ヴェラは海の夢を見るの作品情報・感想・評価

「ヴェラは海の夢を見る」に投稿された感想・評価

2021/11/8 シネスイッチ銀座
東京国際映画祭グランプリ受賞作品上映
手話通訳者というボーダーから動き出す新しい地平。現状維持で地位を守りたい者どもにきっぱり告げる訣別に、快哉だ。
自分たちに都合のいいように作りあげた場所で男たちはぬくぬく楽しんでいたいんだろうが、その傲慢さに気づいてしまったからには、もう彼らの枠とは別の言葉を紡ぐのだ。
母と娘、言葉と身体。三世代の女性と劇中劇の絡まり具合も興味深かった。
ika

ikaの感想・評価

3.8
本当に夢は海みたい
あからさまな悪意よりも善意と愛の線上にある教育的な差別、その先の気づきと闘争に絶望と希望をこめて
女が「女」という理由だけで淘汰される現実がドキュメンタリー調に描き出されていた
Ricola

Ricolaの感想・評価

3.7
未だ世界の多くの社会は男性優位社会であり、そこに女性が立ち向かうことの難しさは否めない。
それも、そういった社会において「戦わずに生きる術」を学んできた女性にとっては特に難しいことなのではないだろうか。

この作品の主人公のヴェラは、まさに戦わずに生きてきた女性である。
亡くなった夫のある秘密と悪習によって、手話通訳士として働く彼女はとんでもない負債を抱えることになる。


タイトルの通り、彼女は何度も海の夢を見る。
この海の夢は、ヴェラの心の状態とリンクしているのだ。
心を落ち着かせているときには穏やかな海を、もがき苦しんでいるときには海で溺れているような夢を見る。
後者の夢の場合、溺れているような感覚を荒い波の動きとともに、深いところでボコボコと水音が聞こえてくる。
その水音以上に、荒い呼吸音が胸に迫りくるほど強く響き渡っている。
水の中にいるようだが、その呼吸音は地上においてのそれである。
そして夢から覚めるときは、ヴェラの足元のショットが映る。
ビクッと反応した足が溺れていたところから、急に地に足をつけたかのような動きである。この夢の通り、いつでも彼女は溺れ死ぬか否かの瀬戸際の状態にいるということなのだろうか。
彼女がそれほど精神的に追い込まれているのがわかるだろう。

ヴェラの手話通訳士という仕事も、作品の重要な要素である。
彼女はビジネスの取り引きでの手話通訳をしたり、テレビのニュースで手話を通して政治の汚職事件などを伝えることもしている。
特に手話、耳が聞こえないということを利用したシーン(および作戦)は見事であり、まさに「無言」の抗議をやってのけるのだ。

また、ヴェラの背中を押す娘のサラの存在も、この作品のテーマを語る上で外せないだろう。
サラは舞台女優をしている。彼女が主演を務める舞台劇のテーマ自体は、近未来的かつフェミニズム的であり、ヴェラが起こす行動と繋がっているのだ。

またサラは、母であるヴェラの態度を責める。
ヴェラがサラに教えてくれたことは、世間体を気にすること、ただ我慢をすること、料理や家事であると。
だけどそれでよかったことはないと、彼女は母親に訴えるのである。

こういった考えにヴェラが囚われていたように思える、象徴的なショットがある。それは家にいるヴェラが椅子に腰掛けている前にアイロンが映っているショットである。
なぜわざわざここにアイロンを置くのかと思ったが、サラに教えてきた女性のあり方をこのアイロンで表現しているように感じた。しかしこのショットはある転機以降見られなくなるのだ。

大きな権力に一人で、それもその権力と同じ方法で戦うのは無理がある。
しかし、彼女だからこそできる戦い方があるのだ。ラストショットの彼女の堂々たる表情に、震えが止まらなかった。
Sohey

Soheyの感想・評価

3.5
東京国際映画祭グランプリ。

自殺した夫のツケを払わされるためになった手話通訳者の妻ヴェラの物語。

急な裏社会展開にびっくりしたけど、そうかギャングも男社会。
女優である娘が舞台上で生贄になる役を演じていてストーリーとリンクし、男が君臨する現代社会で苦しんできた娘の苦しさもよく伝わってきた。

ずっとタバコを吸い、高速道路を見下ろすヴェラの姿がかっこいい。
泉くん

泉くんの感想・評価

3.5
グランプリに相応しいバランスの良い映画。東京国際映画祭のグランプリ作品は1年後には内容を忘れてしまうのだが、本作も覚えていられる自信が無い。
MALPASO

MALPASOの感想・評価

3.8
映画『ヴェラは海の夢を見る』
@東京国際映画祭
コソボ・北マケドニア・アルバニア
今回のグランプリ受賞作。

突然自殺した主人公ヴェラの夫、検事という職でありながら無類のギャンブル好きだった。ヴェラは家が借金の抵当になっていたことを知る。

コソボの女性監督カルトリナ・クラスニチのデビュー作。中年の女性を主人公にした重厚なドラマ。

主人公は手話通訳の女性。他人の言葉を伝える仕事と、反して男性優位の社会で自分の思いを伝えられないもどかしさ。
鉛のような雰囲気が憂鬱感を盛り上げる。都会で展開するドラマと、時々挿入される海で泳ぐヴェラの映像。

役者、脚本どれも素晴らしい。コソボからすごい監督が出てきた。
fumi

fumiの感想・評価

3.5
グランプリおめでとうございます🎉

静かに闘志を燃やすヴェラの孤独な闘いを息が詰まる思いで見守る感じだった。

村での老人達との話し合いのシーンは本当に胸糞悪くて、父権制が幅を利かせる閉鎖的な田舎の村社会の空気がよく出ていた。

声なき者の声を代弁する手話という装置がヴェラの置かれた状況を表現するのにぴったりでとても効果的。
ラストシーンは盛り上がりは全くないけれど、静かに宣戦布告の狼煙をあげた感じでかっこよくて好きだった。

ヴェラと娘の関係性をもう少し深掘りしてほしかったな。

あとコソボの言語ってアルバニア語?セルビア語?舌の使い方が非常に独特で気になった
テッサロニキ映画祭にて。

ベネチアでも上映し東京国際映画祭では賞取ってたコソボ映画。

作品紹介からしてサスペンスかと思いきや男性優位社会で家庭と仕事の両立をしながら悲しみに耐え外圧に毅然と立ち向かう女性のドラマのようだった。

夫の突然の自殺を機に露呈する家族にしのびよる裏社会の姿、経済発展のために犠牲にされる生活。
ヴェラは夫のため家族のため何でもこなす器用なおとなしい女性に見えた。そんな彼女が納得いかない遺言と家の売却について真相を追及していく姿は、時折頼りなさそうな部分は見せるものの、芯が強いことがわかる。

ミステリーとして見るとモヤッとするが、ヴェラの怒り、困難に立ち向かうドラマとしてはよかった。

ラスト付近はスカッとするね。

タイトルにもある海の夢、あれは夢見た将来、幸せだった過去、ヴェラに対する圧の象徴、いろんな使われ方してたような気がする。
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