日本の悲劇の作品情報・感想・評価

日本の悲劇1953年製作の映画)

製作国:

上映時間:116分

ジャンル:

4.1

「日本の悲劇」に投稿された感想・評価

yumiko

yumikoの感想・評価

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戦後の、とある母子の物語。
現在の物語の中に、回想シーンや その回想当時の時事ニュースの映像や新聞記事が時々 出てきて、時代背景もわかりやすい。
しかし回想シーンやニュースの場面は 音が一切無く、ちょっとシュールな印象を持ちました。
夫を亡くし、子供たちのため、旅館で懸命に働く母親だったが、やがて子供たちに見捨てられてしまう。
でも決して薄情な子供たちとは言えない。
私が子供たちの立場だったら同じようにしてしまいそう・・・。
戦後は皆んなが大変な思いをして生きてきたのだなと、皆、強くならざるを得ない状況の時代だったのだろうと・・・。

佐田啓二さんがギターで弾き語る「湯の町エレジー」が 胸にしみます。

写真の物憂げな表情の女性が主人公ですが、たくましそうに見えて( 確かにたくましくはあるのですが‥)ボロボロ泣いてばかりのシーンが多かったです。

ラストが驚き!!
お墓のシーンと悲劇が起こる駅のシーン、そこに加わる駅員のアナウンスがすごく好き
木下恵介監督が、当時の社会的背景を踏まえて(東京裁判、三鷹事件、学生デモなど)実際のニュース映像を使いながら、敗戦まもない日本の姿を描いた素晴らしい映画。

敗戦後、二人の子供(姉弟)を抱える母親は、闇屋・温泉芸者など子供の目からみたら卑しく見える仕事をしながら、必死で子供たちを育てる。この母親を演じた望月優子は、役柄ぴったりの雰囲気を醸し出しており見事である。

温泉芸者の母親が客の男性に酔っぱらって抱きついている様子を陰から見てしまう弟の姿は、溝口健二監督の『赤線地帯』でも同様シーンがあったが、実母の醜い姿を見た子供のショックという子供側からの感受性を上手く描写している。

また、子供目線からだけではなく、母親目線から見た場面もある。貧しい村に母親が住んでいるという流しギター青年(佐田啓二)が母親に言及する件では、流しの青年に自分の息子の姿を重ねて母親(望月優子)は涙する。
子供の立場から、親の立場から、双方の気持ちを描いているあたりは、バランスを上手くとった物語となっている。

個人的に、木下恵介監督の作品は、当たり外れが激しいと思っている。
これは(特に後年の)木下恵介監督の実験精神が前面に出過ぎた作品は「外れ」と感じるが、独特の色彩感覚の『楢山節考』・『笛吹川』などは実験映画に見える。こうした実験的な作風はスクリーンの真ん中だけくり抜いた映画『野菊の如き君なりき』あたりから見られる。

ただ、「当たり」の作品となると『永遠の人』・『二十四の瞳』・『陸軍』などのように素晴らしい作品となる。オーソドックスに創られた木下作品の方が良い気がする。

この『日本の悲劇』は、途中で「無音の回想シーンを使ったりする手法」も見られるが、間違いなく「当たり」の作品であろう。

こうした日本映画の傑作群の一本に入るような映画を見逃してはならないと思う次第である。
『衝動殺人』を思わせるような厭らしい陰鬱さが垂れ流されて苦痛だったが、ラスト20分くらいから急激に画面が良くなる。
斜め下の階段からホームを歩く母親を撮ったカットはスゴい迫力。
この映画が嫌なのは、単純に母親と子供のどちらかを悪者にはできない点だ。
母親目線で見ると息子たちは恩知らずの極みだが、子供目線で見るとそれなりに母親を嫌悪する理由がある。
後ろ指をさされたり暴力を振るわれたり…あまつさえ姉などは「おめえの母親もパンパンだろうが」と悪ガキに強姦までされている。
しかし、母親からすると、子供を生きがいにしながら女手一つで頑張って育ててきたことに変わりはない。
そんな母親にも子供達は容赦ない。
過去の売春やでき婚について息子からなじられる母親。墓場で見捨てられるシーンの母親の哀れさ。
(見捨てられる場所が「墓場」というのがまた…)
「お母さんの思う様になるような、そんなだらしない息子達だったら今の世の中じゃ生きていけないなんですよ!
お母さんさも世の中を知ってるつもりでいるけど、お母さんが知っているのは酒と男の世界だけだ!バカだから!」
そんな言葉で罵倒する息子に対して、「久しぶりに"お母さん"と呼んでくれた」と力なく喜ぶ母親のやるせなさ。

一体、この母親の人生とは何だったのか。何のために生まれてきたのか。哀れで仕方ない。
強いて言えば、母親や英語教師の妻への反発からとはいえ、皮肉にも「男」を味方に付ける事で周囲より優位に立てる事を覚えた姉は、おそらく大嫌いな母親に近い人生を送るだろう。
「親子の繋がり」というにはあまりにささくれているが、子供から存在を全否定されるよりは救いがあるだろうか。
N

Nの感想・評価

4.0
戦争未亡人の母親は子のために一生懸命働いたものの、息子は養子に、娘は家出してしまい、辿り着いた母親の数奇な運命を描く。
挿入される戦後の事件だけでなく、この母子もまた戦争の爪痕であり、「日本の悲劇」の一端を担っていたのではないか。
やみこ

やみこの感想・評価

5.0

戦争によって全てを失った晴子が残された2人の子の為に、
闇屋や売春、女中などをしながらも必死に働いて子供を育て上げるが、息子は金持ちの家へ養子にいき、娘は好きでもない妻子持ちの男と駆け落ち。
度重なる不幸に消沈した晴子は..

戦後のシングルマザーに重点を当てた社会派映画。
台詞劇ではないかと思うぐらい台詞回しが上手い!

身勝手で薄情な子供達や兄夫婦、登場人物達。彼らも生きることに必死だから責められないんだけども、
母が頑張っても頑張っても報われない姿は泣けてきます。
最初の明るい人柄が途中から哀しみを帯びた幸薄そうな人柄に変わっていくギャップも素晴らしかった。

傑作!
kana

kanaの感想・評価

4.2
戦後の個人の生き方や価値観が転換したことによる悲劇。恩を着せあい恩を仇で返し合う母と子供、親戚、地域社会。誰もが自分だけを守るために行動し、発言している。娘と息子がそれぞれ母に対して「ばか」と言うのはとても衝撃的だった。自由に生きることと他をかえりみないことは違うと思った。
今までの価値観が覆された敗戦国、日本。戦後のどさくさに紛れ地を這いながら日本人は自分が生きるために土地や食べ物や欲望を貪りあうしかなかった。どうにか子供だけは這い上がらせる為には全てを捧げる親の生き方がそれを親が成し遂げた事も理解せず逆に見下す新しい世代。そんな急激な時代変化に対応せざる終えなかったところに敗戦国、の悲劇は数多生まれたに違いない。戦後70年以上も経ち日本の猛烈な復興全盛期を過ぎてすっかりと欧米的な功利主義に犯された現代日本人は今こそ歴史を振り替える為の記録的にも貴重な木下映画です。
当時の日本が置かれた親世代と戦後の新世代の溝をここまでリアルに伝える映画は、他に思いつかない。母親と子供達の双方の視点を描くことで、両者の悲しいすれ違いを浮き彫りにしている。子供の為に身を粉にしてまで尽くした母親の苦労が報われない事が、映画のタイトルに表れている。
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