山中静夫氏の尊厳死の作品情報・感想・評価

山中静夫氏の尊厳死2019年製作の映画)

上映日:2020年02月14日

製作国:

上映時間:107分

3.6

あらすじ

「山中静夫氏の尊厳死」に投稿された感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

ちょうど最近、尊厳死や安楽死について考えとったところだった。

医療が発達して、生かせようと思えば生かしておけるようになった病もあるけれど、どんな状況下でも生き続けることが正解なのか、と考えていた。

静夫さんと奥さんのあいだの「楽になる」の認識は異なっていた。
だからこそ、意識がしっかりしているうちに、自分の最期について決められるようになることと、それを家族に伝え、受け入れ実行されることがスタンダードになって欲しいと改めて思った。

もちろん、これは病と闘う本人の為でもあり、それを支えなくてはいけない家族の為でもある。

担当医が鬱になっていく姿も、こういった病気と向き合う医者の苦労を初めてしっかりと認識出来て良かったと思う。

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患者である中村さんの無邪気さと医者である今井の常にどこか疲れている表情が、非常に対照的で印象に残りました。
常に人の死に立ち会ってきた今井は、患者の死について深く考えないようにしていました。感情移入してしまうと自分の精神が壊れてしまうから。しかし、死と積極的に向き合う中村さんに出会ってしまい自分も向き合わないわけにはいかなくなり、最終的に鬱病になってしまいます。
今まで、患者を看取る医者の感情を考えたことがなかったからこの描写にハッとされられました。「尊厳死」という度々目にするテーマを患者やその家族からの視点だけでなく、医者からの視点、心情も繊細に描かれていたのが、私にとっては新鮮でした。
山中さんと今井先生はよかった。今井先生の奥さんは、今どきこれはないな、と思った。
insomnia

insomniaの感想・評価

3.5
死と向き合う事を綺麗事ではなく、現実として、最後の我儘として描く。
山中静夫が作中ずっと繰り返す、楽にして欲しい、という言葉の意味の感じ方が見進めると変わっていく。
中村さんの演技が素晴らしい。
これがリアルかと言われると、映画ならではの世界だなとは思うけどここまで患者に寄り添ってくれる環境があれば幸せな最期だな、と。

今井医師の妻や息子、他にも諸々と、キャラ設定が現実ではあり得ないあの感じ。
そして今井医師のセリフの間、感情表現にずっと違和感があった、変に軽くする返事。あれは医師としての態度やリアクションではない。
邦画の限界を感じずにはいられない、中村さんや高畑さんが良かったので残念

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名演小劇場の最終日に駆け込み
非常事態宣言の前から公開されていた映画だけど、解除後に見た今とでは全く感想が違うと思う。人生の終焉をただただ映す映画なんだけれど、ああやって自分の人生を振り返りながら死んで行くってどんな気持ちなんだろうって…私はまだ病気死ぬなんて考えたことない歳で、いつか直面するときがきたらどうしようかとおもった。また今井の「人は生きてきたように死んで行く」というセリフがどうにも頭に残った。いい意味で。ひどい死に方ってどういうものか分からないけど、自分の人生の終焉のときにようやく振り替えられるものなのだろうか
冴子

冴子の感想・評価

3.5
原作者の南木佳士さんの若い頃からのファンだったのだが、最近余り読んでなくて、これも原作は未読。
南木さん自身の自伝的色合いが強くて、人の死を見すぎて鬱になってしまった南木さんの心が痛々しかった。
山中さんはあんなに余命が少なくなっても、頑張れたのは不思議。
奥さん役の高畑淳子さんが良かった。
田舎を捨てるも同然の生き方をするのは、そんなに辛いことなのだろうか?
お墓出来上がってよかったね。
猫

猫の感想・評価

3.0
予想と違って
尊厳死を迎えるためのノウハウ映画ではなく、人と関わることによって人が変わっていく事が描かれた映画でした。

申し訳ないけど患者の梅雀さんより
医者の津田さんの方が、ずっと患者っぽく見えました…
自分にとっては梅雀さん演じる患者さんが
ちょっと我が儘に思えました。
あそこは確かに病院で、ケアハウスではないのだから。
尊厳死と言いながら
多分、現在の病院の医者の実態をも描きたかったからの設定なんだろうけれど。

“婿養子でずっとガマンしてたから、最期位は我が儘言いたい”の台詞に、
ちょっと怒りを覚えました。
女は嫌でも嫁ぎ先の墓に入れられてたんだよ。
そんなにガマンばかりしていた人生(本人曰く)で
最期位は…なんて台詞は
奥さんに失礼じゃないか、ガマンしないよう
夫婦で話し合うとか出来たんじゃないの?と。
怒りまくりました。
最期に子ども達が駆けつけてこないのも不自然だった。
映画は
ある程度観客が納得できる設定にすべきだと思う。
医者の家族(夫婦の会話)も違和感あり。
今時でも、あんな他人行儀な話し方する
奥さんいるのかしらん?
子どもは父と対等に話してるのに。

ただラスト(奥さんの誘い)は
良かったです。
前が見えにくくなった時
悩んでる時
お墓参りはお勧めだと思います。
あ、映画の感想から離れた!😵💧

監督の回りに
嫁の立場の人から
アドバイスがあれば良かったのに……と思える映画でした、残念!
TS

TSの感想・評価

2.9
【故郷で最期を】68点
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監督:村橋明朗
製作国:日本
ジャンル:ドラマ
収録時間:107分
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2020年劇場鑑賞19本目。
末期癌の主人公山中静夫が、故郷に戻り、そこから近い病院で最期を迎えるという余命系映画。僕は余命系映画にはめっぽう弱いのですが、今作は最後まで泣けず。良い題材なのに、終わってからうーんと思っていました。多分、撮り方が淡々としていたから感動しなかったのでしょうか。。

ただ、やはり考えさせられる点は少なくなかったです。今作の面白いのは、末期癌で最期を迎える主人公の気持ちについてだけでなく、看取り続けた医師の精神面にも触れている点です。山中静夫の入院を快く認めた医師の今井は、何でもかんでも自分でやってしまおうとするため体力的にもきつくなってきますし、なによりも様々な患者の最期を看取ってきたため、うつ病になりがちになってしまいます。これは今井としても葛藤でしょう。人を助けるために医師になったはずなのに、いつしか看取るのが主流となってきてしまっている。また、この山中という人物も非常に誠実な人物であり、彼を死なせたくないのにそれを受け入れなければならないという、人間の無力さも物語られています。
今作の最大のテーマはタイトルにもなってるので言わずもがなですが、尊厳死についてです。消極的安楽死とも言われますが、今作を見て果たして消極的と言えるのか。寿命を伸ばそうとしない、に限定すれば消極的でありますが、山中は強くこれを望んで最期まで今井に頼んでいました。彼の尊厳を守ったということで、もちろん尊厳死と言えますが、消極的安楽死という言い方はやや語弊があるような気もするので、やめてもいいのではないかとも思ったり。

映画的にはかなり淡々としており、もう少し感動要素が欲しかったところ。あまり著名でない役者が揃っていたのはリアリティがあり良かったのですが、だからといって演技が素晴らしいかどうかはまた別問題となってくるでしょう。うまく説明できませんが、どことなく惜しい作品でした。
Kiki

Kikiの感想・評価

3.8
「尊厳死」とは…

「楽に死にたいんです」
「やっておきたい事があるんです」

お涙頂戴映画ではなく、納得する死に方(生き方)の向き合い方を描くいい映画でした。
長野県佐久市の爽やかな風景、隣のお婆さんや同級生との再会など故郷に戻れてよかった。

地味だけどドラマチックに演じられたという津田寛治さんや笑顔がめちゃめちゃ可愛い中村梅雀さんが、W主演されています。津田寛治さんは驚くほど痩せて役柄をしっかりと作り込まれていました。
ちなみに津田寛治さんは医師(笑)
丸顔のぷっくりした梅雀さんが癌患者(笑)


患者が欲しいのは"心配"の言葉ではなく"信頼"の言葉…子育てもそうだと思う。
今井医師は、患者とも思春期の息子とも言葉少なではあるが"信頼関係"があった。しかし皮肉にも患者の死に向き合い過ぎる過酷な労働者となり、自身の心の余白まで仕事で埋めてしまっていた・・・

原作は現役の医師でもある南木佳士さんの同名小説
去年、出生数は86万人 死亡した人は戦後最多を更新する137万人…。超高齢化社会と人口減少の実態が浮き彫りになりました。親の看取りや自分の最期を考える(願いや希望)「人生会議」しようと思います。

フジTVの腫瘍内科のドラマでは、やりたい事をやって残りの時間を自分らしく活きる末期の女性を演じていた高畑淳子さんが、こちらでは肺がんの夫を支える妻役で心の変化を上手く演じられていて流石でした。

久しぶりに小椋佳さんの歌を聴いた…♪
柔らかな声は沁みた〜
空海花

空海花の感想・評価

3.8

このレビューはネタバレを含みます

安楽死と尊厳死
その違いはニュアンスでは何とでも言えるが
映画でどう答えを出すのか。

この映画については全く知らず
違う映画を観に行くつもりが、
この日までだったのと前述の問いが気になって鑑賞。


末期の肺癌患者を中村梅雀
呼吸器内科医師を津田寛治が演じる。
ターミナルケアの医療。ホスピスではない。
治療はできる限りは、やる。
がん拠点病院で緩和ケアもある病院という印象。

「楽に死にたい」を何度も言う患者。
一見わがままにも聞こえるけれど
梅雀さんはどこか童子のようなかわいさがあって憎めない。
津田寛治演じる医師は、病院では患者に理解があり、患者の要望もなるべく尊重しようとしてくれる。面倒くさい顔一つ見せない。人格と経験が生きた優しさ。
テーマとは別に、津田寛治好きな人は必見。


「楽にしてほしい」は
イコール「死にたい」ではない。
苦しんで死にたくはないだけで。
できる限りの辛さや痛みを取り除いてもらって
本当に苦しくなるその時まで
最期まで生きようと頑張っている。
でも、それは医師との信頼関係ができたからで
おそらく当初のものとは変化している。
腹水を取り除いてあげると
「楽になったぁー」という梅雀さんがかわいくて愛おしくなって涙が出る。
同級生に手を振る梅雀さんもめちゃくちゃかわいい。
そしてその後の表情にノックアウトされる。

タイトルでは、尊厳死の前に患者の名前があるように
終末期の治療は個人によって異なるもの。
山中さんは故郷の信州で死にたいと思ったし
とにかく何が何でも個室が良かった。
婿でずっと堅苦しい思いをしていたから
最期くらい、そしてあの世に行ってからは
もうそんな思いをしたくなかった。

今井医師はこれまで何人もの患者を看取ってきていて
その経験は患者への優しさに活きるが
もう一方でその経験は鬱病を発症させる。

息子との短い会話。妻はもっとちゃんと話してと言うが、
優しさは病院で使い切って帰ってきてるとこぼす。
でも邪険にしているようには見えないけれど。
患者は尊重して
息子は信じている。

人によって、人の死に立ち会える人数が決まっているみたい
心療内科の医師の台詞にある。
死は仕方ないけれど、大きな負のエネルギーで
心身にダメージを残す。
大変な職業だと本当に思う。
たまにはクールにあしらってくれてもいいよ。

津田寛治は役作りで相当痩せた。
その佇まいであんな優しい表情をするなんて。
色んな役を本当に何でもこなすが
この演技は中でも最高だった。

それは看護師も、山中さんの奥さんも
今井の妻も、同級生も
みんな演技の中に優しさを見せる。
でもやっぱり今井医師と山中さんの会話が一番いい。

人は生きてきたように死んでいく
真面目にコツコツやってきた人は
穏やかに死んでいける。

今井医師が立ち直っていく姿にも静かな感動が押し寄せる。


病気ものと言われ敬遠されそうではあるが
その中で別のことを頑張る類いではなく
それを通じて終末期の在り方をまっすぐに描いている、と感じた。
山中さんの人生のように筋が通って、穏やか。
みんないい人過ぎる感はあるが
お涙頂戴というよりは
ところどころでホロリとなる物語。


2人に1人は癌になるという時代、
この問題は医療を提供する側も受ける側も
きちんと考えておかないと、
どうしようもない状況になりかねない。

「楽に死にたい、苦しくなったら薬を使ってほしい」
尊重されるものとしては
人工呼吸器は使わないとか、
蘇生は行わないとか、その他に
鎮静(セデーション)というものがある。
胃カメラの時眠くなるやつではなくて
ターミナルセデーションと呼ばれるものだ。
そこは詳しく描かれなかったけれど
本人や家族、そして医師や看護師とも
考え方にはズレがあるはずで
それは知っておいたり、できれば話したりはしておいた方がいいだろう。
誰だって苦しんで死にたくはないし
苦しませて死なせたくはない。
それでも立場が異なると差は出ると思うのだ。
この物語では〈生きてきたように〉に内包されているが、
現実に思いを馳せずにはいられない。

そしてこれはあくまで山中さんの場合。

当初の答えはわかったような気がするが
では何を尊重しようかというと
自分はまだ少し若いのでまた違う訳で
さて、どうしますかね。



2020劇場鑑賞63本目/64


そしてここにも作家が医師の原作。
著者も鬱病になった経験があるようだ。

さすがに場内に若い子はいなかった。
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