太陽の雫の作品情報・感想・評価

「太陽の雫」に投稿された感想・評価

星降る夜に押し入れ探検隊㉓

私が「ゴッドファーザー」シリーズをこよなく愛する理由の一つに、途切れることなく脈々と受け継がれていく【血】が、世代を越えて長期スパンで語られているファミリードラマであるという点があります。
「ゴッドファーザー」はシチリア系アメリカ人三世代(ヴィトーの父を含めれば四世代)であるが、本作はユダヤ系ハンガリー人五世代の物語。

しかも、ハプスブルク家による二重君主国時代からソ連による支配への反発から起こったハンガリー動乱までのハンガリー史上最も激動だったと言える時代です。
ナチによる迫害と政変によって翻弄される主人公一族が辿る宿命がたった180分の中に凝縮されています。

一族は各世代でそれなりの要職についてしまったことで、移りゆく世情がダイレクトに反映されてしまう非常にドラマチックな内容になっています。
描かれている期間のハンガリー史の勉強にも最適。

ナチ絡みの作品はそれなりに観てきましたが、その中で最も残酷なレベルに入るであろう極悪非道な処刑シーンを鮮明に記憶していて、今回改めてそのシーンだけを再見。
やはり、凄まじいシーンでした…
これ、やはり過去に観てきた全ての残酷な処刑シーンベスト3には入るかも…

レイフ・ファインズが三世代三役をこなし、ジェニファー・イーリーの年老いた役をリアルママであるローズマリー・ハリスが演じるといったキャスティングも見所の1つでしょう。
もし、ロングバージョンが存在するなら是非とも観てみたい☆彡

☆★☆ジェニファー・イーリー☆★☆(*´з`)
ユダヤ人について、日本人が知り得ることはそう多くない。
せいぜいホロコーストの悲劇性や、お金持ち、イスラエルとパレスチナの気の遠くなりそうな争いくらいか。
特定の土地や国家を長らく持てず、世界各地で細々と、または豪胆に財を成した流浪の民と言えども、そのリアリティは欧米と比べて余りにも希薄すぎる。

そんなユダヤ人一族四代に渡る盛衰を、帝政、ファシズム、共産主義がわずか半世紀で入れ代わるという、激動のハンガリー近代史と絡めて描いた『太陽の雫』。
何気に『ナイロビの蜂』で共演したレイフ・ファインズとレイチェル・ワイズが出ていたりもする。

こういった大河ドラマの主人公を、同じ役者に演じさせるのは割とよくあること。
今作もイグナツ、アダム、イヴァンの三代三役をレイフ・ファインズがもう見事なまでに器用に演じていたが、この手法が歴史の一貫性や「血は争えない」という反復性を、映画という物語時間の限られたフォーマットの中で語らせるに有効だからだ。

彼らは生きた時代こそ違えど、祖国ハンガリーに忠誠を誓い、ユダヤ人としてのアイデンティティを剥ぎ取りながら時代と「同化」した。
しかしながら、余りに「同化」し過ぎたがために生じた「誇り」と心中し、時代の劇的な揺り動かしに取り残されてしまう様が何とも痛々しく、それが結局どの体制になっても利用され虐げられるユダヤ人の民族的歴史と重なる。

そんな彼らをイグナツの妻ヴァレリーだけがしかと見届けるが、そんな彼女が写真家だったというのが何とも客観的で興味深く、時代に抗うでも媚びへつらうでもない、岸に着くことなく漂う船のような彼女の生き方こそ、したたかなユダヤ人の叡智なのかもしれない、と思った。
grrrr

grrrrの感想・評価

4.2
帝政ハンガリー時代から3代続くユダヤ人一家の一大叙事詩。主演のレイフ・ファインズが祖父、父、息子の一人三役を演じてる。