呼吸 友情と破壊の作品情報・感想・評価

「呼吸 友情と破壊」に投稿された感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

メラニー・ロランの監督作品で、対照的な(それでいて実は近しい)二人の女学生の友情とその破壊を描いた作品である。

主人公のシャルリ(ジョゼフィーヌ・ジャピ)は喘息を持った、どちらかといえば内気で地味な少女である。
そしてもう一人の主人公であるサラ(ルー・ド・ラージュ)は、対照的に派手で自信に満ちた少女であり、最序盤にシャルリのクラスに転校してくる。

このような二人であるが、物語序盤で急速に接近する。しかしこの友情は長くは続かない。やがて亀裂が入り、本劇の最後には破滅的な結果がもたらされる。
ここからは友情の変遷を精神病を軸にして読解してみたい。

内気な少女シャルリには大きく二点、心に傷が存在している。一つは不仲な両親の存在であり、もう一つは過去にセックスで失敗して今も処女であること。特に後者はシャルリにとってのトラウマとして友情を切り裂くトリガーとして作用する。
一方のサラは、表面上自信に満ちたポーズをとっているが、シャルリ以上に家庭内の問題を抱えており、これがサラの心に消えない痕跡として作用している。
ここから対照的に見えた二人が、実のところ共通項を持っていたことがわかる。次に、二人の対照的な姿がいかに表出したのかに話を移そう。
まずシャルリであるが、前述したトラウマをきっかけに内向的なパラノイアを発症し、サラに対して無意識的な同性愛的感情を抱き、彼女に同一化しようとする。この意味でシャルリーは対象愛の段階にある。
対してサラの性愛は、自己の外部を対象とせずナルシシズムの段階にとどまっているといえる。サラの典型的な症状としてあらわれる、傲慢で暴力的な態度、そして自己をよく見せるための虚言などからも明らかである。

この二人の友情は、サラがシャルリーに酔ってキスをする場面を頂点に、すれ違いが大きくなっていく。前述のトラウマを互いに知ってしまうことによって、二人の間の溝は決定的なものになる。
その後は、サラによるシャルリーへのヘビーないじめのシーンが続くが、シャルリーはそれでもサラに自分の元へと戻ってほしいと言い、彼女への強い思いがうかがえる。

しかしこの強い思いは、ラストシーンにおいてその強さはそのままに反転し破滅を迎え、残るのはシャルリーの浅い呼吸のみとなる。
tetsu

tetsuの感想・評価

5.0
出町座さんでの一日限定上映にて観賞。

不幸な家庭環境で育った喘息持ちの少女・シャルリ。新たにやってきた転校生・サラとの交流を通して、閉塞的な環境から脱却することが出来た彼女はサラと幸せな学校生活を送るが...。

とんでもない大傑作でした。
正直、今年観た映画でベストかもしれない...。

この日は夏休み初日ということもあり、同時上映含め1日に6本はしごするというトンデモスケジュールを組んでしまったのですが、この1本で全てが吹っ飛ぶレベルの凄まじさ...。
めちゃくちゃ惹き付けられ、いつのまにか終わってしまったというのも事実ですが、張り詰める緊張感という意味では、体感時間が3時間ぐらいに感じました。苦

反抗することで「自立しよう」とする少女たちの姿は自分にとっても共感が強いもので、無批判に「正しい」と信じてきた価値観が揺らぎ始めてきた今の自分だからこそ、胸に刺さる部分があったのかもしれません...。

いや、しかし...だからこそのラスト。
絶望と希望が交互に描かれる本作ゆえに、一体どっちに転ぶんだと思って画面を見つめていると確実に「うぁぁぁあああ」ってなります。
(ネタバレしないように頑張って抑えた。笑)
色んな感情が入り乱れ、息が止まりそうになった後、エンドロールの余韻がとてつもなかったです。

というわけで、
主人公と転校生の物語を、それぞれの背景を映し出すことで見事に描ききった本作。
ラストに向けて加速する少女たちの物語に目を離せないとてつもない大傑作でした!

参考
Fun.: We Are Young ft. Janelle Monáe [OFFICIAL VIDEO]
https://youtu.be/Sv6dMFF_yts
(まさか、この曲があんなに恐ろしい使われ方をするなんて...。)
先日メラニー・ロランが監督を務めた『ガルヴェストン』が良かったので、彼女の過去作である本作も鑑賞。
きらきらした青春映画かと思いきや、その輝きの中に潜む危うくて脆い何かが描かれています。それは友情という名の嫉妬か、または愛情という名の憎悪なのか?
両親の家庭不和はあるものの、平凡ながら楽しい高校生活を過ごしていたシャルリ。美人で明るい転校生サラはシャルリに近づき、ふたりは側から見ても親友と呼べるほどの仲になっていきます。
ただ、何でも話せる関係を築くのには、あまりに早く心を許し過ぎたのではと思うしかなく。シャルリにとってサラは自分にはない魅力を持った女の子だったというのは分かるんだけど…。
近過ぎると良いところもだけど、悪いところも見えてきてしまうもの。そして、自分にとっては他愛もない会話のはずが、相手を傷つけてしまうこともある。
授業中に、ある植物について語られるシーンがあるのですが、その植物の持つ特性が彼女たちの未来を暗示しているようで、その時点で不穏な空気を感じました。
家族との関わりもふたりの少女にとっては大きかったのではないかな。お互いに踏み込んではいけなかったこともあるし。
突き放すサラ、為すがままのシャルリ。シャルリには心配してくれる昔からの友達がいるにもかかわらず、衝撃の結末へと向かってしまう…
ラスト近くの長回しのシーンはふたりの少女から目が離せくなります。美しい映像と反比例するように破壊に向かうストーリー。言葉にできない息苦しさをもたらすその対比がまた素晴らしく、とても良かった。

メラニー・ロランの監督としての資質は以前からあったんですね。少女たちの繊細な心の動きが手に取るように伝わってきました。
シャルリを演じたジョセフィーヌ・ジャピとサラを演じたルー・ドゥ・ラルージュの表情や仕草は真に迫っていて良かったとしか言えないです。
ルー・ドゥ・ラルージュはお初ではないと思ったら『夜明けの祈り』のマチルドを演じてたんですね。これからの彼女たち、そして監督としてのメラニー・ロランの活躍が楽しみです。
kei

keiの感想・評価

5.0
スクリーンをお供に、趣味の合う知人全員にみせてまわりたい。We Are Youngが使われたシーン、最高に痺れた。大好き。クレジットへの入り方とそこでの曲(おそらくタイトルはRespire)もめちゃくちゃ刺さった。DVD買いたい。。
Cem

Cemの感想・評価

3.8
サラっていう転校生と仲良くなった主人公
今までに出会ったことのないタイプの女の子で、刺激的で魅力的で依存していきます
見た感じサラは何かしらの人格障害だと思う
気が付くとサラは主人公を支配していき破壊に向かっていきます

サラを尾行して、家に入ってからの横へカメラがゆっくり移動するシーンは1番印象に残る良いシーン★ここは大画面で見たい!

主人公は両親が不仲で喘息持ち、ハァーハァーゼーゼーはこちらも苦しくなる!とくにラストはヤバかった、苦しいです

サラ役のルー・ドゥ・ラージュが超美人★
殺気立った表情がほんと怖い!
私、殺される!!!っていう恐怖を味わえましたw
最初の方、主人公の家で変な笑い方してたのが1番怖かった
普通にキチ●イな笑い方で私ならこの時点で距離置くw
noroyu

noroyuの感想・評価

3.7
ラストのシークエンスに至るまで、ああこういうのね、思春期の女の子二人のゴタゴタを地味に描く感じね、フランス映画によくある、みたいな、どっちかというと退屈(一回観るのやめて、4ヶ月後にラストの30分を観たw)してたんだが、最後でなるほどなーと。

作り手の「仕掛け」の観点から見ると、こういう地味なドラマ描きたいなら、それなりの衝撃を持ってくるべきだよなと。この映画みたいに。多くの人は地味なドラマを描きたがるが、そこで終わってしまう。

これなら自主映画でもできる。良い刺激になった。


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Hero

Heroの感想・評価

2.0
軽い、とにかく軽い、どれぐらいかというと中村文則の小説に出てくる登場人物が孤児や被ネグレクトであるが故に当然としてニヒルな設定ぐらい軽い。“吸う人”と“吐く人”吸わなければ吐けない吐かなければ吸えない表裏一体のようで相容れない主要な2人を暗喩したメッタメタなタイトルはいいが、詰まるとこ幸せな人が無理して創った作為的虚無でしかなく、黒板を爪で引っ掻いたような不協和音とグレーディングで暗めのトーンに統一した色調だけではハネケやトリアーザイドルイズムが生み出せないのは当たり前。それでも“メラニーロラン”の旗の下集結したプロフェッショナル(ケイスケホンダ)の技を観るためだけの映画として価値はあり、とりわけ撮影はかなりのレベル、主人公の友人のアパートにてドリーを使った横移動のワンカット長回しはバッチバチ決まってたし、時折挿入されるイメージショットの強度には感心させられた。ただ観ても観なくても今後の人生に支障はない。

《ゴーモン映画〜映画誕生と共に歩んできた歴史〜》
紫色部

紫色部の感想・評価

3.5
2018.6.15 アンスティチュ・フランセ東京

『RAW』より全然怖いし面白い。海に足を入れたシャルリの上を飛んで行く飛行機のショットや、サラのアパート部屋を横移動で追っていく長回しも巧いしエモい。吸入器や煙草などにより視覚化される「吸って吐く」ことの変奏や、ワンカットでの機微を捉えんとかのするようなクローズアップやフォローショットが多いのもいい感じ。
Norika

Norikaの感想・評価

3.8
呼吸が、できない。

この胸の苦しさ、
息を吸えない、
吐けない、
全てが、破壊されていく。

この痛みが恐ろしいほどわかるからこそ、

観ていてこちらもどんどん息ができなくなってくる。

わたしはシャルリの心情、行動、ひとつひとつが痛いほどわかるから

サラを悪者として捉えてしまうけれど、

サラもシャルリを傷つけることでしか、呼吸ができなかった。

呼吸 -友情と破壊- というタイトルはそのものだった。

想像と全く違った、なんと恐ろしい映画なんだ。

わたしの大好きな fun の “ we are young” をあのシーンで使って欲しくなかった。


この映画は “サイコ” 映画ではない。

だからこそ本当に恐ろしい。

映画としては素晴らしいけれど、もう二度と観たくない。



-感想を読んで-

最後のシーンのところについて、最初の哲学のシーンを言及していた方がいて、なるほど。と思った。When you are passionate, are you more free or less free ?

また、サラのタバコを吐き出す、
シャルリが吸おうとする、

にも納得。
友情というより愛情に近い、嫉妬、束縛。人を支配し、蝕んでいく狂気。女性監督ならではの毒々しさ。メラニー・ロランはやはり只者じゃない。
暗闇の中で伸びやかに踊るサラの体の動きは、今まで観たダンスシーンの中でもかなり美しかった。
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