春琴物語の作品情報・感想・評価

「春琴物語」に投稿された感想・評価

くずみ

くずみの感想・評価

4.3
道修町の薬種問屋の内をたっぷりと見せる。“モダンタイムス”みある加工場や、引き出し収納の奉公人箱膳など、細部まで作り込む。「こいさん」デコデココーデは歩く美術品。女性の髪型がバリエーション豊か。

伊藤熹朔、佐野繁次郎(船場出身)、武原はん、宮城道雄、甲斐庄楠音に若き木村威夫と、盤石の布陣で築く『春琴抄』。
それを受けて立つ京マチ子。眼を閉じてても美しい。地唄舞『雪』と、手探りで歩みながらも絵になる姿勢を保つ技量に関心しきり。

佐助の決行までに、これでもかこれでもかと何カットも費やす。いいからひと思いにやってくれ〜!と身悶え。
☆☆☆☆

今では眼が見えなくなってしまったお琴が、雪の冷たさを思い出しながら舞う場面の美しさが白眉。

作品中に佐助が物干し場で三味線を練習する場面が有り。同じく伊藤大輔監督作品・主演京マチ子の名作『いとはん物語』を思い出す。
美術監督は別なれど、音楽も同じく伊福部昭。
あちらはカラー作品で、セット美術で描かれた夕日の美しさが悲劇性を増幅させ。こちらの涙を搾り取られたものだった。

お琴の美しさを妬むのが杉村春子。
もう素晴らし過ぎる(^.^)
いつまでもこの女の嫌味顔を観ていたいと思わせてくれる。

そして映画は終盤の《その場面へ》

分かりきっているにも関わらず、ドキドキか止まらない。
作品中に何度も重なるお琴と佐助の手のカットこそ、2人の気持ちの通い合い。
単なるその繰り返しと言えるのに、《その場面》の後に起こる、なかなか重ならない2人の手。
ただそれだけで、何故にこれ程までに感情を揺さぶられてしまうのか?
まさに悲劇の名匠伊藤大輔の真骨頂と言っていいクラシカルな演出に酔わされしまった。

2018年11月9日 国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU (旧国立近代美術館フイルムセンター大ホール)
yuka

yukaの感想・評価

3.6
激ヤバ演出のピークは意外と序盤にあった

雪の中で踊るお琴の一連のシーン

雪はいつのまにか桜の花びらに変わっている
現在のお琴と幼少期のお琴が重なる
さくらさくらの曲と映画音楽が重なる
桜の花びらは雪に戻り、現実世界に戻ってくる

ここは最高だったがあとはちょっと感傷的すぎるかなー
mingo

mingoの感想・評価

3.8
先日観た衣笠の「お琴と佐助」に比べたら劣るが、京マチ子の盲目の演技がこちらでもひかる。
花柳喜章は残菊物語も良いが、本郷功次郎に負けず劣らずのオドオドさが様になっている。杉村春子はどこまでいっても杉村春子。
谷崎文学は映画でも良いなぁと再認識できる一本。
えがったー!

ナイス谷崎トリビュート。

なんという歪んだ美しさ!
男の幸せは恋愛成就とかセックスでなく、一生を捧げたいほどの女人と出会い尽くすことかもね…

昔、友人が言ってた「男は惚れた相手にはマゾヒスティック」という意味を噛みしめ観賞してました。

ふたりがお琴を連弾?するシーンが素敵だった~
男の一生。最初の邂逅シーンから泣く。

盲のマチ子が喜章の膝をにぎにぎしたあとの仕草の湿度最高。溝口の春琴抄は死んだらあの世でみたい
これまでに6度映画化されている「春琴抄」の2度目の映画化作品。島津保次郎(田中絹代)版、衣笠貞之助(山本富士子)版、新藤兼人(渡辺とく子)版と比べると、これが一番 “文芸大作” っぽい。伊藤大輔監督のメリハリのきいた演出はさすが昭和29年と思わせるし、京マチ子の春琴はひたすら美しい。針で目を突くシーンもわかっちゃいるのに最高の緊張感。ただ、そうした日本映画黄金期の匂いがプンプンする反面、決定的にマゾヒズムに欠ける。支配と隷従の愛に欠けている。