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パシフィック・リムのnetfilmsのレビュー・感想・評価

パシフィック・リム(2013年製作の映画)
3.6
 2013年8月11日午前7時。太平洋グアム沖の深海に異世界と繋がる割れ目が生じ、太平洋の深海から突如現れた謎の巨大怪獣「アックスヘッド」によって、まずサンフランシスコ湾のゴールデン・ゲート・ブリッジが襲撃された。国連も打つ手のないまま、サンフランシスコ、マニラ、メキシコ3つの都市がわずか6日間で壊滅、数万人の尊い命は奪われ、人類は絶滅の危機に晒される。人類に残された道は“絶滅”するか“戦う”かのふたつしかない。そんな中、環太平洋沿岸(パシフィック・リム)諸国は、PPDC(パン・パシフィック・ディフェンス・コープ)を設立、専門家たちの英知を結集して人型巨大兵器“イェーガー”を開発する。だが、人類をあざ笑うかのように、巨大生命体は次々と海底から姿を現し、破壊と殺戮を繰り返す。2020年アラスカ沖、米国アンカレッジを怪獣「ナイフヘッド」が襲撃。イェーガーのパイロットであるローリー・ベケット(チャーリー・ハナム)は、同じくパイロットの兄ヤンシー(ディエゴ・クラテンホフ)とともにイェーガー「ジプシー・デンジャー」に乗ってこれを迎撃する。右脳と左脳を一人ずつが動かすイェーガーの仕組みは、つながりが深いほどより強くなれる。だが怪獣は兄弟をあざ笑うかのように死んだふりをして奇襲を仕掛け、ナイフヘッドの攻撃により、兄ヤンシーは戦死する。失意のどん底にあるローリーを、環太平洋防衛軍 (PPDC) の司令官スタッカー・ペントコスト(イドリス・エルバ)が見舞う。

 太平洋の海底から次々と現れる巨大怪獣の恐怖、地球存亡の危機に立ち向かう環太平洋防衛軍 (PPDC) の活躍を描いた『パシフィック・リム』トリロジー・シリーズ第一弾。アメリカのサンフランシスコを起点にする大惨事や8月11日の並びは明らかに9.11アメリカ同時多発テロを連想させる。時空の裂け目から突如現れた怪獣(Kaiju)たちは徐々に地球を呑み込み、人間たちと知恵比べをしながら地球の環境に順応し、進化・適応を遂げる。対する環太平洋防衛軍はイェーガーの開発に手間取っていた。イェーガーの操縦で一番斬新なのは、1人1体ではなく、右脳と左脳を仲良く2人で分け合うことにある。つまり「ストライカー・エウレカ」のパイロットであるハーク・ハンセン(マックス・マーティーニ)とチャック・ハンセン(ロバート・カジンスキー)父子、「クリムゾン・タイフーン」のパイロットである中国人のタン3兄弟、「チェルノ・アルファ」のパイロットであるサーシャ・カイダノフスキー(ロバート・マイエ)とアレクシス・カイダノフスキー(ヘザー・ドークセン)夫妻など、家族や肉親としてつながりが深いほどより強くなれる構造を持つ。幼い頃からヤンシーと一緒に育ったローリーは兄の死を引きずるが、同じく母親の死を受け入れられない森マコ(菊地凛子)と運命的な出会いを果たす。『ヘルボーイ』シリーズ同様に未熟だった2人は代父に導かれ、戦いの中で成長を遂げる。『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』に続き登場するドイツ人博士ニュートン・ガイズラー(チャーリー・デイ)とハーマン・ゴットリーブ(バーン・ゴーマン)の人物造形はもちろん、まるで『ブレードランナー』のような香港裏社会のフィクサーであるハンニバル・チャウを演じたロン・パールマンの怪演ぶりが何とも心憎い。
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