スリの聖ベニーの作品情報・感想・評価

「スリの聖ベニー」に投稿された感想・評価

秋日和

秋日和の感想・評価

4.0
「装いを変えれば奇跡が起こるかも」

映画の序盤でこんな台詞が囁かれてしまった日は大変だ……劇中の人物が「装いを変える」瞬間を絶対に見逃せなくなってしまうじゃないか。ウルマーの言うことに逆らえないのは悔しいけれど、画面上で繰り広げられている光景を見たらそんな些細なこと別にいいかな、と思ったり。
階段の上り下りや扉の開閉だけで映画を豊かにしてしまう監督が世の中にはいるけれど、この監督の場合は帽子を取る/取らない、という一見どうでも良さげな行為を描くだけで作品を魅力的なものに変える術を持っているから恐ろしい。教会に入るとき、或いは出るとき、人に礼を言うとき等々、帽子をひと度取るだけで訳もわからずワクワクさせられてしまう……それってやっぱり凄いことだ(映画の中盤に用意されている、繰り返される帽子の受け渡しシーンが特に印象的。ユーモアたっぷり!)。
もちろん帽子以外にも、服の着替えやシャワー、或いは男たちが自らの髪を撫でてみせるショットなんかは「装いを変える」ことに一役も二役も買っていると思う。そして、煙草と一緒に恥を捨てろ!なシーンに精神的な装いの変化を見ることだって十分に可能だろう(スリ師がポイッと物を捨てるから良いんだよ……)。
退屈になりがちな男と女の会話シーンの演出……例えば、カップの中にスプーンを入れたままお茶を啜る男からそれをスッと取ってあげる女の何気ない動作だとか……一つとっても素晴らしく、こんなに楽しいウルマーは初めて観たとしみじみ。脚本的に気になる箇所は大いにあるけれど、そんなことどうだっていいと言わんばかりのパワフルさで捩じ伏せる映画に仕上がっていた。突っ込みたい精神は、多分、ポイッと捨てて終わらせるが勝ち。
成田007

成田007の感想・評価

3.8
エドガー・G・ウルマーが1951年に製作した『スリの聖ベニー』。主人公のベニーは3人組でスリや詐欺を働きながら暮らしていた。悪事を警察にばれ、追われる途中、教会に逃げ込む。そこで牧師に変装して一難乗り越える。しかし、次に逃げ込んだ所で本物の牧師に間違われ、また、素性を明かせば捕まることもあり、3人はしかたなく牧師生活が始まる。

今作は約80分と短いが、内容がしっかりしていて、テンポがものすごくいい。タイプが違う3人組の見せるかけ合いはどれも面白く、いいコンビネーション。劇中で見してくれる明るいセリフ、行動の数々は、元気がもらえる。ベニーが讃美歌を歌うシーンは感動しました。

登場人物全員がいい人たち、ラストシーンも素敵で、見終わった後、頑張ろうと思える一本。