24フレームの作品情報・感想・評価

「24フレーム」に投稿された感想・評価

海

海の感想・評価

5.0
猫たちが一番好きな映画かもしれない、と鳥の声を聴きながら眠ったり、鳥や犬や雪の動きを目で追っているわたしの猫たちを見ていて思った。きっとうつくしいいきものに、できないことというのはなくて、言葉を話せないかれらは、言葉を話さないことができているだけだと感じる。ぎゅっとちいさくまるまった焦茶色と亜麻色のからだや、うごくものを追うきんいろの目を見て思う、あなたたちは、ほんものの、うつくしいいきものよ。画面の内には、ひたすら、一枚の写真のその前後に続いていたかもしれない、あるいは続くはずだった時間が流れ続ける。雪の降るなか車窓から見える二頭の馬が戯れあっているところ、一本の木にたくさんの羊が寄り集まり近くで牧羊犬が寝そべっているところ、格子窓の奥に鳥の影があり緑の芝にときおり二羽の鳥が降り立つところ。荒れた海の上でかもめが群れていて、一羽が撃ち落とされ、ほとんどが逃げてしまうけれど、心配するように何羽かが周りで様子をうかがい、やがて、戻ってきたたくさんのかもめが、死んだ者を慰めるように鳴き飛んでいるところ。わたしは幼い頃から、誰かや何かを待つことがすごく多かった。一時間も二時間も、その場所でじっとして、違う場所へ去るための迎えが来るのを、暗くなっていく空や、商店街に少しずつ増えてわたしをちらっと見て足早にすぎていく人たちや、つばめの巣や、野良猫や、雲の流れや街の灯りを見て過ごしていた。キアロスタミがこうして、枠の中になければ見えないものがわれわれにはあるのだと見せてくれた時間たちは、幼いわたしがからっぽのあたまで見つめていた景色だった。そしてそのとき見るかもしれなかった景色だったし、これから見る景色も、もしかしたらあるのかもしれない。枠の中になければ見えないものがあり、窓を開けてみなければ感じられない風や水分があり、ほねぐみにふれてみなくては聴こえてこない声もある。わたしは今も、今だって、待っていると思う。居るはずのないあなたを、来るはずのない迎えを、続きはしない終わりを、終わりはしない続きを、待っていて、そのためにあたまをからっぽにして、知ってきたすべてをいつでも手放せるように知らないことを増やす。それまでずっと、まばたきも忘れるほど見入っていたのに、最後の時間が数秒流れたあと、涙がとまらなくなって画面が見えなかった。わたしはおもう、芸術のため献身し、死んでいくことはきっとすばらしいことだけれど、舞台に立つことを望まないものをそこに引きずり出して拍手するようになったら、思考するとき芸術から遠ざかることが難しくなったら、終わりだ。感性が生きていても、心が死んでいたら終わりだ。語る言葉が湧き上がってくるとしても、黙りかたを忘れたら終わりだ。わたしが映画を観て、笑ったり、泣いたり、怒ったり、眠ってしまったりする、この部屋の、この窓の外がわで、こんなにたくさんのうつくしいことが、むごいことが、かなしいことが、うれしいことが、起きていてそれはきっと、あなたが見ている画面の中の映像以上のものですと、そんな声がきこえてわたしは泣いた。けっしてわたしを急かすものでも、脅かすものでも、諭すものでもない、やさしい声だったから、泣いた。あそこで鳥が鳴き、あそこで犬が眠り、あそこで鹿が倒れ、とおいとおいところで、あなたが雪に降られていることを知る。三つの言葉であなたが語ったとして、わたしは千の言葉をつかってあなたに返事をするだろう。千の言葉であなたが語ったとして、ただ黙って、あなたを見つめ、乾けば手を重ね、疲れたらただ息をし、動き、震え、続いていくあなたという景色に安堵したとき、わたしははじめて、眠りにつくだろう。
chiyo

chiyoの感想・評価

3.5
2021/8/2
アッバス・キアロスタミ監督の遺作。固定カメラによる絵画のような映像で構成された全24章、各章4分半。異色作ではあるものの、各章の映像がすこぶる綺麗で思わず見入ってしまう。全編を通してストーリー性もセリフもなく、あるのは音楽と自然や動物たちの声だけ。が、それだけだからこそ、映画の原点を垣間見たような気持ちになる。中でも、絵画の中の世界に少し動きを加えた冒頭の章、撃ち落された鳥の傍らから離れない番いと思われる鳥の章、そしてラストの章がお気に入り。特にラストの章は、机に伏せて寝てしまった女性の前で流れる映画がラストを迎え、同時にキアロスタミ監督の映画人生にも幕が下ろされたような感じ。勿論、遺作だから余計にそう思ってしまうのだけれど。
まつこ

まつこの感想・評価

3.6
好き。「5 five 〜小津安二郎に捧げる〜」のように風景を見つめるだけなんだけど音や動きがある分見やすかった。(その分薄くなったような気もする…)家での作業時や音楽代わりに流すという贅沢使いがしたくなるなぁ。ファイヤースティックを繋げるのがめんどくさくて小さな画面で観ることになったのは少し残念。(この間はできたのにAirPlayできなかったのなんでだろ?)いつかディスクが出ると嬉しい。

余談
観たいがためにjaihoに入ってみた。今日まで配信中。
mare

mareの感想・評価

2.5
キアロスタミが遺した最後の映画であり絵画の1フレームから広がる彼の想像上の4分半が繰り返されるかなりの実験映画。絵画のように見てもいいだろうし、自然音に身を任せて微睡んでもいいだろうし、映画として向き合うことを要求しない次元の作品だと思う。現に僕は3回くらい寝落ちしてからようやく見終えた。映画というものにストーリーを欲してしまうからこの評価だけど美しいことは間違いないし、キアロスタミが最後に見つめた景色を共有できた。彼は最期まで現実と虚構の壁をいとも容易く壊し創造する作家だった。
思わず笑ってしまうくらい素晴らしい映画だったような気がする。
Shunsuke

Shunsukeの感想・評価

1.3
ぜんぜん面白くないんですけど。。
CG感ありありだし。
早送りで鑑賞。
イランの巨匠、キアロスタミ監督の遺作。
4分半×24章、固定カメラのフレームで、巨匠は何を見つめていたのか…。
自然や動物を対象にしたものが多く、どれだけの時間カメラを回したら撮れるんだろう…?と思ってしまう、映画の神様が微笑んだかのようなショットが見れたのは嬉しかったです。
巨匠のミニマムで壮大な(?)実験を目の当たりにできたのは良かったですが、逆にスクリーンで対峙したかったかもしれないです。
「すずしい木陰」的に向き合えたのかな、と。
(JAIHOにて鑑賞)
昼寝

昼寝の感想・評価

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正直退屈だし映画館で2時間拘束された状態で観てたら間違いなくキレてた。しかしMacbookの小さな画面で観た僕は今、奇妙な感慨に襲われている。面白いかどうかは別として、キアロスタミがやろうとしていたことの到達点だと思う。余白が多いという意味では難解だがやろうとしていることは至極単純という点で、僕のような素人を評論家のように饒舌にしてしまう類の悪しき映画だと思うが、とりあえずはそこに屈服してつらつらと感想を書いてみる。個人的なメモのつもりで。

写真とその前後に流れる時間の関係は、映画の時間と実人生の時間の関係、人が生まれてから死ぬまでの間とその前後に無限に続く時間の関係、窓枠と窓の外の世界の関係、人間の世界と動物の世界の関係、陸と海(の向こう側)の関係、そして『友だちのうちはどこ?』と『そして人生はつづく』の関係と似ているのだと思う。つまり、前者を意図的に切り取ることにより、後者は見えなくなってしまう。何かを見る選択をすることは他のものをあえて見ないこと。

最後のフレーム24が秀逸。小さなパソコンの編集ソフトで映画の一場面がコマ送りで再生され、画面上の映画が1フレーム進む間にも背後の大きな窓の向こうでは大木がユッサユッサ揺れていて、その手前では少女が寝ているという。なにその複雑な時間の流れ。

一見すると、ボタン一つで開閉できる電動のカーテンのように、所与のものとして存在する世界に対して簡単に見る/見ないの選択を下してしまう人間中心的なシステムへの批判と思える。キアロスタミは「切り取る」行為の最たるものである映画を作りながらも、そこへの疑念があったことは『そして人生はつづく』や『オリーブの林をぬけて』の制作経緯を見れば明らかだし。

ただしこれほどフレームの外へと意識を向けていながら、この映画自体は完全にカメラのフレームに従属している。これはいくら人間が写真や窓枠によって切り取る瞬間は世界の一部分でしかないと言いたくともそのキアロスタミもまた人間であるし、この映画も所詮「窓枠」に過ぎないという事実への自覚であると思えてならない。しかし、単純な批判にとどまらずそこにつきまとう葛藤までもを内包しようとするどこまでも実直な作り方ゆえに、映画としては極めて退屈なものになっており、もはやキアロスタミは本当に映画を撮れなくなってしまったのではないかとすら思ってしまう。

しかし1フレーム4分半は流石に長いよ、これが2分だったら…。
EnCeTempLa

EnCeTempLaの感想・評価

5.0
斬新な作品。ストーリーはないし、ドキュメンタリーとも違う。これが、映画かと不思議な感覚におそわれる。繰り返しでるモチーフが、監督心象風景なのか、何なのか、判断が難しい。しかし、画面の構図、色彩の明暗、音の使い方、所々現れる、ぼんやりした人生観の暗示等に、監督の芸術的センスの高さがうかがえる。冒頭、フリューゲルが現れるが、タルコフスキーへのオマージュなのか。
イランの名匠キアロスタミ監督の遺作。各4分半の絵画みたいな固定の映像が24作続いている作品。
うーん私にはまだちょっと高度すぎてよくわからなかった、、、
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