尻啖え孫市(しりくらえまごいち)の作品情報・感想・評価

尻啖え孫市(しりくらえまごいち)1969年製作の映画)

製作国:

上映時間:105分

ジャンル:

3.3

「尻啖え孫市(しりくらえまごいち)」に投稿された感想・評価

だから日本映画は面白い!って言ってんじゃないスか! 三隅研次「尻啖え孫市(しりくらえまごいち) 」

合戦ものとしては黒澤ならぬクロサワの「影武者」よりもはるかに作家的余裕があります。

中村錦之助ものとしてはあの退屈きわまりない某映画祭最高栄誉の今井正「武士道残酷物語」よりもはるかに面白い文字通りの蔵出し映画です。

お若い方々、どんな手段でも観るチャンスがあればお見逃しなく!
原作は傑作だが、映画は残念


司馬遼太郎の原作は、「超」が付く傑作であるが、この映画は「原作を端折り過ぎ」と「無理のある改変」によって原作の足元にも及ばない残念な作品である。

キャスティングも、小みち=栗原小巻はグッドであるが、そもそもの雑賀孫市が中村錦之助は端正過ぎる。テレビのNHK大河ドラマ『国盗り物語』で孫市を演じた林隆三の印象が強過ぎることもあるが、やはり林隆三の方がマッチしている感じがする。

序盤は、孫市の女性に対して「見えるぞ、見えるぞ」などは原作に忠実であるが、原作ほど好色漢には描かれていない。

何よりも残念なのが、合戦シーンの少なさである。これでは、雑賀鉄砲衆の凄さが全然わからないではないか。

原作を期待して観ると肩透かしをくらう映画であった。
☆☆☆★★

東映時代劇の大スター中村錦之助と、大映時代劇の大スター勝新太郎夢の組み合わせ。

天才的な戦術を誇るが、豪放磊落にしてへそ曲がり。鉄砲隊長の雑賀孫市に中村錦之助。
織田信長には勝新太郎。
木下藤吉郎に中村嘉葎雄。

本来ならば、織田信長を得意中の得意にしていた錦之助が、織田信長に扮し、寧ろ「天下取りよりも銭よ!」と、自分の価値を引き上げるキャラクターの孫市こそ、そんな演技を得意の勝新太郎には相応しいところ。
ここは、大映の大スター勝新太郎が、錦之助に主役として華を持たせた様な雰囲気を感じますね。
孫市が惚れ込む木下藤吉郎のキャラクター。演じているのが、錦之助の実の弟の中村嘉葎雄だから…って言うのが大きいのかも知れないが。

監督の三隅研次は、スタイリッシュな作風が持ち味なのですが、この作品では城からの脱出場面等を観れば分かる通り、ダイナミックな演出で観客をグイグイと引っ張って行く。

惚れた女の(それも脚だけを)為に…。そのキャラクターたるや強烈で、まさに娯楽映画の王道の面白さ…だったのですが。
騙し騙され…と、自分が良い様に利用されていたと知ると、途端に寝返る終盤になると、段々に作品本来の面白さを失って行く感じだったのが惜しまれる。

(2010年4月6日 新・文芸坐)
戦と酒と女が大好きで束縛が嫌い…普段なら勝新が演じそうな孫市役だが、錦之助もかなりハマっている。
勝新が信長を演じているのもビジュアル自体は迫力満点だ。ただ「人格ある悪党」というよりは「単なる権力者」という感じで、魅力満載の孫市に相対するには記号的過ぎる印象は否めない。
そんなわけで、DVDパッケージはいかにも勝新と錦之介の激突!と言う感じだが、絡み自体は少ない。
むしろ中村賀津雄演じる木下藤吉郎との関係の方が濃密だ。
「おぬしと死ねるなら本望だ」
「弁解はよせ!おぬしの顔が醜くなる!」
「おぬしが好きだ!芯から好きだ!」
等々、あまりにストレートな物言いにホモ臭まで感じてしまう程の絆で結ばれている。
勝新好きとしては、ここまで魅力的な関係を築いている孫市×秀吉に比べて空気過ぎる信長が不満でもある。
逆を言うと、それだけ孫市×秀吉の描写は魅力的に描かれてるという事だけど。
特に目を見張るシーンもなく(茶室で加乃と見合う場面の画面くらい?)、三隅にしては凡作の部類。
中村錦之介の豪放磊落ぶりは大変気持ちが良い。
三隅作品といえば女性の手や脚への執着だが、ここでは主人公の人物像のレベルにそうしたフェティシズムが取り入られているのがおもしろい。
しかし映画自体は芳しくない出来。前半は寄りすぎたカメラが画面の活気を明らかに奪っているし(投げ渡された銃を撃つというホークス的な場面ですらかなり鈍重で説明的)、後半ロングショットが増えてきて三隅的と思うショットも出てくるが、やはり既視感漂う作りなのは否めない。川辺で男が口にくわえた花を女が掴み、その花を更にくわえるやり取りは良いんだけど『剣鬼』の方が洗練されていたよなあ、と。孫市と小みち、孫市と秀吉との切り返しの応酬シーンは悪くないのだけれど……。
ところで、この時期の勝新太郎はまるまるとしていてマスコット的な愛くるしさがあって私は特に好きなのである。
織田信長(勝新太郎)とその家臣木下藤吉郎(中村嘉葎雄)が、鉄砲使いの名手にして暴れん坊の豪傑雑賀孫市(中村錦之助)を味方に引き入れるため、彼が京都を通りがかった際に一目惚れしたという女の偽物を用意しようと画策する話。孫市が女の顔を見ずに美脚を見て恋に落ちたということが、物語の鍵となっている。三隅が女の足に官能的な美を見出していたことは彼の映画を数本見れば誰でも分かるが、それでもここまで露骨にやっているのは珍しい。秀吉と孫市の友情が試される重要な局面が延々と切り返しのみで処理される場面など錦之助の眼力も相まってなんとも言えぬ迫力があるのだが、後に夢と分かってがっくり。っていうか一番重要なところが夢オチってどうなのよ。