赤い雪 Red Snowの作品情報・感想・評価

「赤い雪 Red Snow」に投稿された感想・評価

鳴海慧

鳴海慧の感想・評価

4.3

このレビューはネタバレを含みます

白川一希 #永瀬正敏 漆職人
木立省吾 #井浦新 ルポライター
江頭早百合 #菜葉菜
江頭早奈江 #夏川結衣
宅間隆 #佐藤浩市

映画『赤い雪』を観て、そして本を読んでから、ずっと考えている。
サスペンスの括りは確かにおかしい…
そして犯人を浮き上がらせるだけの話でも無い。
記憶の欠片を探す旅だったと思うし、もっと奥深くを覗かないと分からない事が多々あった。
記憶の欠片は何も一希のみで無く、早百合の記憶の欠片も失われてると思った。
30年の時を経て、パズルのピースが揃った先に、いったい何が残るのだろう…

親に愛されなかった早百合と一希、何処か歪でいる。
全ての登場人物、馬から滴り落ちる漆の赤い色、何度も塗り込められる漆が、一希の記憶を封じ込めているように見えた。

早百合が蛇口を執拗に磨く姿
一希が仏像に何度も何度も漆を塗る姿
この対比が凄い

早百合の母、早奈江の真っ赤なコートと真っ赤な口紅、ここにも赤が使われていて、赤い雪の映画を観ると、赤が脳裏に焼き付く、赤から離れられなくなる、こんな所も中毒性があるのかな?と思った。

早百合の記憶にある自分を置いて出て行く母の後ろ姿、そして宅間の布団の中に縋るように入り込む早百合。
憶測だけど、この間のシーンに早奈江は2人によって殺害されたのでは?と、観ている者の想像力を掻き立てられる。

早百合に一希が呟いた言葉『君はお母さんとは別人だ』
この時の早百合の表情が実は気になっている。
一希から、あの母とは違うと言われて安堵しているようにも見えたし、逆に自分が言った嘘に一希が騙されて、してやったりの表情にも見える。

実際は菜葉菜さんが涙が溢れて止まらなかったシーンだと聞き、そこで監督にはあまり泣いてはいけないシーンで、一筋の涙で良いと言われたと後から聞いた。

もし嘘だった場合、早奈江が警察署に連れていかれ、刑事が事情聴取している時、早奈江の嗤い声が響き渡り、早百合は外のベンチで座って待っている。
その時、何度もライターを着けたり消したりしていた。
あの火事の時、早奈江が拓巳くんの入った袋に火を着けたと早百合が一希に言ったが、早百合が火を着けた可能性も考えられる。
刑事が何度も早奈江に事情を聞くが、狂った様に嗤うだけで、完全黙秘でいるのだから、早奈江の中で自らが火を着けたのではないのに、見当違いの問い掛けを繰り返す刑事を嘲笑っているようにも見えた。
早百合をも使って、あらゆる事をさせてたかと考えると、鬼畜の何者でも無い…
あくまでも私の想像に過ぎないけれど…

早奈江を消した後は、宅間の捌け口になり、早百合は何の為に生まれて来たのだろう…
哀しい運命を背負って、誰にも愛されずに生きて来た早百合...切なさが込み上げる。

一希も父は忙しく、母の愛情は全て弟に持って行かれ、寂しい幼少期を送っていた。

二人ともが親から疎まれている境遇で、加害者家族、被害者家族と相反する状況から一遍、実際には一希にも原因があり、早百合が一希に放った言葉『本当の事ってなんだよ、みんなお前が悪いんだろ』に繋がる。

全てがパズルのピースであり、『巡り合わせが悪かった』1つでも揃わなかったらこうは成らなかったと早百合が言う。
最悪な形で揃ってしまったパズルのピース、けれど、そのどれも、これもが、早奈江という悪女に引き寄せられる様に派生している。
早奈江の淫靡な赤い口元は魅惑的であり、そこから眼が離せなくなる人も多くいるだろう。
1度嵌ったら抜け出せない蟻地獄。
恐いけれど触れたい心理が働き、寄ってくる者を喰い尽くす。
夏川結衣さん演じる早奈江の出演シーンはそれ程無いが、余りにも鮮烈で、あの嘲笑うような嗤いも頭から離れない。
聴覚も視覚も良くも悪くも揺さぶられる。
これで、漆の匂いでも劇場でして来たら、完璧かもしれない。

今まで生きてきた中で、早百合の心に唯一響いた言葉は、きっと一希から言われた『君はお母さんとは別人だ』だと思う。
早百合はいつでも、モノのように扱われていたし、誰も優しくなかった。
一希は早百合に唯一の言葉をくれた存在だった。

そして一希は早百合を首を絞めて殺そうとした時に、今迄の鬱積した思いが解き放たれた気がする。

そう考えると因果としか思えず、お互いが唯一の存在。

ラストは二人で船に乗っていて、早百合が立ち上がっているシーンだけど、私の中の続きは、早百合は一希を抱き締めるのではないかな…と感じた。
宅間を始末したのは、一希のあの言葉が切っ掛けで、前に進もうと早百合は思ったと想像する。
全てのピースが揃った今、親から愛されなかった2人の新たな旅路に思えた。
それが例え行き先が茨の道だとしても…

木立省吾についての考察もしてみました。あくまでも持論です。
自分の思う、赤い雪の世界観を大事にしている方にはお勧めしません。

火事のあった翌日の現場検証
木立の部屋の机の上には叔父と一緒に撮った写真、そこに映る木立のセーターは赤
机に乗ってるハサミの柄も白、ホチキスも白、デスクライトも白
全てが白のモノが置かれている机に、写真立ての中の木立のセーターは赤で違和感を感じる。
窓からそれを見つめる木立が着ているセーターは白で
きっと、早奈江を見た親戚達は口を揃えて、あんな真っ赤な唇に派手な赤い色のコートを着た女なんてと、言ったと思う
その色を認識出来ない木立、それでも赤が鮮烈に脳裏に焼き付いたのは違い無い気がした。
早奈江は赤の象徴であり、木立もまた、赤に渇望を覚え、早奈江の所在を執念の様に追いかけていた気がする。
そう考えると、木立は足を踏み入れては行けない所まで行ってしまった。
最終的に早奈江に関わった人間は全て不幸になる。
綺麗な花には毒があるという言葉のまま
見れば見る程、一番、木立の異常性が恐ろしい。
勿論、誰一人まともな人は居ないかもしれないけれど、誰よりも異常に見える。
確かに真実を突き止めたいというルポライター気質かもしれないけれど、
木立もまた、早奈江が放つ禍々しい赤に魅入られた1人なのだと感じずに居られない。
鮮烈かつ毒婦の臭いを放つ早奈江には並々ならぬ執着が見られ、叔父の死因を追求してると思いきや、実は早奈江に執着をしていたのは木立自身
その執念ともいえる執着が恐ろしかった。

配役については、この方々しか思い浮かばない程、完璧で、菜葉菜さん、永瀬正敏さん、井浦新さんの役は然る事乍ら、佐藤浩市さんのクズっぷり、夏川結衣さんの毒婦っぷりも素晴らしかった。
そして音楽、映像美、私自身は大変好みだった。
しかし、観る人を選ぶ作品である事は確かで、好き嫌いがはっきりと出る作品だと感じた。
実際、今年1番リピートして、劇場で15回観た作品
毎回、今日はこの役の視点でと、そんな風に観ていたのでとても楽しめました。
ArcherK

ArcherKの感想・評価

2.8
予告編で期待度高めてしまって残念になってしまった。「観る人に想像させる」系なのだけど、語らなすぎて不完全燃焼。
何よりも、解釈が正しかったとすると、別に大した話ではない、という気がして面白味が無いし、特に驚きもない。
しかし音楽は秀逸で、ゲーム「SIREN」のようなセピア色のシーンと相まって、ホラー的な雰囲気がビシビシと伝わってくる。視聴覚的にはとてもよい。
ない

ないの感想・評価

2.7
雰囲気はいい感じだけど、何が言いたいんだい?ってなる作品。色々足りない、伝わらない。
TheThe

TheTheの感想・評価

2.0
ちょっと冒険してみましたが…映像はその場感を意識されているようでした。
本編内容、これは人の記憶とは都合のいいようにどうにでも塗り替えられると伝えたいのでしょうか?それと漆塗りの赤を関連付けているのかな。

どこに着眼点を置けばいいのか、分からない。これだという方向性がほしいと私は思います。
163.
終始、不穏な雰囲気がまたいい。

音楽も非常にうまく溶け込んでいる。

赤い漆が印象的。

説明も少なめで鑑賞者に感じてもらう作り込みは素晴らしい。

こういう作品が好きです。
amie

amieの感想・評価

4.0
少し難しいかもしれないけど、何度も観たくなる作品。甲斐監督が初の長編作品とは思えないほど凄みのある内容で、怖い人が沢山出てくるけど結局いちばん怖いのはこれを撮った監督なのかも…と。
jejua

jejuaの感想・評価

2.5
謎めいた雰囲気を出したいのが過ぎたのか、映像が交差し過ぎでとても疲れる……
もっとシンプルにふつーに描いていたら名作なのかもしれないのに( ˊᵕˋ ;)
俳優さん達が素晴らしいのに残念……

ただ人生も記憶も曖昧なもの。。そのワードだけは響いた
oka

okaの感想・評価

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福山シネマモードにて、舞台挨拶付きで鑑賞。
観たばかりの映画について、それを作った監督さんや俳優にすぐなんでもきけるなんてめちゃ贅沢な機会ではありましたが、映画の衝撃が強過ぎて何も言えず…
せ

せの感想・評価

3.5
雰囲気が好き嫌い別れると思う。
私はすきだった。
俳優陣が合ってて、その人じゃないとって人ばかりだったと思う。
BT

BTの感想・評価

3.5
シネマ尾道の舞台挨拶付きで観賞。
監督が「アンドリュー・ワイエス」の絵のイメージと言っていた様に、赤黒白で調えられた画面は美しい。血の赤、闇の黒、雪の白、漆の赤と黒、灰色の曇天の世界そのものが演者であるかの様に迫ってくる。役者の台詞より表情、動きこそが作品を作っていると感じる。人の負の面が湿度100%で絡み付いてくる、そんな風に感じる芸術作品だ。
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