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「一番美しく」に投稿された感想・評価

人格の向上なくして生産力の向上なし!

「くし美番一」
1944年 

黒澤明監督の白黒作品を観たことがないので、急に始めた「ひとり黒澤祭り」、2日目です。

冒頭に「情報局選定国民映画」と出ますので、戦意高揚の国策映画だと分かります。
そういった部分をまるっと無視して、映画についてのみ書きますので、「いやいやそこ大事なとこだぞ」とか、「そんな映画についていけしゃあしゃあと語るなんてどうかしてるぜ」と思われる方は離脱してくださいね。平和主義なので(笑)

ところが、しばらく観てると、これ見よがしな戦意高揚な場面はほとんどなくて、あくまで俺が作るのは娯楽映画だと意識的に、けどバレないように、抜いてるような気もする。ほとんどスポコン&青春映画なんです。

舞台は東亜光学株式会社平塚製作所。兵器に搭載する照準器を生産してる工場。全国から徴用された女子たちも働き手だ。兵器そのものではないところにも黒澤の考えが透けて見える。

所長(志村喬)の社内放送で映画は始まる。

戦局めっちゃ厳しいねん!
我々はもっと作らなあかんねん!
そのためには魂も磨いてほしいねん、わし!

聞き取りにくいのですが、だいたいこんな感じのことを言ってます。そこで、冒頭の言葉が出てきたので、ちょっと驚いたのです。

人格の向上なくして生産力の向上なし!

この所長、分かってんじゃん!
機械も大事、スキルも大切、でも使う者の心が疎かになっていてはいかんのだと!

ということで平塚製作所の非常増産強調期間が始まるんですが、照準器を作ったり研磨したるする(?)機械がまさに機械的に撮られてます。なんとも表現し難いけど、普通じゃない。
そして夥しい人の数!これ黒澤の大きな特徴のひとつですよね。先日観た「姿三四郎」でも道場の隅っこに座して観戦する人を密に捉えてました。
いやー、詰め込む詰め込む。工場内の夥しさ。寮に帰ってきた挺身隊員が寮母を取り囲んで渦を巻いていくさま。怪我した仲間を見舞う病室の密度!
実際にそれだけの人がいるだけで、リアルに撮ってるだけといえばそれまでなんですが、リアルを超えた執着を感じます。病的です。
調べたところ、「画面に人を詰め込めば、印象は倍増する」と言ってたとか。分かる!

工事内各所に貼られているスローガンが目を引く。

「軍神につゞけ!」
「山本元帥につゞけ!」
「山崎部隊に続け!」
「こ々も戦場だ!」

今ならこんなとこでしょうか。

「アマビエ様につゞけ!」
「吉村知事につゞけ!」(大阪限定)
「BiSHに続け!」(個人的)
「ここも銭湯だ!」(特に意味なし)

そうこうしてると、男女別増産の割合に不満をたれる工員の姿が。「男は10割、女は5割の増産ノルマ」に対して、女だってもっと出来ると言っているのだ。
そこで登場するのが組長・渡辺ツル。代表して所長に掛け合い、3分の2増しを獲得する。私たちがんばらなくちゃね!と張り切る少女たち。よほどがんばらないと3分の2だって難しいわよとハッパをかけるツル。ほとんど甲子園目指して練習メニューを自ら追加していく強豪校のノリだ!

ツルを演じた矢口陽子さんは翌年、黒澤明と結婚。女優は引退されて監督を支え続けたとここに書かれてます。全て鵜呑みにするかどうかはそれぞれ検分願います。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%A2%E5%8F%A3%E9%99%BD%E5%AD%90

怒ると左の肩が上がるツルが面白い。そんな設定なくても全然問題ないのに、87分の短尺にわざわざ入れる。やたら群衆を描く一方で、主要人物は丁寧に描き込む丹念さ。これも一種病的で、それこそが作家性なのだと思います。

増産の主力メンバーが離脱して生産量が低下し、そこで士気を高めるために開催されるバレーボール大会。もちろん黒澤だからコートが密になる9人制だ!(当時5人制バレーがあったかどうかは知らない)
笑顔で楽しむ名もなき少女たち1人1人の顔面をアップで捉える黒澤。タイトルの意味がいくつかあると考えるんですが、まずこのシーンが一つめですね。もはや戦意高揚映画でもなんでもない。美しき少女青春映画だ!

そうそう、少女みんながよく笑うんです。箸が転んでもおかしい年頃だもんな。黒澤もっと女性映画撮っても良かったのではないか。そんなに興味なかったのかな。

バレー大会で「頑張って!頑張って!」と鼓舞するツル。この姿を、後半のいよいよ増産追い込みシーンで再利用する黒澤。とことん戦争と切り離そうと苦心した意図が見えてくる。すげえぞ黒澤。

映画後半、端折ります(笑)
強い女性の象徴であったツルが、寮母から「優しくなりましたね」と褒めてもらう。
強さと優しさを兼ね添えたツルの美しさ。
それと、自分のミスを取り戻そうと賢明に頑張るツルの姿がまた美しく。とても戦意高揚映画と思えないタイトルにこめた黒澤の考え。聞きたいなあ。

そうだ、この作品、冒頭の所長の言葉を最後に、「お国のために」的なセリフが一切ない。やっぱ黒澤すげえぞ。
黒澤はこの作品を「一番かわいい」と言っていたとか。その真意も分からないけど、少なくとも僕はかわいい作品だと感じました。頭の中お花畑なので。

お布団を日干しするシーンや、踏切での再会とか(貨物列車が二回阻んでもったいぶる)、心があったまるシーンもいくつもあります。
郷里を離れ寮生活をしながら工場で働く女子工員たちの姿を描いたヒューマンドラマ。

女優たちを実際に入寮させ、工場で働かせたという黒澤は、女優の雰囲気を取り払った彼女たちの姿をドキュメンタリータッチで描く。

生活のために働く現代の女性社員とは違い、戦争中、お国のために軍需工場で働く女子挺身隊員で、強く逞しい姿が映し出される。

増産強調運動を告げる所長は、産業戦士魂を工員たちに植え付け士気を高める。

「人格の向上なくして生産力の向上なし」

過酷な生産目標に向かって一心不乱に働く女性たち。生産量を表すグラフは、彼女たちの努力と疲労も表している。

怪我や病気で仕事を休む工員は、一刻も早く回復して工場に戻る事を願い、毎晩熱が出る工員は、それを隠して働く。

お国のためだ。

鼓笛隊で軍歌を演奏する姿、バレーボールで息抜きをする姿、そして働く姿。彼女たちは健気で優しく美しい。

後に黒澤明の妻となる矢口陽子が責任感のある隊長を務め、一人深夜まで働く姿と、顕微鏡を覗く彼女の瞳から溢れる涙を黒澤明は「一番美しく」映し出した。
Soh

Sohの感想・評価

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このレビューはネタバレを含みます

撃ちてし止まむ
から始まるの鳥肌☺️初めてがっつりのプロパガンダ映画みた

軍神につづけ!
山本元帥につづけ!
山崎部隊に續け!
増産だ!兵は敵機の下で待つ
ここも戦場だ!
一生懸命、頑張って、たまに喧嘩もするけど、当時を生きていた女の子たちにただただ勇気と元気をもらうばかりです!
みちる

みちるの感想・評価

1.0
検閲とか厳しいだろうし、
そんなに期待して見なかったものの
映画として成り立っている凄さ
戦争中の美しさ
べらし

べらしの感想・評価

3.2
マスクに汚れ…じゃなかった光学レンズに傷がついていたということで残業して数千個あるレンズを全部調べようとする女子工員、その間取り敢えず他にやることがないのでアマビエならぬ氏神に祈る同僚、そして傷が見つかったのかどうかもあやふやなまま「頑張ったので」いい感じになってしまう展開…

極東の奴隷は自分から追い込まれることに愉悦を見出してしまうのでどうしようもねえな
美しい国が一番美しかった頃のおはなし
emiemi

emiemiの感想・評価

3.9
時代背景が伺われる。工場のバイトで見せられた、初めのお手本映像みたいなん、思い出した。でも、どうしても、出てくる人出てくる人、健気だから応援したくなる。
jp

jpの感想・評価

3.2
戦争中の映画って感じですね。
面白かったです。
北朝鮮もこんな感じなのでしょうか?
こんなに楽しそうにはやってないのかな?
●'99 /〜
『黒澤明劇場』特集上映
(初公開: '44 4/13〜公開)
配給: 東宝
スタンダード B/W
モノラル
3/24 15:10〜→12:15〜 シネマ・ジャックにて観賞
フィルム上映
パンフ発売無し
玲

玲の感想・評価

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実際に役者にその状態で暮らしてもらって撮ったらしくそれを写しとって彼女らがお国のためと信じて働く様子は一見して国策映画とみえるのも無理はなく、
ただその中その渦中の人たちが中身のない戦意高揚の言葉を叫んでいたかといえばそのようでもなく、ただそのような状況で生きてしまった女たちだと思ってみればこれで戦意高揚するのか?という風にも見えたりする、
現代を生きるわれらがこれをみてプロパガンダと言う方がどこかすこし怖いのではないかとも思った、これはプロパガンダに見えちゃいけないんじゃないか?プロパガンダされちゃいけないんじゃ?
ここまでやつれながらも頑張らなければならなくなったみじめな戦況でもお国のためと信じて頑張っていたというような状態が写されているのをみて、日本の国力はとっくに弱まっているなあと冷静にみえているべきなのでは、今の私たちからの視点では
ただその渦中を生きる女たち個々はそれぞれがその人生を生きていた、なにを信じてなにを頑張るかも彼女らは決めて生きていた、この世界の片隅にのすずさんのように、その状況下でどのような、無名の人たちの生き様があったか、そんな映画なのかもしれないと思った
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