藤十郎の恋の作品情報・感想・評価

「藤十郎の恋」に投稿された感想・評価

菊池寛原作。昭和13年の山本嘉次郎版に続く2度目の映像化(両作とも主演は長谷川一夫)。昭和30年。森一生監督作品。元禄時代の人気役者・坂田藤十郎が、近松門左衛門による不義密通モノ(≒世話物)を演じるにあたり、苦悩の挙げ句にスランプから脱し新境地を開くという物語。

芸の肥やしになるのなら手段を選ばず、他人の心を弄ぶことも辞さないが、肥やしにされた犠牲者の命運を引き受け、命をかけて芸に挑むという、典型的な芸道モノ。悲劇的結末を迎える犠牲者・京マチ子の名演もあって、梨園の残酷さが滲み出る。ただ、(観たのがずいぶん前なので記憶があやふやだが)芸道の過酷さは山本版(犠牲者は入江たか子)の方に軍配が上がるかも。

ただ、劇中の以下の台詞に関しては、全てに当てはまるとは思わないが、肝に銘じようと思った。

近松門左衛門「身近な、世間にあることをそのまま芝居にしたいな。こしらえ事では所詮人の心は掴めん。」
坂田藤十郎「そうや、絵空事ではもう済まんようになった。真実の心や姿を舞台に乗せん事には納得はしてもらえん。」