霧の音の作品情報・感想・評価

霧の音1956年製作の映画)

製作国:

上映時間:84分

4.0

「霧の音」に投稿された感想・評価

mingo

mingoの感想・評価

4.1
後期清水宏の恋愛人間ドラマの傑作。運命に翻弄される恋人達を3年ごとに描いて、ロマンチックな運命劇を魅せるにくい演出は流石の一言。音楽は控えめ、サイレント期の清水宏を彷彿とさせる静謐さ。すれ違いは哀しい。と同時に美しいんだね。人は一生に何度すれ違うのだろうか。胸が苦しくなるほど陽の当たらないこんな傑作に出会えたことが嬉しくもあり哀しい。結ばれない演出を霧で演出するのももう、言葉にならない。あぁ、傑作。
これは傑作ではないかな。上原謙と木暮実千代がすれ違うメロドラマだけど、四幕構成で2人の関係のわかれ道を切り取る脚本が見事だし、結末もよいと思う。
本筋を邪魔しない程度に横移動するカメラもいいし、自然の風景や孫が祖母を背負うような何気ないシーンが琴線に触れてくる。
浦辺粂子の「パッパ」がかわいいと思っていたら、後から泣かされた。

「女優で見る〈大映〉文芸映画の世界」
@神保町シアター
本日=2017年12月17日、神保町シアターにて鑑賞。

清水宏監督の未ソフト化作品。
大映映画で「製作:永田雅一」とくれば、大映としては力を入れた作品である。

上原謙と小暮実千代が主演であり、なかなか甘美かつ痛烈なすれ違いメロドラマであった。

ある山に植物博士(上原謙)と娘とその夫が、やって来る。この山で月を見るためらしい。

「秘めた思い出は、昭和22年の仲秋の名月まで遡る」というテロップが出る。
その当時の回想シーンに切り替わり、植物学教授(上原謙)と助手(小暮実千代)が山小屋で教授の植物研究に没頭している。また、彼らとともに、もう一組のカップルが居るが、男が離婚できずに山で心中してしまう。
そこに、教授の妻が乗り込んで来て「あんた、私は選挙に立候補するからね!」と言い残して立ち去る。
また、助手(小暮実千代)も妻の姿を見て、別れの手紙を置いて去ってしまう。

そして「三年後」。
教授(上原謙)は、仲秋の名月の日になると、助手(小暮実千代)を思い出して、山に来る。
ここで、小暮実千代は芸者になっているが、旦那のような男(正確には未だ旦那にはなっていない男)と宴会している。
上原謙と小暮実千代は、ここですれ違う。会えそうで会えない。

更に「三年後」。
その後の物語が綴られるが、抒情を漂わせた流れになっていって……。

なかなか見事なドラマであった。

なんといっても素晴らしかったのは、音の使い方。…というか無音の使い方。
全編を通して、音楽は極端に控えめであり、静謐な雰囲気。
山に霧がかかったシーンも印象的。

なかなか見応えのある「日の当たらない名作」であった。
tokio

tokioの感想・評価

3.5
Rec.
❶17.12.16, 神保町シアター/女優で観る<大映>文芸映画の世界
スレ違い続けるメロドラマで、舞台が山小屋の旅館。泣いた。

世間から隔離され時間の流れの無い場所で数年ごとに出会うって設定からして『秋津温泉』を彷彿とさせる。
オープニングの森の中のシーンや、なくなった彼女の墓に鶴を供えるべく夜霧の森を歩くシーンでの移動撮影が見事。
特に後者は『サンライズ』みたいだったよ。
(因みに主人公の教授はドイツのサイレントの俳優みたい)

ちらっと出てくる浪花千栄子の演技が異物のように浮いてた。
しきぶ

しきぶの感想・評価

4.2
傑作。
オープニングの横移動のショットが官能的。
山小屋で恋い焦がれた男女がひたすら、すれ違う映画。
2人とも最後まですれ違っていたことにすら気付かないのだが、山だけがそれを見つめてたと言わんばかりに、随所に背景に山が映る。それがことごとく見事。

上原謙がつる子を見つめるアップ→つる子が握り返す手のアップ→つる子が上原謙を見つめ返すアップ→ふたりが口づけをかわすヒキのショットの流れが美しい。
説明的なクローズアップが一つもなく、実にエモーショナル。

登場人物はみな山小屋の外からやってきた時、お目当ての人に出会えるのだが、つる子だけは出会えない。つる子の視点となる横移動のショットが登場人物の心情と重なり、焦らされる。
2人は小屋の中だけでしか会えないのだが、それだけに婚礼祝いの席を離れ、小屋を出た上原謙とそれを追いかけたつる子の2人を映したショットが印象に残る。

「パパって何のことだい?」「親のことですよ」の会話、笑いが起きていたけど、きちんと効いてくるんだよな。

終盤、囲炉裏で悲しむ上原謙と老人夫婦、その間につる子の子供がいるショット、父がずっと鶴折ってるという子供のセリフと相まって、死の香りがして不気味。ラストの横移動が幽玄的で美しくも戦慄する。霧の音。
メロドラマの傑作。
山小屋の景色と儚いストーリー展開が良かった!
上原謙、木暮実千代、浦辺粂子らの光る演技がとても良かった。
没後50年メモリアル
孤高の天才・清水宏
@シネマヴェーラ