よねっきーさんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

パラダイス 愛(2012年製作の映画)

4.4

乾いた日常から離れてケニアでバカンス。異国の地でふと気づけば買春しちゃってたおばさんの話。

こういう倫理の向こう側にある悲哀を描こうとする人、おれ好きだなあ。正義や道徳では割り切れないもの、つまり「
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ジャングル・フィーバー(1991年製作の映画)

4.2

愛の力というファンタジーの通用しない現実。差別の根深さ、複雑さ、それに対する強い怒りはもちろん理解し、しかと受け取った。かなり良くできた映画だと思う一方で、登場人物は思いきりビンタしたくなるようなやつ>>続きを読む

紅の豚(1992年製作の映画)

4.6

子どもが誘拐されるシーンすらキュート。まっすぐで軽やかな娯楽映画だけど、色気がある。ラスト、飛行艇同士のドッグファイトが、パンチの応酬というシンプルな運動へと集約されていくのがナイス。宮崎駿、映画をと>>続きを読む

ファルコン・レイク(2022年製作の映画)

4.7

死とエロス。ホラーの文法で不気味に語られる青春。画面が常に悲劇の予感で溢れている。実際、大したことは起きないんだけど。

初々しいエロチシズムってのがおれはそもそも大好物だが、その個人的かつ本能的な趣
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シアター・キャンプ(2023年製作の映画)

4.4

先行するミュージカル作品への愛とパロディをたっぷり詰め込んだ映画……みたいに予想していたので、溢れ出るオリジナリティに驚いた。かなり自由、かつ意欲的!

オートフォーカスの手持ちカメラや覗き見風の構図
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ダージリン急行(2007年製作の映画)

4.6

病弱なくせに向こう見ずな三兄弟のインド珍道中。作風が固まってからのウェス作品の中でも特にカメラの揺れる瞬間が多く、統制されたジオラマ感が薄めで、なかなか好きなバランスの映像だった。
『カールじいさんの
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バービー(2023年製作の映画)

4.7

意外にも(というと語弊がありそうだけど)、男として生まれ、男として育てられた自分が「こういう映画を待ってた!」と思える映画だった。「これは自分の話だ」と、直感的に理解することのできる映画だった。なんか>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

4.8

映像に見惚れるだけで至福の時間だった。観ようかなと思ってる人、スクリーンに対してどセンターの座席を予約してください。仲良し数人組で観に行こうと思ってる人、今回ばっかりはセンター縦並びで座席を予約してく>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

4.5

前作『フォールアウト』や『トップガン マーヴェリック』など、最近の彼の映画が「トム・クルーズ」というジャンル映画としてかなり完成されていた分、やや物足りなく感じた。それは要求水準が高すぎるのかもしれな>>続きを読む

キル・ビル Vol.2(2004年製作の映画)

4.2

オフビート格闘アクション映画。vol.1に比べてツッコミどころが少ないのでちょっと寂しいが、依然、全然、ふざけている。どういうテンションで観るのが正しいのかはよくわからない。

両者座ったままの殺陣と
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バンド・ワゴン(1953年製作の映画)

4.7

一応存在している本筋を軽快に逸脱しながら、とにかくやりたいことやるミュージカル。基本的に歌って踊ってをやってる間は物語が停滞するんだが、物語なんかよりも音楽と身体の躍動がすべて、それこそがエンターテイ>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.0

食べること、排泄すること。産むこと、産まれること。あと死ぬこと。ひとことで言えば即ち「生きること」と不可分に存在するそれらを、倫理的に眼差した映画だったとは思う。ただおれは、こういうメタファーのやり方>>続きを読む

風立ちぬ(2013年製作の映画)

4.9

風が、帽子や、パラソルや、飛行機を飛ばす。伸びやかなその運動が、そのままロマンスやスペクタクルとして機能する。アニメって、映画って、それ以上になにか必要なものがあるだろうか?

エンドロールに入った途
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タンジェリン(2015年製作の映画)

4.5

性なるクリスマスのL.A.を早歩きで駆け抜ける。iPhoneでの撮影と聞いてちょっと身構えていたけど、スクリーンで観ても全く違和感を感じなかった。機動力を活かした突風みたいなカメラワークがカッコいい。>>続きを読む

Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バック(2018年製作の映画)

3.5

バカの作ったバカ映画です。映画のリズム感があまり心地よくない。後半で少しだけ(ほんとに少しだけ)持ち直すものの、基本的には見てられんほど退屈な会話&展開が続く。おれの好きなバカ映画ってみんな、かなり賢>>続きを読む

レッド・ロケット(2021年製作の映画)

4.5

やっぱりおれ、ショーン・ベイカーの描く「迷惑な人たち」をどうしても嫌いになれない。『フロリダ・プロジェクト』のヘイリーもそうだったんだけど、人に迷惑をかけるダメ人間たちは彼の映画のなかで愛すべきヒーロ>>続きを読む

π(1997年製作の映画)

4.0

文系が無理して撮った理系映画って感じで、個人的には結構ダサく感じた。数学者の逸話の引用とか、いちいちクリシェでちょっと恥ずかしい。狂気の表現として俳優をウォーって叫ばせるのもありきたりで情けない。低予>>続きを読む

ブロークン・フラワーズ(2005年製作の映画)

4.7

この映画がなかったら、おれの大好きな『オン・ザ・ロック』も多分なかったのだろう。白髪のビル・マーレイに「引退したプレイボーイ」というキャラクターを与えた、それだけでもこの映画の功績はデカい。発明的だも>>続きを読む

サンライズ(1927年製作の映画)

5.0

償いと出逢い直しのデート映画。光と影を捉えた映像の眩しさになんだか胸がいっぱいになり、涙がこぼれてしまう。

感傷的な序盤/終盤と、愉快でスラップスティックな中盤のクロスフェードが美しい。夢幻的に編集
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ホーリー・モーターズ(2012年製作の映画)

4.0

カメラも観客もない俳優の一日。いや、映画になってる以上カメラはあるだろうし、おれという観客もいるわけだけど。「演じる」という矛盾を生きる人間についての話だ。

おれは近年のレオス・カラックスがあんまり
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絞殺魔(1968年製作の映画)

4.9

複数の視点が目まぐるしく駆け回る、エキサイティングな迷妄劇。実在の事件を元にした作品に対してこんなことを言っていいのか分からんが、めちゃくちゃ面白かった。まだ事件がホヤホヤ(なんなら未解決)だった時期>>続きを読む

レゴバットマン ザ・ムービー(2017年製作の映画)

4.7

レゴシリーズお決まりのハイテンポなお祭り騒ぎでお送りする、ジョーカーとバットマンの倦怠期ラブコメ。『ダークナイト』のifストーリーみたいでバカバカしく、良かった。

オープニングからして、バットマンと
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アラビアのロレンス/完全版(1988年製作の映画)

4.4

スクリーンいっぱいの砂漠のなかで、蟻みたいに小さく人影が映る。これ、VHSで観た人とか何も分かんなかっただろうな。スマホで観ても何も分かんないと思う。それくらい、劇場で映画を見るのが当たり前だった時代>>続きを読む

秋刀魚の味(1962年製作の映画)

4.6

驚くほどにストーリーの大筋が『晩春』と何も変わらないんだが、タッチが全然違う。なぜか「嫁ぐ娘と、見送る親父」の話ばかり撮っていた小津安二郎。生涯独身だった彼は、何に執着してたんだろうね?

音楽と会話
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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.8

映像も脚本も良い舵の切り方してんなあ! と感心する続編。前作より明確にパワーアップしてると思います。『スパイダーマン:スパイダーバース』は間違いなく映画史に残る傑作だけど、アレに勢いで満点つけたりしな>>続きを読む

ゲット・アウト(2017年製作の映画)

4.4

最初のやや長いショットからカメラワークが完璧でワクワクする。タイトルバックもカッコいい。監督の腕が確かなことはもう『アス』と『NOPE』によって証明されているけど、それら後続の作品に比べると若干粗く感>>続きを読む

アニー(1982年製作の映画)

4.4

良いシーンがすこぶる良いだけに、ところどころ変なアレンジが気になるな。プロすぎる……と感心する部分と、素人だな……と感じる部分がある。ウーム。

"It's the Hard-Knock Life"、
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海がきこえる(1993年製作の映画)

4.7

できる男は風呂で寝る。

過剰になりかねないモノローグもあるし、普通じゃない演出も数々あるんだが、何故か奇跡的なバランスで青春と恋愛を描写することに成功している本作。それはそうと登場人物みんな、本心を
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ライ・レーン(2023年製作の映画)

4.0

ちょっと期待してたがハマらず。ポップな演出をやりたいという熱意は伝わるんだが、同時にインディー映画的な粗さも捨てがたかったらしく、学生映画っぽい無邪気さが前面に出ていて正直かなり見づらい映画になってし>>続きを読む

ヘラクレス(1997年製作の映画)

4.7

カラフルなアニメーションとハッピーなゴスペルで引っ張っていく、パワフルなミュージカル・コメディ。すこぶる楽しい!!

昔話にありがちな重々しい語りを一蹴するオープニングからすぐに引き込まれる。物語はか
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カールじいさんの空飛ぶ家(2009年製作の映画)

4.2

空飛ぶ家を飛ばし続けるためには、思い出の詰まった家具を捨てなきゃいけなかったりする。いくら歳を取っても、仲間に先立たれても、自分が死なない限り旅は続いてしまう。未来を向き続けるっていうのが、失われた過>>続きを読む

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)

4.7

たしかに映画館って「光の帝国」なのかもしれない。劇場の明かりを少しずつ付けて回るオープニングや、映写技師の小難しい台詞が、ひとつひとつ説得力を持って「エンパイア・オブ・ライト」を立ち上げていく。

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ロング・グッドバイ(1973年製作の映画)

4.5

こんなカッコいい映画があるせいで、映画オタクはみんな喫煙家になっていくのだ。やっぱおれが健康的な私立探偵の映画を撮るべきかもしれない。水をめちゃくちゃ飲む私立探偵とかもいた方がいいと思う。映画オタクの>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

4.1

観終わってから少しはこの映画のことを考えたりもしたけど、やっぱこんな映画が面白いわけないと思うな……。演出ひとつひとつは結構洗練されてるんだが、とにかく観づらく、分かりづらい。過度にハイコンテクストな>>続きを読む

レヴェナント:蘇えりし者(2015年製作の映画)

4.6

自由を求めて車で爆走する『マッドマックス 怒りのデス・ロード』とは違う。死から逃れて生身で疾走する『アポカリプト』とも違う。この映画は走らない。傷だらけの腐った身体を引き摺って、ずりずりと前進するのが>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

4.6

サエない靴屋がデカい賭けに出る話。現代に住むおれらはその賭けがバカ勝ちすることを既に知っちゃってるわけだが、それでもビジネス劇は十分スリリングで面白く観れる。なかなかすごい。

まっすぐ一本道な物語を
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