日本人の勲章の作品情報・感想・評価・動画配信

「日本人の勲章」に投稿された感想・評価

CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

4.5
【コマコを探して空手チョップ】
本作は『荒野の七人』、『大脱走』のジョン・スタージェス監督で、雄大な荒野を列車が到着するスペクタクルから始まる。そしてスペンサー・トレイシー、ロバート・ライアン、リー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナインとスター俳優勢揃いとなっている。そう考えると、胸熱なアクション大作に見えるであろう。しかしながら、本作は妙だ。アクションシーンが極端に少なく、西部劇なのに映っている景色は現代的だ。そうです、本作はフィルム・ノワールの文法で描かれているのです。ジョン・スタージェスは色彩を帯びたフィルム・ノワールを西部劇の世界観で描いている。そして、日本配給の都合だろう。本作では一切日本人が登場しないのに、「コマコ」というマクガフィンに釣られて『日本人の勲章』というミスリードしかしない邦題となっている。てっきり海外の勘違い日本人像が楽しめると思って見ると、男なのに「コマコ」と名のついた謎の日本人に対する好奇心しか刺激されず肩透かしを食らいます。

しかしながら、本作はとてつもない傑作である。カンヌ国際映画祭に出品されたのも納得な、脱構築アート映画となっている。通常、西部劇ではさすらいの男が村八分にされる。本作では左手のない男ジョン・マクリーディが主人公に見える。彼が行方不明の日系人「コマコ」を探すことがメインとなっているのに、彼の素性は全然明らかにされず、謎の男を軸に嫌がらせをする村人の視点で物語は進みます。牢獄にいる囚人に「お前、コマコ知ってるか?」と詮索をかけ、面倒なことを土に埋めようとする。しかし、村人たちもある真実を口にすることは躊躇するため、観客は宙ぶらりんな状態で不穏な状況に晒されるのだ。その空気感に独特な魅力が染み出している。

それを盛り上げるようにユニークな会話が連ねられ、「お前は草むらのデッドボールさ」と囚人をあしらったり、食堂で「何か食うものはあるのか?」と訊くジョンに対して「チリビーンズさ」と返し、「それ以外に何かあるのか?」と会話が続けば、「チリビーンズビーンズ抜き!」と嫌がらせする際の妙なカッコ良さにしびれます。

こうした溜めがあるからこそ、2000年代の時代劇のようにアクションに重厚感が増す。食堂で喧嘩を売られたジョンが片手でチンピラをやっつける際の最小手数で仕留める仕草は、カンヌ国際映画祭男優賞(スペンサー・トレイシー)も納得のパワフルさを持っています。

さて1955年のカンヌ国際映画祭事情について少し語っておこう。この時代の日本映画はガンガン世界に進出し、世界は戦後独自の文法で大暴れする日本に驚愕していた。この年のカンヌでは、『近松物語(溝口健二)』、『女の暦(久松静児)』、『千姫(木村恵吾)』がコンペティション部門に出品されている。「死ぬまでに観たい映画1001本」関連作品だと、『カルメン(オットー・プレミンジャー)』や『Hill 24 Doesn't Answer(ソロルド・ディキンソン)』、『汚れなき悪戯(ラディスラオ・ヴァホダ)』、『マーティ(デルバート・マン)』がいて、映画史的には大盛況の年だったらしい。
ゆべし

ゆべしの感想・評価

4.0
西部劇かと思いきやノアールサスペンス風でもあるし、太平洋戦争前後の日本人差別についての社会派ドラマでもあった。普段はブサイクで気が良いオジサン役が多いアーネスト・ボーグナイン、今作ではサイコパス地元ヤンキー役が意外とハマっていた。
シズヲ

シズヲの感想・評価

3.7
第二次大戦終結から間もないアメリカ西部にて、とある辺境の町を訪れた“よそ者”を巡る物語。荒野を跨ぐ列車、アメリカ西部の寂れた町、コミュニティーの外部から現れる流れ者、箱庭的な舞台で繰り広げられるストーリーなど、殆ど西部劇の文脈で描かれる。監督は後に『OK牧場の決斗』や『荒野の七人』を撮るジョン・スタージェス、役者もウォルター・ブレナンやアーネスト・ボーグナインなどを揃えていて、絶妙なまでに西部劇めいた人選で固めているのが憎めない。名優や名脇役で構成された役者陣の演技は安定して見ていられる。

原題とは全然関係のない邦題は作中における核心的な要素を示していて、大戦前後の日系米国人の立ち位置が垣間見えてくるのが印象的。日系人そのものは作中に出てこないとはいえ、題材も含めて一種の社会派ドラマめいた趣がある。オールド・ウエストの町という如何にもアメリカを感じさせる舞台を背景に、そこに住まう“アメリカ的”な保守系米国人の内面に根付く差別意識・排他性を浮き彫りにしている。町全体を覆う閉鎖性、そしてヒリついた緊張感を演出するリー・マーヴィンらの佇まいが実に良い。彼らとスペンサー・トレイシーが対峙し、徐々に町の秘密や“よそ者”の素性が明かされていく展開からは(見ていて予想はできるものの)ノワールめいたサスペンス性も感じられる。

80分程度の短い尺による簡潔さに加え、ジャンルを混合させたような作風と変わり種の題材を扱った内容は中々に興味深くて面白い。しかしリー・マーヴィンにアーネスト・ボーグナインにロバート・ライアンって顔触れ、もしかしたら『ワイルドバンチ』で見れたかもしれない並びなのだなあ。
sleepy

sleepyの感想・評価

4.6
駅に降り立つ隻腕の招かれざる客。スタージェス監督の異色ノワール  ****


原題:Bad Day at Black Rock,、55年、81分。
遠くに山脈が見える大平原にぽつんと建つ町(といっても10棟ほどしか建物はない)ブラックロック。そこへ4年ぶりに列車が停まった。降り立つスーツの男は隻腕だ。このマクリーディ(スペンサー・トレイシー)の出現になぜか町の男たちは静かな恐慌と不和に陥る。この男の目的は何なのか。最後まで登場しないある2人の人物の存在は映画のセンターに、皆の行動原理として位置している。

共演陣が凄い。日本人への憎悪と偏見の塊りで狡猾・陰湿な影のボス、ロバート・ライアン。脇にウォルター・ブレナン、ディーン・ジャガー、リー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナイン。監督のジョン・スタージェス(「大脱走」「荒野の七人」「ガンヒルの決闘」「鷲は舞い降りた」等)の丁寧で抑えた演出が不穏でピリピリと帯電した人々の間の緊張感を描いて唸る。いつも遙か巨大な山々がシネスコの構図の背景に捉えられ、人々の共有する秘密の闇と驚くほど対照的。偏狭で臆病な人間たちと、いつでも我が家の居間にいるようなマクリーディの対比も同様。

舞台は太平洋戦争後だが、映画の空気は西部劇のそれだ。しなびた町へやってきた物静かな男がシン・シティにちょっとした波紋を呼ぶ。この点でハードボイルド、あるいはディテクティヴ映画(探偵モノ)に近い。あるいは、骨子はノワール(あるいはハードボイルド)と言ってもよい。スペンサーの佇まいや行動や、いまわしき過去の醜き罪の存在はこういったジャンル映画のそれに近い。町人にとってマクリーディは、まるで面倒を運ぶあの世からの使者的存在である。

いわゆるプア・ホワイトとして描かれている閉鎖的な町の人間、アメリカからすら見放されたと思う町人と、荒野のストレンジャー、「招かれざる客」であるトレイシーの静かな衝突が見物。本作はあの戦争中の日系人への偏見に触れているが、中心はこのことではなく社会派映画ではない。しかしこのシンプルな80分余りの中に確かに埋め込まれた小さな石ではある。本作のロケ地は、太平洋戦争時に1万人のJapanese-Americanが抑留された。Manzanarキャンプから7マイルだったらしい。ライアンが発する言葉は聞くに堪えないが、根本にはコンプレックスや恐れが隠されている。

そのためか否かわからないが、劇場公開後、邦盤ディスク化されなかった(近時某チェーンの高額オンデマンドDVD-Rとして発売済)。日本の名だたる批評家や作家(逢坂剛など)・漫画家らにも当時からの大ファンが多いらしい。大らかなLookとだいぶ異なるこの異色作がこの時期の米でどう受け取られたか気になる。ただ本作でスタージェスは監督賞にノミニーされているし、トレイシーは主演男優賞ノミニーだ。撮影は「ジャイアンツ」「アンネの日記」等のウィリアム・C・メラー。音楽はアンドレ・プレヴィン。

列車の空撮によるOpクレジット部分は類をみないほどの疾走感に溢れ素晴らしい。シネスコのパノラマ感は全編にわたり感じられるが、本作はMGMでは初のスコープ作品となった。ソリッドで、パケ裏で「職人による映画の素晴らしき一例」とされているように50年代米映画ファン、出演俳優のファンの方に大いにお薦め(マーヴィン、ボーグナインはいいとこなしだが)。寡黙なトレイシーが最高だ。もっと観られていい、いや、映画ファン必見のエモーショナルな傑作。

★オリジナルデータ:
原題:Bad Day at Black Rock, 1955, US, 81min. Color (Eastman Color)、オリジナル・アスペクト比(もちろん劇場上映時比のこと)2.55:1(CinemaScope), Mono
イシ

イシの感想・評価

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もーちょい何か工夫があってもよいやん?? と思った。街の人からしたら、こんなスペンサートレイシーは謎の人すぎるやろそりゃ。
でもまあ、こういう役者陣がそろってるのを見るのが好きな人は楽しめるくらいではあったのかなあ🙌
変に長くなくてよかった~。

やー、なんか、見てたらお水飲みたくなった~。
タカ

タカの感想・評価

3.8
まさに黒澤監督の用心棒的な箱庭的ストーリー。規模が小さいから作品全体を俯瞰で見渡してる気分になれる。こういうシンプルで気持ちのいい作品が最近ないから嬉しい。
No.287[日本人の勲章は希望の象徴へ] 60点

アン・フランシスが田舎ガールとして登場するんだが、『禁断の惑星』という禁断の太もも映画で短いスカートから魅惑の太ももを晒していた彼女が、がっちりズボン履いていて終始しかめっ面な上に5秒くらいしか出てこないので、私はその扱いに怒り狂った。というのは置いとくとして、本作品は同じ画面の中にチンピラ役でアーネスト・ボーグナインとリー・マーヴィンがいるという豪華な映画なのだ。対するはスペンサー・トレイシー演じる孤高の鬼強隻腕老軍人マクリーディというジミー・ウォングが好きそうなキャラ。そんな感じで役者の配し方は常時上手かったし、これでトレイシーがカンヌで男優賞を取るのには納得せざるを得ない。

しかし、実際に戦うシーンは数えるほどしかなく、大部分は雄大な自然を背景に後ろめたい男たちが"やべーよやべーよ"と言い合うだけという不思議な西部劇なのだ。もしかしたら日本中の出川哲朗が出演していたのかもしれない。ただ、どうも敵の親玉スミスと唯一の味方である医者以外は存在感が圧倒的に薄いし、その二人ですら人物描写は薄いし、そもそも"やべーよやべーよ"って言ってる割にヤバさが全く伝わってこない。我々はマクリーディと同じ量の情報しか持ってないのに、匂わせで間に神視点からスミスサイドの"やべーよやべーよ"を持ってくるので、終始モヤモヤを抱えることになる。結局確かにヤバかったのだが、それを導入するのは押し負けた若者が一人で白状するという全く盛り上がらない展開であり、そこからマクリーディが闇夜に紛れて脱走するというなんとも微妙な感じに転がり、偶然に偶然が重なって丸く収まってしまう。ヌルすぎる。

そんな感じのヌルい会話劇と性急過ぎたラストであんまり評価する気にはなれないんだが、あのカッコいいトレイシーを拝めたってだけでも良しとしようじゃないか。
スペンサー・トレイシーがカンヌで男優賞を受賞し、ジョン・スタージェスがアカデミー賞候補になった作品。

1945年が舞台だというのに雰囲気とか文法とかが西部劇じみていて、ジョン・スタージェスは荒野の七人みたいな西部劇を撮る以前から西部劇的作品を作ってしまう生粋の西部劇監督だったのだなと、その点は面白かった。

敵役のロバート・ライアンや協力者のウォルター・ブレナンとか、出て来るキャラクターも西部劇的だったけど、ジョン・フォードやハワード・ホークスでも他ジャンルをここまで西部劇的には出来なかったろうから感心すらしてしまう。

しかしスペンサー・トレイシーは佇まいだけガンマン的な孤高の老人を確かに良く演じてはいたが、この演技が特に秀でていたかといえば疑わしいので、おそらくは世界的名優に賞を与える貴重な機会ということでカンヌで受賞を果たせたのだろう。

このレビューはネタバレを含みます

日本人があまり知らない、ある時代の日本人についてのことを描いた日本人の出てこない西部劇的なミステリー。

戦後わずか10年で戦時中の後ろ暗い側面をエンタメ映画に落とし込むハリウッドのスピード感に歓心してしまう。

戦中戦後と続いた在米日本人に対する差別に対し、「しかし彼らはアメリカ人として西欧で目覚ましい活躍をした。今こそ我々は過去の在米日本人への振る舞いを恥じ、彼らの働きに対し同じアメリカ人として勲章を与えるべきだ」とし、その評価を更新したような作品。

これができるからアメリカという国は嫌いになれない。
どなべ

どなべの感想・評価

2.0
タイトルに日本人って入れて客釣ろうとしてるのが面白い(日本人は出てこない)
設定は現代なんだけどほとんど西部劇
はじめの電車の空撮がすごくキレイだけど、これで期待すると意外とそれ以降の絵面はずっと地味
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