クリーン、シェーブンの作品情報・感想・評価 - 3ページ目

「クリーン、シェーブン」に投稿された感想・評価

[お前にはパラノイアでも俺には現実なんだ] 80点

ロッジ・ケリガンのカルト的代表作を遂に拝むことが出来たことにまず感動している。このノイズ音(主に悲鳴と自分の呻き声)と環境音だけが鳴り響く空間に、鏡を異常に恐れる狂人を配置し、その異常行動を延々と展開する地獄のロードムービー。計画性のないサイコパスの地獄旅行といえば、『鮮血と絶叫のメロディ / 引き裂かれた夜』を思い出すが、映像が比較的穏やかなかつ丁寧な本作品のほうが異常さは際立っている。目線は忙しなく動き回り、聞き取れない単語をブツブツと呟き、コーヒーに入れられるだけの砂糖をぶち込み、車の窓ガラスを叩き割って新聞紙を貼り、鏡を見ずに髭を剃って顔中血塗れになり、図書館の本棚に頭突きし続ける。しかし、丁寧に紡がれた物語はカーゲルの偉大なる遺産の後追いかと思いきや明後日の方向へ飛んでいく。

主人公ピーターには目的があって、それは養子に出された娘ニコールを取り戻すことだ。ピーターの威圧的な母親はピーターに対してもニコールに対しても極端に冷たいし、彼女のその冷たさがピーターの統合失調症の原因の一つになっているであろうことは容易に想像がつく。そして、ピーターの病的な娘への執着は子供への執着に変換され、彼の幻想世界は子供の声や姿で溢れかえる。異常さに理由を与えるというある種陳腐な展開は、控えめな映像表現と呼応して、逆に一人の男に寄り添う構図へと変化していく。

そして、ピーターが泊まった宿で少女の遺体が見つかり、警察が出動する。刑事はねっとりとした捜査でピーターの後を追い始め、彼の人生を詳らかにしていく。物語をクリアに、構造変化をスムーズにしてくれるのは刑事の存在に依るところが大きいだろう。しかし、この刑事も中々変態的な捜査を展開する人で、ピーターが泊まっていた宿にそのまま宿泊して証拠を探り、ニコールの養母に言い寄り、印象的だが本筋とは関連のない謎の銀行強盗遭遇シーンまで付いてくる。

"頭には受信機、指に送信機を付けられた"と娘に語りかけてからのラストシーンは感動的で、冒頭からは想像もできないほど穏やかなだった。とはいえ、純度の高さから短いくせに圧倒的な疲労度。
Cem

Cemの感想・評価

5.0
頭の中に受信器、爪の間には発信器が埋め込まれていると信じてる統合失調症の男

精神病院から出て、里子に出された娘を探しに故郷へ行く
その頃、町では幼女殺人事件がおきていた


セリフは少なく自然音とノイズ音、人の笑い声や悲鳴などが混じり合う、音がとにかく怖いし不安定にさせる

受信機を取り出そうと頭をぐりぐりほじくるのとか怖かった!
爪に耳をあてて音の確認、それから爪を剥がすのはグロいし痛い
主人公の演技が上手く、生々しくリアルで観ていて苦しくなる


最後、娘が「ハローパパそこにいるの?」って交信するところ泣ける
粉津

粉津の感想・評価

3.5
ショッキングな描写が多いけれど、派手にやりすぎずほどよく日常感があるのが良い。ラストシーンは今も脳裏に焼き付いている。
堊

堊の感想・評価

4.2
「朝起きて誰かを殺そうと思った。パラノイアだって?俺にとっては現実だよ」
コーヒーへの砂糖の入れ方だけで圧倒的狂人ムーブを見せ、図書館の下りではもはや涙が。車の窓ガラスを叩き割って車の外を新聞紙でくるんで、「盗聴されてるんだ…こうしなきゃダメなんだ…」なんて娘に語りかけ…、まさか統合失調症に本気で寄り添ってくるとは思わなかった。ラストにわずかに挟まれる洗濯物を干す母の姿、ラジオを通して怪電波と交信しようとする女児に泣く。ズタボロになった幼女の死体も素晴らしい。決してアヴァンギャルドにならず、ごく丁寧に紡いでいってるのも好感が持てる。あまりにもフラッシュバック、ノイズによる幻聴シークエンスのタイミングが完璧なので本気でちょっと精神がダウってる人が見るとキツいかもしれない。DVD出たらたぶんちょっと話題になりそう。この作品がVHSで流通まで行ってることにまず感動したが。

このレビューはネタバレを含みます

妻が他界し精神病院に入院していたピーター。
愛娘との再会を願い
母の待つ故郷へと戻るが娘は里子にされてしまい行方知らず
養女にだされてしまった娘の探す旅に出るピーターだったが
彼のゆく先々では幼女の殺害事件が起こっていた。




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        ネタバレになるので
↓  作品が気になる方は閲覧しない方がいいです。 ↓





鬱々とした淀んだ雰囲気
情緒不安、幻覚や幻聴に苛まれ
妄想に憑りつかれる精神を病んだ男
新聞紙で窓を塞いだり
頭に埋められた電波を取り除くためハサミで頭をえぐる様や
爪を剥がす描写が痛みを感じるぐらいリアル。
見ているこっちまで
痛たたたたーーーーーーっ!!!叫びそうになる。
切ないお話なんだろうけど
心がそこに到達しないぐらい痛みの残像が凄かった。
Naoya

Naoyaの感想・評価

2.4
娘を探すために故郷へと戻ってきた、統合失調症患者のピーター。写真だけを頼りに娘を探すが、その中幻覚と幻聴に苛まれる。90年代作。精神病を患う主人公の視点で基本的に描かれるので、不快な場面も多々あり、精神病ながらの描写は決して映画的に楽しめるものばかりではないが、斬新でもある。精神病患者の頭の中を、僅かながらも覗き込んでいる感覚、体感しているような感覚もある。ピーターの娘探しと同時に、刑事の幼女連続殺人事件の解決に挑む展開もあるが、ピーターとの関連付けは見どころでもある。
娘が(いい顔の子どもよく探してきた!)ラジオ(父と)と交信しようとするラストが素晴らしい。
しのの

しののの感想・評価

4.2
統合失調症の男の精神世界をめちゃくちゃ主観的に描くので観てて普通に精神削れるし気分悪くなったけど、音と映像の切り取り方がすごく良かった
ロッジ・ケリガン『Keane』も精神分裂病の中年がただひたすら哀しくてやりきれない映画でラスト号泣。

このレビューはネタバレを含みます

精神病院から出たばかりの重度の精神分裂病(今の名称は統合失調症)の男が、引き離された娘を写真だけを頼りに探しに行く。
そして同時期に幼女連続殺人事件が起きる。

何者からか罵倒され、暴言を吐かれ、絶え間なく複数の声が聞こえる。何者かに見張られてる。外には自分を狙う人殺しがいる。頭に何か埋め込まれている。視線が怖い。鏡が怖い。

そんな症状を第三者目線で観る映画は数知れずあるが本作はあくまで主人公視点ゆえに、現実なのか、幻覚あるいは幻聴かがわからず、観る者の精神も抉ってくる。
プレッシャーに耐えきれず、図書館で棚を永遠と揺さぶり続けたり、車のガラスや鏡に新聞紙を貼り付けたり、突然爪を剥がして指を抉ったり、そんな奇異な行動のせいで近隣の人たちに怪しまれる。
連続殺人事件について追いかける刑事と同時進行していくのだが、もちろん主人公は疑われ実家で彼の母から生い立ちを聞き出す。(ちなみにこの刑事はかなりクズ)
主人公は船で暮らしていたらしく、元々痩せているのに突然急激に減量し出した時のビフォーアフター写真の表情の変化がかなりやばい。演技と思えぬほど狂気じみてる。

娘は若い女性の養子として育つがかなり捻くれていて全く笑顔のなく、義母を本当の母ではないからと甘えたりしない冷めた子供。
やっとの思いで娘の元へ辿り着いてからクライマックスまでが特にお気に入り。
一人でブランコで遊ぶ娘に、本人なりには身なりを整えたヨレヨレの格好で「パパだよ」と声をかける。明らかに怪しいのに何かを察したのか警戒をせず耳を傾ける娘。
「一緒に遊ぼう」「いいよ」「今からビーチに行こう」
そう言ってシートベルトすら壊れて使えない新聞紙まみれのボロ車に乗ってビーチへ向かう。車内では今は亡き妻の話を娘にしどろもどろで話す。
次のシーンでは娘は見たことのない笑顔で主人公と戯れている。もう完全に娘は心を許している様子。
娘に「病院で頭の中に受信機を入れられ、爪の中に送信機を埋め込まれた。まだ頭の中に受信機があるけどじっくり考えたら取り方がわかる。知ってる?」はかなりのインパクト。いやそんなん知りませんわ…。
しかし娘は若干引きつつ「ラジオかな?」と話を続ける。ツワモノや。

なんだかんだしてると刑事が現れ、状況を確認せず主人公を撃ち殺してしまう。もがき苦しみながら「パパは大丈夫だよ…、奥に行ってて…」と…。
あああ辛い…。
刑事は車を物色すると証拠などは一切なく、ただ娘の写真や剥がした爪が出てきただけ。つまり主人公は犯人ではなかった。
ここがモヤモヤする部分なんだけど結局真犯人は見つからず物語は終わってしまう。

船の無線に向かって「もしもし?パパいる?ねえパパ?」と問いかけ続ける娘のラストカットで号泣してしまった。
どんなけ気が狂っててもあの子にとっては唯一の肉親であり父親なのだから。



電波系というジャンルはよくわからないのですが、精神病院で働いていた母曰く、重度の統合失調症の大半は『電波』『電磁波』『レーザー光線』を出されていると言うらしい。ここまで来ると何らかの陰謀が絡んでるとしか思えないレベルで不思議。
普段は普通に会話も出来るし変わった部分はないのに、突然スイッチが入ったかのように「!!包丁持った奴らが追いかけてきた!見えるでしょ!?奴らがきた!殺される!」と騒ぎ出し、そいつらを振り払おうとして凶器を振り回したりするらしい。それ所以、周りはそんなもの見えてないから気が狂ってる怖い人に見えて通報するとのこと。(ほとんどの人が通報歴あるとも母が言っていた)
本作の主人公もヤバイ暴言を振り払おうと棚を揺さぶっていて通報されていたから、かなりリアルにこの疾患を描けていると思う。
【精神分裂症を疑似体験させる】という宣伝のフレーズはあながち間違いではない。そのフレーズも多分現代社会ではギリギリアウトな気がしないでもないが。(そもそも統合失調症に名称変更したのも差別的だからとかそんな理由ははず)
“眼球を突き刺し、神経を掻きむしるサディスティックシネマ”というキャッチフレーズは過剰な気がするけど、この映画が円盤化されないのもわかる気がする。
現に感想を見ていると「これが本物のサイコパス映画」とか「気分が悪い」とか散々言われてるのをみるけど個人的には面白くはないが、深く心に残る映画だった。病気を理解しろとは言わないが、許容してあげてほしい。誰がいつなるかわからない。世の中にたくさんいる病気の症状を「不快」の一言で終わらせてほしくないなぁと思う。


あとなんとなくですが、この主人公の俳優がエディ・レッドメインとガエル・ガルシア・ベルナルを足した顔をしててとても好みでした。