踊る猫さんの映画レビュー・感想・評価

踊る猫

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ノエルの日記(2022年製作の映画)

3.3

多分に好みも交えた評価になることを断っておきつつ書くなら、「タメ」がない映画だと思った。フラットというか、真っ平らにすべてが説明されてしまいながら進行するので「これはどういうことだ?」とこちらが疑心暗>>続きを読む

スイマーズ:希望を託して(2022年製作の映画)

4.8

「映画に政治を持ち込むな」と、この映画を観た人の何人かはつぶやくことになるのだろうか。だが、これが「リアル」なストーリーなのだと言われれば唸らざるをえない(実際に実話をベースにした映画のようだ)。観て>>続きを読む

ラブ&マーシー 終わらないメロディー(2014年製作の映画)

4.5

「天才」を生きるのもつらいだろうな、と思う。自分の中にあるものに絶大な自信/確信を持ちながら、それが理解できない周囲との(あるいは理解しすぎる人々との)軋轢/ディスコミュニケーションに苦しめられる。そ>>続きを読む

僕を育ててくれたテンダー・バー(2021年製作の映画)

4.0

清々しい逸品だと思った。要は実にオーソドックスに1人の青年の成長(幼少期から大学入学、初恋から初体験、就職から転身)を描いているのだけれど、その素朴さは多分素材である原作の持ち味をうまく活かしきってい>>続きを読む

Racionais MC's:サンパウロのストリートから(2022年製作の映画)

4.6

最初は物足りなく感じた。というか「わかりにくいな」と呟いてしまった。というのはブラジルの国内事情を知らないと見えにくくなる部分もあると思ったからである。注釈的なものが必要ではないかと思われた(事前に同>>続きを読む

ラブ・アクチュアリー(2003年製作の映画)

4.6

実に完成度の高い映画だ。巧すぎる、とも言える。空港で始まったこの映画は空港で終わるという円環構造を成しており、その円環構造の中に多様なギャグをこれでもかと盛り込んで(個人的に乏しい鑑賞経験から語るなら>>続きを読む

ジョン・レノン,ニューヨーク(2010年製作の映画)

3.9

リバプール出身の泣く子も黙る不良少年だったジョン・レノンは、その後ビートルズの一員として大成しそこからヨーコ・オノと結婚、そしてハウスハズバンドになったかと思えばプロテスト・ソングを朗々と歌う活動家に>>続きを読む

Love Letter(1995年製作の映画)

3.8

今のようにインターネットでサクサクとメールやテキストの送受信を交わす時代ではなかった、そんな古き良き時代のストーリー(何せまだ「ワープロ」が活躍しているのだから)。だが今でも古臭さをどぎつく感じさせず>>続きを読む

欲望の翼(1990年製作の映画)

3.6

女と車と拳銃、というのはジャン=リュック・ゴダールの映画になくてはならない3つのエッセンスとなる(誰が言い出したかわからないが、なかなかの慧眼だ)。ではウォン・カーウァイの映画の必要不可欠なエッセンス>>続きを読む

ブレードランナー ファイナル・カット(2007年製作の映画)

4.0

泣く子も黙るSF映画の金字塔にして今に至るも影響力を誇示し続けている傑作……なのはわかるのだけれど、今回観てきて「そんなに凄いかなあ」とも思ってしまう。例えば、レプリカントがなぜかくも「死」を恐れるの>>続きを読む

グレタ ひとりぼっちの挑戦(2020年製作の映画)

3.3

斬って捨てたくはない。だが、このドキュメンタリーからは肝腎の「なぜ彼女は運動に身を投じるのか」という動機と「彼女が訴えたいのはどういう問題と解決策なのか」という具体的主張が見えてこない。せいぜい「環境>>続きを読む

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

4.1

実に重厚で渋い映画だ。冒頭の「ツカミ」でこちらを持っていき、15分で設定を説明する類の映画とは違う。訳が分からなくても次第にその映像美や演出の中に呑み込まれていく。そして気がついたらストーリーの最中で>>続きを読む

ウエスタン・スターズ(2019年製作の映画)

4.6

終始リラックスしたムードの語りと演奏。だが、そこには「ゆるい」「まったり」という言葉を簡単に寄せ付けないような、熱い空気感を漂わせた演奏がある。アメリカン・ロック界の至宝ブルース・スプリングスティーン>>続きを読む

ブロンド(2022年製作の映画)

3.6

「長えよ」(ハチミツ二郎の声で)。いや、その長さに見合ったストーリーの入り組み方、そしてノーマ・ジーンとマリリン・モンローの関係を批評的に描写する濃度/強度は認めたい。しかし観ていてちっとも胸がスッと>>続きを読む

ジゴロ・イン・ニューヨーク(2013年製作の映画)

3.3

ジョン・タトゥーロという人、なかなかの策士であり才人ではないかと思う。ジゴロを名乗る(?)に相応しいゴージャスさを兼ね備えていながら、それでいてガツガツしたところがこの映画ではそんなに発揮されない(共>>続きを読む

あの頃輝いていたけれど(2022年製作の映画)

3.4

ハートウォーミングな佳作だな、と思う。自閉症を扱った映画は古今東西様々なものがあるが、この映画の掘り下げ方はどこか甘い。天才的な才能を持つ存在である、ということが押し出されているのだけれど悪く言えば「>>続きを読む

知られざるマリリン・モンロー 残されたテープ(2022年製作の映画)

3.6

渋いドキュメンタリーだ。マリリン・モンローは泣く子も黙る「世紀のセックス・シンボル」なわけだけれど、そのマリリンの死について手堅く迫ったこの作品ではマリリンをめぐる基礎情報がほとんど語られない。どんな>>続きを読む

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)

4.1

何だかよくわからないけれど、でも悪い映画ではないな、と思った……そこから考えがぜんぜん発展していかないので困る。スケールの大きさで勝負する社会派の映画ではないようだ。それでいて、「本当はプロ意識が高い>>続きを読む

花様年華(2000年製作の映画)

4.2

実に上品な作品だと思った。それでいてこれ以上ないほど濃厚/濃密にエロスが匂ってくる。トニー・レオンとマギー・チャンの共同作業での小説執筆を通してふたりは恋を深め合う。つまり、ある意味では小説を模倣する>>続きを読む

オールド(2021年製作の映画)

4.2

何だこのコロナ禍のメタファー/陰画のような映画は……主人公たちが迷い込む一日にほぼ一生涯の時間を体感させられるビーチは、否応なしにどこかに閉じ込められ閉塞感を感じさせられたまま歳を重ねなくてはならない>>続きを読む

ホワイト・ホット アバクロンビー&フィッチの盛衰(2022年製作の映画)

4.0

多様性の重要さについて考えさせられる、なかなかいいドキュメンタリーだと思う。だが、当時を映し出した資料映像に乏しい感もあり、当時のA&Fをめぐる空気が再現されているとも思えない。よって今になって集めら>>続きを読む

イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語(2017年製作の映画)

3.5

いい意味でも悪い意味でも「懐かしさ」がない映画だ。ザ・スミスのフロントマンであるモリッシーの若き日を描いた映画だそうだが、しかし綴られるのは巷間で知られるスキャンダラスな彼の言動とは似ても似つかない何>>続きを読む

コントロール(2007年製作の映画)

3.7

汗まみれになって歌い踊るイアン・カーティスの姿が忘れられない。私は後追いでジョイ・ディヴィジョンに触れた身なので、どうしてもスタジオ盤をCDやサブスクで聴いてそのひんやりとした無機的な質感(と私は聴い>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.2

ひと口で言えば「喪失と再生」を描いた映画であると言える。原作を書いた村上春樹自身がまさにこのテーマで数々の話題作を記してきた人物だが、濱口竜介はその春樹の短編群(具体的には「ドライブ・マイ・カー」や「>>続きを読む

ノーザン・ソウル(2014年製作の映画)

3.5

今ひとつ(というか、今三つくらい)前のめりになって観ることができなかった。DJがフロアを焚きつけるその盛り上がりを共有するのに「ノーザン・ソウル」の音楽は渋すぎるきらいがあるからかなと思ったが、それ以>>続きを読む

グッド・ヴァイブレーションズ(2012年製作の映画)

4.1

これは「イングランズ・ドリーミング」ならぬ「アイルランズ・ドリーミング」だ。別の言い方をすれば夢追い人の物語である。内戦/内紛が続き憎しみが憎しみを呼ぶアイルランドで、ちっぽけなレコード店を開いたテリ>>続きを読む

すべてをかけて:民主主義を守る戦い(2020年製作の映画)

4.3

良質な、優等生的なドキュメンタリーだと思う。私なら私は選挙権/投票権について「天賦の権利」と思ってしまうのだが、その権利は実は先人が(時に命をかけて)勝ち取ってきたものであることを再確認した。それにし>>続きを読む

ビリーブ 未来への大逆転(2018年製作の映画)

4.5

人間に備わっている可能性とはなんだろう、と(柄にもなく)考えてしまった。それは必然的に開花するものなのか、逆境がそうさせるのか……女性というだけで一段低く見られざるをえなかった時代、ルースは自身の天才>>続きを読む

フェミニストからのメッセージ(2018年製作の映画)

3.7

登場する女性たちの顔つきが気になった。凛々しいのだ。美人、というのとは違う。少なくとも「美人」というカテゴライズが「男(私もそのひとりだが)の価値観によるもの」であるとするなら、そんな男の思惑を振り切>>続きを読む

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)

4.0

流石はジム・ジャームッシュ。鋭く働く知性が示す「戯れ」を感じさせる。悪く言えばペラいところがある。『葉隠』や『羅生門』といった日本の極限状態を生きる人々の哲学をベースに、ヒップホップ文化を介して白人対>>続きを読む

13th 憲法修正第13条(2016年製作の映画)

4.5

わかりやすくキャッチーに撮られたドキュメンタリーではない。むしろ根底にある静かな監督の怒りに触れられるような、そんなクールさと温もりが共存した作品だと思う。故に、杞憂かもしれないがこの怒りが伝わる可能>>続きを読む

浅草キッド(2021年製作の映画)

4.2

フラットでポップな映画だなと思った。泥臭くなりそうなところがそうならない。だからこそいいとも言えるし悪いとも言える。これはもう好みの範囲内だろう。なぜたけしは大学を辞めてまで芸人になろうとするか、葛藤>>続きを読む

誰も知らない(2004年製作の映画)

4.2

二度と観たくない、と思った。だが、むろんそれは駄作だからではないし、こちらを不快にさせる要素があるからでもない。傑作なのは認めたい。だが、キツい内容でありその内容を有無を言わさず呑み込ませる力があるか>>続きを読む

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(2021年製作の映画)

4.4

ややクドすぎるようにも思った。つまり、この長さは流石にキツかった。だがこの長さあってこそ、ここまで丹念に語られてこその作品だと思うので安直な評価はしたくない。私の妄想になるのだけれど、日本で『ボクたち>>続きを読む

リトル・ミス・サンシャイン(2006年製作の映画)

3.1

苦笑いするしかない映画だ。よく言えばそれだけビターテイストというか辛辣な映画ということになる。悪く言えばコクがない……というか深みに欠ける。流石に時代背景を鑑みてもこの同性愛の描き方はマズいだろうとも>>続きを読む

WAVES/ウェイブス(2019年製作の映画)

3.9

運命の歯車が狂う、ということは往々にして(恐らくは、誰の人生においても)ある。この映画はそういう墜落/破滅を生々しく描き、そこから再生の兆しを描こうとした力作である。なるほど、センスの塊のような映画だ>>続きを読む

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