ミルクの作品情報・感想・評価

「ミルク」に投稿された感想・評価

netfilms

netfilmsの感想・評価

3.9
 高校を卒業したばかりのユスフは、何よりも詩を書くことが好きで、書いた詩のいくつかを文学雑誌で発表し始めている。しかし彼の書く詩も、母親のゼーラと共に営んでいる牛乳屋も二人の生活の足しにはなっていない。そんな中、母と町の駅長との親密な関係を目にしたユスフは当惑する。ユスフ三部作の二作目にして、既におっさんになりはてていた一作目のユスフから思春期まで退行した三部作の第二弾。冒頭、何やら物書きに夢中になる老人が視界の隅に3人の男女を見つける。3人に視線を合わせることなく蒔きを持たせた老人は、宙吊りにした女性の口から大蛇を取り出すことに成功する。セミフ・カプランオールの映画においては登場人物たちはみな寡黙で一人もおしゃべりが出て来ない。静か過ぎる静けさの中で、クローズ・アップで据えられたショットは何よりも強度を放つ。音楽も余計な演出もないシンプルな物語に一気に引き込まれていく。青年は奥手で自らの気持ちも上手く表現出来ず、思いを詩に込めることしか出来ない。彼は牛乳屋で僅かばかりの生計を立てながら、詩人になることを夢見ている。牛乳の配達はしっかりやるけれど、車のメンテナンスなどのこちら側の事情にはあまり興味を示さない。おそらく他の人たちは高校を卒業するタイミングで就職して夢を諦めるのだろうが、ユスフ青年は決して夢を諦めようとはしない。

 今作の骨子となるエピソードは次作『蜂蜜』における幼少期の牛乳嫌いのエピソードに呼応する。彼は牛乳屋という職業を天職だとは考えておらず、外の世界を夢見ている。生活のために茶摘みから牛乳屋に転身した母親とは、決して交わることはないビジョンの差異が来たるべき展開を予感させる。彼の夢を後押しするように見えた母親が突然、母親の役割を放棄する。その瞬間に感づいてしまう思春期のユセフ少年が実にいじましく映る。ユスフ少年は真実を知ってしまった時、牛乳屋の配達の途中であるが、彼の牛乳配達は一向に進むことなく、最後には癲癇の発作による交通事故であっけなく終わりを告げる。そこからは母親の痕跡を追いかけるように、悲しみに繋がる無慈悲な追いかけっこが始まるのである。癲癇の発作からスピリチュアルな瞬間に達する一連の流れはカプランオールの真骨頂である。ユスフ少年は自ら迷宮の中に押し入り、そこで現実とは違う霊的な体験をする。『お引越し』の田畑智子が両親の離婚で森の中を彷徨い歩くうちに無理矢理に成長の機会を迎えたように、今作でもユスフ少年は大人に対する一抹の不安と希望を抱えながら、徐々に大人へとなっていく。

 それにしても映画の中で綴られる物語には毎回感心する。人間の記憶というのは本来こういう断片的なものであり、大きな物語には繋がらない。その時の温度や湿度や風向きは覚えていても、なかなか台詞までは覚えていない。自伝的物語を設定する際、普通は美談で物語を埋めようとするのだが、セミフ・カプランオールはあえてそれをしない。だからこそ断片と断片はしっかりとつながることなく、ぶっきらぼうにくっついていく。
アメリカ映画のミルクと間違えた!!

三部作のうちの2作目。
音楽はなく、セリフも少なくて静か。
omarushi

omarushiの感想・評価

4.2
「卵」「ミルク」「蜂蜜」の順に鑑賞。静けさの中で、ユスフの揺れ動く心情が見事に描かれる。音楽もなく、台詞も少ないが、心を打つシーンが数多い。例えば「蜂蜜」、蜂蜜を採りに行ったまま戻ってこない父親を待ち続け、不安と寂しさを抱えたユスフが、バケツの水に写った月を何度もすくい上げようとするシーン。自分ではどうする事も出来ないもどかしさを表現するシーンとなっている。さらにラストシーンでは、大好きだった自分の理解者である父の死を知り、父との思い出に溢れた森で一人大木の根元で横たわるユスフ。いつまでも父と一緒の時を忘れずに大切に心に留めておきたい。父との別れを、いつかの蜂蜜の甘い香りと共に心の奥にしまいこむ様に目を閉じるユスフの幼く切ない想い。「ミルク」、青年期のユスフが母の中の女性の面を見る事の葛藤と抵抗感を、ナマズを抱きしめへたり込むシーンで表現している。母の恋人が獲ったであろう鳥の羽を毟りながら微笑む母の前で、ユスフの獲ったナマズに対して大した感心も寄せない。ユスフは憤りや抵抗感のなか、力なくナマズを地に落とす。父の存在を忘れられないユスフにとって、母の行為が許せなかった。そしてユスフは母との決別を決意し、詩人として一人で生きて行く決意をする。「卵」、母の葬式のため故郷へ帰るユスフの前に、母の世話をしていたアイラが現れる。葬式が終わり、街に戻ろうとするが、一人遺されるアイラの事、今までの母や父への想いに戸惑い、慟哭する。ラスト、帰ったはずのユスフが家で朝食を食べながら、アイラと微笑み合うシーンは、ユスフの父と母への想いに区切りをつけ、新たな一歩を踏み出す清々しさに溢れるシーンとなっている。ハリウッド映画のような派手な演出で観客を惹きつけるのとは一味違う、静謐のなかで激しく揺れ動く心情を描いた素晴らしい作品。
ユスフ三部作の2作品目。
寝不足の時に観るべき映画ではない。
退屈なわけではないが、とても静的な映画。
最後のワンシーンの意味がわからなかった。
あきら

あきらの感想・評価

3.4
個人的に先に観ていた蜂蜜が良かったのでちょっと期待し過ぎたかも

ユスフの生活がすごく変わっていたのが切なくなった
トルコ映画・ユスフ三部作の二作目。
時系列に順番通りに観ることを優先しています。

幼少期を経て青年と成長したユスフが描かれている。
相変わらず音楽に頼らない、自然の音を大事に生かしている印象を終始感じました。
派手さも基本的にはありませんが、初っ端は驚かれてしまいましたね(^^;
全体的に美しい映像を拝めます。
逆に言えば動きの少ないシーンが多いのですが、シーンのひとつひとつに風情がある。

何度か観ないとメッセージの汲み取りを疎かにしてしまうかもしれない。
淡々さを極めていながらもシュールさが見え隠れしていて、度肝を抜かれたりします。
次の作品も内容を忘れないうちに観たい。
otom

otomの感想・評価

3.7
ユスフ3部作『ミルク』。 J( 'ー`)しカァチャンな一本。これも良作。
Tyga

Tygaの感想・評価

3.8
「サイドカーに牛乳」

冒頭、衝撃的すぎて3回観た笑

少年から男に変化していく様を描いている。
父の不在を、序盤に特に強く感じる。

詩や無花果といったイスラーム的なモチーフと蛇などの西洋的なモチーフが混ざり合う感じが、トルコという感じでいい。

1作目の女の子が違う役で出ていた。1作目でアイラにユセフが注いだ眼差しの意味がよりわかる、というか統一される。
ユスフ3部作の2作目。ユスフの青年期を描く。
映像の美しさはさすがだが、静かに物語が進んでいくので、ちょっとでも集中力を切らすと内容が頭に入ってこなくなる(笑)
1作目に繋がる母親との関係性、少女との出会い、詩人への志を想像しながら見ると、より楽しめた。
cyph

cyphの感想・評価

4.2
ヨーロッパぽい気もイスラム圏ぽい気もアジアぽい気もソ連ぽい気もする不思議なトルコ 砂ぼこりと白い塗り壁とタイルと山脈と草原、青みがかった風景たちと環境音 鳥のさえずり映画と言ってもいい 3部作の2作目と知らずに観てしまったので1作目から観たい 牛乳配達と詩というモチーフもなんだかよかった
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