愛の奇跡の作品情報・感想・評価

「愛の奇跡」に投稿された感想・評価

か

かの感想・評価

4.0
こういう映画をどう評価すればよいのかはわからないが、言葉ではなく、出来事として自分の存在を受け止めていく、そしてそれに真摯にカメラを向ける、最後のシーンが印象に残った。
JAmmyWAng

JAmmyWAngの感想・評価

4.4
発達障害児を取り巻く大人達の口から、"he is defective"だとか"living vegetable"だとかの言葉がふと飛び出す瞬間にはギョッとしてしまうんだけど、一方では"normality is relative"だとか"a brain isn't the whole of a human being"だとかいう当たり前の言葉が当たり前のように言い放たれる瞬間にもハッとさせられる。
バート・ランカスターの顔のクローズ・アップは、彼の信念から威圧的な緊張感を文字通りクローズ・アップしていてマジクローズ・アップだし、ジュディ・ガーランドの葛藤に揺れ動きながらも歌を子供達に教える姿はもう筆舌に尽くし難いし、そして子供達の表情に向けられるカメラの眼差しがどこまでもガチである。ガチだなーっつって、何だか渡辺文樹の『ザザンボ』とか思い出しちゃったでござるよね。
製作のスタンリー・クレイマーと衝突したりして、カサヴェテス的には不本意らしいんだけれども、それでも僕はこんなシーンの数々を見せてくれるこの作品が好きだと思いました。『オズの魔法使い』と二本立てしたらジュディがガーランドすること必至。

このレビューはネタバレを含みます

ゆっくりと前進するカメラが自動車の正面からドアの開いた後部座席に回り込み、不安そうな面持ちで座る少年をとらえる→自動車からなかなか降りようとしない少年を車のおもちゃを使って外に誘い出す男(バート・ランカスター)を車内からとらえたカット→建物の玄関前にいた別の男(スティーヴン・ヒル)が自動車から降りた子供に気づかれないようそっと運転席に近づく→おもちゃの車に乗って遊ぶ少年をとらえた横移動ショットで、画面左にフレームアウトした自動車のエンジン音が突然けたたましく鳴り響き、カットが変わると自動車が後部座席のドアを開けたまま(!)画面向こうへ走り去る→置き去りにされた少年が"Daddy!!"と叫びながら追いかけようとするのをバート・ランカスターが押さえ込む→揉み合う2人のアップのシルエットにスクラッチが入り暗転、タイトル・クレジットへ
…という強烈なアバンタイトルだけでも必見と思います。

発達障害児のための教育施設で働く新人教師ジュディ・ガーランドの葛藤を通して示される、「施設の子供を本当に愛しているのならば、愛の流れをせき止めなければならない」というある意味「大人」な結論は、製作を担当したスタンリー・クレイマーの得意とする良質な社会派ドラマならではと言えるのだけど、その「良質さ」に対してカサヴェテスの演出が時に大きく逸脱するいびつな瞬間が何ともスリリング。クレイマーをはじめとした製作陣とカサヴェテスが衝突したというのもうなずける一作。

バート・ランカスター演じる校長の精神科医の揺るぎなさや、ジュディ・ガーランド演じる女性新人教師の決意よりも、カサヴェテスがカメラの焦点を合わせるのは、愛する相手に向かって一心に注がれる少年ルーベンのまっすぐな眼差しや、世界を理解することはできてもその世界に対してうまく反応することのできない彼の寄る辺なさ(あのラグビーシーンのいたたまれなさ!)の方だ。

本作の「結論」に対するある種の異議申し立てとして、『フェイシズ』から『ラヴ・ストリームス』に至る一連の探求がある、と考えるといろいろ腑に落ちるところがある。カサヴェテス映画において「愛の流れはどこまでも続き、止まることがない」のだ。
障害を持つ子供を扱った暗い作品だからか、緩慢な語り口のせいか、記憶に留まらなかったです。