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「懲罰大陸★USA」に投稿された感想・評価

backpacker

backpackerの感想・評価

4.0
【備忘】
原題は『Punishment Park』。
あり得たかもしれないアメリカのifを描く、モキュメンタリー映画。

【あらすじ】
1970年代アメリカ。
ベトナムでの対共産主義との戦争に対する反対運動に対し、米政府はマッカラン国内治安維持法に則り、反政府的危険分子と判断した人々を拘束。
一方的な簡易裁判により判決を言い渡された被告人達には、2つの選択が迫られる。
1つは、十数年の懲役刑。
1つは、パニッシュメント・パークで数日間過ごす。
当然の如く後者を選んだ彼らは知らない。
パニッシュメント・パークの正体が、人間狩のフィールドであることを……。


70年代アメリカの反戦運動と、それを弾圧する政府の姿は、近年のポピュリズム旋風、白人至上主義・ネオナチ復興、人種差別問題の再燃、極右対極左、等の〈分断の社会〉情勢が原因となり、再び取り上げられる事が増えている。
68年民主党大会での反戦デモ逮捕者に対する有罪判決事件を『シカゴ7裁判』としてNetflixオリジナル映画化した事からも、近年の再認識の機運の高まりが感じられる。

本作もまた、そんな時流に乗り、再評価を受けている作品の一つである。
と言っても、公開当初は4日間で上映中止に追い込まれ、その後も延々と封印され続けていた本作も、2000年代初頭には映画人を筆頭に再評価を受けていたため、再々評価と言うべきかもしれない。

特筆すべきは、前半の簡易裁判のパートだ。
この前半パートでは、
若者達の口を塞ぎ(比喩では無く、猿轡を噛ませて黙らせている)、主張に耳を貸さない大人たちと、
大人たちを思考停止と口汚く罵り、自分たちの意見が絶対に正しいと譲らない若者たちが登場する。
双方の主張は、共に自分たちが考えうる「正義」の形であるため、決して相容れず、常に平行線で、完全に分断されている。

互いの言葉に耳を傾けず、コミュニケーションを取ることを諦める人々の姿。
これは、現代アメリカ社会でも顕在化している、政治・経済・世代・人種・信仰と言った、イデオロギー対立による分断の形に他ならない。

「人間、話せばわかる」と言うが、「話してわからないから人間ではない」を地で行くような、お粗末な連中の物語であるにもかかわらず、その狂気は完全に現代社会とシンクロしている。

当然ながら、裁判は大人たちの思い通りに進み、若者は刑を執行されることになる。
ここでの大人たちとは、体制の人間であり、国家権力の代弁者であり、政治の具現化である。
その為、体制・権力・政治にとって法律は、常に自分たちが良いように解釈し、思うがままに国を運営する為の手段に他ならないという、残酷な真実を突きつけてくる。

後半のパニッシュメント・パークについては、手持ちカメラによるモキュメンタリー映像が、淡々と描かれる。
若者達の逃避行と、狩人となった警察の、双方の姿を捉えつつ、カメラは第三者として、目の前に起こる惨劇を決して止められない。

結末の決まった出来レースを見ていると、共感や認め合い等の優しい労わりの精神が失われる恐怖と、それが現代社会に生きる我々が置かれた状況に他ならないことの絶望感が押し寄せ、ホトホト気が滅入ってしまう。
Marisa

Marisaの感想・評価

4.1
アクティビスト対警察のサバイバル系モキュメンタリー。

何十年経っても同じ事を訴え続けなければいけないのが悲しい。
Fast forward to 2020, we still have to fight for these rights...
This mockumentary is a big fuck you to the system.
高橋ヨシキさんのディストピア映画の本に出ていたので、ずっと観たかったのですが、DVDがなかなか無くて・・・でもアマプラにあって助かりました。


1971年、私が生まれた翌年の公開映画、つまりおよそ50年前の映画です。


ですが、凄くブラックな映画だと思いますし、ベトナム戦争のさなかの、その時代の空気を切り取っています。


注!とはいえ、ドキュメンタリー調ではありますが、フェイク・ドキュメンタリー作品です。ですから、大変、悪意に満ちた、とも言えますし、こういう未来が来ないとも限らない、という警告でもあったと思います。


そして、再三思うのですが『人は自分が正義だ、と思い込む事で、どこまでも残酷になれる』という事です。


争い事の多くは、正義対正義だと思うんですけれどね・・・



映画の冒頭のナレーションを、文字起こししました。


もうこれだけで、不穏な空気しか感じられません。



原題「punishment park」もうこれだけで何をかいわんや、です。





1950年国内治安法通称『マッカラン法』第2部によると米大統領は議会の承認なしに以下の決定をする権限を持つ

米国内に内乱が生じた際”国内治安の緊急事態”を宣言する事が出来る

大統領はその際危険人物を逮捕し拘禁する権限を持つ

危険人物とは、正当な根拠のもと破壊活動をする恐れがあるとみなされた者を指す

逮捕されたものは審理にかけられる

保釈は認められず、証拠は不要である

審理のあと 逮捕者は 拘置所に拘束される     





この冒頭のナレーション後に、カットバックしながら、被疑者の集団に、略式簡易裁判が行われます。



しかも、ほぼ反論の余地が無く(この辺りの描写が、秀逸!裁判官が相手側に明らかに立っている審判を裁判とは呼ばないと思うんですが)、懲役刑10年以上 か 懲罰公園に3日間の奉仕行動に行くのか?を選択させられます。


全くヒドイ2択なんですけれど、まぁ自らが選んだ、という刻印を押す訳です。この辺が周到なんですよね・・・


懲罰公園に向かった先については、映画をご覧いただくしかないんですけれど、まぁ地獄です。




つまり、このようなディストピアを想起させ、映画を作らせるくらい、ベトナム戦争が、いかにアメリカに暗い影を落とし、どれほど世論を二分したのか?が分かる作品。




正義の名の元の暴力、に興味のある方にオススメ致します。
トシ

トシの感想・評価

3.9
コメディかと思ったらシリアスモキュメンタリーだったでござる。
悪くなかった。懲罰公園はもうちょっとゲーム性とか、見せ場が欲しかったけど、裁判でのみんなの主張は、その当時の若者の声を真空パックしてるみたいで興味深い。
モキュメンタリーとしては、なかなかの1級品だと思った。
ryosuke

ryosukeの感想・評価

3.7
ニクソン政権の時代、ベトナム反戦運動が盛んだった世相を背景に作られたフェイクドキュメンタリー。実際に存在したマッカラン国内治安維持法にも予防拘禁の規定があった(英語版ウィキペディアによれば公開年に予防拘禁に関する規定は廃止されたらしい)ようだが、それが濫用されるとどうなるかという試みは中々面白い。しかし、当時は過激過ぎるとして受け入れられなかったようだ。まあ今より数段センシティブなものだったのだろう。
フェイクドキュメンタリーとしてはかなりリアルに仕上げられているな。被告人たちの姿には本物の怒りが宿っている。しかし、彼らの言葉はまるで暖簾に腕押しで、国側の人間は困惑と軽蔑の表情を浮かべるだけであった。
そんな中で、18歳の州兵の青年がターゲットを撃ち殺した後に、テレビ局員の詰問に対して泣きそうな顔をしながら「事故だった」と弁明する姿にとりわけ真実味とインパクトがあるのだが、彼もこのシステムの中で次第に鍛えられ、鈍化し、単なる職業人としての法執行者になっていくのだろう。
インタビューと裁判の様子が、「懲罰公園」での逃走劇とひたすらクロスカッティングされていくという作りなのだが、基本このシステムはずっと変わらず繰り返されるので若干の単調さはあるかな。ただ、やはり被告人たちが反骨精神を示すインタビューと彼らが死体になる瞬間のモンタージュは、多少これ見よがしでもインパクトがある。
合衆国に反旗を翻した被告人たちが、星条旗を目指して走らなければならないというゲームの設定の皮肉さ。
暴力を扇動したとして訴追された黒人青年は、独立革命によって成立したアメリカは、その後のインディアンからの土地の収奪や奴隷制も含めて、暴力そのものを基礎としているという旨の論陣を張る。何より、懲罰公園の風景を見ていれば、国側が非難する「暴力」とやらと権力の区別は、その内容の違いではなく脆い正統性に支えられており、場合によってはその正邪が逆転することもあり得るということが明白になっている。
シンガーソングライターの女性とPTAレベル100みたいなおばさんの言い争いも印象に残る。懲罰を家庭内でのしつけとのアナロジーで語る男も出てくるが、国家のパターナリスティックな支配が描かれる本作で、主婦なんとか連合のPTAおばさんが出てくるのは必然だろうか。インチキ精神医学を駆使する似非社会学者も出てくるが、これまたパターナリスティックな側面を持つ精神分析が、正常と異常を区別し、逸脱を判定する本作の裁判の場に持ち込まれるのもよく分かる。
憲法学者の弁護人が最終陳述で「これは大統領の言葉ではありません...」と語り始めた瞬間にヒトラーがくるぞと思ったがやっぱりヒトラー。そうだよね。
本作の中で、狭量な愛国心、ショービニズムと弱者を抑圧する体勢を非難されてきた合衆国側だが、ラストシーン、ちっぽけな星条旗を守るためにずらっと兵隊が並び、丸腰の被告人たちを踏みつけている姿において、被告人たちの非難してきたものを見事に体現してしまったのであった。
てるる

てるるの感想・評価

3.5
もう50年も前にこんなモキュメンタリー作品があったんですね。

国を守るという大義名分のもと、国家体制側が好き放題やれたら…本当に恐ろしい。

物語は国家転覆を目論んでいる容疑で行われる裁判の様子と、懲罰公園と呼ばれる荒野で罰を受ける人々が交互に映し出される。
一応どちらも取材をするヨーロッパのジャーナリスト目線のPOV形式。

裁判はホントに滅茶苦茶。
国を批判する作家やミュージシャンはまだしも、無職や平和主義者もガンガン裁かれる。

裁かれる側の口も悪いけど、体制側の老害どもの言ってる内容や言い方がホントに腹立つ。

懲罰公園では、受刑者を炎天下のなかでアメリカ国旗目指して80km以上を行軍させる。
警察側の銃の訓練とかもう普通に殺す気マンマンだし😓

今となってはそこまで目新しさは感じないけど、これ当時はヤバかったんだろうなと思ったら案の定アメリカでは即上映中止になったんだとか。
そこまでハマれず。反戦フェイクドキュメンタリーという前情報から、がっつり政治系のやつかと思いきや、ほぼサバイバルモノじゃねえか!!その時点であまり観る気せず。砂漠ばっかでめちゃ喉渇くしあんまオススメしない。
本当にドキュメンタリーを観ているように錯覚する瞬間もチラホラ。そこに関しては目的を達成していていいと思う。野蛮を撮ろうとする姿勢も好感。しかしそれが面白いかというとそうとも限らない。
基本的に懲罰公園と法廷との二つのシーンを同時進行で見せていくんだけど、その手法が下手なんじゃなかろうか。コースの終了を口実に逃走者を捕まえるとことか、それだけ見せてくれたら愉しそうなのに、テンションの異なる法廷シーンを挟み込むからリズムが途絶えちゃうんですよ。で、その法廷シーン自体も大して面白くない。
meguros

megurosの感想・評価

3.8
アメリカ国内でのベトナム戦争反戦運動の状況を背景としたモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)。

当時の大統領ニクソンは、1950年に成立したマッカラン国内治安維持法を発令、反政府的・危険分子とみなされた人々は一方的に拘束されていた。その情勢に恐怖を覚えたイギリス人が監督。

この映画でも国内治安のための「緊急事態宣言」が出されており、危険人物と見なされた人物(反戦活動家)は即座に逮捕拘束され、証拠不要&憲法で守られた基本的人権も全無視の簡易裁判で即刑務所か懲罰公園(Panishment Park)を選ばされることになる。※刑期が異常に長いので大体が懲罰公園を選ぶことになるのだが...。

懲罰公園では、水も持たされず灼熱の大地を3日間をかけて85キロ先にあるアメリカ国旗を目指すことになり、無事に辿り着けば無罪放免、後発で追いかけてくる警察に捕まると失敗となり、宣告された刑がそのまま適用されることになる。警察からは「我々は暴力行為を許されてない、邪魔もしない」と最初に説明されるも、実態は刑務所の新設が間に合わないという懲罰公園設立の理由もあり入ったら最後。実態は人狩り場であり、新兵の訓練場となっている。

映画は、この懲罰公園での逃走劇と裁判シーンを交互で見せていくが、どちらの会話シーンでも裁判官側及び警察は議論の中から真実を導くつもりなどなく、被告たちを”しつけ”をしなければならない対象としてしか見ていないため会話は最初から不可能。高圧的に振りかざされる正義というものはかくも恐ろしいものなのかと思うと同時に、実際に見覚えもあるからゾッとする。

さらに、劇中「どんなに納得できなくてもこのゲームを考えたやつのルールに従うしか生き残る道はない。それは、制度に疑問を感じながらこの国で生きていくことと同義である」...とか語られてしまって苦しくなる。
ひたすら人間が人間を追い詰めていく。言葉があるからって人間は話せば分かる訳じゃないし可能性世界の提示として「人間は分かり合える」が通用しない世界の不条理。ドキュメントタッチのディストピアものとしてホラー映画とは別ルートの恐怖映画。