夕霧花園の作品情報・感想・評価 - 3ページ目

「夕霧花園」に投稿された感想・評価

戦後のマレーシアを舞台に、かつての皇室庭師と、亡き妹の夢である日本庭園を造ろうと庭師を訪れたマレーシア女性の物語。

実に9ヶ国のキャストとスタッフで作られているそう。

日本軍がマレーシアに対して行った、虐待、蛮行シーンも描かれており、そこは胸が痛くなりますが、日本庭園の美しさなどを対比とし、加えて隠し財宝のミステリーやロマンスとなかなか面白い作品でした。
ちょっと哲学っぽく感じるかもしれません。

面白かったのですが、どうしてもこの尺では駆け足感が否めず、もう1時間くらい長くても良かったかな。

庭師役の阿部寛さん、ヒロイン役の、リー・シンジエさん二人とも良かったです。

ブッカー賞候補にもなった原作、読んでみたいけど、日本語版は出てないのね😥
うーむ、映像綺麗でした。ってのと、日本軍は鬼畜だってことはよくわかりました。

日本の軍隊が戦場でやっていたことは殺人鬼、強◯魔と言われても仕方ないですね。お国のためには必要はないこと。収容所のシーンは目を背けたくなる。事実なのでしょうね。繰り返してはなりません。また、証拠隠滅、隠蔽体質は今も変わらないですね。なんだか気が滅入ってきます。戦場に駆り出された人全てではないかもしれませんが、非戦闘員に酷いことした人を誇りたくはないですね。

さておき。
描きたいことはなんとなーくわかる気がするのですが、とにかくユンリンと中村の移り行く心情が理解出来なかったので入り込めなかったです。

戦後の人道的な中村のユンリンとの関係の作り方が腑に落ちないのです。全く。描写が少な過ぎないかな?さらに、二人の雨季の出来事。ユンリンが受け入れる理由がわからんのです。それっぽいことを中村が言ったり、映像で見せたりしますが、え?そーだっけ?感が。
それかな、アレである必要を感じないんです。

まー、かんやかんやありますが、二人の気持ちの揺れがさっぱり伝わらないので、感情動かなかったのです。全てが唐突に起こっていく感じで。

庭もアレも、結局はなんだったんだろ?美術として、風景として。ストーリーのネタとして存在していただけに思えますね。何を伝えたい作品だったのか?もわからなかったです。残念。
たぶ

たぶの感想・評価

3.0
第二次大戦、英国植民地であったマレー半島に日本軍が侵攻し、日本軍が敗戦、その後の物語。

濃厚な阿部寛の顔と、あっさりめの李心潔の顔。

キャメロンハイランドの雰囲気はとてもいい。一面の茶畑かな?
起伏に沿った美しい緑と標高が高くてちょっと霧深い感じ。リゾート地でもあるから、気温も過ごしやすいのかな?

雰囲気はいいが、妹への思いや、裁判官としてスパイの阿部寛を深掘り、男としての阿部寛を深掘り、フレデリックとの関係、けっこう壮大に語れそうな内容なので2時間弱ではしっかり描ききれない気がする。

このマラヤ侵攻の当時の雰囲気好きだわ。当時の日本軍の苛烈な攻めっぷりを思えば、そんな呑気で無責任なことを言うと怒られそうだが、なんかシンガポールに代表されるような、ちょっと英国な雰囲気のある世界観いいね。
夕霧花園も湿度高い感じがいい。
pherim

pherimの感想・評価

4.4
大戦直後のマレーシア。主人公ユンリンは、日本軍に殺された妹の夢を継ぐため元皇室庭師へ弟子入りする。

阿部寛、国策級の秘密を背負う役作りの深さが圧巻。戦争の悲惨を味わった主人公が、作庭の日々を経て女性初の連邦判事を目指す時系列演出の色鮮やかさはトム・リン監督ならでは。
しぃ

しぃの感想・評価

3.2
太平洋戦争中に日本軍が海外の戦地で犯した蛮行はあまりにも残忍で決して許されない。

しかし戦後イギリスに占領されたマレーシアで、現地兵士がイギリス人を殺害するというのは、暴力が暴力を生む負の連鎖だと思った。

そのどちらの暴力も被害者となってしまったユンリンが、マレーシア人としてのアイデンティティと誇りを持ちながら、日本人である有朋に惹かれイギリス人とも絆を築くというのは、葛藤がありつつも暴力以外で人は繋がることができるというある種の救いになっている。
日本庭園の美しさや静けさ、自然への考え方、「借景」という物の見方なども、暴力との対比でより強調されるんだなと。

妹への罪の意識やかつての敵国人に惹かれ葛藤しつつも芯の強い女性を演じたリーシンジェの素晴らしさは言うまでもなく、落ち着きがありつつミステリアスな庭師を演じた阿部寛もよかった。
para

paraの感想・評価

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いろいろと詰め込もうとして、やや強引なストーリーになってしまってはいるが、
太平洋戦争でアジアの国々に対して日本兵(日本軍)が行った蛮行は決して許されるものでもないし、また忘れてしまって良いものではない。
あの戦争で日本人は被害者として語り継いでいるけれど、加害者でもある。。
戦争で完全な被害者がいるとすれば、勝手に他所から来て統治されてしまった現地の人々なんだよな…と思いながらの鑑賞。

しっとりとした音楽としっとりとした悲恋漂うミステリー。





個人的には…
ジュリアン・サンズはあのヘアスタイルでなければダメだったんだろうか??
阿部寛出演作。

戦前の日本軍がしてきた蛮行を振り返る意味では意義のある作品。
だが、洗練されているようで、微妙に洗練されていない。
回想(2つの過去)がメインで、現在軸の心の変化がほとんど置き去り。
なぜ、中村有朋(阿部寛)に彫師と庭師、2つも役割を持たせたのか。
中途半端な脚色(原作の脚本化)が目について物語に集中できない。
原作がそうであっても、映画は尺が短いのだから盛り込みすぎずに、絞って丁寧に描くべきだったと思う。
個人的には、”蛇にピアス”的な展開は要らない。
 第二次世界大戦の日本軍は、アジアの各所に深い爪痕を残した。現地の人々をとことん痛めつけ、殺し、服従させ、苦役を強いたのだ。大東亜共栄圏などという耳障りのいい言葉で人々をごまかしながら、行く先々で悪行の限りを尽くしてきた。日本人は昔から薄汚い現実を言葉で美化してきた気がする。戦後になってそれらの言葉がすべて嘘だったことが明らかになったのに、政治家も新聞も手の平を返すように民主主義を讃えてみせた。そして国民は、自分たちは軍部に騙されていたと、自分たちには責任がないと言い張った。当然だが政治家の責任も新聞の責任も追及することはなかった。
 なんだか同じことがいまでも起きていないだろうか。モリカケ問題や桜疑惑では、安倍晋三の関与が明らかなのに、知らぬ存ぜぬで貫き通してしまい、何のお咎めも受けなかった。相次ぐ閣僚の不祥事では、任命者として「責任を痛感している」といいながら、結局何の責任も取らなかった。元国務大臣の甘利明は、大臣室で100万円の賄賂を受け取るという大胆不敵な収賄罪を犯していながら、入院するという王道の裏技を使って議員辞職もせず、しれっと国政に復帰して自民党の税調会長におさまっている。マスコミは追及しない。
 思うに、日本という国は、誰も反省しない国なのではないか。言い訳と自己正当化が国民性なのかもしれない。いじめを咎められて、遊んでいただけ、遊んでやっていると開き直るいじめっ子と、基本的に何も変わらない。その一方で権力者や強い立場の者には従順だ。弱い者をいじめて強い者にはヘーコラする。それが日本人の本質なら、これほど悲しいことはない。東京五輪での感染拡大の責任は誰が取るのだろうか。

 本作品はそんな日本人の犯した悪行の傷跡が残るマレーシアを部隊にした戦争映画である。雑魚キャラの日本兵の他にマレーシア軍の敗残兵も登場するが、兵士の例に漏れずこちらもクズばかりだ。沖縄で少女を犯す海兵隊員もそうだが、軍隊という組織は構造的に悪を生み出しやすい。軍隊そのものが人を殺すという悪行のための組織だからと言っていいのかもしれない。

 ヒロインはテイ・ユンリンという名前からして、中華系マレーシア人と思われる。演じたリー・シンジエも中華系マレーシア人だと思う。完璧な左右対称の顔が美しい。撮影当時は43歳くらいだったと思われるが、スタイルも綺麗である。ヒロインに相応しい女優さんだ。
 中村有朋という庭師を演じた阿部寛の台詞は殆ど英語で、発音はジャパニーズイングリッシュだったが、それがなかなかいい。思慮深い日本人の庭師の役がよく似合っていた。本作品ではその思慮深さが重要な鍵となっている。
 スパイは肯定されるべきなのか否定されるべきなのか、時代によって異なるのだろう。ジェームズ・ボンドは思い切り肯定されて映画の主役にもなったが、警察のエスや産業スパイ、社内スパイなどはいまでも否定的な評価だ。
 中村有朋が戦中戦後にどのような働きをしたのか、その秘密を有朋はユンリンに託した。有朋が築こうとしている庭は誰の命によって、あるいは誰の依頼で造られるのか。資金はどこから出ているのか。
 映画は異なる年代のシーンをパッチワークのように次々に貼り合わせながら、マレーシアにおける戦争の悲惨さと日本軍の残酷さ、自国の敗残兵の醜さ、正規軍の無力、そしてイギリス高等弁務官による統治下での英国人の贅沢三昧などを背景に、静かで美しい大人のラブストーリーが展開されていく。やがてそれらのシーンがユンリンの背中に凝縮されて、すべての秘密が解き明かされる。とてもよくできた作品だ。どこまでも相手を思いやる大人の恋愛物語は、時代に関係なく人の心を敲つものである。
祐太

祐太の感想・評価

4.0
日本国外からの戦争を聞く機会や見る機会がなく、新たな視点で鑑賞できました。
辛く、酷く、厳しく、儚い中にも美しさ、温かさ、希望を垣間見える作品でした。
タトゥーが最終的にこう繋がるのかと。
色々な国からの戦争の在り方を知り、終戦から76年、実際に経験をしていないからわからない事だらけだけど色々な視点から史実を学び後世に受け継がれていったらいいなと思いました。
祖父らが生きている間にもっともっと話を聞いておくべきだったと今、感じました。
阿部寛さんの役も最後の最後で役割をしれたのが良かったなぁ。
戦争の無い世の中になりますよう心から願います。
日本のマレーシア侵略時代を舞台に、戦争の深い傷をもつマレーシア女性と謎めいた日本人庭師とのミステリアスな恋を上質な日本文化香る映像美を交えて描く歴史ラブストーリー。

映画館で見た予告編以外は殆ど事前に情報を入れずに観たが、素晴らしい秀作だった。

マレーシア、台湾、日本のスタッフ、キャストによる”アジア共同制作”という感じの作品だが、どこかの国の視点に偏ることなく、淡々と制作者の誠実さや勇気が伝わって来た。
日本のマレーシア侵略は、中国や朝鮮半島侵略に比べてあまり語られることがない歴史だ。この映画の中には日本軍による現地女性の性奴隷化の様が描かれているが、そういう負の歴史的な蛮行について、我々日本人はしっかり知り、次の世代に伝えてゆく必要がある。おりしも世界遺産を巡って朝鮮半島からの強制労働力動員が問題になっているが、負の歴史を見なかったことにしたいという欲望に負けてはならないのだと改めて思った。

主人公の二人が恋に落ちる過程が少し自分には納得がいかない。ユンリンにとっては日本は憎んでも憎みきれない国であり、その日本人の有朋と恋に落ちるというのは凄まじい葛藤があるはず。そこが十分伝わってこない。
トム・リン監督は深い原作を二時間に凝縮させるのは大変な苦労だったと述べている。
マレーシア作家タン・トゥアンエンによる『The Garden of Evening Mists』というイギリスのブッカー賞ノミネートの原作は、未だ日本では出版されていないらしく、明らかではないが、恐らく原作は大著であり、2時間の尺で消化させるには限界があったのではないかと想像する。ラストも同じ理由からか、やや説明過多に感じる。

印象的なシーンで、ユンリンと有朋が、二人だけで重い石を動かそうとするシーンがある。
戦争の傷跡は、時が解決してくれるものではないし、努力によって克服できる代物でもない。ただ、それでもその両方がなければ決して為るものではない、というのが、あのシーンと、謎が解き明かされるクライマックスにおける「時の流れの結果見えてくる」というものとの合わせ技なのだろうと思う。
あの二人には、互いの想いや努力と長い長い時間が必要であったのだ。そして、そのゴールにあるのは恋の成就ではなく、永遠の赦しと愛情か……

作品の中に出てくる「借景」について、宣伝フライヤーにある京大の山本博之准教授のコメントにハッとさせられたので引用しておきたい。

“石や木をフレームに収めて景色の中に置いて意味を与えるのが借景であるならば、『夕霧花園』もまた戦争の経験を人の世の中に置いて意味を与えるものであり、それを観る私たちもこの作品を形作る背景の一部をなす“

正にそのとおりで、この映画のスクリーンと、それを観る我々自身が借景なのである。

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