ボブ★ロバーツ/陰謀が生んだ英雄の作品情報・感想・評価

「ボブ★ロバーツ/陰謀が生んだ英雄」に投稿された感想・評価

The times they are a-changin' back.

ギター片手に遊説し、カントリーソングにのせて古き良きアメリカを取り戻そうと説く男:ボブ・ロバーツ(ティム・ロビンス)の選挙活動を追ったモキュメンタリー。体制の腐敗を訴え、”叛逆”と”独立の精神”でコーティングした苛烈な全体主義/排外主義を推進し、着実に支持を伸ばしていく彼は、その実全く掴みどころのない虚ろな男であった…。

ティム・ロビンス監督・脚本・主演のブラック・ポリティカル・コメディ。アメリカ現代史に度々顕現する政治的な運動/個人の特性を、ボブ・ディランのドキュメンタリーをカヴァーする形でキャラクターに投影し、映画にしてみせるティム・ロビンスの手腕と眼力、センスが凄い。ボブ・ロバーツが生み出す異常な熱狂を、イギリスから来たドキュメンタリー番組のリポーターとカメラマンが追うという形式を取ることで、観客はライブ感と客観性を同時に提供された状態で映画を鑑賞することになる。しかしまた、あくまで番組の視聴者というポジションに置かれることで、真に決定的な瞬間を目撃することは最後までない。このモキュメンタリー形式と、何一つ決定的に明らかにならないボブ・ロバーツという不気味で不定形な現象とが見事に一致している。語りの内容と形式とが過不足なく一致する映画的快楽の局地。

鷹揚でユーモアに満ち、優しさと温かさに溢れた”父親”で、”普通ではない”経歴でウォール街に進出、”裸一貫で”成功した証券マンにまでのし上がった男、ボブ・ロバーツ。エリートなのにエリート臭はなく、親しみやすい言葉遣いだが、”腐敗した政治”には強い口調で物申す…これらは、アメリカ人が身近なヒーロー=政治家に求める一つの理想なのだろう。特に、ドロップアウトからの企業とか、(言葉遣いが)エリートらしくないというところは特に重要で、中西部・南部で政治家を志すなら必須のストーリー&スキル。勿論、NRAの会員であることも必要条件。そんな全てを網羅したやつが突然出てきたら、少しはおかしいと感じないのかと思うけど、おかしいと感じるより、寧ろようやく来たかと、結構な数の人間が思うらしい。ボブ・ロバーツに最初から違和を感じる人は反発するものの、支持者がそんな警告に耳を貸すわけもなく(ボブ・ロバーツを陷れたいやつの陰謀に決まっている、という思考)。この構造は、アメリカに限った話でもなくて、また右も左も関係なく、万遍なく世界に遍在しているように思える。それを観客に体感させる形で抉り出しているところが、本作の優れた点のひとつだろう。
LaserCats

LaserCatsの感想・評価

3.8
面白かったけど、同時にとても怖かったです。
ティム・ロビンス自身の信念とは真逆な人物なんじゃないかなと思うんですが、そんな主人公に民衆が熱狂していく様を撮ることによって、逆に危機感を感じさせる映画なのかなと思いました。オーバーな部分もあるけど現実的というか。真実は知ろうと思えば知ることができるところにあるかもしれないし、ないかもしれないけど、この映画のようなことはあるんじゃないかな…と思いました。
Toku

Tokuの感想・評価

3.6
気になった音楽
I’ve Got to Know/Woody Guthrie
今となっては、全然笑えないブラックコメディ。でも、今観るべき、ティム・ロビンスの初監督作。

ボブ・ロバーツとドナルド・トランプの恐ろしいまでの符合に戦慄します。
しかし考えてみると、表向きはポリティカルコレクトを気にしてる様子のボブの方がまだ可愛いのかも。
そうなるとアメリカの現状を思えて更に笑えないし、こういう映画が20年以上前に警告を示しながらも人々が下した選択が何ともやりきれない。

ゴリゴリのリベラル、ティム・ロビンス自身によって演じられるボブ・ロバーツの不気味さ、胡散臭さたるや。
表向きは人の良い風体ながら、その実何を考えてるかわからない薄気味悪さを感じさせる役柄は、この人にはぴったり。童顔に不釣り合いな長身も怪物ぶりを助長するというか。

ボブ・ディランの醜悪なパロディ楽曲が普通に凡作で捻りが弱いのがちと物足りない。あと、モキュメンタリー系式のため、どうしても登場人物たちへの距離感がでてしまって共感し難かったのがのめり込めなかった原因かな。

若きジャック・ブラック出てて驚き。そっかティムロビンスの劇団つながりかー。
今観ると何か悪い冗談が現実になったように思え笑えないブラックジョーク映画ですね。
小森

小森の感想・評価

5.0
アメリカ人をとことんバカにしたブラックコメディ。でもほんとにボブロバーツみたいなのが大統領になっちゃったんだから、作った人たちも今じゃ苦笑いだろうなぁ
ティム・ロビンスの脚本で初監督作。
選挙戦を追うテレビ番組のドキュメンタリー風に作られるのだが、中の人の真実が見えてこない。ここでは、ボブ・ロバーツ上院候補のことだが…
現実の世界でも、ニュースやワイドショーなど結局は外から眺めるに過ぎず、中の人の本心までは掴みきれない。この現実をもう一度映画として再現してるに過ぎず非常に退屈である。
それは再現性が高いということにもなるが、映画としてはわざわざワイドショーの延長のようなモノを見せられても…政治家という枠組みは描いているが、その人を描いているわけではない。
うちだ

うちだの感想・評価

4.0
世界中この流れが進んでいて、もうどうしたらいいんだ…。
ハリポタのスネイプ先生とツインピークスのリーランドが活躍というか暗躍していて最高。
ポプュリズムこわ
記者のオッチャンが良い
靴のカットとカエルの話が好き
額に名前入れてんのおもろい
takato

takatoの感想・評価

3.9
 トランプ当選を受けて町山さんが紹介していたフェイクドキュメンタリー映画。本当にトランプと似た印象のボブことティムロビンスの選挙を追ったドキュメンタリーという設定の作品。

 昔だったら、「群衆の中の一つの顔」とかのアメリカにおけるポピュリズムや反知性主義をテーマにした作品として冷静に見れただろうが、現在の情勢で見ると寒気がするものがある。だってボブの方が、トランプよりよっぽどまともなんだもん!。ボブ(ボブディランのパロディー曲を歌ってるのには笑った)は、最近出てきた本流じゃない駄目な共和党の方向性を象徴しているような人物だが、まだクリーンなイメージを売り出す努力をしているし、それが成功している面もある。トランプに至ってはそれすらしてない!。彼の閣僚人事、ロシアに対する対応の恐ろしさは常軌を逸している。サウスパークの世界が現実になってしまったという恐怖は、創作の世界を遥かに超えている。

 本作のボブの辿った運命すら、トランプはなぞりそうな予感すら覚えてくる。スキャンダルによる失脚が割とありそう、暗殺による殉死者になるのが彼にとって理想的かもしれない。最悪なのは、ブッシュと同じく戦争による政権維持という選択だろう。

 どうでもいいが、ボブのファンの目がいっちゃてる市長の息子たちを見てると、本当に怖気を覚えた。この人たちに暗殺されちゃうのかなぁ~と期待してだんだけどね。ジョンレノンを暗殺したのも、熱狂的なファンだったし、ああいう狂気を宿している人は何時の時代もいるのだろう。
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