狂乱の大地の作品情報・感想・評価

「狂乱の大地」に投稿された感想・評価

No.475[政治を巡る狂気と混乱の寓話、グラウベル・ローシャ特集③] 90点

南米の架空の共和国エルドラドの政治闘争を巡る狂気と混乱の寓話であり、ローシャ渾身の"論争的扇動的映画"。主人公はジャーナリスト且つ詩人という軍事政権に真っ先に目を付けられそうな経歴の男パウロであり、彼が政治闘争に猪突猛進する姿からブラジルの延いては世界に起こりうるの問題を鋭く提示する。

パウロは保守的政治家の庇護下にあって首都で享楽的な生活をしていたが地方の活動家サラに出会って彼女の活動を支援するうちに地方で人気の議員ヴィエイラに与するようになる。しかし進歩的だったヴィエイラも知事に当選するとしがらみに捕らわれて動けなくなり、パウロは失望する。パウロが首都に戻って享楽的な生活を楽しむが、国の現状を確認してヴィエイラと再び組むことにする。政治とは結局は中間層のお祭り騒ぎであり、言葉に固執して批判者に反政府的とレッテル貼って殺してしまうことで本当に"政治"が目を向けるべき部分から目を背ける。政治とは狂乱のゲームなのである。

話自体は政治についての説教臭い話で退屈なのだが、画面にはそれを魅せ切る力があり、テンションの緩急の付け方が非常に上手い。途中の劇中劇のとこなんかローシャ以外がやったら説教臭さの方が上に出て見るのも耐えられない代物になったんじゃないか。冒頭に戻ってくるラストも反則的に面白い。

東欧諸国然り南米諸国然り抑圧されてる方が面白い映画が出てくる気がするんだけど、やっぱり抑圧はされないに限るね。題名に相応しい"狂乱"の映画だった。
Ryosuke

Ryosukeの感想・評価

4.1
ちょっと前評判から期待し過ぎていたので若干拍子抜けしたが充分良作であった。
象徴的な表現と力強いリアリズムが入り混じる。
縦横無尽に動く手持ちカメラによる撮影が、テンポよく繋ぎ合わされることで、ダイナミックでエネルギッシュな映像となっている。接写は役者の温度を感じさせる。
パーカッション主体の劇伴も映画に勢いをつける。引きの長回しも挟むことで緩急も意識されている。
カオス感、画面内のやかましい人物の動きなど、「フルスタリョフ、車を!」を思い出した。影響元が案外ここらへんにもあったりするのかな。
映像的な刺激のために話の分かりやすさは完全に犠牲になっており、なにやらある程度はっきりしたストーリーはあるようだが良く分からないので若干のもやっと感はある。畳みかけるようなセリフと政治的な主張に溢れており、字幕をまともに追うのは大変。
音の使い方にも遊び心がある。会話シーンから大胆な引きのロングショットになっても会話の音声にまったく変化が無かったり、同じ会話や音楽が続いている中で場所が変わっていたり、暴力が行使されるシーンで音声が銃撃戦の音に差し替えられたりと挑戦的。ボイスオーバーなのか画面上の人物の発声なのか曖昧になるようなシーンもある。お祭り騒ぎがプツッと静まり返り、メインの人物の会話のみが響くシーンは印象的。
ジャンプカット、イメージの断片の組み合わせ、ぶつ切りの妙な編集、カメラ目線のセリフ等々もブラジルのヌーヴェルヴァーグだなあという感じ。
過剰な露光によって白飛びする場面もあり、映像のエネルギーを増幅させている。
ラストの細かいイメージの組み合わせで構成されるシークエンスは怒涛の勢いでやはり圧巻。政敵のアップの邪悪さ。冒頭のシーンのイメージがここで再登場するのも劇的。
buccimane

buccimaneの感想・評価

4.0
架空の国の話な割にはまるでノンフィクションのような順当というかリアルな進行だけど凄いテンション高くてこの日4本めだったけど集中して見た。
かと思うと突然めっちゃ静かになる時があってハッとる。
民衆サイドの候補者がいざ当選するとなかなか思うようにいかなかったり2度めの選挙の時は自分の意思でなく担がれてるだけな気になってヤケクソ気味になるのとか分かるわ〜。
女性ジャーナリストさんは倍賞千恵子さんぽさあった。
しかし主人公のやたらモテて美女とチューしまくるのはムカつくな〜。
milagros

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4.3
あらゆるイデオロギーを宙吊りにしながら、ぐいぐい引っ張っていく映像の力強さ。編集がすごい快感。
腐敗と希望を繰り返すブラジル社会を突き破るだけのことはある。
TOT

TOTの感想・評価

4.4
架空の国の偉大な寓話。
高邁な理想の堕落、希望を託しても代わり映えしない指導者、地べたを転がる民衆の言葉。
無為。無為。無為。
広がる絶望感、音楽と銃撃の狂騒の果て、勝者は雷に打たれたように笑い、敗者は叫び硬直する。
‪肉迫のクローズアップ、緩やかなロングショットの鮮やかな対比。
ラストは矢継ぎ早なカットの応酬と銃撃、台詞がカオスに交錯して圧巻。
そぞろ歩く人物を遠近に、または横に、固まって静なるものと配置するカメラが異様にクール。
男が男に未来を託しては裏切られ、敗れる関係はやおい的でもある。
いやぁ面白かった‬。
傑作。
nagashing

nagashingの感想・評価

4.0
これはすごい。ドラミングと銃声による熱気と力強さ。そして、なんといっても終盤のフラッシュカットが壮絶。けっきょく理想も人生もそこなってしまった主人公の半生が一瞬で回顧されることで、そのはかなさと空虚さがうきぼりになる。勝者のズームインと敗者のトラックアウトの対比も鮮烈。
紫色部

紫色部の感想・評価

4.0
2018.5.21 イメージフォーラム

緩急/騒乱の傑作。既出の映像の走馬灯的反復によるカタルシスはやや反則に思えなくもないが…
話にはなーんの興味も持てないので途中からだれるのだが、手持ちカメラ&クローズアップで構成される画面はなかなか良い。こう書くとやってる画面はほぼ深作って感じ~
人をうろうろ歩かせたらローシャの右に出る者は居なかろう。

ラスト付近の高速カッティングは無茶かっこいいのと浜辺に刺さる巨大な十字架のシュールレアリスム感がサイコー。
ローシャの中では『アントニオダスモルテス』に次ぐ出来かなー
3月14日は43歳で早世したシネマ・ノーヴォの牽引者グラウベル・ローシャ監督の生誕79周年に当たります。

発展途上にあったブラジルの映画界において、フランスのヌーヴェルヴァーグと同様に"シネマ・ノーヴォ"という新たなムーヴメントを巻き起こし、革新的な作品で世界の映画シーンに一石を投じたローシャ監督。
ゴダールをして「もっとも新しい映画監督の一人」と言わしめ、
今からちょうど半世紀前の1967年に公開された本作はカンヌ国際映画祭にてルイス・ブニュエル賞、国際映画批評家連盟賞などを受賞し、その名声と"シネマ・ノーヴォ"の確固たる地位を築き上げました。

本作はブラジルのフォークロア的下地を基に形成された現代政治寓話ですが、舞台は架空都市エル・ドラド。
エル・ドラドといえば16世紀にスペイン人が挙って追い求めた伝説の黄金郷であり、
この裏側にあからさまなブラジル政界批判を盛り込んだ作風は、当時の軍事政権下の厳しい検閲を免れる意図が挙げられます。

詩人でジャーナリストであるパウロは野心的に変革を求め、聖職政治家ディアスや民衆のリーダーである地方議員ヴィエイラ、資本家フエンテスの元へ次々に仕えるものの、
闘争の火種は失意のもとに潰え、その挫折を時に荒々しく、時に繊細なタッチで描き出します。

理想と現実の狭間で苦悶し、どれだけ権力者の助力で抑圧された人々の自由と解放を扇動しようとも、結果支払われる犠牲は決まって搾取される側の弱者であること。
虚飾と怠惰にまみれた上層社会の内部をアヴァンギャルドな手法で暴き出し、
回想から夢想、イデオロギーに至るまで、交錯する映像は鮮烈なまでに混沌とした狂乱の心象を構成していきます。
それはまるでローシャ監督の根幹的「怒り」に直結するかのよう。

土着音楽をメインとする宗教儀式の歌と打ち鳴らされる太鼓のリズム、そして激しい銃声音は、終演後も暫し鳴り止む気配がありません。
ブラジル映画界の至宝にしてブラジル版ヌーヴェルバーグ「シネマ・ノーヴォ」を代表する映画監督グラウベル・ローシャのアヴァンギャルド社会派政治ドラマ。

主人公のジャーナリストであり詩人のパウロは保守派の大物政治家の側近だったのだが、地方のリベラルで革新派のヴィエイラの政治思想に共鳴して彼と政治活動を共にする。しかし、このリベラルな議員さんも結局は変革を全然できない。そんなんだから主人公のパウロはこの人も捨てて、首都に戻り今度は大金持ちの資本家フエンテスと行動を共にするのだが・・・・。

さすがブラジル。音楽が素晴らしい。オープニングからブラジルの民族音楽がグルーヴィー。その後もジャジーなドラムの乱れ打ち。不思議と銃声までもが音楽的でパーカッシブ。

映画の構成としては過去と現在など時制がいろいろ飛び交い、幻想的なシーンも交じり合う。

特にラスト近くは映像のカオス。過去、現在、演説、言葉、銃撃、バイオレンス、政治思想、が入り乱れた混沌の世界が描かれる。

拳銃を持ち、倒れそうになりながらも立ち続ける主人公パウロをロングショットで映す場面が美しい。