ゾッとする。

お人好し主人公セピデーを演じるゴルシフテ・ファラハニの見事な演技が作品の空気感の重要な部分を占めている。作中の人物はエリを連れてきた彼女をやり玉にあげ、自身の罪悪感を軽減しようと試みる。経験あるなぁ…

エリ役のタラネ・アリドゥスティによれば、「セールスマン」は本作品のエリとアーマドがくっついていたらどうなっただろうか、というパラレル的続編らしい。アーマドが窓越しに割れたガラスをエリに手渡すシーンが「セールスマン」で再現されているというのだ。

いずれにせよ、ファルハディは結婚に恨みがあるらしい。
(2009年、イラン) (2012/10/09 DVDで視聴) カスピ海沿岸に旅行に来たが、海で遊ぶ子どもたちを見てくれるようにと頼まれていたエリが失踪してしまう。子どもを助けようとして溺死したのか? それとも帰ってしまったのか? エリの失踪の謎をスパイスにして物語は進む。積み重ねられる登場人物たちの小さな嘘。最後の保身のための悲しい嘘。失踪については、一応の解答が与えられるが、考えられる余地が残されている。 
hsmt

hsmtの感想・評価

3.5
連休中、浜辺で過ごそうと集った男女のグループ。
ちょっとした嘘から人間の嫌な部分が見えてきます。アスガーファルハデイ監督は本当にこの手の感情を引き出すのが天才的ですね。
突如消えたエリはどこに行ったのか?
これは答えもなく、それぞれ違った捉え方をするでしょう。
感想川柳「人間は 思い通りに 動かない」

レンタル店でパッケージ借りでした。φ(..)

テヘラン近郊の海辺のリゾート地にバカンスに訪れた男女の中に、セピデーが誘ったエリがいた。トラブルに見舞われながらも初日は楽しく過ぎ、2日目に事件が起きる。海で幼い子どもがおぼれ、何とか助かったものの、エリの姿がこつ然と消えてしまっていたのだ…というお話。

イランの名匠アスガー・ファルハディ監督作品なので観ましたが、相変わらず「あ〜」(´Д`)という印象でした。必ず裏になんかありますからね。なのであんまり詳しく書けません。(´・c_・`)

裏のさらに奥まで読んでしまいましたが、それは無かったですね。(;´∀`)ああいう世話好きな人近所にいますよね〜(;´_ゝ`)中途半端に関わるなら放っておいた方がいい。

宗教観というか国民性というか日本だったらここまでならないという感じがしました。(*_*;
エリ役の子はめっちゃ可愛いな〜。アラブ系はキレイだけど苦手な場合が多いので…。(*´-`)

んでまず(^_^)/~~
ファルハディがイランに生まれたのはアンゲロプロスがギリシャに生まれたのと同じくらいの奇跡だな
Layla

Laylaの感想・評価

4.5
「セールスマン」「別離」ですっかりアスガー・ハルファディ作品のファンになってしまい、TSUTAYAと GEOを回ってようやく発見!3作品の中でも1番面白く感じた。誰でもついてしまう「保身のための嘘」や「罪悪感を感じつつも勢いで通した無理」が悲劇を呼ぶという作風やスリリングな会話劇は相変わらず。特に本作は浜辺という舞台設定がすごく生きているように思えた。「彼女が消えた」ことにより、開放感がありのどかなリゾート地のはずだった浜辺が重苦しい監獄のように変わってゆく。天国のように楽しそうだった人々の顔から笑顔が消え、真相が明らかになるにつれて潮が満ちるようにじわじわと追い詰められていく。波の音、無邪気な子供たちが切ない。
たはら

たはらの感想・評価

4.5
凧揚げのシーンとか、演出うますぎてドキドキした…。別離、セールスマンよりも個人的には面白かったな
いや〜〜〜重たい… 最高… うっぷ。
凧揚げシーンのモンタージュに美しさと狂気を感じた。ちょっしたことからどんどん事態がこじれていく密室サスペンス、最高でした。
ちー坊

ちー坊の感想・評価

3.8
自分の為に吐く嘘が1番苦しい。
凧上げのシーンが凄く良かった。
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