魂を救え!の作品情報・感想・評価

「魂を救え!」に投稿された感想・評価

継

継の感想・評価

4.0
パリへ向かうTGV(高速鉄道)で税関検査に引っ掛かったマチアス。一時は身柄を拘束されるも無事に解放、だがパリに着いた彼は拘束中に没収されていた自身のスーツケースに、ミイラ化した人間の頭部を見つけて...。

冷戦時代の政治サスペンスに巻き込まれた主人公。
外交官の息子という周到な設定や、初めの舞台がベルリンではなく旧西ドイツの首都ボンという事、更にヤルタ会談の裏話で始まる幕開けがル・カレの書くスパイ小説のようで奮っている。

140分の長尺を幾つかに章立てして進むストーリーは、法医学研修生としての知識を武器にミステリーの解明に全集中でww挑みながら、その一方で如何にもフランス映画らしいと言うか、25歳の青年としての日常〜恋愛模様という, この監督が今作の後に軸に据えていくテーマにも同等に近い時間を割いて二律背反するマチアスの苦悩を描いていきます。

歴史サスペンス+法医学スリラー+青春ラブロマンス。
ライアン・ジョンソンに『ブリック/消された暗号』という学園モノ+ノワールな映画があって“あんなカンジかな((o(´∀`)o))?”と思いきや、当たり前だけど全然違うテイスト。

死者の尊厳、その上に成り立つ現代を生きる者の日常ー。
原題『la sentinelle』は歩哨の意。外交駆け引きの末, あまりに曖昧に線引きされた目に見えぬ国境線をめぐるドラマ。
現代の人間関係に歴史が干渉し引き裂くさまをマチアスとその友人達を介して描き、過去が, 戦争が, 終わらずに地続きで現代に影を落とす構図を浮かび上がらせる。

友人と故意にバスを乗り過ごして街中を走って戻るシーンの導入とか,
人間関係に徐々に亀裂が生じていく過程…。
ディテールまできっちり描かれる人物の心理・相関, ストーリーの動線・支流の捌き方にソツがなくて, これが処女長編とはちょっと思えないくらいに観応えがありました。

室内にしろロケにしろ、全体に光度を抑えた映像。
色相もモノクロとは言わないけれど寒色系でまとめられた薄暗い印象。統一感を感じた一因は恐らくこの映像によるものだけど、邦題とは裏腹に思いを胸に秘めて静かに使命感に燃えるタイプのマチアスは恋愛にも生真面目で仲間内でも良いヤツだけどちょっと暗い田舎者なキャラ。映画は当然マチアスを主眼に映すので、自ずとそのキャラに染まって余計に薄暗い印象が際立ちます。
軽妙な会話のオシャレでロマンチックなフランス映画とはそういう意味で一線を画すると思うので、好き嫌いは分かれる映画ですョ(+_+)と、一応予防線を張っておきます(笑)。
イマイチ掴めた感じがない。

1943年のチャーチルとスターリンのヤルタ会談についてのお話から始まる。「どこの国を○○:○○の比率で」みたいな話の内容で、為政者たちは世界をピザを切るみたいにわけて所有しようとしていた。結果的に冷戦という世界が真っ二つに分かれる状況にまで世界は到達。
映画は91年か92年くらいが舞台っぽいので、大体ソ連が崩壊した年。法医学生の主人公マチアスがビザが無効と不法入国の疑いをかけられたことで何故かミイラ化した首を手に入れてしまい、それがどこの誰であるか突き止めて、弔おうとするというのが一応サスペンスというかミステリーというか、話の核になっている。
列強が他国を切り分ける歴史の狭間で死んだ人たち、その遺体を文字通り切り分けて分析することで、弔い、忘れられること(揉み消されること)から抗おうとする。
全編通して国境、国籍、部屋割りや、人生を楽しんでいる人と楽しめない人の二種類の人間がいるという話など、境界線を引くという話が多々出てくる。
最終的には部屋の境界に入る入らないで、殺人という決定的な出来事が起きるしその後マチアスは国防省高官のいる場所に入れない。マチアスとウィリアムは諜報活動の如く互いの部屋を探り合うし、入ると入らないのドラマでもあると思う。
マチアスとウィリアムは鏡写し。

マチアスは死者に取り憑かれながら、同時に生者の女性に取り憑かれる(普通に言えば恋する)。
手のアップも多めだったような気がする。マチアスの手がほとんど動かなくなるのにも意味がある気がする。開く閉じる以外の選択肢がない→極端な状態???
Jeffrey

Jeffreyの感想・評価

2.8
‪「魂を救え!」‬

‪冒頭、外交官の父。
旧西独からパリへと向かう。法医学研修生のマチアス。税関で身柄を拘束、後に釈放、スーツケース、パーティ、共同生活、部屋探し、音楽教室、ロシアの情報や、解体。

そして今、白いガーゼに包まれたミイラ化した人間の頭部が発見される…

本作はアルノー・デプレシャンの冷戦末期のパリを舞台に研修生を悩ませるミステリアスな政治サスペンスを描いた青春エンターテイメントで、92年カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された映画だ。

この度、初鑑賞したが140分間の中に学生の日常と政治性、青春を切り取った秀作だ。

これが長編第一作目にあたる作品で、冒頭から不穏な空気で始まる。よくもまぁ長編デビュー作でこんな題材の作品を撮ったな。

正直退屈でたまらなかったが若い世代の人間がこのような政治的な映画を最初に持ってくるのに関しては凄いと思えるし、完成度は中々のものだった。

まず、リッペントロープ=モロトフを彷仏とさせる第二次大戦の闇の外交駆け引きの裏話を語る場面から始まり、後の東西冷戦の国家間のエゴイズムの波に押され、日常生活を壊されてゆく1人の青年の姿を淡々と映していく。

物語は外交官の息子で法医学研修生のマチアスが旧西ドイツの首都からパリへと戻るところから始まる。

彼は列車の中で検税を受け、怪しい包みをパリまで持ち帰る事になる。その中身はミイラ化した人間の頭部である。その人物の謎を突き止めたいと言う衝動にかられたマチアスは集中的に調べ、東西冷戦の政治の泥沼への足を運んで行く…と簡単に説明するとこんな感じで、

この監督一応日本に来日していたらしい。

この映画で良かったのはスパイ映画のようである事と主人公の青年を演じたサランジェと姉マリー役のドニクールと姉の友人ナタリー役のドレヴィルの芝居だろう。

本作は生まれた年に製作された91年の作品で、この時代は王道のラブロマンスや馬鹿騒ぎする青春映画が大量生産されたが、本作はその王道を蹴散らし政治と恋愛と青春を融合させた風変わりな1本だ。

まず主人公の父が外交官と言う設定はあまりにもミステリーを助長するし、徐々に追い込まれていく主人公の姿が見ていて滑稽だった。

この監督、非常に好き嫌いが分かれそうだが、本作は突然巻き込まれた国際スパイを謎解きスリルを与えた秀作だと思う。‬


‪を救え!との題名を理解した。‬
一

一の感想・評価

-
ミステリアスなスパイ政治劇でもあり恋愛を含んだ青春映画でもあり、やはりとらえどころがない。突然見知らぬ何者かの頭部を受け取った法医学生の主人公マチアスの行動原理はまず「死者を敬意を持って葬る」ことであり、まさに"頭の中をのぞく"ことで死者に接近していく。解剖シーンはギョッとするほど克明。冷戦後政治的に暗殺されたらしい頭の持ち主に対し、マチアスは冷戦下で外交官として奮闘した父への思いも重ねつつ、その死を握りつぶさせまいと躍起になっていく。この過剰な行動・思い入れにグッときちゃう。おせっかいな使命感に駆られる人物が好きなんだ。マチアスが官僚の友人と同居するアパート内が見事に冷戦構造になっているのも面白い。地球儀の扱いもわかりやすく対照的。
Seba

Sebaの感想・評価

-
やっぱり初期のデプレシャンは撮り方がすごい。

ってか、これEric Gautierだと思って見てたんだけど、撮影シャンプティエやった。。。なるほど。。。
はぬー

はぬーの感想・評価

3.7
暗くテンションも低いが、デプレシャンらしく追い込まれる主人公が最高。
ちらっと映る若いマチューがかわいい。
netfilms

netfilmsの感想・評価

3.6
 1991年のある日、マチアス・バリエ(エマニュエル・サランジェ)は父の死をきっかけにして、ドイツのボンからフランスのパリへ列車で向かう。外交官の友人ジャン=ジャック(ティボー・ド・モンタランベール)を従え、楽しい旅になるはずだったが、パスポートを見て検閲官の顔がみるみる曇る。いきなりパスポートの書類に不備があると言われ、別室に連れて行かれた彼は、大柄な税関検査員の過激な取り調べに鼻血を流してしまう。やがて無罪放免となり、ホテルに着いたマチアスはスーツケースを開けて驚く。何とそこには白いガーゼに包まれた人間の頭部が紛れ込んでいた。今作はドイツからパリへの旅の途中で、思わぬ事件に巻き込まれた主人公の数日間を描いたスリリングな犯罪映画で、ある政治的思惑に翻弄される男の恐怖を描いた不条理サスペンスである。スーツケースの中に人間の頭部を入れたのは誰なのか?この人間の頭部がいったい誰なのかというミステリーを縦軸に据えながら、デプレシャンはあえてこの映画が純粋なミステリー映画ではないと嘯く。

 ホテルで人間の頭蓋骨に気付いてから、マチアスは姉のマリー(マリアンヌ・ドゥニクール)と元カノ(ヴァレリー・ドレヴィル)と再会する。この場面はまるでトリュフォーの『ピアニストを撃て』へのオマージュのようにも見える。シャルリの弾くピアノの伴奏に併せて歌ったあの名場面のように、今作ではオペラ歌手の姉と元カノの暗唱をマチアスは助ける。翌日も人間の頭蓋骨を警察に届けるのかと思いきや、彼はまったくそうしない。法医学の研修生として実習を受けながら、コインロッカーに人間の頭蓋骨を隠す。この法医学教室の同僚研修生には、後にデプレシャンの分身となるマチュー・アマルリックや、デプレシャンの弟であるファブリス・デプレシャンがいるのも見逃せない。デプレシャンはミステリーを縦軸に据えながら、そこに共同生活や恋愛など実にフランス人らしい横軸を付け加えて行く。フィルム・ノワールのようにギャング団もファム・ファタールも一向に出て来ないが、迂回に迂回を重ねながらジャンル映画の神髄へと徐々に駒を進めて行く。突飛なストーリー展開と後半主人公に訪れた危機はまさにB級犯罪映画そのものであるが一つ明確に違うのは、あらゆる活劇的展開の排除であろう。デプレシャンの映画ではアクションは簡略化され、巧妙に回避される。今作で運動と言える運動は、マチアスとデプレシャン弟が法医学教室へと歩みを進めた場面くらいだろう。
Sari

Sariの感想・評価

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1998/02/01 映画館

アルノー・デプレシャン映画祭にて
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

3.0
【デプレシャン特集4】
妹にDVDを貸すので、急遽鑑賞。デプレシャンが苦手な私でもそこそこ楽しめ、尚且つデプレシャンらしさが出ている作品だった(個人的に『ジミーとジョルジュ』が一番マシなのだが、あれは彼のフィルモグラフィーの中で異端だ)。

ドイツとフランスの国境移動中の青年二人が検問に引っかかる。そして、一人はどこかに連れてかれ、もう一人のバッグには何故か生首が仕込まれていた!

通常の映画なら、ハラハラドキドキサスペンスになるところを、映画的表現を棄てた男デプレシャンの手にかかった途端、全く別の側面を魅せる。

なんと、『リバーズ・エッジ』のような、死体に惹きこまれた男が死から生を見いだす様を描いた心理劇となっていた。

そして、恐らくデプレシャンはアンドレ・バザンのミイラの話を非常に意識して本作を撮ったのだろう。ヒトは死を通じて、時間から解放され、魂も解き放たれる。写真や映画は半永久的に死を時間に閉じ込め、魂が檻に幽閉されてしまう。古代エジプト人は、死体をミイラにし、ピラミッドの奥底に保管することで、《魂を救うこと》、そして《故人との想い出を保存する》というジレンマを克服した。

閑話休題、本作は、謎の死体を得た男が、政府に見つからないように隠し、生物学の知識を使って死体のルーツを探る。死体を隠す行為は、一目にさらされて魂が檻に幽閉されること避けようとしている暗示である。

一方、男が死体を分析する様子は、魂のアーカイブとしての機能を果たしている。そして、映画的表現を避けることで、アンドレ・バザンの理論を映像に落とし込んだ。

そう考えると、ミステリーなくせして宙吊りな終わり方をする本作に納得がいく。そして、カイエ・デュ・シネマがその年のベストテンに入れたのも納得だ。
ドイツからフランスへ、医学留学のため列車で移動中の最中、主人公は不可解な尋問を受ける。その後、自分のスーツケースの中に、見知らぬ男の頭部が紛れ混んでいることに気づく。

1990年代前半、ベルリンの壁崩壊直後を時代背景とし、政治的なトラブルに青年が巻き込まれるサスペンス。

政府の要人、スパイ、家族、医学生の友人との、多感な青年の繊細なコミュニケーションに、重きを置いて描かれる。

スリラーとしての、単線的な面白さがなかなか見えづらく、複雑な人間関係の中から立ち上がってくる主人公の動揺や混乱が目につく。

非常に複雑な構成・関係性を持った、青春映画としてユニークな魅力を持つ作品であるように感じた。
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