文学賞殺人事件 大いなる助走の作品情報・感想・評価

「文学賞殺人事件 大いなる助走」に投稿された感想・評価

kazco

kazcoの感想・評価

3.8
筒井康隆原作の映画をそんなに観てる方ではないし、そもそも大いなる助走も読んでないけど、これはかなり成功してる作品な気がする。(すげえ上から)
筒井先生おなじみのドタバタ展開もうまくやってたし、筒井先生自身もノリノリで演技でされていた。
思いの外、ガッツリ濡れ場が入っていた、演者全員とても体を張っていた。
大学時代の恩師がエキストラ出演してる作品、セットに使われていたバーも思い出深い
画面前景に伸びていくワンショットやショットガンを用意する描写を省くダイナミズムや、コメディ調のセックスから思いつめた表情で自殺する女の子の振れ幅が良かった
青みがかった光や、グレーのスーツから漂う淡い緑色の感覚等、色彩のきめ細やかさも良い

こう見えて俺も文学賞受賞経験のある未来の文豪なんで、色々と思うことがあったりなかったり
地方同人誌事情から中央文壇事情までを誇張してこれでもかとばかりに盛り込んだシニカルコメディー。
DVDに収録されてる対談によれば、原作が発表された当時も物議を醸したけど、映画公開時も当時は存命だった松本清張が激おこだったとのこと。
ちなみに原作者の筒井康隆が直木賞候補になったのは第五十八回、五十九回、六十七回。ぐぐれば審査員がわかるので、登場人物のモデルを把握することが可能。もちろん松本清張も名を連ねてる。
原作通りのコメディタッチにしたおかげで、パーティー土下座合戦という難しい絵が浮いてない。このあたりは鈴木則文の才能だと思ってる。
なかでもいちばんすごかったのはまとめ方。映画で扱ったのはあくまで小説家のたまごだったけど、鈴木則文はそこに、映画界はもちろんさまざまなジャンルで助走を続けている人々を意図的にかぶせている。
長い揺籃期に甘んじているひと、思ったようにキャリアが重ねられないひとへのレクイエムであると同時に、報われない彼ら彼女らへのエールにもなっている。
そこには多分、大ヒットシリーズをいくつも生み出したのに、思うように映画が撮れない監督自身も含まれている。SF作家であるというだけで筒井康隆他が軽視されたのと同じように、映画界ではコメディが軽視されている。そのあたりの符合もきっと偶然じゃないだろう。
ググると鈴木則文が自費を投じてまで作った映画とあり、その心意気に胸が熱くなる。
ラ・ラ・ランドさながらのラストの時系列のいじり方がすごいうまかった。
カタストロフと第九の親和性を見いだしたのは、エヴァよりも六年先んじている。
鈴木則文もこの映画ももっと評価されるべきだと思う。
そしてやはり、フーマンチュウ博士などいなかったのだ。
とてもいい映画! 面白かった。
アノ

アノの感想・評価

3.9
ひたすら狂人のオンパレードでめちゃくちゃ面白い。
パーティー会場での土下座ラッシュは最高。
復讐以降は時系列と虚実を混ぜた構成が面白くはあるけど、湿っぽくなってるのでちと残念だったが。

筒井康隆本人の語りが長い上に結構上手くて笑った。
レンタル店でオススメ!になってたので何となく借りました
子供の頃、従兄弟に借りて筒井作品よく読んだけどこの作品は知らなかったし映画化してたのも初めて知りました

佐藤浩市さん、若いなぁ
今は無き蟹江敬三さんや石橋蓮司さんの姿も
うちの親父もワープロ買ってきてたけど二日ぐらいつかったら布被せて置物になってたなぁ笑

筒井先生のSFに対する熱い想いがいい!
kakaka

kakakaの感想・評価

5.0
地方の商社マン(佐藤浩市)が同人誌に載せた、自身の会社の内情を暴露した私小説が中央文壇の小説賞の選考に選ばれる。
スキャンダルを暴露された会社は当然首になり、商社の顧問を勤めていた地元名手の父親からも家族の縁を切られる。
しかし佐藤浩市は、全てを捨てても賞を受賞して作家として大成することを目指し、選考員に対して金、女、さらに自らの体を犠牲にして画策する。
やがて中央文壇にはびこる闇に精神を病み、虚実が混じり、小説の内容が現実を侵食していく。
原作者の筒井康隆先生が見事な長セリフを披露し、SFは中央文壇に差別されている!!と高らかに吠えるのは、本作の皮肉たっぷりの喜劇性を表しているが、反面、受賞の連絡を待つ作家本人と、受賞の瞬間をおさえようとするマスコミの様は、今も変わらない風景で、その空気感は妙に切なくてリアルだったりする。
また本作は単に文壇批判のブラックコメディにとどまらず、夢を追い、夢破れた者へのレクイエムでもある。
佐藤浩市の顛末を知った地元同人誌の仲間たちが、同人活動なんてのは所詮自己満足の反社会的行為なのでは、と言い捨てると、蟹江敬三が、「それを認めることは出来ない、それを言えるのは若いからだ」というセリフが滅茶苦茶切ない。
夢を追い、人生の全てを捧げた時間は、夢破れたら全て無駄になるのか。。。それでも、夢を見ずにいられない人間の哀しさよ。
日本映画史に残る文学賞レベルの面白さ


「私怨話でない文学があるんですか」

「ソクラテスの妻だぞ」

「俺のケツの童貞を返せよ」


汽笛を鳴らしながら走る懐かしの東海道線をバックに文学賞殺人事件のタイトルが打たれ、その上を大いなる助走という赤い文字が流れる。

地元の大企業、大徳商事の会社員市谷京二(佐藤浩市)が陸橋の上で同人誌「焼畑文芸」を拾ったことをきっかけに文学とは名ばかりの下衆い人間世界に足を踏み入れる。

全員土下座にインテリ女子高生のセックス、権威が口から泡を吹きながら捲し立てれば、文学に取り憑かれた果てに自殺、他人の成功を悲しみ不幸を喜ぶ。恨みつらみのミカン箱。男色、人妻、万歳三唱、ああ実に下衆い。

人間の自尊心を、権威の俗物性を、他人を批判することで保たれる自我を、文学を手段に繰り広げられる自己陶酔を、文学賞に取り憑かれ翻弄される愚かさを、皮肉たっぷりの大いなる笑いに変えた最高のエンターテイメント。

出てくる人達はみんな個性的でありながら、どこかで見たことのある人間の醜いそれだった。

よくもまあこんな面白い映画を作れたものだ。

平成恐るべし。
最高!俺のケツの童貞返せよ!
則文ベスト候補ってことでもう少し観てからまた決めます。
tyapioka

tyapiokaの感想・評価

3.4
記録整理。賞の裏側を本当かどうかは置いておいてコミカルに描いた作品。これだけ色々して受賞できなかったら狂う。
ヒルコ

ヒルコの感想・評価

3.3
面白かったです。とにもかくにも下世話に次ぐ下世話。
びっくりするほど若くてイケメンな佐藤浩市も良いし、石橋蓮司や蟹江など脇のの怪演ぶりも良いけれど、筒井康隆にすごくビックリしました。アドリブ??
と言うより、よくこんな映画作品を作って世に出したなあと感心さえするほど俗な1本でした。