アフター・ラヴの作品情報・感想・評価

「アフター・ラヴ」に投稿された感想・評価

yuzupi

yuzupiの感想・評価

4.0

一言で言うと、痛い。
心が痛い。

主人公が家族宅を訪問するまでの描写がたまらなく痛かった。
知りたくないけど知りたい、だけど痛い。
という葛藤でいっぱいだったと思う。

自分の苦しさをおさえて、家族のことを知っていくことで相手を悪役にもできなくなる。
みんな辛い。

辛いのは自分だけではない。

2人の女性が、お互いのベッドで天井を眺めるのは印象的だった。

留守電の音声を聴く彼女、相手の口紅を頬に塗る彼女、すべてリアルで、痛かった。



パキスタンには本当に縁がなく無知だからこの作品を通して少しパキスタンの風景が観れてよかった。
umisodachi

umisodachiの感想・評価

4.0


パキスタン人で船乗りの夫と結婚し、自身も回収した英国人女性メアリー。ある日夫は急死。遺品を整理していたところ、フランス人女性のIDと彼女とのメッセージのやりとりを発見する。ドーバー海峡を渡って彼女に会いに行ったところ、彼女は引っ越し目前でバタバタ。メアリーのことを派遣されてきた家政婦だと勘違いして……。

日本で公開するのかわからないから、ネタバレ満載で書こうと思う。設定があまりにツラい!!

【以下、ネタバレあり】


















夫はフランスに別の家庭を持っていて、そこにはキャリアウーマン然としたGとティーンエイジャーの息子ソロモンがいた。メアリーはムスリマなのでスカーフを着用しているのだが、初めてGの家を訪れたときは相当なオシャレをしている。それでも、Gは一目見るなりメアリーのことを掃除婦だと決めつけ、勝手に引っ越しの段取りについて説明をはじめてしまう。ムスリマな時点で夫と関連付けてもよさそうなものだが、Gがそうしなかったのには理由があった。夫はGに対して、イギリスに妻がいることは話していたものの、妻はパキスタン人だと嘘をついて写真も見せなければ名前も教えていなかったのだ。メアリーが明らかにパキスタン人ではない容姿だったので、油断したというわけ。

とはいえ、メアリーにとってもこれは好都合。警戒されることなく情報を収集することができる。無口なタイプのメアリーだが、毎日一緒に作業をする中でGもソロモンも少しずつ彼女に心を開いていく。そして、徐々に知らなかった夫の姿が明らかになっていき……と書くと、サスペンスやメロドラマを想像するかもしれないが、本作はそういったタイプの映画ではない。もっとジワジワと効いてくるタイプの映画で、花弁が1枚ずつ落ちるように事実がわかっていくに従って、メアリーが耐えなければいけない苦しみが増えていく。いっそのこと憎んでしまえば楽なのだろうが、夫がいない今となってはそれすら難しい。

英国人として生まれ、若い頃に夫に出会い、(おそらく)周囲の反対に会いながらも夫の宗教に改宗して暮らしていたメアリー。外出するときはスカーフを身に着け、もちろん日々の礼拝もしっかりとやり、パキスタン料理も学んで夫に尽くして来た。葬式にメアリー側の親族はいなかったので、もしかしたら自分の家族とは縁を切ったのかもしれない。20数年前に子どもが生まれたものの、すぐに亡くなってしまったという悲しい過去もある。

一方、Gは改宗もしていなければパキスタン料理を覚えることもなく、メアリーの夫との間に息子をもうけて育てている。パートナーの死を知らないので、パートナーはイギリスの妻を捨てて自分たちと引っ越しをすると信じ込んでいる。息子のソロモンは反抗期なのもあり、Gに反発気味。母親ではなく父親と暮らしたいと言い、父親に話を聞いてもらいたくてたまらない。

耐えられます?家族を捨て、宗教を捨て、夫のすべてを受け入れ、子供を亡くし……という人生を送ってきたら、自分の知らないところで夫が何ひとつ変わらないままでいる女を愛し、その女との間に(自分は失ってしまった)息子を作って育てていたなんて。想像しただけで吐きそう。いや、あまりにひどくて想像できない。しかも、夫はGに「妻との間に子供はいない」って言ってたんだからね!!許せないという言葉では足りないよ。

ドーバー海峡の際まで行って夫の帰りを待ち、お茶を入れるときは常に夫と自分の分を入れ、亡き息子の写真を見つめながら暮らしてきたメアリー。ふと2杯分のお茶を入れそうになって我に返ったり、老いた自分の姿を鏡で見つめて辛くなったり……彼女が愛した夫と、守ってきたプライドが何度も何度も打ち砕かれていく地獄。

それでも、メアリーは怒ることができない。妻がいるのに夫との関係を望んだGは夫に嘘をつかれていたし、ソロモンには何の罪もないのだから(むしろ一番の被害者だ)。すべてを放り出して死んでしまった夫を憎み切れればいいのかもしれないが、夫への愛こそが生きる証だったメアリーにとってはそれも不可能。うううううう………む、無理!!!キツすぎて脳が思考を停止する!!!

とまあ、極めて特殊な状況の極めて辛い物語なのだが、本作は静かに淡々と進んでいく。先述したお茶のくだりのような些細な仕草や、少ない言葉で多くのことを表現していく見事な構成。偶然と必然どちらともとれる絶妙なタイミングで訪れる、さまざまなきっかけ。嘘がいつ暴かれるのかというサスペンス要素、一見すると理屈が通っていないように見えるメアリーの行動に対する力強い説得力、ドーバー海峡を隔てたふたつの世界の空の色や海の様子。愛の深さと人生の苦しさを描き抜いた、実に雄弁な作品だと私は感じた。

にしても!夫!ゆるさん!!


まおう

まおうの感想・評価

4.0
2020年カンヌ国際映画祭批評家週間選出作。
白人女性のメアリーはパキスタン人の夫の為ムスリマに改宗し長年連れ添うが、夫の死後、その夫が他国で別の家庭を持っていたことを知ってしまう。
夫の愛人に会う為、一人フランスに降り立つメアリーだったが、行き違いから夫の愛人の家で家政婦として働くことになり…

自分の中の根幹を揺るがされ、心の中にぽっかりと空いてしまった穴を、誰かと感情をシェアし埋めていく人達の姿を閑寂たが決して退屈ではないドラマで紡いでいく。
ドロドロと悲愴になりそうなヒロインの心の傷を大袈裟に描かず、ちょっとした仕草や描写で示しながら明確に観客に感情移入させていくストーリーテリングが素晴らしい。
MALPASO

MALPASOの感想・評価

3.6
東京国際映画祭
『アフター・ラヴ』
イギリス

急死した夫が不倫をしていたことを知り、妻はイギリスからフランスへ。移民のふりをして不倫相手の家に家政婦として働き始める。

隠し子の存在を知る妻、不倫相手の死を知る女。さらに・・・話が広がっていき、面白かった。

不倫ものでこの展開は、なかなか思いつかないよな。
プレゼンターと監督のQA付きで鑑賞。

突然訪れた夫の死。彼が遺したものから辿る、彼の大きな秘密…

監督の言葉が何より的を得ていたので、引用すると
「2人の女性と1人の子供が、赤の他人と接して、どのような過程を経て己の腹の内を明かすか、というのを描いている」。

プレゼンターが「Brexitの影響はあったか」とか聞くのはまあ良しとして、本作を「Muslim British cinema」と表現したときに、監督が「そう思ってるの??」って聞き返して、「いや、言葉の綾よ、サンダンスとかでさ、そういう評が出てじゃない?ごにょごにょ…」と言葉を濁し、それにアイロニックに「interesting」と監督が答えたところ。

監督は「ムスリムといえば、爆弾を作っているか、美しい建築に囲まれて住んでいる、みたいな両極端なイメージしか持たれてない。私は“普通の”ムスリム女性の姿を写したかった。お茶も作るし、カレーも作る。そういった一面が非常に大事だと思っている」

nationalityとアイデンティティのギャップを片時も忘れたことはないであろうだろうが、それはあくまで自分を構成する一面であって、それが映画を作ろうと駆り立てる意欲の全てではない。そんな当たり前のことをオブラートに包みながら応える、30代半ばの若手監督の思慮深さに胸打たれました。
あさの

あさのの感想・評価

4.2
自分と重なる背景がほとんどないのに、メアリーに物凄く共感をした。つい習慣で二人分のお茶を作っちゃうとことか、鏡で改めて自分の姿をみるとことか、あらゆる面での描写が丁寧だったからだと思う。メタファもいい意味で分かりやすい。雇い主の夫と自分の夫が違うと思わせてくれていた留守番電話サービスに期限があったのは、言うならば神さまからのメッセージではなかろうか。秀作だ。
157 2020/10/31 東京国際映画祭1本目

ドーバー海峡が隔てるイギリスとフランス、2つの家族、宗教、様々な対比。
雄大に聳え立つドーバーの白壁がとても美しく印象的。
セリフよりも映像で繊細な心の動きを描く、とてもとてもとても好きなタイプの映画でした。
やっぱり東京国際映画祭大好き。

隠されていた事実を知ってしまうと、
過去の良き思い出までドミノ倒しのように崩れ落ちていく錯覚。
知りたくなかった秘密も、気まずい対峙も、
どれ一つ欠けても辿り着かなかった新境地。
悲しみも苦しみも人生にムダなんてない、
生きていれば良いことがある、って思わせてもらった。
pherim

pherimの感想・評価

3.9
結婚時ムスリマへ改宗した英国女性メアリーが夫の没後、フランスで夫が築いた別の家庭を知る。

手料理や夫の故郷パキスタンでの葬儀時の孤立など趣深い場面多く、ドーバーの白壁が氷河状に崩れる図や、やかんの沸騰音へ心の動揺を投影させる演出は粋。残酷かつ穏やかな海峡日乗。
【TIFF2020】「アフター・ラブ」急死で見つけた夫のもう一つの顔。普通なら妻は許せないです。
https://t.co/vQiggHgQoh?amp=1
東京国際映画祭
TOKYOプレミア2020

『アフターラブ』

小説のような静けさをまといつつ、物語が進むにつれて同情や憎悪、そしてやるせなさが波
のように襲ってくる作品でした。
物語後半から、主人公のメアリーの気持ちに心を動かされました。特にメアリーがソロモン
へテープを渡すシーンは印象深いです。愛する夫とその息子への無償の愛の大きさに感嘆さ
せられ、思わず涙しました。

(鑑賞者:みはう)
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