プライド 運命の瞬間の作品情報・感想・評価・動画配信

「プライド 運命の瞬間」に投稿された感想・評価

 「判官びいき」があるように「東条ぎらい」もまたあるのだろう。その東条が、東京裁判の判事のひとりでありながらその在り方に疑いを持ち、東条を始め被告らの無罪を主張したパル判事を紹介するはずの映画を乗っ取ってしまったとなれば、大方、目を背けられるか、映画侵略と悪感情を被るのも当然か。
 監督の意見で東条物語を本体とするよう改まったらしいが、そこにパル判事とインド物語が居候のようにある。しかし、創作であれ、判事と東条が接触する場面はなくて、判事やインドの物語群はその気になればきれいに削除でき、調整のための撮り直しも不要と見えるほど、東条物語パートとは図ったように境が引ける格好だ。案外土壇場で、だから東条物語一本でいきましょうよ、と、一押しする腹でいたのかもしれない。これでまた「東条ぎらい」の拍車が掛かる事だろう。

 こんな表向きゲジゲジ東条物語だが、なかみは決して、お清めに殺虫剤撒きっ放しなんて感じではない。東京裁判自体、パル判事が被告らに無罪意見を出し、のちに英国出身のハンキー判事からもパル同様、裁判の判決から起源や仕組み自体まで異議が出されるような具合で、帝国日本の非米性を悪演出し米欧の翼下へ引き入れようとする道具建てにも感じられる。
 こうした下心は悪い事である。しかし、国益のために他国を食い物にした帝国日本も悪いだろう。ならば、そんな手があるぞと教えてくれた先達の欧米はもっと悪かったのか?そんな悪い諸国の角逐が戦争へと行き詰った挙句、協調指向にルール変更を勝手に行うのも悪い事なのか?そんな変化に翻弄されるのを拒み、昔通りに戦争で相手国の蓋をこじ開ける事に固執した日本が別に良いわけがない。それでもまだ諸国みんな生きもの丸出しの競争で生きなければならないと信じられてきたのだろう。

 東京裁判を眺めると、そうした「悪い」だらけな世界でまんまとババを掴んだ日本の、とりわけ昭和16年の秋、首相に案外打って付けと目されてしまった東条の不運の果てを見るような気がする。
 アジアから欧米を締め出したい日本、それを不快とし、また反独協調で同盟するソ連の影響が浸透した米国の対日強硬、抗日のためなら欧米とでも協調を目指す蒋政府。連合国側がみんな有効な協調関係を作る中、有害無実な同盟しか持てない日本がことさら偏狭固陋、軍事馬鹿の間抜けに見える不快な近代史第一の悪名が「東条英機」となるのも対米開戦の首相だから仕方ない。
 しかし開戦に至る経緯を見れば、伏見宮も嶋田海将も陸軍の面々もどうだろう、近衛や木戸や政党人はどうだろう。彼らにも国民が念頭にないとは言わない、それまでに死んだ兵と費やしたものの末に得た国益をふいにする協調路線を国民が、国民に根を持つ軍隊が承知すると思えないなら軍人に政権を任せた国は「悪い」四面を相手に戦争で事を決めるしかないのだろう。

 ただ、そこで国民は、自身が戦争する国の、「皇国」とは称しても国民の労働を他国に売って国富を積む実質的な主体である事をどう意識していたのだろう。費やした命の重みとは多くの家庭の身内の誰かのそれであるが、彼らが死者となった事の意義が毀損されるのを拒んで更に「美しい」死者を増やし国富を損なう想像が持てなかったのか?それとも有効な反論として働かなかったのか。みんな「国民」でなく極く日本的に「皇民」として無一物の自身を死んだ英霊同様、いや、やがて自分もそうなると、それを美しいとでも思っていたのだろうか?
 想像すると「東条ぎらい」とは、そうした国民の昭和16年当時は想像が至らず、国難に盾となって死ぬ事が美しいとさえ思える天皇国家のあらたかさに目が眩んでいたのかもしれない事に対する、または焦土となった今、昭和21年から振り返る、ほんの5年前の自身に対する嫌気の総体のように思える。

 だから、当時の人が死に絶えつつある今、そんな「東条ぎらい」にも頭を冷やして向き合わないといけない。そのためには、想像を働かせて一人の人間、ゲジゲジ東条とは何だったのか、死に損ないの入射口に墨付けでふざける一家の四男三女風景とは何なのか、そんな元大将はじめ誰一人欠けなかった家族に対抗して割腹する未亡人のフィクションは監督の何事か、死にぞこないの、死んだら俺に全て背負わせてくれ、なんて積りなのか?それが政治家軍人の臣下としての覚悟?という通念がある社会だったのか、同じ死ぬでも阿南や近衛の死は何なのか、伏見宮だって実はなんなのか、考える事を拒んだら、きっと頭の悪い「東条ぎらい」のままで死んでしまい後悔すら覚えないで済むだろうが、それでは頭がもったいないと悟るいいきっかけかも知れない。そう思えたら本を読もう。それから映画を見れば、パル判事が蔑ろな結果に異議が湧いてくるだろう。
Tatsu

Tatsuの感想・評価

5.0
東條英樹の生き様が描かれている。
彼は開戦の張本人と言われているが、戦争回避に粉骨砕身した人物である
東條英機をひとりの人間としての側面を描いた貴重な映画。ただ、2時間40分は長く感じた。

このレビューはネタバレを含みます

2020/4/1
1998年、30歳のころ僕はノンポリだった。
自分のおじさんが企画だったから、映画自体は知ってたけど、何かしら東条英機に嫌悪感を抱いており、今更戦争映画かよってイメージをもっていた。
今にして思う、よくぞ撮ってくれたと。
東京裁判がいかに茶番であるかを史実にもとづき語ってくれる。また当時の帝国軍人がいかに日本と国民のことを考えており、誇り高い人たちであったかを。
昨年、殉国七士廟に参るほど、歴史については書物を読んだ。GHQによる洗脳の歴史が開始する歴史をより多くの日本人に観てほしい。
また、現在においてこれほどの内容の映画を作れるのだろうか?とやや悲観的な気持ちにもなってしまった
子どもの頃に観てました。これで東京裁判のことを知ったんです。津川雅彦の東條英機、怖かったなぁ。パットン大戦車軍団みたいなヤバい演説シーンでした。

このレビューはネタバレを含みます

太平洋戦争の終戦後、GHQによる逮捕直前に自決未遂を起こした敗軍の将・東條英機。
その東條や判事の一人パールの目を通して極東国際軍事裁判(東京裁判)を描いたドラマ。

東條英機が主人公だからこの映画が右翼的で危険だとは言いたくない。
東京裁判が勝者の論理や冷戦下での連合国側の都合の影響下から逃れられない中で、敗戦国の責任者・悪しき軍国主義の象徴として結果の決まった裁判にかけられる側の視点として、最後の信念を描いた作品だと思う。
元々はパール判事を主人公にした企画だったそうだけど、やはり東京裁判に限っては良くも悪くも東條が“目玉”であったろうし、死にぞこないが何を懸けて最期に連合国へ挑むのかという部分にドラマはあった。

冒頭、弁護人に「無罪と主張してください」と言われ、「どうせ有罪になるのに無罪という意味はどこに?」と返す東條。
そして「日本人に対しては有罪です、しかし米英敵国に対しては有罪と認めていただきたくない」という弁護人の台詞。
結局この映画が問うているのは、勝者が裁く裁判は公正なのか?という点であるわけだけど、その点を深掘りするならばなるほどパール判事の視点の方がいいかもしれない。
実はそこに少しこの映画の難があって、東條英機の話以外に、パール判事のドラマが中途半端に挿入されるもんだから1本の映画として観た時にはあまり上手く溶け合っていないように感じるんだよね。
さらに言うとパール判事やインパール作戦に参加したというホテルマンの視点からインド独立における日本が影響を及ぼした意義が描かれるのだけど、そのへんは明らかに取ってつけたように感じたかなあ。

東京裁判の様子を簡単に知る資料としては、個人的には1983年のドキュメンタリー映画「東京裁判」が良いかな。
あれはとても見ごたえのある(4時間半の)ドキュメンタリー映画でした。
そのドキュメンタリーを観た上でこの映画を観ると「東條の想いとしてはそうだったかもしれない」というくらいには上手く補完しているとは思った。
とはいえそれは創作の部分も多いわけで、そのあたりはある程度“東條目線”としての色眼鏡で観ないといけないのも事実。
結局のところ、自分は戦争にしてもその結果にしてもそこに一面的な視点で片付けられるものはないのだと考えているし、勝った側の論理、負けた側の論理、お互いに(その時は)正しいと思って行った結果の果てとしてどう決着をつけるのかは難しい問題なわけで、その中で本作は負けた側の中心人物の目線で描いたというドラマとして、東京裁判の話に限ってはよく出来ていたと思う。
(本作では中途半端になってしまった判事側の目線であれば、2016年にNHKで放送されたドラマ「東京裁判」がそっちの視点で分かりやすく描いていたと思います。)

監督は伊藤俊也で人の情念を主体的に描くという部分ではブレていないように感じる。
途中、いきなり能がオーバーラップされたり、メイクが隈取になったりといった部分は往年の「女囚さそり」シリーズの様な観念的な演出で「変わってないなあw」と思う部分もあったかな。
主演の津川雅彦は少々力の入った演技に思う部分もあったけど、法廷の場面では雰囲気をうまく再現していたね。
脇の役者もなかなか上手い人で固めているので安心感があったけど、特に外国人のキャストは邦画でよくある演技の微妙な外国人ではなくてよかった。
ウェッブ裁判長やキーナン検事、ブレイクニー弁護士などもしっかりした役者で揃えていて素晴らしい。

東條以外の戦犯役も雰囲気の似た人をそろえていてなかなか。
大川周明役が石橋蓮司ってのは…ちょっと似てないけど、あのちょっとだけの登場でもインパクトのあるシーンだからそのための配役かな?
関西人の自分としては、田中少将役として島木譲二が出てきたところで内容に関係なく驚いてしまいましたw
第二次世界大戦時後の日本を連合国側が事後法で裁いた極東国際軍事裁判(東京裁判)を東條英機を主軸として描いた作品。
日本の戦争を美化するわけでもなく自虐的に批判するわけでもなく、事実を事実として語っている名作だと思います。
パールやウェッブ、キーナン、清瀬一郎、ブレークニーなど様々な立場や思惑の人達が裁判が進むにつれてどう変わっていきどう考えたかが鮮明に描かれている。
日本の戦争映画の中ではダントツで好きな作品です。

このレビューはネタバレを含みます

https://umemomoliwu.com/puraido-unmei-no-toki
mh

mhの感想・評価

-
戦後50年目の時点の映画で、東京裁判を巡る群像劇。
日本の肩を持ってくれたパール判事つながりで東京裁判と同時期にあったインド独立と絡めてる。
ググると、史上最悪の作戦と呼ばれている「インパール作戦」にはインド国民軍6,000人も参加していたとのこと。イギリス相手に戦っていた日本と、独立を目指すインドは利害が一致していた。
敗戦後の捕虜収容所では、イギリス軍の下でインド人の兵士も多く働いていて、インド人の兵士は日本兵を尊敬してくれていたという描写をなにかで読んだ。そういうからくりだったわけだね。
インド独立を扱った名作「ガンジー」も見なきゃな。閑話休題。

メインは東条英機というのだけでもかなり攻めてる。
ホテルマン視点とかもあって面白い。
一度きりの証言の機会を神風特攻隊になぞらえている。戦争の無益さを後の世に伝えるために、絶対に勝てない裁判に全力で臨むひとたちの姿が美しい。
原爆投下に賛成してるわけじゃなくて、引け目があるからこそ、議論に持ち込ませないという姿勢がうまく描かれてる。
焼け野原になった東京の風景が独特で、季節を感じさせるものになってた。それがすごい良かった。
津川雅彦の熱演も決まってた。自然な演技とはいえないけど、見事はまってる。
フィルマークスでは評価低めだけど、amazonは激高。
実際かなり面白かった。
近いうちに本丸、小林正樹の「東京裁判」も見るつもりなので、いい事前学習となった。
裁判ではない裁判。
ある意味ババを引かされたが、それでも国の未来を憂い、裁判と向き合う。

義丹、浮いている。
>|

あなたにおすすめの記事