冠城亘と杉下右京の特命係に
隠れた敵が牙を剥き始める
甲斐元次長をボスに迎え、
凶悪犯、更に法曹界、警察内部
嘗ての仲間をも敵に回しながら
特命係は正義の剣を振るう！

「相棒season16」

前シーズンまでに特命係が起こした摩擦や亀裂が敵としてはっきり浮き上がり、彼らの前に立ちふさがり始めるのがこのシーズン。ただ…結果として今ひとつ苛烈さに欠け、強烈なインパクトまでに至っておらず、中途半端になってしまった感があります。嘗ての瀬戸内議員、人気の津川雅彦さんが演じたキャラをバッサリ罪人として一旦退場させたような衝撃もなく、皆なんとなく小物故に生き残ってしまう感じ…。今シーズンは瀬戸内さんが和尚で帰って来るネタがあっただけに…。更に最終話が小物だらけの茶番劇である故に、より感じる訳です。

ただそんな中でも飄々とキャラを発揮しながら進む冠城亘こと反町隆史と水谷右京のコンビは円熟味を増して、あ、うんの呼吸に見えてきています。

先ず第1、2話で敵になるのは日下部次官。裏に青木もいますが…。「検察捜査」「検察捜査〜反撃」にて田辺誠一が検事役で特命係を違法捜査で立件しようと…。これ結末が他の敵陣営の横やりで終わっちゃうのでイマイチ…。結果として特命係が石坂浩二さん演じる警察庁官房付の甲斐さんの下につくと言う小ネタのみかと。甲斐さんのスタンスをはっきりさせるには良かったかな…。

第5話「手巾ハンケチ」では警察学校内部で事件発生。米沢さんが久々登場。先生役と娘の警察官、そして犯人親子の対比が素晴らしく、こちらも内部が…でした。

第6話「ジョーカー」ではあの連城弁護士が敵に…。神保悟志さん演じる大河内監察官が警察を代表して窮地に…。特命係がジョーカー（切り札）として再捜査に乗り出す展開。意表を突いた真相と連城弁護士の真意でニヤリとさせられる良回でした。そして第7話「倫敦からの客人」にて冠城編最強の敵である嘗ての杉下右京の相棒南井十が登場。ワトソンであり、モリアーティと言うキャラを伊武雅刀さんが。ホームズ右京との前哨戦が描かれました。第8話「ドグマ」これはジゴクバチが敵に…ではなく外事三課が絡むテロリスト案件。こちらもハードな内容。日下部次官の横槍が再び。

正月スペシャル第10話「サクラ」ではまたも内調の闇が…。梶原善さん演じる闇深きエージェントと悪意に満ちた信念の鶴見辰吾が敵。子供たちに毒牙を平気で掛ける大人と純粋な弱きもの子供たちを描いた太田愛脚本が見事。右京さんの説得と冠城の動きのコンビネーションが光ります。第12話「暗数」にて大杉漣さん演じる衣笠副総監更に妻と娘が登場。常に悪の権力側にいる役人でありながら、機を見るに敏で斬り抜ける衣笠ですが…。家族には逃がしてもらえず…地獄絵図でした。ただ…その違和感だらけの家庭にいる姿は大杉漣の真骨頂でしたし…不気味な悪役だったのですが…この後急逝され…最終話で杉本哲太さんに代わられます。

第13話、14話「言わんや悪人をや」は300回記念で懐かしい人気メンバー、セミレギュラーさん全員集合のお祭り回…なんですがまたヤロポロクだよ…。前シーズンの１話で振られたネタが今頃帰って来ました。津川雅彦さんが最後のご出演。やはり瀬戸内米蔵役は晩年の当たり役でしたね。木村佳乃さんの片山雛子も復活してました。でもしつこいくらいに社役仲間由紀恵さんのためにヤロポロク問題出てきます…。ネタはイマイチですが、よもやの動機に驚愕の回でした。

捜査二課との合同捜査になる第17話「騙し討ち」。殺人捜査の一課と横領捜査の二課が激突しちゃいますが…。やはりこちらも特命係がその内部に手を突っ込むと言う杉下右京の正義の鉄槌が落ちる回でした。また外国人就労制度や派遣を題材にしながら、警察内部の通訳が問題になる第18話「ロスト〜真相消失」も新しい問題をネタにしており、同じく右京の正義の鉄槌が下されます。

更に…最終話「容疑者六人　アンユージュアル・サスペクツ」も警察上層部セミレギュラーと青木が容疑者のコメディ大茶番劇。社、甲斐、内村、中園、衣笠、青木の誰がエスカレーター最上段から週刊フォトスの風間楓子を突き落としたかと言う最小の事件。中々推理部分は面白かったんです。が…杉本哲太さんに代わり、更にこの回のネタ、キャラの雰囲気で衣笠副総監はコメディキャラに代わりましたからね。

コメディテイストの少ないシーズンでしたが、その中でも太田愛脚本回第15話「事故物件」は右京さん大好き幽霊話回でゲストの勝利さんの演技含めかなり面白い回であり、家族の話ですが太田愛さんらしく毒がかなりきつい話でした。家族の毒がきつい話では…菊池桃子さんが下半身麻痺の奥様役（当たり役！）で出た第3話「銀婚式」。殺害トリックがまた…。殺される側も大概でしたが。第4話「ケンちゃん」も家族と言う毒がキツイ…サヴァン症候群に絡む話でしたが…そんな兄いねぇよとツッコミたくなる内容で…。家族の毒と言う点では最悪の事象だったのが第19話「少年A」。こちらはこのシーズン最高傑作であり、最悪の家族の話。毒親の下に生まれてしまった彼らの悲劇は涙無しには見れないはずです。

親のない哀しい施設の子供たちについて回る過去を描いた第11話「ダメージグッズ」は定番の陣川警部補回ですが、陣川が前々シーズンで痛い目に遭い成長していていくらかマシに（笑）キャラの成長を描いた回は他にもあり…第9話「目撃しない女」は冠城亘主役回。相貌失認の女性との愛を描いたラブコメサスペンス回。ヒッチコックみたいな話でした。間違いなく冠城くんにはこの子が合ってました。そして月本幸子2代目花の里女将主役回が第16話「さっちゃん」。女将に惚れた男は不器用な正義の人。幸子さんの芯の強さがみられる回ですね。

比較的シリアスな回が多く、危機に陥る特命係を描きたかったようですが…やはり敵がイマイチ…どこか甘いんですよね…。昔の官房長がいた時代ほどピリッとしない。杉下右京が強くなりすぎ、冠城亘が万能型でバランスが良すぎてピンチに見えないのかもしれないとも思います。確かに冠城編は敵に恵まれないと言う部分はあるかもしれません。

ただ…１話１話のクオリティは高く、このシーズンは次々と現れる敵と言う緊迫感は比較的あります。またゲストも目立つ大物もいますので面白いと思います。是非ご覧下さい。

• #相棒ワールド

冠城亘(反町隆史)と杉下右京(水谷豊)の相棒3年目。
サイバーセキュリティの青木年男(浅利陽介)がかなり事件をややこしくしたり裏でしかけたり。

杉下右京と冠城亘によるTVドラマ“相棒”の「season16」
サバン症候群の青年が殺害された事件の切ない真相「ケンちゃん」、警察学校での殺人事件と警察学校教官親子の確執「手巾ハンカチ」、右京のロンドン時代の相棒から仕掛けられた殺人ゲーム「ロンドンの客人」、国家の犯罪に特命係が立ち向かう「サクラ」、瀬戸内元法務大臣と片山雛子再登場のメモリアルエピソード「いわんや悪人をや」、話題の#MeToo運動にヒントを得た「暗数」、月本幸子が恋した男のために奮闘する「さっちゃん」、通訳業務の警察官が引き起こす隠蔽工作「ロスト真相消失」など様々な時事性を取り入れたエピソードが多いシーズン16。