1作目、別題『ファントマ/ベルタム事件』。車が画面奥から走ってくるファーストカットからパンフォーカスやってて驚く。
被写界深度を意識した構図も画期的で、特筆すべきは演劇観覧シーン、舞台の様子をフィックスで映すかと思えばショットはすぐにボックス席に鎮座する一人の貴婦人へ切り替わる。演目はおろか、舞台そのものが巨大なスクリーンの如く彼女の背景と化している。
このように大舞台が急に一人の人間の背景(もしくは視点)となってしまう様は同じくフイヤードの『ドラルー』で反復されるだろうし、権力の表象という点では『市民ケーン』にまで受け継がれていく。
本作における彼女は支配的な立場ではないがちょうど今、舞台上の俳優をある計画に利用しようと企んでいる。