定職/就職の作品情報・感想・評価(ネタバレなし)

定職/就職1961年製作の映画)

Il posto

製作国:

上映時間:93分

4.2

「定職/就職」に投稿された感想・評価

傑作。人生ベスト。もはや恐怖映画…やるせなさすぎて泣く。就職後でありつつ"定位置"を得る前…という最後のモラトリアム=執行猶予。中盤に描かれる先輩社員たちの人生が示す、主人公の未来(の可能性)…。机を得る契機が"死"というのも暗示的。就職した…席についた…そして瞬く間に人生は終わる。

就職試験中に出会い、束の間の"休憩時間"ロマンスで心の底からゾッコンになった想い人から、就職後ひさびさに廊下で再開した折に「大晦日のパーティで会いましょ」のお誘い…しかし彼女は来なかった…の後の、なんだかんだ"身の丈をまきまえて"自分を騙し騙し楽しもうとし、結果それなりに楽しむ虚無…。

本作の息詰まる感じ…ジャームッシュ『デッドマン』も思い出したり。あれは序盤だけだが…でも個人的にはその不条理就職パートが特出しているという認識の映画。コートへの憧れ…という共通項では、ユスターシュ『サンタクロースの眼は青い』も。

2020/07/03
Ricola

Ricolaの感想・評価

4.5
久しぶりにツボにハマった作品に出会えた。

もちろん計算はされていると思うが、人物や背景といった画面の中のものが、あたかも自然でそのまま存在しているかのように感じられる、心地よい作品だった。


タイトルの通り、少年が就職するという物語、ただそれだけなのかもしれないが、ポストネオレアリズモ的なものを随所に感じられる。
素人俳優の起用はもちろんだが、例えばロケーション撮影。
戦後の経済復興が進んでいる街の中心部と、まだ戦後の荒れた土地が見られる郊外の差は歴然である。
もちろん自然光を活かした撮影がなされており、眩しすぎる太陽光もそのまま映る。

就職試験の様子が面白い。
試験会場に入って他の人の様子をチラチラ確認する主人公の少年のドミニコ。

そして、試験の間の昼休みのちょっとした冒険がまた楽しい。
カフェの雑多とした都会の下町らしさの中で、何とか昼食をとろうとする、おどおどしたドミニコがかわいい。

そして彼は、試験会場で見かけたアントニエッタという少女と、コーヒーを一緒に飲んだり、街を闊歩して話をする。
二人とも初々しくて街に慣れていない感じが、言動から伝わってくる。
そこでほのかな恋心も芽生える。
コーヒーに砂糖をティースプーンで入れるとき、アントニエッタがドミニコの分までかき混ぜてくれるときの、ドミニコのどぎまぎした表情と、彼女のちょっと緊張した感じがたまらなく愛おしい。

また二人で車が行き交う通りを渡るときのシーンも胸キュンである。
先にドミニコがスイスイ車を避けて通ったけれど、彼女が来れてないと気づくと、わざわざ戻って彼女の手を引いてそのまま会社の試験会場へ戻るのだ…。
青春という言葉がぴったりな、二人のもどかしい距離感にうずうずする。

そして、会社のビルの階段の映し方も印象的である。
4階の試験会場へ向かうために階段を登ったりかけ降りたりするドミニコを上から、また下から映す。
幾何学的な雰囲気を纏う階段の美しさを余すことなく見せてくれる。
少年が全力で登る様子を、ちゃんと時間をとって見せるのも、彼の若さと真っ直ぐさを表しているようだ。

また、構図の美しさと的確さも魅力である。
特にドミニコが呼び出されたときの場面が素晴らしい。
大きな机の近くにちょこんと座っている彼と、大人の大きさが、間にある机を仲介することによって、彼らのパワーバランスを示しつつ、人物と小物の配置のバランスが良く、見ていて美しいと感じられるのだ。

この映画は、恋愛と就職という、2つの達成したい目標のために奮闘し、それらを成功させることに重きを置いた、いわゆるロマコメタイプの作品ではない。
物事が必ずしも因果関係によって起こるわけでないのがミソである。
なぜならそれこそが現実そのものであるからだ。

少年が歩くこと、家族に起こされること、少女に淡い恋心を抱くこと、試験を受けること、ダンスを踊ること…。
それらは全て彼の人生の大切な出来事なのだ。これらに優劣などない。

そして、彼のこれから続いていくであろう人生も、そういった出来事の連なりで構成されるはずである。

最後の彼の目元のクロースアップと鳴り響く音に、それまでとは少なからず違った日常が訪れることを予感させる。

生き生きとみずみずしい人物たち、芸術性を感じる構図や、当時の経済状況までがわかる背景、現実と優しさとユーモアのいい具合の混在など、いろいろな要素がありつつもミニマムな見かけで成立している、素晴らしい作品だった。
sonozy

sonozyの感想・評価

4.0
イタリアのエルマンノ・オルミ監督 長編2作目。

イタリア郊外に暮らす貧困家庭の長男ドメニコが、ミラノの大企業の採用試験に臨み、無事採用されるが...

採用試験に来ていた美しいアントニエッタ(あだ名はマガリ)と昼食休憩を過ごして以来、彼女に夢中のドメニコ。
二人は無事採用されるが、ドメニコは仮配属的に別ビルのメッセンジャー(郵送物の配布)、アントニエッタは本部のタイピストと、格差が...

採用試験の内容(手を水平に出してスクワットさせられたり、8〜14歳におねしょしたか?と聞かれたり。。)には笑えましたが、おどおどキャラのドメニコの日々が何とも哀しいんです。

大晦日のパーティー会場でアントニエッタを待っても来ないし(この会場での様々な夫婦/カップルの人物描写も秀逸)、本採用された部署は....だし。

こんな会社、辞めてやる!とは簡単に言えない、彼の事情・心情。
カーボンコピーの機械音が鳴る中、彼の未来・運命への諦め?の表情が沁みるラストも良かった。

ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞: 最優秀監督賞
ヴェネツィア国際映画祭: OCIC Award, Pasinetti Award他
英国映画協会: サザーランド杯
主人公の眼球運動が気持ち良すぎる。目線のぎこちなさに息が詰まる。
Qbrick

Qbrickの感想・評価

5.0
素晴らしい
映っている全ての要素が大好きです
俳優とカメラの距離感抜群
特にロングショットの感覚
配属先を言い渡される部屋でのパンフォーカス、主人公のサイズと手前の男の対比。
その次のシーンで社内の女性たちがヒソヒソ話して部屋に入っていく導線、流れるように主人公の未来が決定されて行く様

残酷すぎるラスト、、もう最高です。


ありがとう、クライテリオンチャンネル!
やはり自分は自然な風景を切り取ったような映画が好みなんだなと改めて思い知った、エルマンノ・オルミ初期の傑作。

一番気に入ったのはヌーヴェルヴァーグの影響が特に如実に感じられる男女が都会を練り歩く一連のシーンだったけど、切り取られた風景がイタリアの当時の日常そのものってのがよくわかるから、その中を青年らがふらついているだけでも十分見応えがあった。(その自由さが後の不自由さを引き立たせているのもまた良い)

労働者としての採用試験や職場の撮り方もドキュメンタリー的で実に自然だから、本当に当時こんな労働環境があったように思えて興味深かった。

次作でも似たシーンが見られるラストのパーティの映像とその対比となる後日の職場の風景も、不自由な環境における世知辛さみたいなものが感じられて味わいのある幕切れとなっていて堪らない。

でもこういう描写に特化したような映画が好みっていうのは、自分が印象派絵画に心惹かれるのも関係しているのかもしれないなとふと思った次第。

駆け出した男女!!!

この監督の話をすると、語彙を失います。
人生生きてるだけ地獄。所詮恋愛も糞人生の万能薬じゃない。就職なんかどうでもよく、意中の女性と視線を交わそうとする主人公。会社が始まると疎遠になり、大晦日に見ず知らずの不細工なおばさんとダンスしなきゃいけない人生。
オールナイト上映。
オルミ初鑑賞。多くを語りすぎないのにしっかり伝わってくる骨太な作品。最後は、残酷というかこれから就活しなければいけない自分にとっては切ないエンディングだった。セリフよりも視線で演技する感じが素晴らしい。
ヒロ

ヒロの感想・評価

4.3
老若男女ありとあらゆる人間が交差する会社という組織にカメラを向け、彼らの刹那を断片的にコラージュすることによって人間の一生を型取ることに成功していた。
現在進行形の時間軸に過去を挿し込むのが非常に上手い印象を受けた。長編2作目でこの完成度(O_O)

スプーンはコーヒーをかき混ぜるためでもなく、コカインを炙るためでもなく、女の子と距離を縮めるために使うことを学んだ。レベルが1上がった。

《エルマンノ・オルミ・ナイト》

2017-
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