さよならも出来ないの作品情報・感想・評価

さよならも出来ない2016年製作の映画)

GOOD/BYE

上映日:2017年09月09日

製作国:

上映時間:76分

3.5

あらすじ

「さよならも出来ない」に投稿された感想・評価

真子

真子の感想・評価

3.6
境界線とこの奇妙な関係。
決してお互い離れない。
離れられないってなんだろ。
お互いに別の新たな一歩が
見えているのに。

歩道橋の所の撮影
めっちゃ良いな。

このレビューはネタバレを含みます

2年くらい前に知って、ずっと観たくてたまらなかったが今回配信映画祭2020にて配信されると聞き視聴いたしました。500円。

別れたけど同棲中の元恋人同士の物語。どちらも不器用で、自分の気持ちに折り合いをつけながら過ごしているのが伝わってくる。
不思議な生活をしている2人の家に叔母が突撃して事態が変わっていくんだが、この叔母さんのキャラクターが物語を漫画的、というか、エンタメ的にしていっておりほどよい抜け感があった印象。素敵なキャラクターだなと思いました。

剥がれた境界線と、それに対する気持ちの相違。ハッピーバースデーの本、崩れたケーキ、ついた嘘。どれもが不器用な2人のようで、ひりひりとした痛みのある映画だなと思った。
境界線とルールが2人を繋げていたのだなぁ…と。
物語が大きく動くシーンは夜〜明け方にかけてだが、2人の関係を表しているようで、とても見応えのある素敵な映画でした。好きです。

このレビューはネタバレを含みます

飲んでいるビールを隠す香里くんとそれを見て微笑む環さん。

最初あまり好きでなかった香里くんの声がだんだん好きになっていった。かすれてきえそうな声。時々読む本の一節がどれも良かった。

おばさんのキャラ最高。おじさんを連れてきてくれたお姉さんも最高。「やったれ!」
QTaka

QTakaの感想・評価

3.7

このレビューはネタバレを含みます

止まってしまいそうな時間の中で、互いの言葉を本に求める二人の物語。
”さよなら”も出来なかった三年間。
さて、二人はどうなるのか。
.
配信映画祭2020にて鑑賞。
二度鑑賞しました。
二度目は、じっくり見られました。
そして、題名”さよならも出来ない”がちょっとわかったような気がします。
二人の現在の不可解な関係、そして3年間という生活の姿。
この状況理解が有って、このストーリー展開に入って行ける。
そこにちょっと時間がかかってしまいました。
だから、二回鑑賞しました。
.
冒頭から始まる二人の日常生活。
カーテン越しのシルエットに浮かぶ環一人。
カーテンを開けて、朝日が差し込む。
用意された本を手に取り、ノートを開く。
一方の香里君は、本の山に囲まれて寝ている。
崩れる本の山。
二本のテープで区切られた廊下を居間へ。
環の用意した本(『崩れ』幸田文)を手に取る。
ノートを開き、書き込む。
環へ新たな本を用意する。
『城の崎にて』(志賀直哉)
人形の顔を今朝の表情に合わせる。
.
これが二人の朝のルーティーン。
そこには、互いが定めた、あるいはそれぞれのルールがある。
第一に、境界線。
ただ、そこには少し不満もある。
「お互いに干渉しない」という事が互いを干渉している。
二人は、互いを隔てた広い溝をはさんで、互いに長い紐で引きあって、あるいは棒で突きあって、支え合って生きているのだと思った。
そこに相手がいることを確認して、初めて安心して生きられる関係。
だから、その溝は、有って無いようなもの、無くて必要なものなのだろう。
.
そんな二人の関係にちょっと波が立つ。
親戚のおばちゃんとおっちゃん夫婦がやって来る。
それぞれの職場の人間関係もある。
そして、香里君の誕生日。
二人は、この波に揉まれて、ちょっと考える、そして立ち上がろうとする。
.
この辺まで来て、二人の3年前、こんな生活になる前の二人の姿が、会話の端々に見えていることに気付く。
フラッシュバックして、別れる前の二人の姿を現すシーンが有っても良かったと思うのだけれど、そういうカットは無い。
そのかわり、会話の中に、どんな二人だったのかが語られる。
そして、今、それから三年の時間に変化が起きる。
環の告白からの会話。
香里「出て行こうと思います」
環「どうして?」
香「好きな人が出来たら、相手に報告する
 それを聞いた相手は、何も言わずそっと出ていく。
 そういうルールです。」
環「…」
環「私はルールを破ったことは有りません」

これは、環の香里への告白だろう。
今まで続けてきたこのルール、この生活を守りたいという。
はたして、そのルールを守ること、この生活を守ることの意味とは何か?
そこには、ルールを遵守する二人の存在が有った。
あるいは、この生活を続けている二人の存在が有った。
だから、もう一方の香里君の意思が問われる。
.
一晩中歩き回る。
ワンコに出会う。
早朝、部屋に帰ってくる。
出て行く準備をする。
そこで、ルールが破られる。
その時…
ルールを破って、この3年間の生活、この関係を壊したのは香里君だった。
それは、彼がこのルール、この生活、この関係を壊そうと思ったからであり、それが彼の気持ちの表れだった。
そして、それを環は待っていたのだろう。
今までの生活は「さよならも出来ない」三年間だった。
そしてここで、「さよならは出来ない」という確信にたどり着いた。
.
随分とまどろっこしいストーリーだったと思う。
だからと言って、面倒な話でも無かったと思う。
話の展開が、少し分散してしまいそうな部分も有ったかもしれないが、それは二人の姿を見せるためのストーリーだとわかれば、そこにもフォーカスを当てることが出来る。
その意味において、本作に出てくる数冊の本が気になる。
その本の内容が、この物語に何を示唆しているのかいないのか。
実際、セリフの中に本からの引用が有るのも気になる。
とは言え、そこを拾うほどに読書家では無い自分に残念。
でも、面白いお話だったし、主役の二人の抑えに抑えた感情表現が魅力的だった。
そして、この一貫して熱量の無いキャラクター設定も面白さの一つだった。
恐らく、低予算、撮影期間も短い制作だと思うが、その中でこの雰囲気を作り出したことが面白いと思う。
ただ、一度見ただけでは入り込めなかったのがちょっと厳しい。
劇場で鑑賞したならば、2度見ると言うことは簡単には出来ない。
その意味で、今回はオンデマンド配信での鑑賞で、自由度が高かったことが幸いした。
もし機会が有ったならば、三度目は劇場で観たいものだと思った。

このレビューはネタバレを含みます

上野伸弥さん出演作やからっていうのが一番の理由やけど、別れた後も家の中にテープで境界線を引いてまで3年間一緒に住み続ける人達の心理が気になって鑑賞。

登場人物一人一人が生きてた。

「なんで私のことが好きだと思うんですか?私のこと何も知らないのに」「あなたのことを知らなくても あなたがどんな人かはわかります」

「結婚てなんなんですかね」
「相手を大事に思って 責任を持つってことじゃないでしょうか」
「責任って何に対してですか?」

「僕はこれが間違ってることだとわかっています もう終わりにするつもりです でもこれは二人の問題です」それは確かにそうやなぁと思った。

でも、二人だけで生きてるわけじゃないし、それこそ実際に叔母夫婦だって心配で遠路遥々やってくるぐらいやねんから、周りの人たちのためにも何らかの形でけじめはつけんとあかんよなと思った。
勿論、自分たちのためにも。

これを観て学んだことは、たった一人と関わることはできひんってこと。
彼女には彼女の関わる人がいるし、彼も同じ。
誰かと付き合う(カップルになるという意味だけじゃなく、誰かと関わりを持つ)のは、相手その人だけじゃなく周りの人も繋がってることを忘れたらいけないなと思った。

もう一つが、正しい正しくないは置いといて、相手が大切なら、はじめ理解できなくても想像することと話を聞くことは大事やと思った。
物事には正論だけじゃ片付けられへんことがたくさんある。
一面だけを見て判断するんじゃなく、いろんな面を見る努力をする。
私は良くも悪くもめちゃくちゃ正論マンやから、ヒェ〜となりながら観てた。

「あんたずるい。黙るのはあんたの悪い癖や」「一緒にいた時間ぜんぶを言葉にしないと僕は2人に何も伝えられません」
それもそう。でもそれならそうで結果で見せるべきかもな。

そういう意味で、ラスト2人で前進できてて良かった。
二人の別れた理由や3年間について深くは説明されへんけど、きっと最初の1年は作中でも言っていたようにお互い好きな人が出来たら同棲解消するつもりでいたやろうし、でも3年にもなると自分にはこの人やって再認識する期間に変わっていったんやろうなって想像した。

でもお互い臆病やから、テープを貼りながらもめちゃくちゃ干渉するくらいしかできなかったんかな。
そこに叔母が登場してくれたおかげで着地点が見つけられた。
とにかく周りの人がいい人だらけやった。
AS

ASの感想・評価

4.2
配信映画祭にて鑑賞(500円)

濱口竜介への親密さで溢れ返ってる。はち切れんばかりに膨張したそのパッションが微笑ましい。
生活領域を区分けする物理的境界線、よそよそしい対話による精神的隔たりといった特異なシチュエーションによって顕現する共依存の関係。その逆説性のおかしみが叔母という起爆剤を得て加速していってめっさオモロイ。
男と女と自転車1台で夜の歩道橋をまるっとフル活用しちゃう器用さ、エグくないっすか?
ずっと前に存在と設定だけは知っていて、見たかったのが配信映画祭にあり、念願の鑑賞。個人的にはルールを守れないタイプなので別れを選ぶ方が好きだけど、内向的な人間達はこんな簡単なことを伝えられずにいることは学びだった。反面、あまりにも2人が2人を優先していて、劇中にも出てくる伝える努力をしている人間からするとズルさを感じると思う。

蛇足ですが、同じ関西のワークショップ映画の傑作ハッピーアワーにも出演されていた川村りらさんのお名前がエンドロールにあった。
りっく

りっくの感想・評価

3.8
部屋の床に引かれた緑と黄色の線。それは同居する男と女の生活範囲を区切る境界線だったはずなのに、ラストでは未来へ向かって互いに並走する平行線に見える。そんな二本の線を気にすることなく踏み越えてウロウロする犬の姿も含め、3年もの間奇妙なルールのもと共同生活していた男女の滑稽さと、一方で初めて向き合って想いを伝える場面に感動すら覚える。

この奇妙な設定は、例えば家の外で男女が並び立つ際に、観客もその距離感を意識せざるを得なくなってくる。それを強調するかのように、シンメトリーな構図や横移動の多用、あるいは奥行きや目線のズレ、会話する男女を切り返しで写すか、同一画面で写すか、アングルは横からなのか、背中越しなのか等々、非常に練り上げられたクレバーな演出が巧みだ。

特に向き合うことがないテーブルの配置をしていた室内で、誕生日ケーキのろうそくを吹き消すことで暗い画面が続くなかでの二人の会話は、これ以上ないほどスリリングで、エモーショナルだ。
yukke

yukkeの感想・評価

3.8
ビニールテープを貼ることで可視化される自他の境界。
目に見えない境界線が引かれたことを強く意識する日常を生きているいまこのタイミングでこの作品を公開してくれたことにも感謝。
境界を跨いで小説を交換するあたり、特に本好きには堪らないかも。
面白かった!

配信映画祭2020で観賞
tetsu

tetsuの感想・評価

3.9
配信映画祭が始まり、念願の鑑賞。

別れて3年も経っているのに同居している一組の男女。
お互いに新たな恋人を見つけ始めた矢先、女性の叔母がやってきて......。

不思議な空気感に、いつの間にか惹き込まれてしまう作品。
ほぼ無名の役者やロケ地など、いかにもインディーズ映画という作風のため、万人受けはしないとは思いますが、僕は、かなり好きでした。

特に私的大傑作『ハッピーアワー』の系譜を確実に踏んでいる作品だったのが良かった。

WSで集まったメンバーがリハーサルを経て、日常会話に近いセリフを読むことで演じている点、
歩道橋の上がり下がりを使った不思議な会話シーンや演者の空気感を活かした長回し、「重心」を失う登場人物など、
実際、『ハッピーアワー』の製作に携わっていたという監督だけあって、随所に自分の作品でこれらの再現をしようという心意気が感じられたのが、面白かったです。
(『ハッピーアワー』同様、近所で撮影されている部分が多かったのも嬉かったです。)

また、『東京物語』などにも通ずる演者の顔を写す正面構図*や、濱口監督の東方三部作における「Z型のカメラ位置」を彷彿とさせる主演カップルの座席配置など、様々な蓄積を踏まえて不思議な空気感を演出している部分に好感が持てました。
*『ハッピーアワー』でも似たシーンは登場する。

唯一無二の独特な作風ゆえ、アート系映画に近い印象さえ受ける本作。
娯楽映画が好きな人にはオススメしがたい作品ではありますが、濱口竜介監督含め、ミニシアター系映画にハマった人なら必見の一作でした。

参考
配信映画祭2020
https://haishineigasai2020.themedia.jp/
>|