若者たちの作品情報・感想・評価

「若者たち」に投稿された感想・評価

高度経済成長期の痛みと苦しみと兄弟愛

超マイクロ名画座ラピュタ阿佐ヶ谷で開催中の『戦後独立プロ映画のあゆみ-力強く』の中からの一本。知りあいの邦画好きのオジサマが昔ハマッたと熱弁をふるうので試しに観にいきました。

「独立プロ」、要するに映画大手五社以外が製作した映画が揃っている今回の企画。本作も俳優座が製作しているので座員、養成所出身者が出演。皆さんお若くて顔と名前が一致するか実は不安でしたがなんとかわかりました...

ストーリー:両親を亡くし男4人、女1人で生活する佐藤家。太郎は建築現場の叩き上げ、次郎はトラック運転手として必死に働き、大学生の三郎、予備校生の末吉の学費を援助している。一家の主婦を引き受けているのはオリエ。黙々と三食の飯炊きに家事をこなしている。
ある日、些細なけんかからオリエは家を飛び出し、靴工場で働き始める。その変化から5兄弟のストーリーが始まる.. .

佐藤家のキャストは
太郎:田中邦衛
次郎:橋本功
オリエ:佐藤オリエ(ご自身のお名前が役名になったパターン)
三郎:山本圭
末吉:松山省二
とキャラ濃いなあ。特に上の二人は自分達が強くなければ!そして弟たちには学歴をつけさせなければ、との使命感に燃えに燃えています。
逆に下の2人は学問を修めながらもまた違う道を模索しているようで、いわばブレーキ役。(とくに三郎さんこと山本圭。松山省二はいかにも末っ子キャラの予備校生ですからちょっと違うけど..)
オリエはオリエで、工場で働き始めたことで世界が広がり、戸坂という男と出会います。(ちなみに演ずるは石立鉄男。髪型はもじゃってないです..)
佐藤家のキャストは後年の作品で活躍されたキャラを思わせるように、それぞれのもち味が十分に発揮されていました。ただ、田中邦衛の割烹着姿はおかしかったなあ(笑)

ただ、みんな、ツラい展開なんですよ。
太郎はお見合い話が来たものの、相手の女性からの返事は芳しくなかったり。(お見合い相手は小川真由美)
そのせいで学歴コンプレックスに悩まされる苦悩。その長男からの期待がかけられるものの、結果を出しきれない末吉。
三郎も大学で経済学を学ぶものの、不景気な世の中に理論は役に立ちそうになく、友達も学校を去るし...
次郎も必死に働いていて、普段は短気で荒っぽいのですが、オリエの幼馴染が不本意な生活を強いられていることに気がつくと、彼女にまっすぐな愛情を見せたり。
オリエが仲良くなった足が不自由な戸坂という男、実は原爆孤児で、「ピカの子」と蔑まれおり、周りからは距離をおかれている立場であったり。太郎は戸坂との交際に大反対も三郎はもっと理性的に考えなければ、と諌めたり。

各々が幸せを掴むために生きる姿は時代を越えて共感できるはず...ですが、現代は5人兄弟は珍しいし、こんなに熱く生きるキャラはなじまないかもしれませんねえ。日本も開発しつくされ、いよいよ現状維持を目指すとなると、佐藤家の面々のように「いろいろあるけど、朝、日が昇れば希望があるさ...」とはなかなか言い切れないところがツラいなあ。

兄弟喧嘩、すごーく熱かったなあ。卓袱台ひっくり返したり、料理が桐のタンスに飛び散ったり...畳にこぼれたおかずを拾ったり...このあたりはさすが舞台俳優陣ですからややオーバー気味の熱量でした。映画というかは舞台のようなテンポだったし。

あと2作続編があるので、佐藤家の行末を見守ってきます。
山田洋次が影響受けたらしいけれども、確かにカット割りや演出が山田洋次のドラマみたい。

そんなドラマ的映画はそんな好きじゃないのだけど、宮島義勇のギラギラした撮影は好き。

それにしても年取った頃しか知らなかったから若い山本圭がなんか新鮮。
実は、テレビドラマ放映時に観た記憶はありません。おそらく何編かは親といっしょに観たと思うのですが、何か世の中の暗い部分だけを観せられたような気がして、無意識に忘れていたのかも知れません。

兄弟同士の怒鳴り合い、取っ組み合いの大ゲンカ。無知と暴力、大家族、貧乏、差別、薄汚い街並み。この刷り込まれた浅草以東、隅田川の向こう側のイメージは、のちに『寺内貫太郎一家』で払拭されるまで、ずっと僕を支配していました(「寺内……」の舞台は谷中でしたけど)。

俳優座、文学座の若手が演技を競い合った感のある作品ですが、兄弟五人を演じた田中邦衛、橋本功、山本圭、松山省二、そして紅一点の佐藤オリエのキャラクターは、この作品で完全に作られたといても間違いでないでしょう。

やくざから刑事を経て、『北の国から』で頂点を迎える田中邦衛の他を圧倒する泥臭い個性、あまり深く考えることのない直情径行、体育会系の橋本功(『皇帝のいない八月』ほかの自衛隊員)、戦中から高度成長期まであらゆるシチュエーションで左翼系活動家を演じきった山本圭(『戦争と人間』『新幹線大爆破』など)、甘えん坊で頼りない新人役の松山省二(テレビ『怪奇大作戦』)、清く正しく強いマドンナの佐藤オリエ……いい意味でも悪い意味でも、みんな、ここから始まったんですね。

五人以上に素晴らしいのが、佐藤オリエの中学校の友人を演じた夏圭子。倒産した工場の商品を風呂敷に包んでの行商から帰ってきて、冷や飯をメザシか何かをおかずに食べはじめ、苛立ちのままにお湯をかけてグイグイと流し込むシーン!リストラ、貧困という世の中の理不尽に負けない逞しさと強い意思が、観るものを圧倒します。『キューポラのある街』で吉永小百合が演じた少女より、もっと戦闘的で思想的にも一歩先を行く女性像。指導者として尊敬していた労働運動のリーダーに裏切られた彼女に恋をする橋本功の純情も忘れられません。

この二人をはじめ、兄弟の恋が描かれていきます。

上司に勧められた見合い相手から低学歴を理由に付き合いを断られる田中邦衛。大学を中退し山本圭から離れ実社会に飛び込んでいく栗原小巻。被爆者ゆえの差別から行方をくらます佐藤オリエの恋人、石立鉄男。彼ら、彼女たち、若者たちの恋は成就することなく終わってしまいます。

時は流れて2017年を生きる若者たち――熱い人間関係はダサさの象徴、労働組合なんか入らないよ。そこそこ稼いでいるし、格差社会って何さ、自分より上の奴らなんか知らないよ。選挙なんか行ったことないし、適当にやってればそれでいいんだ。バブルって、昔の話だろ――。そんな君たちを育てたのは確かに僕たち親の世代の責任かもしれないけれど、「君の行く道は希望へと続」いているのかい?
馮美梅

馮美梅の感想・評価

3.0
両親を亡くしている5人の兄弟の物語。
長男(太郎=田中邦衛)は親代わりになって工事現場で働きながら家族を養っている。個性的な5人兄弟。

兄弟それぞれが抱える問題、そのことで度々凄い喧嘩になったりする。

でもそれは結果的に全て、家族を思う気持ちであり、長男は仕事場でのあることで学歴のないことは、これからの世の中、豊かに暮らしていくために必要なものだと感じ、末の弟に何度受験に失敗したとしても必ず、大学に行けといい、末の弟は学歴がすべてじゃない、自分がやりたいことを探して、その中で、再び勉強したくなったら大学に行こうと思うというけれど、それをかたくなに許さない長男。

長女が好きになった相手が被ばく者だと知った長男は、これまたかたくなに妹を反対する。それをエリート大学生の三男(山本圭)は「差別だ」と非難する。

妹の幼馴染に淡い恋心を抱く次男は、彼女に振られるけれど、彼女がある男性に騙されたと知り、彼女が一番嫌だと言っていた、自分の母のいる水商売のお店にいることを知り、それでいいのか?と諭す。

貧しい時代だけど、家族が家族の為に、そして自分の生き方を、それぞれが必死で模索していく姿が印象的です。

上司の家にお年始の挨拶に行った時に太郎が「僕は春が好きです。暖かくなる春が好きです。母のあかぎれも、服が無くて震えることもない春が好きです」と淡々と語りながら涙を流すシーンは、とても印象的でしたし、すさまじい兄弟げんか、いつまでも兄弟が一緒にいられるなんてことはないんだ、いつかみんなそれぞれの道を歩んで1人になっていくんだという三男の言葉もズーンときました。

ひとりひとりが必死に生きていこうとする姿を、観た人それぞれに何か感じられる作品じゃないかと思います。

1960年代の生活を感じることもできます。
初)「キューポラのある街」の主人公の家の隣に住んでいそうな(一つ屋根の下っぽい)兄弟一家の話…フジTVのヒットドラマの映画化どいうことで納得…この頃のTVドラマって今のドラマと違って優秀なものが多く心に残る作品が沢山あると思います。この作品のTV版は未見ですが、映画版のこの作品は中々良かったてす。当時の若者の気持ちをストレートにセリフにし当時の若手俳優が力一杯演じているところに好感が持てます。そのセリフも重く軽くありません。


貧しいな 社会が追い詰めてくるな 頼れるものがなくて不安だな なんで諦めないのかな
まぁでも、これよりは自分の人生幸せだなーって泣く

報われた気持ちにしてくれる
若い時に苦労したらきっと報われるって 信じたい

最近やってたドラマも観ましたがそういうところが変わってなくて良かったです
RYUYA

RYUYAの感想・評価

4.0
群像劇の大傑作。
カネVSキモチで、さぁどう生きるか?
それに挑むは5人の若者たち。
あぁ、人情だなぁ。

山本圭の若いころ、イケメンすぎてビックリだ。

このレビューはネタバレを含みます

両親を亡くした5人兄弟の衝突しながらもたくましく生きていく姿を描いた、同名TVドラマをリメイクした家族ドラマの劇場版。

高度成長期、学生闘争、学歴社会…という時代背景の中で、その空気感というものが良い意味でしっかり描かれているように思う。
兄弟それぞれの生き方も描かれ、それが故の衝突も家族ドラマとして共感する部分も多い。
それは半世紀たった今観てもね。
でもこれだけ魂でぶつかり合うということは、今の時代では家族の中ですら無くなったんじゃないか。
そういう意味で時代を感じさせられるし、これだけ逞しく前に進もうとしている人たちを見ると、日本人のバイタリティというものは明らかに変貌したと感じてしまう。

5人兄弟を演じるのは、田中邦衛、橋本功、佐藤オリエ、山本圭、松山省二(現・松山政路)。
学は無く粗雑で直情型だけれど、人に対する思いやりがある長兄・太郎の田中邦衛はイメージ通り。
クライマックスの兄弟げんかは、おそらくワンシーンで撮り切ったと思えるほどの緊迫感の持続があり、実に迫力がある。
他の兄弟の恋や友情なども短くも良く描けていると思うけれど、キャラクターとしては三男・三郎役の山本圭が良い味を出しているね。
多少、思想がかった役どころではあるけれど、まあ主張はまともだと思うし、話のコントロール役として機能しているし。
大学のシーンでは学生運動に熱心な感じも描かれたけど、この時代の学生は大体そうだろうから、これも時代性の表れかなあ。
それにしても若いころの山本圭氏はえらく二枚目だったのですねw

テーマ曲の「空にまた陽が昇るとき」が印象深いです。
薫

薫の感想・評価

2.8
講義の資料として鑑賞。
当時の若者の労働組合運動や学歴問題、被爆者・女性への差別など描かれていて、そういう社会的な面はとても興味深い。
のだけど、どうしてこの時代の演技ってこうも大げさなの?これ、当時の日本人として一般的な反応なの?
一食いくらとか決めてた割には頻繁にちゃぶ台ひっくり返すし。巨人の星でしか見たことなかったよ。本当にやるのかよ。
やたら早口なのはまだいいとして、今見ると大げさに感じる演技がどうにも癪に障る。
神

神の感想・評価

4.0
映画版第一弾。長男田中邦衛を中心に、結婚 恋愛 仕事 学生運動 進学…と、五人のきょうだいたちが悩みながらも必死に生きていく姿に胸が熱くなる。
卓袱台返しは必見。