やっぱりこの企画では彼の作品は欠かせない、小津安二郎、小津映画。これで何本目か。
《クラシック映画観ようぜ》Part.Ⅱ、Vol.4。
小津映画のいつメンを観ると、映画を観てるな、と言う気になれる。
笠智衆、原節子、杉村春子、などなど。
いつもの1人ずつのカットの交互で織りなす会話のシーン。
この掛け合いで、それぞれの些細な表情や感情の起伏、日常が伝わってくる。
有馬稲子は初めて観たかな。
すごく綺麗な人。原節子とはまた違う透明感。今いても人気が出そうなモダンというか、洗練された佇まい。
スカーフ巻いて歩く姿も、夜遅くに帰ってきて鏡の前で櫛を通している姿も、何でも絵になる女優、素敵。
この原節子と有馬稲子が笠智衆の2人娘。
今回はこの2人の娘に頭を悩ませる父親笠智衆、の構造。
2人とも急に笠智衆の実家に舞い戻って何でかまた居座り始める。
原節子は結婚してたのに、何やらうまくいかずに結婚生活から逃げてきた模様。
有馬稲子の方は、、、何だかよくわからない。
「おい」「おい、ちょっとここに座りなさい」
原節子は核心に触れると口をもごもご濁す。
有馬稲子は終始ムスッとしていて取り付くシマもない。帰りも遅くて笠智衆の心配が絶えない。
特に有馬稲子の方はずっとずっとどこにいても笑顔も見せない。なんかちょっと擦れてるというか諦めて達観しちゃってる感じ。
この時代の女性の生き方からはみ出してしまって何かこの先の生き方に迷いが生じていて、モヤモヤしているような、彼女たちなりに探しているような。
今回は居酒屋とかBar、喫茶店が出てくる。
この頃のこの雰囲気、とても好き。豪華さはないけど、落ち着きというか、趣がある。
夜の喫茶店、自動ドアではなく、ドアマンがいる。この頃って“パーラー”とかもあるし、なんか、憧れる。
こういう店で働く人たちも、話し上手というか訪れてくる人たちを迎え入れてくれる感じ。ホント、こういう店の常連になりたい。
と憧れている一方で、話がどんどん暗い話になっていく。
特に有馬稲子が押し黙っている理由が少しずつ明らかになっていく。
それを知らない笠智衆が聞き出そうとするも何も話さない。
そうこうしているうちに、有馬稲子は色々抱えて悩んでなんだかんだしているうちに警察に補導されたり。
雀荘やパチンコ屋も出てきて、大衆の娯楽感が存分にあり東京が活気付いている中で、1つの家族に訪れる人間模様。
父親の悩み、葛藤、迷い。
母親が不在で、父親だけで育ててきて、男とは違う娘2人と向き合う男親の気持ち。
そんな父親を見て育ち、再びその父親の元に舞い戻ってきた娘に2人。
その父親と娘独特の雰囲気がよく出ている。
女性の幸せとか、生き方とか。
ある意味、この頃は今よりも“こうであるべき”みたいな、いわゆる世間体とかも色濃い時代。
だけども、選択肢がないわけでもなく、それなりに自分たちの責任の中で起きることに向き合いながら人生を進んでいく女性の姿。
有馬稲子、こんな女性を悩ませる男や世間。
母親の不在から、その母親の影がチラついたり。
なかなか複雑な背景の中で織りなす芯に迫る家族の物語。
『東京暮色』、、、何とも的を得ているようなタイトル。
色々あっても、生きている限りは、日が暮れて、明日は来る。
それは、喧騒に明け暮れている東京の街も、どこの家族にも。
、、、だが、しかし。
この後半の出来事、色々背負っているものがあっても、心にイチモツ抱えていても、家族は家族の絆、と言いたい。
確かにそれも描かれているのだけど、そうでもないこともある、、、なかなか全てに納得して希望通りに生きていくのは難しい。
この最後の母親とのやりとり。
男は男で色々背負って生きてはいるが、家庭や女性に対してはどこか淡白。
どこまでいっても、そんな男や父親にはなかなか言い切れない、分かりきってもらえない女心もある。
一方で、母親や娘、女性同士のなかなかそうは言っても割るに割り切れない微妙な間柄、言いたいことは言えても、すべて解決するとも限らないモヤモヤ。
まさか、そういう展開になるとは思ってもいなくて、すごく印象的。なんか、心が抉られる。
やっぱり人間模様の映し方が圧倒的でスゴい、小津映画。
最近、昔のフランスの映画とかも観るようになって気付いたけど、この映画にしても、フランスの美しい女性が生きる映画と、この小津映画、なんかちょっと近い気がする。
※24年3月、映画オススメブログ、始めました。
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作品単発のレビューはここでやっているので、こちらは企画記事メインに挑戦したいと思います。
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