花嫁人形の作品情報・感想・評価

「花嫁人形」に投稿された感想・評価

 ドイツ時代のルビッチ作品。ルビッチはすでに有名な映画監督だったが、この年は歴史大作『マダム・デュバリー』(英題『パッション』)も公開され、いよいよ大陸を股にかけて名を馳せることに。しかも、この年のルビッチはやたらたくさん映画を撮っており、いよいよ本作は影が薄い。
 さらにいえば、この1919年は『カリガリ博士』の公開年でもあり、まさしくドイツ映画黄金期の始まりを告げる年だった。アメリカの映画界はこのライバル国を弱体化すべく、ヘッドハンティングを仕掛けていく。そういう事情でルビッチもこの新しい映画大国に渡るのだった。
 
 本題に移ると、この作品はサイレント期のルビッチのなかでも割と地味な部類だが、限りなく地に近いリアリティラインには実に1910年代的な大らかさがあって微笑ましく、気軽に観られる。そこかしこの痛烈な皮肉や含みをもたせた表情などからルビッチらしさを感じ取ることはできるものの、スラップスティックが主体の何でもありな作品だ。
 
 この作品はドイツにおけるメルヘンの伝統を汲んだファンタジーだ。物語の始まりからして、監督自身がメルヘンチックなミニチュアセットを組み立てる→トリック撮影てそのセットが実寸大になって登場人物が現れる、という流れになっている。最初から「これはフィクションです」と宣言しているのだが、この導入部をはじめ本作のあらゆる「稚拙さ」は、生身の人間が人形を演じるという大嘘を「おとぎ話」として受け容れさせるための「舞台」なのである。
 全編通してスタジオ撮影であることがすでに『結婚哲学』との隔たりを感じさせるが、こういう大胆な嘘くささは、ある意味ではドイツ表現主義映画に通ずるものがある。というか、人形師の家など一部のセットのメルヘンチックな作りは、明らかに同根を有しているだろう。
 ただ、本物そっくりの自動人形というアイディアはSF的。人形師のイカレ方はカリガリ博士や『メトロポリス』の発明家に通ずるものがあって興味深い。こうした科学者や発明家のマッドなキャラクター性は、中近世の錬金術師などから来ているのだろうか。十分に発達した科学は魔法と見分けがつかないというが、少なくとも当時の大衆的想像力のなかで両者が結合していたことが、これらの映画から窺える。
 
 他にも、アメリカに渡ってからの作品には(多分)あまり見られないトリック撮影を多用しているのも興味深い。とくに人間の口だけ12個も並べるショットは、上流階級の強欲ぶりを皮肉るためだとしても過剰演出で、どうしても大味になってしまうあたりルビッチらしくないと言える。
 ストーリーにしても、本筋からすぐに馬鹿騒ぎに脱線するスラップスティックな作りで、構成の巧さはみられない。代わりに、男が目をそらした隙に食べ物を頬張ったり、服を脱がされそうになり故障したフリをして殴ったり、シチュを利用したコテコテのギャグが面白いし、倒錯的なちょいエロティシズムがまた良きかな。
 そんなヒロインも可愛くて面白いけど、女性恐怖症のランスロット氏も明らかに成熟できない残念な成人男性で、そこはかとなく「発達障害」くさい発言が笑える。例えば叔父に「アドバイスしてほしいことはあるか?」と聞かれたときの、「操作マニュアルがあるから大丈夫」という返事とか、夫婦関係というものに対するルビッチの最高の皮肉だろう。この辺の男女の力関係も実にルビッチっぽい。
 セリフでとくに笑えたのが、wind up(ネジを巻く/怒らせる)のダブルミーニングを使ったネタで、“I have to wind her up”とか言って叔父をギョッとさせたり最高だった。
2本立てで極楽特急の後に見たため印象は薄くなってしまうが、軽快なコメディで十分楽しめた。
Marrison

Marrisonの感想・評価

4.9
姉妹さえいないのにリエとミキ・マキの狭間にリカチャンとして生まれたつもりで育ち、たまたまドハマリしたA・マッカーシー(←マネキン)で映画人生カンブリア紀を始めた私は、百年も前のオッシーにふらふらちょこんと辿り着いてホッコリ&感無量。
可愛いドタバタのサイレントなのに、目をつぶってピアノだけ聴いていてもかなりゴージャス。
職人の少年、いい。すごくいい。オッシーちゃんは最初、男かと思った。

あ~ぁ、早く結婚したい……。
小林

小林の感想・評価

4.0
コメディのセンスとしては、すごく日本(というかドリフ)的で、一周回って逆に使い古されたところではあるから、今見ても斬新かっていうとそんなことはない
既視感があるっていうのはそれだけで凄いことではあるけど

見どころは終盤、やっと寺院にオッシがやってきたところから
完全に予想できる範囲内の展開ながら、安心して答え合わせができる楽しさ
職人が慌てて寺院に行こうとする(馬に乗れなくて風船に乗って飛んでいく)くだりの並列的な見せ方(クロスカッティング?)もきまってる

おとぎ話な話に、童貞臭さというススんでる?要素が組み込まれているからこそ、黎明期の時代の中で、今の映画的な訴え方ができているんだろうなと思う

全然比較できるものではないけど、同年のカリガリ博士より好きかも
アンチリアリズムというか人工的なものを構わずフィルムに写す映画としてはたとえばフェリーニの映画よりも遊べている不敵さがある。
nagashing

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3.5
お手製の粗雑な美術が生むおおらかなリアリズムに、道楽貴族や生臭坊主の極端なカリカチュアと、人間が人間そっくりの精巧な人形のふりをするという荒唐無稽なシチュエーションとがぴたりと調和したルビッチ初期の佳作。冒頭の日光の異常な乾燥力からしてもう最高におかしい。こんにちのコントの雛型ともいうべき王道のスタイルにこころよく笑いつつも、その安心感を突き放す過剰なテンションとめまぐるしさにはくらくらしてしまう。キュートでありながらパワフル、類型的でありながらことごとく類型を逸脱していくような凄みがある。
神。
女の子が、人形と結婚しようとする女嫌いの金持ちの前で人形のふりし続けるギャグ映画なのだが、なんかとにかくかわいい。癒し。
ダンスもロボットちっくで笑える。
人形軍団に迫られるシーンは壮観笑

すぐ塗料を飲もうとする人形師の弟子のキャラも良いし…

セットがロメール『聖杯伝説』みたくハリボテなのも面白い。(馬が人間だし。)
2017.5.2@シネマヴェーラ渋谷
《ルビッチ・タッチII》
ぷりん

ぷりんの感想・評価

3.9
ルビッチらしさは物足りないが、オッシオズヴェルダの動きがユニークで魅力的。
極楽特急を見たあとだったのと、サイレント映画ということもあり、少しだれてしまった。テンポ感って大事なんだなと改めて。とはいえ、物語はほのぼのとしててこれはこれで良さがありました。
特段かわいいわけでもないヒロインが段々かわいく思えてしまうのはやはり表情だったり、感情の移ろいが垣間見えたところなんでしょう。
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