ノー・チョイスの作品情報・感想・評価

「ノー・チョイス」に投稿された感想・評価

pherim

pherimの感想・評価

3.6
11歳時から金のため代理母出産を強制されてきた16歳少女が、いつのまにか避妊手術を施されたと知る。

テヘラン貧民区のリアル、法を踏み越える女医の倫理と覚悟。弁護士役Negar Javaherianの浮世離れした美貌安定。超シリアスに昭和コント+昼メロ風カメラワークを貫く異世界感。



Negar Javaherianは、極私的生涯ベスト作のひとつ『花嫁と角砂糖』の主役女優。

 『花嫁と角砂糖』https://twitter.com/pherim/status/1308024457609375745
 『ペインティングプール』https://twitter.com/pherim/status/1303159740277555200
MALPASO

MALPASOの感想・評価

3.1
東京国際映画祭
『ノー・チョイス』
イラン

11歳から子供を産んでは売ってきた16歳の少女を救おうとする人権派ななちゃん女性弁護士サラ。ホームレスを救済している女性医師に不妊手術を施された少女。

すごく速いテンポで進む、変な作りの映画。突然ズームしたり、ジャンプしたり、スウィッシュしたり、なんでもあり。イランのヌーベルバーグか?主人公も入れ変わっていく。

イランの不条理、男女差別や貧困が描かれるサスペンス。
Sayoooo

Sayooooの感想・評価

-
東京国際映画祭で鑑賞。
イランを見ることはなかなかないので貴重な作品を見れてよかった。

ホームレスの若い女が代理出産させられそうになったことから自分が同意のない不妊手術をされていると気づく。
中絶を認めない国で、貧困層の妊娠に否定的な社会背景から作られた映画みたいだけど、救いのない作品だった。
映画祭ならではの作品、観て良かった。
代理出産。人身売買。スラム、貧困。イラン社会の暗部がつまった作品。でもどことなく軽快な感じがあって楽しめた。
特にそれをサポートしていたのがあのカメラ。ズームレンズの多用で非常にトリッキーな撮り方だがだんだん慣れてくる。ドキュメンタルな映像効果が出ていた。

ポスターにもあるとおり、女弁護士、女産婦人科医、そして女ホームレスの3人の女性が主人公。

ストリート生活をしている16歳の少女が男に唆されて代理出産を持ちかけられる所から話は始まる。彼女は11歳の頃一度妊娠しており、その時に卵管閉塞手術を受けていた事が発覚。二度と妊娠出来ない身体になっていた。もちろん同意なしで。彼氏にも迫られ弱りきった彼女はソーシャルワーカーの伝手を辿ってある弁護士の元を訪ねる。。。

過酷すぎる下層民の生活。ストリートで寝起きする集団。目を離したスキに赤ん坊が攫われるのも日常茶飯。ちなみにあのエキストラたちは全て本物だそう。

初めのうちは少女や女弁護士に肩入れして観ていたが、そう簡単には割り切れないものが横たわっていることに気づく。結局少女には吸血鬼のようにヒモ男が張り付いていて、彼女は彼の商売道具として生きていくほかない。赤ん坊だって生まれてすぐに売られるだけだ。代理出産や赤ん坊の売買がビジネスになっている地獄のような環境なのだ。

こんな社会では、あの女医のようにある意味パターナリスティックな態度・決断が正当化されてしまう。
どうせ生まれてくる子どもに未来はない。当の母親でさえも救われない。だったら、、、

広ーい目で見れば女医の言い分にも一理ある。だがそれは結局危険な優生思想そのものだ。一体誰が決める。どうしたってきな臭ーい「選別」問題が横たわっている。更にそこに政治の判断が働いていたとしたら、、、
当局のことを「システム」と呼んでいるセリフがあったが、これは女医の判断は革命政府の意向だったということなのか。

はっきり言えるのは、絶対的な悪はこのような社会を生み出した側にあるということ。なぜこんな状況を放置していたのか。

中絶問題といえば、アメリカでも妊娠中絶が取り沙汰される際は、自己決定の問題とか女性の権利とか家庭を巡る価値観とかって文脈で登場してくる。プロライフかプロチョイスか。

宗教国家イランでもある程度はそういった議論はあるようで、2005年には「治療的人工妊娠中絶法」が成立している。予想に反して進んでいる。人口問題にしても80年代までは出産抑制策がとられていたが、それが少子化に危機感を抱くようになってからは一気に出産奨励へ舵が切られているようだ。

劇中でも、ある一定期間が過ぎたら中絶は出来ないと男性医師は手術を頑なに拒否していた。医師はあの女弁護士の交際相手だ。患者は生活の為になんとか手術して欲しいとすがりつくが彼は首を縦に振らない。

女弁護士も産む産まないは本人が決めるものだという立場に立って少女の側に立つ。少女を妊娠出来なくさせた高名な女医を相手どって提訴をすることになる。

二人のカップルは見た目も考え方もリベラルそのものだが何となく不寛容にも見えてくる。

なんといってもこのフェミニスト弁護士は、タフで美人で頭がいい。ヒモ野郎にスマホを盗まれても襲われても一切動じなかったが、そんな彼女のファイティングポーズが挫かれる場面があった。それがあの査問会のシーン。
その髪形は弁護士としてふさわしくないのでは?とかって。まるで共産党。社会騒乱罪をちらつかされてすっかり意気消沈してしまう。その後は元弁護士の父親に引き継ぐ形で法廷を降りてしまった。そしてあの結末だ。

女医にはイランの国民的女優ファテメ・モタメド・アリア。
彼女の家族はみなとうに国を出てしまっていた。彼女も移民を薦められるが乗り気じゃない。彼女には社会の為に役立ちたいという強い気持ちがあるからだ。

女弁護士にはイランのペネロペ・クルス。つき合っている医師はイランのジョージ・クルーニー。
脇のソーシャルワーカーの女性や、その部下の元セックスワーカーで顔に傷がある女性。くノ一忍者のような動きの女性が大変カッコ良かった。

監督曰く、
誰もが自分の正しいと思うものに従って行動をしている その結果誰が犠牲になるのかは分からない
それはチョイスがないということだと思う

終盤の法廷でのあの二人の女性の対決。女医は何より厳しい臨床の現場を歩いてきた。現実を誰よりも知っている彼女に向かって青臭い正論はみじんも通じない。女弁護士に向かって、それは感情のない法律よと堂々と言い放つ。火花がバチバチいってるのが画面越しにはっきり伝わってきた。

そして少女。髪を売ってしまいもう何も残されていない。坊主頭で草むらに横たわる彼女の目。結局この二等辺三角形はどこまで行っても交わらなかった。

うーん、やっぱり権利よりも食えるようになる方が先かなぁ。。。

人道的介入・支援の困難さ。そして今の政治状況におけるリベラルの困難さが透けて見えてくる作品だった。
gnsp

gnspの感想・評価

1.5
冗談かってくらいカメラワークのセンスを感じられなかった。

そもそもセンス以前に常に人に寄ってグラグラしてるわ、シーン転換でカメラをブンブン振るわ、開始20分で観るのに「疲れた」。まともに見せる気がないとしか思えない。
ここに関してはマジで「キャッツ」以来の酷さ。

3人の女性の視点で展開されていたので、視点が切り替わるところで演出も変わればまだ理解できたんだけど、全く変わることなく最後までこれ。

会話シーンでも顔面に寄り続けて、どういった環境で会話をしているのか映すことはほとんどなく。
視点が狭いうえに慌ただしく、その目的も感じられない。


「ではストーリーは…」と思ったが、途中まではしっかりと駆け引きの軌道に乗ってヒリヒリ感があったのだが、ラスト付近になってからこれまでの話をぜんぶぶん投げ始め、最後は興醒め。


申し訳ないんだが、ちょっと褒めるところがひとつも見当たらず。本当に残念。

ただまあこの通り評価は高いので、自分の感じ方がおかしいんやろなあと。
鴨橋立

鴨橋立の感想・評価

4.0

このレビューはネタバレを含みます

彼女たちの目の前に広がるのは幸福に辿り着けない選択無き道ばかり。

まるで希望の見つからないイラン社会の現実。。

ああすればよかった、こうすればよかった、という選択が無いので若干閉じた世界の話に思えるけど、

現状を知らないような僕みたいな人間からしたらそれを知れただけでこの映画の存在意義があると思う。

カット尻で高速パン(これなんか名前ありそうだけど知らないや)したりとかとにかく作品がずっと慌ただしくて逼迫したイラン社会の現状とリンクする演出になっている気がする。

ラストの切れ味と現実の重みがなんとも言えない後味。
東京国際映画祭4日目鑑賞

今年チョイスしたイラン作品の2作品目
先日鑑賞した“ティティ”でも描かれていた代理母による代理出産。
代理母出産が、イランの貧困層にとっての収入機会となってることが、2作品目を観て現実なんだと認識。。
作品は、代理出産と貧困を根底にし、
医師と弁護士のそれぞれの立場による主張(思想)が絡み合う見応え十分な内容。
テーマがテーマだけに骨太なのに、カメラショットが独特でして、火曜サスペンス劇場←古い....かと思うようなサスペンスフルな展開でした。

弁護士役のネガル・ジャバヘリアンさんのお顔立ちがあまりに整っていて見惚れてしまったのに、、、
公開されたらもう一度観たいなぁ。
167 2020/11/3 東京国際映画祭11本目

代理母を依頼された少女、その弁護人、少女を以前手術した女医、3人の女性の苦悩、辛く苦い現実に胸が痛んだ。
Sios

Siosの感想・評価

4.0
イラン社会、問題ありすぎ根深すぎ。

男に言いくるめられて代理出産を強要される少女。
そこからの負の無限サイクル。

問題が起きないよう、事実を見ないようにしたり、選択(=人生)を奪うのも危険。
弱い者が悲惨な運命に晒される。
"彼らは何も求めてない"
"彼らは権利を知らないのよ"

"私は助けてるの"

【STORY】
 ホームレスの少女は、自分が知らない間に妊娠できない身体に施術されていた事を知った。
 それを聞いた弁護士は独りで、ホームレスの苦難など聞こうともしない社会に立ち向かう…


【一言まとめ】
●家があろうとなかろうと同じ人間だ
●医療機関、権力者の横暴が許せない!
●キレずにベストを尽くす弁護士に拍手
●でも医療機関側にも言い分が…
●1人1人が現状と向き合って声を上げなきゃね
●カメラワークが謎にポップ


【感想】
《イラン映画3貫》1貫目
《東京国際映画祭11》

 身分証明書のないホームレスだって、他の人々と同じ人間。
 でも殆どの他人は、我関せずで見て見ぬフリか、"面倒ごとを持ち込むな" スタンス。
 その中で、正しさを貫こうとする弁護士の姿は素晴らしかったし、だからこそ見ていて辛く、もどかしい気持ちにさせられましたね…。

 タライ回しが酷すぎて、よく弁護士がキレないなと。常に冷静にベストを尽くそうとする姿勢に心から尊敬させられました。

 医療機関や権力者の横暴、証拠を操作されかねない、弱者に不利過ぎるシステム。
 訴えようとするのがホームレスである事で更にそれが暴かれにくいというもどかしさが辛かったです。

 でも医療側にも言い分や守りたいものはあって…一筋縄ではいかない社会の複雑な問題が浮き彫りに。


 ネタバレを避けては言えない本当にきついシーンもあり、衝撃的でしたね…


 誰かが声を上げなければいけない。それが1人2人ではなく、大勢で変えていかなければいけない。でも複雑な現実問題がそう簡単に変わるのでしょうか…
 現状と、そして未来に目を向けさせられる作品でした。


 謎にポップなカメラワークは、鑑賞後に他の映画ファンさんと話していて話題になりました。笑
 シリアスな話なのにズームの勢いが凄かったり、無駄に凝った演出はちょっと気になりましたね笑


【個人的ランキング】
《TIFF2020トップ10》
①燃ゆる女の肖像
②皮膚を売った男
③ラヴ・アフェアズ
❹ノー・チョイス
⑤スカイライン-逆襲-
⑥トラブルウィズビーイングボーン
⑦新感染半島 ファイナル・ステージ
⑧ポゼッサー
⑨モラル・オーダー
⑩スレート

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観た回数:1回
直近の鑑賞:東京国際映画祭(20.11.06)
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