帰郷の作品情報・感想・評価

上映館(5館)

帰郷2019年製作の映画)

上映日:2020年01月17日

製作国:

上映時間:119分

ジャンル:

あらすじ

「帰郷」に投稿された感想・評価

KeithKH

KeithKHの感想・評価

3.5
人は誰もただ一人旅に出て 人は誰も故郷を振り返る ちょっぴり寂しくて振り返っても そこにはただ風が吹いているだけ 人は誰も人生に躓いて 人は誰も夢破れ振り返る

これは半世紀前にヒットしたフォークソングの名曲「風」の歌詞です。

己の死期を悟り30年ぶりに一人帰って来た、仲代達矢扮する本作主人公・無宿渡世人の宇之吉を迎えた故郷では、決して温和で快い風は吹かず、凛冽に身を打つ木枯しが吹き荒んでいたかのようです。

本作は、CSの時代劇専門チャンネルが、藤沢周平原作の時代小説短編を、8K撮影で映画化した作品、いわゆるテレビムービーであり、劇場での期間限定上映にて観賞しました。

昨年、夭折から50年を経た名優・市川雷蔵の、無宿渡世人を描いた晩年の傑作『ひとり狼』(1968年)は、精力、胆力が充実し、気力、体力にやや翳りが見える壮年期の渡世人の、厳しく己を律する毅然とした生き様を描いたのに対し、本作は暗鬱で寂寞感に満ちた老境の身の畳み方・仕舞い様を、己の身も思うようにならない悲哀を漂わせて描いています。

宇之吉の人生の去り際、死に際の滔々たる潔さは、今村昌平監督の名作『楢山節考』(1983年)の、おりん婆に相通ずる、日本人の根底に流れる“恥”の信条・美学の具象化と捉えられます。

孤独からの素朴な望郷の思いによる帰郷には、恥を滌除してくれる贖罪の舞台が整えられ、物語はノスタルジーと肉親の情愛を絡めながら、それでも淡々と佳境に進みます。

時代劇に手馴れた杉田成道監督は、時代劇らしいぼんやりとした灯りの室内の静けさの中、台詞ではなく役者の所作・表情で重く深い情感を漂わせます。

元来がTV放映を前提とした映像作品なので、寄せのやや仰角気味のカットが多く、また老境の渡世人ゆえに立会いやアクションが少なく、主に家内や居酒屋内という屋内での動きの少ないシーンが多く展開する、退屈になりかねない処を、現存する唯一の文化勲章受章俳優・仲代達矢の重厚な存在感がスクリーンを圧倒し、観客を惹きつけます。

台詞が少ないゆえに美術・装飾と照明の役割は重く、本作では家屋の造作と設えが、鄙びてうら侘びれた倹しい暮らしぶりを犇々と伝え、“黒”が引き立った照明が一層、当時の生活感を引き立てていました。

ここでも美術監督の倉田智子氏の腕の冴えを実感しますし、照明の奥田祥平氏に加え撮影の江原祥二氏等の熟練の京都スタッフの技術の粋を堪能しました。

冒頭とエンディングに現れる、宇之吉の故郷・木曽福島を覆い包んで聳え立つ木曽御嶽山。その悠々たる雄姿は、所詮は短く儚い人の生を受け留め、全てを恕し包容するかのようで、人の世の無常と自然の悠久の神々しさを象徴しているように思えます。
映像美を真っ先に言うてもええのかな?
様々な作り手がいるのだから映像の美しさを真っ先に伝えてもいいのでしょうね。
山々の模様、ゴツゴツした岩、川の流れ、草木、家屋などなど細かな形や色が明瞭に映し出される映像に感動です。
比較的 動きが遅い時代劇だけに映像美が光る。
そして、名優陣。
主演の仲代達矢さんの病を患う様と心の葛藤のお芝居が演じられてるんやけども自然に私の中に入ってきて、最期まで見届けなければと思えてしまう。
凄い役者さんやなぁ
脇を固める俳優さん達も素晴らしかった。
ひら

ひらの感想・評価

3.9
素晴らしい!

主人公が武士というありきたりではなく、渡世人という時点でもう好き。カイジ観てる時よりも博打シーンでは緊迫しました。

何よりも先ずは圧巻の映像美!!
8Kカメラで撮影した映像は映画館での上映ではおそらく4Kにグレードダウンしてるのだろうけど、それを差し引いても有り余る美しさ。
やばい!!!!!
最高の機材、最高の日本の景色、両方が揃うことで無敵に!!
日本の映画でこんなにも画作りに拘る映画に出会えたことに感動。

制作側が綺麗な映像でかっこよく撮りたかったんだろうなというような物語上無駄にも思えるシーンも全てかっこいいから許せてしまう。

台詞の1つ1つの渋みが異様な雰囲気の中、佐藤二朗がコメディバランスを取ってくる力技!
殺陣などは必要とせず、男の意地と意地がぶつかり合い、男女の泥沼まで...1クールの時代劇を2時間に凝縮したような濃密っぷり。
KANAMovie

KANAMovieの感想・評価

3.0
内容を解釈するには自分は若過ぎるのだろうか(そもそも時代劇は普段観ない)。
しかし、さすがに映像がキレイだった!
主役のじいちゃん(仲代達矢さん)がしぶい。
 最近はあまり使われないが「今生の別れ」という言葉がある。2019年の11月に朝倉あきが主演した「私たちは何も知らない」という芝居の中でこの言葉が使われていて、大変に感銘を受けたことを憶えている。この世の最後の別れのことを今生の別れという。卒業式のあと友人に対して「これが今生の別れなら、私の思いを伝えておきましょう」などという使い方をする。
 本作品は「今生の別れ」を描いた作品だ。別れというと、別れに関する曲や歌をたくさん思い出す。世の中には出逢いの曲よりも別れの曲のほうが多い気がする。真っ先に浮かぶのはショパンの「別れの曲」であり、次いで「別れのワルツ」つまり「蛍の光」である。スコットランド民謡に稲垣千穎が日本語の歌詞をつけたのがつとに有名であり、日本では主に卒業式に歌われる。デパートやレストランの閉店音楽としても流されることがある。
 稲垣千頴の歌詞は 4番まであることが知られているが、3番と4番は何だかお国のためにみたいな歌詞で、右翼的な政治家がその歌詞を演説に悪用したことがある。1番と2番の歌詞は本当に素晴らしいと思う。特に2番の歌詞は、今日を限りにここを出て行く人とここに留まる人のそれぞれに、互いに対して万感の思いがあるけれどもそれをたった一言、ご無事でという言葉にこめて歌う、そういう歌詞なのである。
 とまるもゆくも かぎりとて
 かたみにおもふ ちよろずの
 こころのはしを ひとことに
 さきくとばかり うたふなり

 仲代達矢が演じた主人公宇之吉と、三十年ぶりに再会した橋爪功の佐一が酒を酌み交わしたあと、右と左に別れていくシーンで、この2番の歌詞が心に浮かんだ。宇之吉が発する「達者でな」は、互いの万感の思いをこめたひと言だ。まさに今生の別れのシーンであり、人生の切なさが凝縮されたような、美しいシーンである。
 本作品に登場する堅気もヤクザも、生きていくのは苦しいことばかりだ。それでも人と人の関わり合いの中に生きる喜び、ささやかな喜びを見出して生きていく。宇之吉はこれまで、自分のためだけに生きてきた。恩を仇で返したこともある。罪は罪。自分が一番よく知っている。先をも知れぬ老いた宇之吉にとって、人が喜んでくれることは何にも代えがたい嬉しい思い出となるに違いない。
 終始、美しい木曽路の風景が全編を通じての背景となっていて、8Kの映像はこんなに綺麗なのかと驚いた。常盤貴子は8Kの鮮やかな映像にも堪える美貌を存分に見せてくれたが、ひとつだけ不満を言わせてもらうと、演じたおくみのキャラクターがどうにもはっきりしないところがあって、終盤で少し違和感を感じた。
 それ以外は田中美里のおどろおどろしい演技も含めて、役者陣は満点だ。特に浅吉を演じた谷田歩が素晴らしい。ヤクザの幹部らしい肚の据わり具合と物言いは凄みがあった。中村敦夫が演じた九蔵は、宇之吉にとって好敵手のような存在であり、九蔵との再会が物語にダイナミズムを与えて、坂を転がるようにストーリーが進む。しかし待っているのはいつも今生の別れである。
 悲しくて寂しくてやりきれない物語だが、木曽路の自然が人の一生を包み込んでくれるようだ。ラストシーンでは登場人物それぞれの人生がフラッシュバックのように次々に脳裏に浮かぶ。時代劇のよさを余すところなく見せてくれた作品だと思う。
ワンコ

ワンコの感想・評価

3.7
蝉が鳴いてなければ…
宇之吉は木曽福島に帰っていたのだろうか。

最近は、時代劇も、効率だとかバランスシートだとか現代に通じるところがテーマになったりして、ちょっと食傷気味だったので、藤沢周平作品、楽しみにしていました。

ストーリーは予想の範囲内ですけど、ノスタルジックな日本の原風景や、重厚な俳優陣、とても楽しめました。

おとしの幻影に苦しみ、本当は死に場所を得た思いだったであろう宇之吉は、再び生を得た。
宇之吉は、おくみに別れを告げ、これからどこに向かうのだろうか。
メタ壱

メタ壱の感想・評価

3.2
藤沢周平さん原作、仲代達矢さん主演の史上初の8K時代劇映画。
年老いた流浪人・宇之吉が自らの死期が近い事を悟り故郷へと帰るお話。

生者必滅。
会者定離。

30年の時を経て帰ってきた故郷・木曾福島。
懐かしい景色に、知らない人々。
「人間だけが変わる」という言葉に、人という存在の儚さと侘びしさが滲む。

現代と違い、携帯はおろか足しか移動手段がなく今よりも日本が“広かった”、そしてだからこそ一度別れた人と次いつ会えるのかも分からない時代。

しかしそんな“生者必滅”“会者定離”が重い時代だからこそ、その一瞬とも言える人生においての出会いや命が一際輝く。

そんな人生の終わりに宇之吉が見つけた命の使い方とは?

年老いた二人の戦いは、動きも遅く息も絶え絶えな不格好なものだったけれど、そこには間もなく燃え尽きる線香花火の様な美しさと力強さが溢れていました。
時代劇史に残る殺陣シーンだと思います。
そして仲代達矢さんの鬼気迫る表情の演技は圧巻。
YayoiMaeda

YayoiMaedaの感想・評価

2.5
仲代達矢主演というのを
昨夜テレビで観て
早速観に行きました。

仲代達矢は上手いし
中村敦夫も橋爪功も
常盤貴子も
とても素敵なんだけれども。

話が読めない。
読まなくてもいいのだろうけど
なんか納得行かない。

大きな流れがないというか
どうも感動のなんちゃらと言うのが
読み取れませんでした。

ちょっとがっかり。
期間限定上映なので早く見ないと!と優先順位が上がりました。

上品な時代劇。
バイオリンやピアノ。
要所々々で聞こえる琵琶の音。
余命を悟った年老いた渡世人(仲代達矢)が「そうだ!故郷に帰ろう」と思い立つ。(好きな女性がいたのに今まで思い出さないのが不思議)物語は若かりし頃を回想しながらすすむ。

年寄りの切り合いがハラハラさせられる。
山岳信仰の話や山々の景色が森林浴に来たみたいで気持ち良い。
原作未読なので、良くは分からないが、少し渋過ぎないか?
リアルと高齢の芝居の境目が分からず、変に神経を使った。
時折りカットに使用される御嶽山にホッと救われるが。
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