日本の悲劇の作品情報・感想・評価

「日本の悲劇」に投稿された感想・評価

ちろる

ちろるの感想・評価

4.4
こんなに、こんなに苦しくて辛い映画があっていいものなのか、この思いがいつまでもこびりつきそうな壮絶な衝撃作。
今まで私が観てきた木下恵介監督の描く戦後の日本のストーリーは、割とドラマティックで微かな救いを見出せたりしたのだけど、どうだろうこれは本当にショッキングで観終わってしばらくは言葉が出ない。
どんなに苦労して、身を削りに削ってプライドを捨てても。
強者からは指先1つでなにもかもを奪われる。
身1つで子どもを社会に出ても恥ずかしくないかたちに必死で育てても、一人前になったとたんにつまはじきにされて、
「お母さんがお前を産んだことを忘れないでくれ。」
とだけが精一杯。
何度も転んで、傷だらけになっても悲観しなかったのはただ子どもが居たから。
娘、息子を責めることができるのならいいけれど、そこは流石の木下恵介監督。
じっくりと私たちに見せつける彼らの辛い回想シーンがもう言葉を失わせる。

生きる希望を失った哀れな母親がただの女になっただけの瞬間。
熱海の駅で呆然と立ち尽くしてこの老いた手の中には結局何も残っていないと知った女はもうすでに絶望でも苦しみでもなくただの空虚感だけだったのだろう。

戦争が悪いのか、戦後の悲劇の波に巻き込まれた女が悪いのか、それとも人間に元々ある欲が悪いのか。
世間のあまりの冷たさがグサグサと胸に刺さって、やはり人間は自分のために生きた方がいいのかもなんて悲しい結論がよぎってしまう。

流しでギターを奏でる佐田啓二の歌だけが彼女を包む温かさの塊のような気がして、あれが殺伐とした空気の中のほんの些細な救いなのかな、、
kaomatsu

kaomatsuの感想・評価

4.0
とにかく綺麗事では済まされない映画だ。

戦後間もなく、母と子(姉弟)が歩む、それぞれの人生。母(望月優子)は可愛い子供二人に近付こうとすればするほど、子はそれを鬱陶しく思い、母との距離を取ろうとする。母は闇屋や売春、温泉芸者などの、世間に後ろ指をさされがちな仕事ばかりに就き、子供はそんな母を忌み嫌っている。子供たちを食べさせるための、母の立場や境遇を察して、はいそうですか、分かりました、と納得するはずもなく、息子はある家の養子になると言い、娘は道ならぬ恋を口実に逃げていく。傷つけ合い、罵り合い、露骨な本音を浴びせ合い…本当に救いようがない、戦後日本の悲劇の集大成。でも、エゴを通さなくては生きていけない場面が多かっただろうこの時代に思いを馳せると、本当にやるせない気持ちになる。夢や希望、信頼、愛などの要素を一切排除し、市井の暮らしにおける人間の恥部をここまで容赦なく描いた木下恵介監督は、やはり日本映画史上最も信頼できるシネアストのひとりだ。メロドラマ的な構成の上手さにも舌を巻く。

この殺伐としたドラマの中、温泉宿でギター片手に流しをする佐田啓二の存在が、一服の清涼剤となっている。このイケメン流し、ストーリーとはほとんど関係ない存在だからこそ、彼の歌う「湯の町エレジー」がやけに心に染み入るんだろうな。望月優子扮するお母さんが彼に歌をリクエストしたあと、「お母さんはいるの?」「お母さんを大切にしなよ」(正確なセリフではありません)と語りかけるシーンは、子供たちにつれなくされた母の憂いが滲み出ていて、ほろりと哀しみを誘う。
過去備忘録


まさか 母親が あんな事になるなんて😢衝撃過ぎるΣ(lliд゚ノ)ノ
たま

たまの感想・評価

4.0
映画館で観れてよかったです
少女のようで母であり女である主人公の最後に見惚れてしまいました
木下恵介監督が、当時の社会的背景を踏まえて(東京裁判、三鷹事件、学生デモなど)実際のニュース映像を使いながら、敗戦まもない日本の姿を描いた素晴らしい映画。 

敗戦後、二人の子供(姉弟)を抱える母親は、闇屋・温泉芸者など子供の目からみたら卑しく見える仕事をしながら、必死で子供たちを育てる。この母親を演じた望月優子は、役柄ぴったりの雰囲気を醸し出しており見事である。 
温泉芸者の母親が客の男性に酔っぱらって抱きついている様子を陰から見てしまう弟の姿は、溝口健二監督の『赤線地帯』でも同様シーンがあったが、実母の醜い姿を見た子供のショックという子供側からの感受性を上手く描写している。 
また、子供目線からだけではなく、母親目線から見た場面もある。貧しい村に母親が住んでいるという流しギター青年(佐田啓二)が母親に言及する件では、流しの青年に自分の息子の姿を重ねて母親(望月優子)は涙する。 
子供の立場から、親の立場から、双方の気持ちを描いているあたりは、バランスを上手くとった物語となっている。 

個人的に、木下恵介監督の作品は、当たり外れが激しいと思っている。 
これは(特に後年の)木下恵介監督の実験精神が前面に出過ぎた作品は「外れ」と感じるが、独特の色彩感覚の『楢山節考』・『笛吹川』などは実験映画に見える。こうした実験的な作風はスクリーンの真ん中だけくり抜いた映画『野菊の如き君なりき』あたりから見られる。 
ただ、「当たり」の作品となると『永遠の人』・『二十四の瞳』・『陸軍』などのように素晴らしい作品となる。オーソドックスに創られた木下作品の方が良い気がする。 
この『日本の悲劇』は、途中で「無音の回想シーンを使ったりする手法」も見られるが、間違いなく「当たり」の作品であろう。 

こうした日本映画の傑作群の一本に入るような作品を見逃してはならない気持ちを強く持たせてくれる木下監督作品である。
t

tの感想・評価

4.0
冒頭から戦後混乱期のニュース断片が吹き荒れて陰鬱な話が始まって面喰らうが、期待以上の面白さ。楠田浩之のドリー撮影が全編冴えてわたってる(特に墓地や駅ホームのシーン)上に、望月優子は不憫だが感情を失くしたような子2人があまりに無慈悲で良い。教え子の桂木洋子に恋する上原謙も◎。彼が彼女の家を訪れる辺りのシークエンスは、木下流のナチュラルな時間軸移動やブレッソンみたいな編集含め充実度が半端ではない。往時の熱海の街並みも堪能できる。佐田啓二が流しのギター弾き。
アサギ

アサギの感想・評価

4.7

①2018/02/02墓場の5分35秒間の長回し、名シーンでした。素晴らしい映画だった。

②2018/09/12
時は戦後の、ある母子の物語。
現在の物語の中に回想シーンやその回想当時の時事ニュースの映像や新聞記事が時々 出てきて時代背景もわかりやすい。
しかし回想シーンやニュースの場面は音が一切無くちょっとシュールな印象を持ちました。
夫を亡くし子供たちのため旅館で懸命に働く母親だったがやがて子供たちに見捨てられてしまう。
でも決して薄情な子供たちとは言えない。
私が子供たちの立場だったら同じようにしてしまいそう…。
戦後は皆んなが大変な思いをして生きてきたのだなと、皆、強くならざるを得ない状況の時代だったのだろうと…。

佐田啓二さまがギターで弾き語る「湯の町エレジー」が 胸にしみます。
写真の物憂げな表情の女性が主人公ですがたくましそうに見えて( 確かにたくましくはあるのですが… )ボロボロ泣いてばかりのシーンが多かったです。
ラストが驚き!!
お墓のシーンと悲劇が起こる駅のシーン、そこに加わる駅員のアナウンスがすごく好き
『衝動殺人』を思わせるような厭らしい陰鬱さが垂れ流されて苦痛だったが、ラスト20分くらいから急激に画面が良くなる。
斜め下の階段からホームを歩く母親を撮ったカットはスゴい迫力。
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